2013年12月28日土曜日

天皇陛下傘寿のお言葉に背を向ける安倍自民党の不敬と慢心

 第二次安倍内閣の発足から丸一年が過ぎた。
「一刻も早くタカ派的妄信から目を覚まし、戦後日本の歴史や国民世論と謙虚に向き合う保守の王道を歩んでほしい」とは、発足直前の昨年12月19日付本欄の結びの言葉である。景気回復、日本経済の立て直しを期待してのことだ。
 その言葉どおり、前半の政権運営は麻生太郎副総理兼財務相が主導した年初の財政出動と未曾有の金融緩和、それに運も見方しての円安、株高によって輸出産業を中心に企業業績が回復し、成長率を押し上げ税収も伸びた。国民が期待する以上の成果である。通常国会閉会直後の参院選で自民党は圧勝、衆参ねじれ国会が解消したのは当然の結果だった。
 ところが安倍晋三首相も自民党もこれでタガが緩んでしまった。安倍首相はいよいよ、戦前回帰の軍国少年と化して臨時国会で特定秘密保護法案を強行採決。自民党は国土強靱化の大義を掲げてかつての利権政治に逆戻りである。
 総額96兆円にまで膨れあがった新年度予算案で防衛費は安倍首相の強い意向で前年度比2・8パーセント増の4兆8848億円、公共事業費は12・9パーセント増の5兆9685億円で共に2年連続の増額である。
 これに対して税収は対前年比160%増、7年ぶりに50兆円を超えたが、だったらその分、借金返済に回してくれたら良さそうなものだが、治安、治水、防災は人の命に関わるから声高に反対はできない。
 だからこそ、かねてより無駄な予算の執行を厳しくチェックできるよう予算案の審議だけでなく、会計検査院や衆参両院の決算委員会の機能権限の強化を求めているのだが、選挙制度改革同様、与野党立場を代えても国会改革はなかなか前には進まない。
「民主主義の政治体制はチェックとバランスが必要だが、与党にチェックする機能がほとんどない」
 引退した元自民党幹事長の古賀誠氏が21日のテレビ番組で安倍政権の現状をこう嘆いていた。そうであれば、自民党に衆参両院の多数を与えた有権者の判断が誤っていたことになる。そして何より悔やまれるのは安倍首相に政権運営を委ねたことか。
23日、傘寿を迎えられた天皇陛下より「平和と民主主義を守るべき大切なものとして日本国憲法を作り、様々な改革を行って今日の日本を築いた」とのお言葉が発せられた。
「憲法改正をライフワークだ」と公言して憚らない安倍首相は不敬を恥じ、悔い改めることだ。

2013年12月26日木曜日

夢見る安倍首相が編成した来年度予算案96兆円は見せガネ

政府は24日に閣議決定した14年度予算案の裏付けとなる新年度の経済成長見通しを実質成長率で1・4パーセント、物価の影響を反映した名目成長率を3・3パーセントとした。インフレ誘導による日本経済の規模拡大を唱える安倍政権はデフレ経済の象徴的な指標だった名実成長率の逆転が17年ぶりに解消し、税収が消費税増税と法人税収増で7年ぶりに50兆円を超えるとの見立てである。
しかしながら実質成長率が今年度見通しの2・6パーセントから半減するとなれば楽観は許されない。来年4月に消費税率を引き上げれば、景気の足を引っ張るのだから当然だ。政府は約5・5兆円の経済対策を盛り込んだ13年度補正予算でこれを下支えするが、こればかりはやってみなければ分からない。
厳しい見方をすれば、名目成長率が伸びても物価の上昇に賃金、給料の手取りが追いつかずに家計を圧迫、消費低迷で景気が落ち込めば税収不足を新規国債発行で穴埋めすることになりかねない。
「来年もやはり経済だ。強い経済を取り戻すことが政権の最優先課題であることは間違いない。今こそ、人材、設備に投資すべきだ。皆さんが賃上げの決断をできないわけがない」
安倍晋三首相は19日、企業経営者らを前にした講演でこう強く語りかけた。1年前にも同じ話を聞いた。
翌日には経済界、労働界の代表とでつくる「政労使会議」で「デフレ脱却に向けて、企業収益拡大を賃金上昇につなげる」との合意文書をまとめているが、実が伴わなければ安倍首相は厳しい立場に置かれよう。
その意味で、一般会計96兆円(前年度当初比約3兆2700億円増)の史上空前の規模にまで膨らんだ14年度予算案は、国民に景気回復を期待させるためのいわば“見せガネ”でもある。
 安倍首相が今年の漢字に「夢」を選んだ際、「昨年と大きく空気が変わった。頑張っていけば来年はもっと良くなるのではないかという夢をみんなが見ることができるようになった」と1年を振り返った。空腹は満たされていない。

2013年12月23日月曜日

安倍政権の命運握る来年度予算案と賃上げ

 政府が週明け24日に14年度予算案を閣議決定する。一般会計総額96兆円を超える過去最高の規模だ。ちなみに昨年度は約92兆6千億円。上積み分は消費税引き上げによる税収増を見込んでのこと。併せて日銀が16日に発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)で大企業・製造業の景況感が四半期連続で改善、6年ぶりの高水準となったことも強気の予算編成を後押しする。政府は8月試算で実質1・0パーセントとしていた14年度の経済成長率見通しを1・3パーセントに引き上げる方向だ。
 おとより景気回復は望むところだが、短観は設備投資の伸び悩みも指摘している。大企業・全産業の13年度計画は前年度比4・6パーセント増となったが、前回調査(5・1パーセント)から下方修正。同日に内閣府が発表した日本経済の潜在的な供給力と実際の需要の差を表す需給ギャップは今年7~9月期で1・6パーセントのマイナスだった。
過剰設備でモノを作って売れなければ、企業が新たな設備投資に二の足踏むのも当然だ。
周知のとおり、安倍政権の経済成長戦略は賃金給料の底上げによる内需拡大を旨とするが、現実は相変わらずの円安頼み、輸出産業頼りの先々に危うさ漂う経済指標と言える。
そうであれば予算の使い途にはよくよく眼を光らせておく必要があろう。数字上で成長率が上向いたとしても内実が伴わなければ、持続的な経済成長は望めない。
だからだろう。安倍晋三首相も必死だ。18日には東京下町のメッキ工場を視察した際、「町工場であっても、みんなが頑張って技術を磨き、努力すれば景気回復のチャンスをきっとつかみ獲ることができる」と従業員を前に檄を飛ばしている。さらに視察後には記者団を前に年明け24日召集予定の次期通常国会冒頭に処理する13年度補正予算案に計上された中小企業の試作品開発や設備投資を対象とした「ものづくり補助金」について「賃上げした企業に優先的に出していく」との考えを示した。
すべては結果オーライである。ただひたすら景気回復に注力すれば内閣支持率もきっと持ち直すに違いない。

2013年12月19日木曜日

対アセアン積極平和外交は安倍首相の妄想と独善

「ビジョン、アイデンティティー、そして未来を分かち合う仲間、平和と繁栄とよりよい暮らし、そして心と心の通い合うパートナー。今から40年後、私たちの子や孫もアセアン(東南アジア諸国連合)と日本の間柄とは、確かにそのようなものだと深くうなずくに違いない」
 安倍晋三首相は先週13日夜、日本・アセアン特別首脳会議出席のため来日した各国首脳を招いた夕食会でこんなスピーチをしたそうだ。
 また、各国首脳との個別会談ではミャンマーの鉄道網改修や経済特区のインフラ整備などに総額632億円、ベトナムの高速道路網整備などに約960億円、カンボジアには病院整備などに約100億円の資金援助を含め今後5年間に2兆円の対アセアンへの政府開発援助(ODA)を約束している。
 一方で安倍首相は会議期間中、中国の防空識別圏設定を批判し、各国首脳に対して対中脅威論への同調を求めたが、足並み揃わず不調に終わってしまった。
 高度経済成長期、ODAは日本外交の有力な武器となってきたが、安倍首相が目論む中国包囲網にアセアン諸国を巻き込むほどの効果はもはや期待できない。
 安倍首相のスピーチを意訳すれば、ビジョンとは「妄想」、アイデンティティーは「独善」のことを指す。そしてアセアン諸国が分かち合うのは日本の「ODA」ということになろうか。
 そもそも、アセアン諸国からすれば日本は中国や北朝鮮、韓国と同様、植民地支配の加害国である。さらに言えば、今の中国が脅威であるなら、これを理由にアセアン諸国への軍事的プレゼンスを高めようとする日本もまた脅威であろう。旗振り役の安倍首相が狂信的な右翼思想の持ち主であればなおさらだ。
 安倍首相は積極平和主義と呼んでいるが、主義主張を押し付けられるアセアン諸国の人々にとっては迷惑な話だろう。カネで買えない人の心と信用である。
 
 

2013年12月14日土曜日

サラリーマンに苛酷な安倍政権の14年度税制改正大綱

 自民、公明両党は10日、与党税制協議会で消費税増税に伴う低所得者対策として生活必需品等の軽減税率を導入することで合意した。ただし、焦点となっていた実施時期については公明党が強く主張してきた「税率10パーセント引き上げと同時に」との文言は週内にまとめる14年度税制改正大綱には盛り込まない。
 当然だろう。税制は単純で分かりやすい方がいい。一政党の思惑に振り回されて特例措置を乱発していたら税制は歪になるばかりで、不公平感を助長することになる。
公明党が主張をそっくりそのまま受け入れれば、食料品(酒、外食を除く)や新聞、書籍、雑誌などが軽減税率の対象となり合わせて1兆円超の税収減が見込まれる。
だったらその分、消費税率を上げる必要はないわけで、低所得者層にはこれまでどおり所得、住民税等の各種控除や生活保護、育児、教育等の各種手当ての支給で間に合うはずで、わざわざ消費税を弄る必要はない。
やむを得ず特例措置を認めるにしても消費税が8パーセントに引き上げられる来年4月以降の景気動向を見極めてからでも遅くなかろう。
自民党もしかり。同協議会では来年4月から自動車取得税(地方税)を2パーセント(現行5パーセント)引き下げることでも合意している。こちらは自民党の意向で消費税を10パーセントに引き上げ時の全廃がすでに決まっている。日本経済を牽引する自動車産業に配慮した特例措置だが、その一方で地方では庶民の足として欠かせない軽自動車については15年4月以降、現行7500円の最大1・5倍の増税を検討しているというのだから、低所得者層や田舎暮らしの住民から移動手段を取り上げるに等しい。
自動車取得税の軽減税率導入については日本自動車工業会会長の豊田章男トヨタ自動車社長が政府・自民党に強力に求めてきたもの。これに対して安倍晋三首相が豊田氏に従業員の給料アップを求めているのは周知の通りだ。つまり、自動車取得税の軽減税率導入はその見返りというわけだ。
いったい何のために消費税を引き上げたのか。支離滅裂な与党の税制論議である。

2013年12月13日金曜日

国民が心配なのは内閣支持率の低下ではなく景気の減速

臨時国会が2日の会期延長を経て8日、閉会した。
「朝起きたら静かで、何か嵐が過ぎ去ったようだ」
特定秘密法案を強行採決した翌日、安倍首相はこう漏らしたそうだ。
もとより法案そのものについては、その強引な国会運営と併せて厳しく批判されてしかるべきだが、朝日新聞社が直後に行った緊急世論調査で内閣支持率は46パーセント。前回調査からわずか3パーセント減に止まった。
だからだろう、感想を問われた菅義偉官房長官は9日の記者会見で「今回は多分下がるだろうと予測していた。低いより高い方がいいわけだから、国民に説明すべきことは説明していきたい」と余裕の表情を浮かべている。
国民世論の安倍内閣を見つめる眼差しには、今後の成り行きを見届けたいとの思いも覗く数字だろうか。きっと菅義偉官房長官もそう読み取ったに違いない。
もとより条文を読めば、政府として国家、国民の安全保障に関わる軍事、治安情報の漏洩、流出には何らかの歯止めが必要なことは理解できる。この法律の眼目はスパイの防止、摘発にあるわけだ。
だが、あれもこれもと欲張り、投げ縄広げ過ぎてはかえって使い勝手が悪い。例えるならばアメフトとラクビーを同じルールで縛り、論じるようなものか。誤審乱発とならないよう、まずは公正中立な審判の育成が急務であろう。
安倍首相は「情報保全諮問会議」、「保全監視委員会」、「文書管理官」の三つの安全装置を設置することで国民の知る権利と人権侵害に配慮する姿勢を示している。これまでの議論を無にすることなく、国民の不安払拭に務めていただきたい。
それにしても振り返れば臨時国会、残念なのは秘密保護法案ばかりが注目されてしまい、安倍政権が成長戦略の柱と位置付ける産業競争力強化法や国家戦略特区法案などの重要法案がさしたる議論もないまま素通りしてしまったことだ。
内閣府が9日に発表した7~9月期の実質GDP(国内総生産)は、消費税引き上げを決めた4~6月期比0・3パーセントに止まっている。年率換算では先月14日に発表した速報値の1・9パーセントから1・1パーセントに縮小しており、景気の減速はより明確になった。
年明け通常国会は1月24日に開会予定。嵐はまたすぐにやって来る。
 
 

2013年12月7日土曜日

中国の防空識別圏設定で国民の生命を危険に晒した安倍首相の判断能力は子供以下

4日、発足したばかりの国家安全保障会議(日本版NSC)が初会合を開いた。外交・安全保障に関する国内外の情報を一元管理し、官邸主導で迅速に安保政策を推進するとの触れ込みだから、きっと東シナ海に防空識別圏を設定した中国への対応が話し合われたに違いない。
 折しもこの前日、安倍晋三首相は来日したハイデン米副大統領と会談後の共同会見で「この空域で自衛隊と米軍の運用を含む日米の対応を一切偏向しないことを確認した」と胸を張った。一方のハイデン副大統領は「現状を一方的に変えようとする試みは深く懸念している」と述べるにとどめている。
 防衛上、日米の緊密な連携は当然のことだが、だからといってこれを念仏のように唱えるだけではあまりに芸が無さ過ぎる。
 しかも、この問題で安倍首相は決定的なミスを犯している。中国が要求する民間航空会社の飛行計画書提出を米国の対応を待たずに拒否してしまったのだ。その後、米国が軍事と民間は別としてこれを事実上容認したことは周知のとおりである。
 乗客の安全を第一に考えるならば、どちらの判断が正しいかは明かだ。万が一にも日本の民間航空機が撃墜されるような事態になれば、取り返しがつかない。そのくらいのことは子供でも判断がつこう。
つまり安倍首相の判断能力は子供以下、先にシリアへの軍事制裁をめぐっても国際社会の動向を見誤り、先走ってアサド政権打倒まで口走っている。いったいどんな情報に基づいてこんな判断なされたのか。外交戦略、戦術とやらがあるとすれば、それも含めて国民の知りたいところだが、特別秘密保護法案が成立すれば失態、失政も「特別秘密」となる。
「各閣僚がそれぞれの立場で政治的リーダーシップを発揮し、NSCを中心とする安全保障政策の推進にしっかり寄与して欲しい」
 安倍首相は3日、日本版NSC発足に伴い解散となる安全保障会議でこう挨拶した。
しかしながら、どんな優れた組織も情報も無能なトップの下では宝の持ち腐れとなろう。

2013年12月5日木曜日

テロより怖い秘密保護法案と安倍ー石破コンビに汚され歪められた保守政治

自民党の石破茂幹事長が自身のブログ(11月29日付)で特定秘密保護法案に反対するデモなどの抗議行動を「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」と断じた。また、1日の講演では「人が恐怖を感じるような音で、絶対にこれは許さない、と訴えることが、本当に民主主義にとって正しいことなのか」とも述べている。
まさにこれこそが前回、本欄が指摘したとおり、衆参両院で絶対安定多数を得た安倍政権の驕りであり、エセ保守政治家の増長に他ならない。
国民の声に謙虚に耳を傾けることこそが保守政治の神髄であり、戦後民主主義の拠り所でもあろう。それを五月蠅いと感じるのは石破氏が聞く耳持たないからであって、それをテロと同質に論じることに国民はむしろ民主主義を否定する独裁者の恐怖を感じるのである。
石破氏だけではない。朝日新聞社が行った直近の世論調査で国民の50パーセントが特定秘密保護法案に反対、継続審議を求める声は56パーセントに達している。おそらく、審議を尽くすほどにこの法案のいかさま具合が国民に知れ渡り、反対の声が今以上に勢いを増すことになろう。
そうであればここはやはり、国民世論に従い、継続審議にすることが権力を握る者の分別というもの。
ところがエセ保守政治家は、こんな民主主義のイロハすらも理解せずに、法案成立にひた走る。仮に継続審議となれば、強行突破を主導した菅義偉官房長官の責任問題が浮上することになるからだ。さらに年明け通常国会、勢いを増す国民世論に抗しきれずに最悪、廃案に追い込まれてしまえば、安倍内閣そのものがもたなくなるから退くに退けない。詰まるところ国家国民のことよりも我が身大事のエセ保守政治家たる所以である。
ついでにいえば、安倍晋三首相が国民世論の反対を押しきってまで強行採決にこだわるのは、60年安保改定を強行した祖父・岸信介元首相への憧れもある。きっと今頃、国会周辺をデモ隊に包囲され、決死の覚悟で安保改定を成し遂げた祖父の姿を自らに重ね合わせて悦に入っていることだろう。しかも、それが保守政治家のあるべき姿だと勘違いしているのだからなおさら、この政権は始末が悪いのである。

2013年11月30日土曜日

ねじれ国会解消で増長するエセ保守政治家と秘密保護法案の強行採決

衆院の強行採決から一夜明けた27日、特別秘密保護法案をめぐる論戦の舞台は参院に移った。安倍晋三首相はこの日行われた本会議の答弁で特定秘密が恣意的に運用され、報道の自由、国民の知る権利を侵しかねないとする同法案への懸念について「専門的な識見を有する有識者を適性に人選し、その意見を踏まえ実効性のある運用基準を作成することにより、本法案の適正な運用が確保される」と従来通りの主張を繰り返した。
はたしてそれで国民の不安が払拭できるものかどうか。有識者の人選はもちろんのこと、法をどう解釈し、どう適用するかを判断するのが時の権力であれば、客観性を担保することはできない。安倍首相が憲法解釈を恣意的にねじ曲げ、集団的自衛権の行使が可能だと主張しているのが、何よりの証左だ。
 安倍首相はこの前日、記者団を前に「国民の安全を守るための法律だ。参院審議を通じて国民の不安を払拭していくよう努めたい」と述べていた。また同じ日、自らが会長を務める超党派議連「創生日本」の研修会では「誇りある日本を取り戻すことはまだスタートしたばかりだ」とも述べている。参加者は保守政治家を標榜する国会議員ら約400人。その一人、安倍ガールズの稲田朋美行革担当相が「戦後レジュームからの脱却を現実にしたい」と訴えていた。
特定秘密法案はその第一歩というわけだ。どうやらこの人たちは戦後日本の民主主義を否定することが保守政治家の使命のごとく、大きな勘違いをしているようだ。
「気狂いに刃物」のたとえもある。包丁も使い方次第で凶器となろう。
 今国会、会期末は12月6日まで、実質審議時間は残り少ない。安倍政権はどさくさ紛れに、高校授業料の無償化制度を見直し、所得制限の導入を決めた。農家の減反政策も見直される。来年度からは消費増税に加え、国民年金や介護保険、医療費などの社会保障費の負担増も待ったなしだが、この分では年明け通常国会も数にモノを言わせた強引な政権運営が続きそうだ。
 衆参ねじれ解消で政治の安定と景気回復を望んだ多くの国民はきっと裏切られた思いだろう。

2013年11月28日木曜日

中国の防空識別圏設定で試される鳴り物入りの日本版NSC

 今国会、安倍晋三首相が最優先課題と位置付ける国家安全保障会議(日本版NSC)創設関連法案が、野党第一党の民主党も賛成して27日の参院本会議で可決成立する。
 日本版NSCは外交・安全保障政策の司令塔として、首相の下に官房長官、外相、防衛相の「関係大臣会合」を常設し、事務局として内閣官房に「国家安全保障局(安保局)」を置く。初代局長には安倍首相の「飲み仲間」で元外務事務次官の谷内正太郎内閣官房参与(69)が起用。局内に「戦略」「情報」「同盟・友好国」のテーマ別3部門、「中国・北朝鮮」「その他の地域」の地域別2部門とこれらを束ねる「統括」部門を配置し、防衛、外務、警察から部門トップを迎え総勢60人規模でスタートする予定だ。
 折しも中国が尖閣諸島上空に防空識別圏を設定したことで日中関係に焦臭さ漂うこの時期、日本版NSCの力量がさっそく試されよう。
 いわば、本番前の予行演習といったところか。23日には首相官邸に日本版NSCの中核を担うことになる外務、防衛両省など関係省庁の局長級が集まり対応を協議。外務省の伊原純一アジア大洋州局長は同日、駐日公使に「我が国固有の領土である尖閣諸島の含むもので、全く受け入れることはできない」と電話で厳重抗議、防衛省はこの日、尖閣周辺の日本領空に接近した中国軍の情報収集機を自衛隊戦闘機が緊急発進して追尾している。
 25日には参院決算委員会で安倍首相が「尖閣諸島の領空があたかも中国の領空であるかのごとき表示をしており、全く受け入れることはできない」と答弁、中国政府に撤回を要求した。
 ただ、そうはいってもいつもながらに打つ手は限られている。同日の参院国家安全保障特別委員会では小野寺五典防衛相は「今後も我が国周辺の海空行きに警戒監視活動の万全はもとより、国際法および自衛隊法に従い、厳正な対領空侵犯措置を実施したい」と述べていたが、かといって撃ち落とすわけにもいかず。岸田文雄外相いたっては「関係国と協力し中国に自制を求める」といつもながらのセリフを繰り返すだけ。せいぜい、中国大使を外務省に呼びつけ、厳重抗議するのが精一杯だ。
きっと今後は日本版NSCが実行ある解決策を打ち出してくれるはず。看板の掛け替え、掛け声倒れに終わらぬよう、無い知恵を精一杯搾り出していただきたい。

2013年11月25日月曜日

利権のために信仰を捨てた公明党のエセ”平和主義”

自民、公明両党が特定秘密保護法案の衆院採決を当初予定していた22日から週明け26日以降に先送りした。19日に安倍晋三首相と会談した公明党の山口那津男代表が、みんなの党と修正合意にとどまらず、さらに野党との合意形成に努めるよう求めたからだ。安倍政権の強引な国会運営に引きずられる公明党執行部に対しては支援組織の創価学会からかなりの突き上げがあったと聞く。だからだろう、席上、山口代表は15年10月に予定されている消費税率10パーセント引き上げ時の軽減税率導入を「政治決断すべきだ」として、年末の与党税制改正大綱で結論を出すよう強く迫り、弱者、低所得者層への取り組みをアピールした。
さらにこれに前後して行われた記者会見で山口代表は軽減税率の対象品目について「報道を元に知る権利を実質化するという、メディアのはたす役割は極めて大きい。民主主義の必需品ではないか」とも述べ、新聞や雑誌等の出版物を対象品目にする考えを示した。
軽減税率をエサに秘密保護法案への批判を強めるマスコミ世論を懐柔しようとは、いかにも姑息な公明党がやりそうな手口だ。
もとより、軽減税率導入の是非と秘密保護法案の賛否とはまったく別次元の話だ。
軽減税率導入については安倍首相の経済ブレーンの浜田宏一内閣官房参与が「一種の利権となり、政治的な争いになると経済政策に混乱をもたらす。税制も複雑になる」と否定的見解を述べている。まさに公明党はその利権漁りをしているだけのこと。そもそも、景気減速が懸念され、消費税率10パーセント引き上げが可能かどうかも疑わしいのに、軽減税率導入の議論は時機尚早ではないのか。
折しも19日にはアベノミクスの成長戦略を具体化する「産業競争力強化法案」が衆院を通過している。今国会の成立は確実な情勢だ。安倍首相の言葉を信じれば、これで労働者の賃金は上昇し、日本経済は成長軌道に乗るはず。ところが菅義偉官房長官は同日のテレビ番組で「引き上げることによって景気の腰折れがあり、税収が少なくなる状況なら、当然(先送りも)考えるべきではないか」と述べている。
そうなれば安倍首相の責任が問われよう。消費税引き上げはアベノミクスの経済成長を前提にしたものだからだ。利権欲しさにこれに擦り寄り、秘密保護法案の成立を救け、平和の党の看板を汚した山口代表以下、公明党現執行部の罪はもっと重いと知るがいい。

秘密法案強行採決を主導する菅義偉官房長官が狙うポスト安倍の身の程知らず

 特定秘密保護法案の成否をめぐる与野党の攻防は今週、ヤマ場を迎える。同法案を審議する衆院国家安全保障特別委員会の与党筆頭理事を務める自民党の中谷元副幹事長は17日のテレビ番組で「参院(の審議)を考えると、今週が時間的に限界だ」と述べた。政府与党は当初の予定通り21日の衆院採決を強行する構えだ
 また、安倍晋三首相は同日、訪問先のラオスで行った記者会見で「できるだけ多くの方々に法案成立に参加、協力していただきたい」と述べた。念頭にあるのは法案成立に前向きな維新、みんなの両党との修正協議だ。政府与党は19日中に修正案をまとめたいとしている。どちらか一方が修正案で合意すれば、安倍首相は強行採決の批判をかわすことができるわけだ。
 維新、みんなの両党にしても、法案成立に協力することで与党入りへの足がかりにしたいとする下心が透けて見える。保守色の強い両党であれば、政権与党に返り咲いた自民党との連携は自然な流れだろう。これも先の衆参両選挙の民意であれば、後悔先にたたず、である。
 もっとも、この法案がこれまで好調に推移してきた安倍内閣のつまずきの第一歩になることは今のうちから指摘しておきたい。
 何しろ、同法案を「今国会で成立させるべきだ」とする国民は12・8パーセントしかいないのだ。しかも、法案の中身については「あまりよく知らない」、「全く知らない」を併せて44・5パーセントに上っている。タカ派的偏向報道著しい産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が16、17両日に行った世論調査の結果である。おそらく一般国民レベルの認知度はもっと低いはずだ。
それでどうして今国会の成立を急ぐのか。ましてや安倍首相自らが「経済成長実現国会」と名付けておきながら。かねてより本欄が指摘しているところだが、ここにきて一つ分かったことはこの法案の強行採決を主導しているのが菅義偉官房長官だということ。「経済成長実現国会」となれば、当然ながら麻生太郎財務相や甘利明経済再生担当相が脚光を浴びることになる。ポスト安倍で遅れをとる菅氏がこれを嫌い麻生、甘利はずしを狙って仕掛けた「特別秘密保護法案国会」というのが、政局的な見方である。
菅氏は来年度予算成立後の早い時期、内閣改造を自ら主導して麻生、甘利両氏を政権の中枢から遠ざけるつもりだろう。
野党との修正合意を目指し、場合によっては次期通常国会への先送りも視野に入れる自民党の佐藤勉国対委員長は、こうした菅氏の政局絡みの動きに振り回されて爆発寸前だとか。
そうであれば、身の程知らずの菅氏の野心が近い将来、安倍政権最大の不安定要因になるに違いない。

2013年11月18日月曜日

金融機関が暴力団との関係を断ち切れない本当の理由

参院財政金融委員会は14日、みずほ銀行の問題融資発覚を受けて21日の審議に佐藤康博頭取ら関係者4人を参考人招致することを決めた。みずほ銀行の経営責任や金融庁の検査体制のあり方などが焦点となる。
 ただ、同行の問題融資をめぐっては先に衆院財務金融委員会で集中審議が行われている。参考人招致された藤田頭取は「社会を混乱に導いた要因であり、深く反省している。反社会的勢力の徹底的な排除に不退転の決意で取り組みたい。具体的成果を早急に挙げていくことが私の使命だ」と述べたものの、金融庁の検査に対して「隠蔽の意図などは認められない」として、意図的な検査逃れを否定した。
 また、金融庁が昨年12月から行った前回検査で問題融資の資料提出を受けていたにもかかわらず事態を把握できなかったことについて麻生太郎金融相は「批判は真摯に受け止めないといけない」としながらも、一方で「みずほ以外に反社会的制直との取引を放置した事例は確認されていない。(みずほ銀行の)組織としての統治能力が十分に機能していなかった」と述べ、問題融資はあくまでもみずほ銀行の経営体質との立場を強調した。
参院でもおそらくこれ以上の答弁は期待できないだろう。
 もっとも責任の所在がどこにあるにせよ金融機関と反社会的勢力との関係を断ち切るのは容易なことではない。
 金融界は警察の持つ暴力団情報を頼りにしているようだが、融資先の一つ一つの認定作業を警察情報に委ねるのは危険である。警察庁は暴対法施行以来、現場の捜査員が暴力団員と会食等、日常的に接触することを禁じたからだ。これでは動向目まぐるしい暴力団構成員や企業舎弟を把握できるわけがない。万が一にも間違った情報で融資がストップするようなことになれば、それこそ情報提供した警察の責任が問われよう。
 さらにいえば、縦割り行政の弊害もある。今回、問題融資発覚の発端となったみずほ系列のオリエントコーポレ-ション(オリコ)など銀行や生保などの提携ローンを扱っている信販会社の監督官庁は経済産業省だ。反社会的勢力を排除するには水際作戦が有効だが、同省に融資をチェックする体制はない。
 13日に行われた自民党の金融調査会と財務金融部会の合同会議で経産省はみずほ系列のオリコや提携ローンを取り扱っている信販会社18社に対して割賦販売法に基づく報告徴求命令を出していることを明らかにした上、問題融資の実態解明に向けた同省の取り組みをアピールしたが、所詮は事後処理でしかない。
また、来年4月をめどに信販会社が加盟する日本クレジット協会が反社会的勢力の情報を集めた新しいデータベースを稼働させる予定だが、これとて基になる情報は警察に頼らざるを得ないわけだ。
そうであれば、まずは銀行と信販会社のチャック体制を統合し、併せて警察の情報収集力向上をはかることが先決だ。不祥事が発覚した時だけ論っても根本的な解決にはなるまい。

景気失速で見えてきたアベノミクスの限界と政権の命運

 内閣府は14日、7~9月期の国内操船産(GDP)速報値を発表した。それによれば、物価変動の影響を差し引いた実質GDP(季節調整値)は4~6月期比0・5パーセント増、年率換算では1・9パーセント増となった。4四半期連続のプラス成長である。
 これについて同日、菅義偉官房長官は記者会見で「消費を含め内需が引き続き堅調だ。景気回復の動きが確かになると期待している」と述べた。また、甘利明経済財政担当相も「内需の動きに底堅さが見られ、景気が引き続き上向いていると考えている」と評価した。
 しかしながら、安倍晋三首相が消費税率の引き上げる際に判断材料とした4~6月期が年率換算で3・8パーセントだった。加えて個人消費の伸びはわずかに0・1パーセントに止まり、輸出にいたっては0・6パーセント減になったことを勘案すれば、景気の先行きはけっして楽観を許さない。金融緩和による円安効果と公共事業頼みの経済成長戦略の限界が見て取れよう。
今国会、確か安倍首相は「経済成長実現国会」と名付けたはずだが、実のところは国民生活とは無縁の「特定秘密保護法案」の行方が気になる様子。菅官房長官は記者会見で「アベノミクスを推進し、早期のデフレ脱却、経済再生につなげたい」とも述べていたが、怪しいものだ。

2013年11月16日土曜日

秘密保護法案で大荒れの誰が名付けた「成長戦略実現国会」

 臨時国会は、早くも後半戦に突入した。当初、安倍晋三首相は「成長戦略実現国会」と意気込み、本欄は「放射能ダダ漏れ対策国会」と名付けたが、そのどちらでもない展開を見せている。焦点となっているのは周知の通り、特定秘密保護法案の扱いだ。
 何がなんでも今国会での成立を目指す自民、公明両党は13日、日本維新の会との修正協議に入った。みんなの党は独自に修正案提出を検討中だ。
 維新は秘密指定の期間限定、秘密の範囲の絞り込み、秘密指定の妥当性をチェックするための第三者機関の設置なども求めている。
 これに対して菅義偉官房長官は同日の記者会見で「恣意的な秘密指定を防ぐ重層的な仕組みを既に設けている」と否定的な見解を示しており、政府与党は週明け21日までに衆院を通過させたいとしている。自公両党での強行採決を想定してのことだろう。
 だが、数に驕った強引な国会運営は、野党はもちろんのこと国民世論がこれを許さない。「成長戦略実現国会」と名付けた安倍首相の信頼は地に墜ち、内閣支持率は急落するにちがいない。
 それにもかかわらず、民主党は対案をまとめて修正協議に応じるという。秘密保護法案の必要性は認めているわけだ。しかし、これでは自民、公明両党の暴走を食い止める野党第一党の役割をはたしたことにはならない。与党ボケにもほどがある。 
 NSC法案についても同様、民主党は最初から腰が退けていた。安倍首相は初代局長に元外務次官の谷内正太郎内閣官房参与(69)の起用を決めたそうだが、気の早い話だ。法案審議は13日から参院の国家安全保障特別員会で始まったばかりである。
 本来ならば、同法案の成立を待って谷内氏が局長に正式就任し、その後に特定保護法案を国会に提出、谷内局長に国会答弁を委ねるのが筋である。それを黙って見過ごす手はなかろう。
 そもそもなぜ、この法案が必要なのか。防衛研究所の小谷賢主任研究官は12日のテレビ番組で「米国や英国は情報が漏れる可能性があるなら日本に提供できない。日本は情報が漏れないように整備して初めてお互いに情報交換しよう、と言える」と述べている。
 安倍首相がこれまで繰り返し述べてきた通りだ。そうであれば外交、防衛、治安の機密保護に関わる現行法を強化することではなぜダメなのか。国民の知る権利を今以上に制約してでも政府が護りたい、あるいは欲する情報とはどんな種類のものかを時間を惜しまず一つずつ積み上げていく作業が必要だ。法案の是非を論じるのはそれからでも遅くない。

2013年11月14日木曜日

安倍政権が震災復興速化に向けて踏み込んだアクセルと原発再稼働

自民党の東日本大震災復興加速化本部の大島理森本部長は11日、首相官邸に安倍晋三首相を訪ね、原発事故対応への国費投入を柱とする第3次提言を手渡した。
 提言は被災地住民に対して移住の選択肢を示し、これまで政府が掲げてきた全員帰還の政策目標を改めることや震災復興の足枷となってきた賠償、廃炉や除染費用の一部を国が負担するよう求めている。
 主なところは①早期帰還可能地域の除染を優先して帰還者への追加賠償を行う②双葉郡内など原発事故周辺の長期帰還困難の地域住民に移住の選択肢を示し、住宅確保のための賠償を拡充する③被災地住民への賠償は東電が最後の一人まで責任を負う④除染帰還困難地域に建設を予定している放射能汚染灰の中間貯蔵施設は国が費用を負担、管理する⑤国と東電が汚染水対策、廃炉の責任分担を明確にし、東電の廃炉部門の分社化や独立行政法人化を検討する⑥除染基準は空間線量年間1ミリシーベルトを長期目標としながら、新に国際放射線防護委員会(ICRP)が「許容範囲」としている年間10~20ミリシーベルトを帰還の目安に、個人の実際の線量データに基づき除染などの被ばく低減策を講じる。
大島氏は席上「リーダーシップを発揮して取り組んでほしい」と述べ、安倍首相は「政
府としてしっかり受け止めたい。被災地に具体的な復興の絵図を示しながら、生活再生のための努力をしていく」と応じた。より現実に即した対応を促すもので、本欄が度々指摘してきたところでもある。
経営者や株主責任をあいまいにしたまま国費投入となれば、東電救済との批判を浴びそうだが、放射能の恐怖に脅えて暮らす被災地住民をこのまま東電任せに放っておくことは政府の責任放棄にもなる。
また、帰還の目安となる空間線量のハードルを引き下げたことには人命軽視との批判もあろうが、けっしてそうではない。個々人の被爆量と健康被害の因果関係に着目すれば、帰還を躊躇する被災地住民の放射線量への漠とした不安と恐怖を取り除くことにつながるはずだ。
 折しも同日、子どもや妊婦らが受けた放射線の影響を評価する環境省の専門家会議(座長・長滝重信長崎大名誉教授)が初会合を開いている。
 冒頭、井上信治副大臣は「多くの人が放射線への健康不安を抱えており、医学的見地から検討することが重要だ」と述べた。同会議は今後月一回程度のペースで会合を重ね、来年度中に中間報告をまとめる予定だ。
東日本大震災から2年8ヵ月、遅ればせながら安倍政権は復興加速化のアクセルを踏み込む。むろん、今ある危機を克服できないようでは原発の再稼働はない。

2013年11月9日土曜日

国家戦略特区の虚仮威しと楽天三木谷社長の化けの皮

 政府は5日、安倍晋三首相肝いりの国家戦略特区法案を閣議決定した。
地域活性化担当相を兼務する新藤義孝総務相は同日の記者会見で「アベノミクスの第三の矢である成長戦略の重要な柱だ」と胸を張った。
医療、教育、農業などの分野で規制緩和を進め、新興企業の進出や海外からの投資を呼び込むのが狙いだ。
成立すれば、首相を議長する「国家戦略特区諮問会議」が特区の基本方針や地域指定などを行う。早ければ年明けにも、東京、大阪など大都市圏で3~5カ所程度を指定。特区の具体的内容については、特区担当相と地方首相、民間業者で構成する「国家戦略特区会議」が作成する「特区計画」に盛り込まれる。
 立派な門構えだが、肝心の規制緩和の中身はどうか。高度医療向けの病床数を増やしたり、公立学校運営の民間委託や農業生産法人の役員要件緩和、あるいは2020年の東京オリンピック開催を意識した賃貸住宅の来日外国人宿泊用宿泊施設への転用、マンション容積率や土地利用、道路使用制限の緩和など、どれ一つとってもパッとしない。法案審議の折りには、これでいったいどれほどの経済効果が見込まれるのか聞いてみたいところだ。
 規制緩和についてはもう一つ、原則解禁された医薬品のインターネット販売について田村憲久厚労相は6日、懸案となっていた副作用リスクが高い23品目について当初、店頭販売開始から4年間としていた審査期間を3年間に短縮することを決め、ネット販売を解禁する方針を示した。来週にも薬事法改正案を国会に提出する。
 また、劇薬指定の5品目については引き続きネット販売は禁止されることになった。それでも市販薬の99パーセントがネット販売可能となる。
 ところが、これを不服とした楽天の三木谷浩史会長兼社長は政府の産業競争力会議の民間議員を辞任するようだ。
 ネット通販で仲介マージンを荒稼ぎする経営者の立場からすれば、粉ミルクから墓石までなんでも売りたい、儲けたい気持ちは解らぬでもないが、ついには人の命や健康まで売り買いするおつもりか。不当な価格表示で消費者を欺くような会社諸共、いずれ自然淘汰されるだろう。守銭奴の延命に手を貸す規制緩和、自由化には一理あっても百害ありだ。

2013年11月7日木曜日

山本太郎の”放射脳”と”キワモノ芸”が犯した過ち

芸のない芸人がテレビカメラの前で突然、尻をまくったようなものかー。秋の園遊会で天皇陛下に手紙を手渡した山本太郎参院議員のことだ。
世間が騒いで本人は“してやったり”かもしれないが、国民とっては不愉快極まりない。戸惑う天皇陛下の御立場をおもんばかれば、心が痛む。
山本議員は被災地福島の惨状を天皇陛下に直接訴えることで世間の注目を浴びることに成功した。いわば、園遊会を舞台仕立てに、天皇陛下を小道具として扱ったわけだ。不敬の誹りは免れない。
さらにはこれまで天皇、皇后両陛下が御心を砕き、培われてこられた被災地住民との絆を否定することにもなる。日本国民が自らの不幸や境遇をさておき、被災地復興に心一つになれるのも天皇、皇后両陛下の存在があればこそ。その意味で山本議員の愚かな行為が被災地住民を貶めることにもなった。
 もっとも、それが「天皇の政治利用」にあたるかといえば、そうではない。現行憲法が恐れているのはあくまでも皇室の威光を笠に着た政府、官僚(軍部)の暴走である。
「この方にははっきり言って議員の資格はない。自ら出処進退を明らかにされるべきだ」
 世耕弘成官房副長官は2日のテレビ番組でこう述べた。
 だが、むしろ政府与党が不敬を理由に政治的立場を異にする脱原発議員の辞職を迫ることこそが、まさに「天皇の政治利用」に他ならない。しかも、それがかえって山本議員の行為を正当化することにもなるのだ。
 いずれにせよ、参院議員運営委員会は今週にも山本議員の処分を決める予定だ。加えてもう一人、国会会期中、許可なく北朝鮮渡航を強行したアントニオ猪木参院議員の処分も検討する。
 確かに両議員の言動には国会議員としての自覚、品性が欠けているが、たとえキワモノ、チンピラの類であっても議員の身分は最大限保証されなければならない。議会制民主主義にも欠陥はある。

2013年11月2日土曜日

国会論戦の新たな火種になりそうな安倍首相の焼き肉好きと平和ボケ

「毎日、何時何分に誰が入って何分に出たとか、必ず各紙に出ている。知る権利を超えているのではないか」
28日、特定秘密保護法案を審議する衆院国家安全保障特別委員会で質問に立った小池百合子元防衛相はこう述べ、新聞や通信社が連日報じている「首相動静」について、「何を知り、何を伝えてはいけないのかの精査をしっかりして欲しい」と政府の対応に注文をつけた。
首相の動静そのものが機密保護の対象に成り得るとの認識を示したものだが、菅義偉官房長官にその直後の記者会見で「特定機密の要件にあたらない」とあっさり否定されてしまった。
小池氏はまた、「日本は秘密や機密に対する感覚をほぼ失っている平和ボケの国だ」とも述べている。機密保護法案の必要性を強調したかったようだが、とんだ勇み足といったところか。
少し前には同法案を担当する森雅子少子化担当相が沖縄返還密約の内部告発をスッパ抜いて逮捕された毎日新聞元記者のケースが処罰対象に含まれるとの見解を示していたが、24日の参院予算委員会で「違法行為などを公益のために持ち出す行為で内部告発をしても処罰されない。政権中枢や当局の違法行為、重大な失態は、そもそも特定秘密の対象たりえない」と答弁して事実上、前言撤回に追い込まれている。
ことほど左様、政府与党内でも混乱甚だしい法案である。国民世論に不安と疑念が渦巻くのも当然だ。
小池氏がヤリ玉にあげた「首相動静」に話しを戻せば、安倍首相は10月23日、19時8分から首相行き付けの韓国家庭料理店で焼き肉を突きながらテレビのインタビューを受けている。翌日夕のニュース番組を視聴された方も多かろう。この時の発言を「脱原発の小泉元首相を批判」との見出しでマスコミ各社は一斉に報じている。
しかしながらたった一行だけの首相の動静から得られる情報は、これにとどまらない。
この前日には“和食”が国連教育科学機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることが内定している。
「登録されれば、自然の尊重という日本人の精神に基づく伝統的な和食文化、健康的な食生活の次世代の継承に寄与する」とは菅官房長官のコメントだ。日本の首相であれば、韓国料理ではなく、日本料理に舌鼓を打つところだ。
もっといえば25日に竹島で実施された韓国の軍事演習を事前に容認したとも取れるタイミングであった。
狂信的な右翼思想の持ち主でなくても、看破できない安倍首相の動静である。あるいは日韓関係修復に向けた安倍首相なりのしたたかな計算が働いてのことだとしても、週明け国会論戦の新たな火種になりそうだ。
 

2013年10月31日木曜日

米国家安全保障局(NSA)の盗聴事件で大義を失った機密保護法案の迷走

日本版NSC(国家安全保障会議)を創設するための関連法案が28日、衆院国家安全保障特別委員会で実質審議入りした。29日には「産業競争力強化法案」の趣旨説明と質疑が行われる。共に今国会、政府が最重要法案と位置づけているが、この間、安倍晋三首相はトルコを訪問、30日に帰国した。
原発の売り込みやら経済連携協定(EPA)交渉やら、それなりに国益を担った訪問ではあるが、一方で主役不在の国会審議は緊張感に欠けたものとなった。
 もっとも、日本版NSCについては政府組織を改再編して外交、防衛、治安に関わる危機管理情報を首相官邸で一元管理し、政府の迅速な意志決定に役立てるものだ。
 菅義偉官房長官は趣旨説明で「北朝鮮の核・弾道弾ミサイル開発の脅威、中国の透明性を欠いた軍事力増強といった懸念事項をはじめ、安全保障環境は厳しくなっている。官邸の外交・安全保障の司令塔機能を強化するため、NSCの設置は不可欠だ」と述べていたが、法案の成立を阻む理由はない。
ただし問題があるとすれば、やはり秘密保護法案の扱いだろう。国家の危機管理において機密情報の管理統制は必要不可欠な要素だ。しかしそれも機密指定の範囲と運用次第では国民の知る権利を犯しかねない。日本版NSCの有り様が問われるところだ。
折しも米国の盗聴事件が次々と発覚、米国家安全保障局(NSA)が盗聴対象にしていたのはドイツのメンケル首相ら外国指導者約35人に上っている。安倍首相の携帯電話も盗聴されていた可能性は否定できない。情報は得てして本人のあずかり知らぬところで漏れるものだ。国益を担う政治家や官僚は脇が甘かったでは済まされない。ましてや機密情報の共有化を目指す同盟国から盗聴されていたのでは、法案の趣旨が否定されたことにもなる。機密保護の罰則を強化する前にやることはいくらでもあろう。

2013年10月26日土曜日

池田名誉会長が激怒した公明党の背信

国家機密を漏らした国家公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案を決定、国会に提出した。政府与党は11月後半の衆院通過を目指す。人権の重み誰よりも知る創価学会が支援する公明党が信仰に背を向け、同法案の成立に加担することになろうとは、学会信者の方々にとっても痛恨の極みであろうとお察しする。
 自民党で同法案のプロジェクトチーム座長を務める町村信孝元官房長官は19日のテレビ番組で「まっとうな取材をしている記者は法律の適用外だ。逮捕されることはない」と述べていたが、当たり前の話だ。むしろ、わざわざ「取材の自由」を同法案に盛り込むことこそが、国民の知る権利を脅かすことになるのだ。
 22日には同法案の国会審議を担当する森雅子少子化担当相が、かつて沖縄返還密約をスッパ抜いて逮捕された毎日新聞元記者の西山太吉氏のケースが処罰対象になるとの認識を示している。
森大臣は東北大学法学部卒の弁護士出身だが、いったい何を学んできたのか。
 沖縄返還にともない時の政権が国民の窺い知らないところで裏金3000万ドルを米側に支払っていたことは企業で言えば背任横領、戦後日本の議会制民主主義を否定する大罪である。処罰されるべきは、告発した西山記者ではなく為政者の方だ。
また、別の見方をすれば、現行法で西山記者を裁けるのであれば、わざわざ新法を作ることもないのである。
 同じ日、民主党の桜井充政調会長は記者会見で同法案の扱いについて「知る権利などについて問題点が多く、対決法案の一つになっていくだろう」と述べた。
 また、自民党内でも村上誠一郎元行革担当相が「基本的人権にかかわる法案であり、いろいろなケースを想定して熟慮すべきだ」としてこの日、同法案の国会提出を了承した総務会を途中退席している。与野党の枠を越えた議員一人一人の良識ある行動を期待したい。

2013年10月24日木曜日

賃金上昇の「口約束」と秘密保護法案の「口封じ」の臨時国会

 国会は21日から衆院予算委員会で基本質疑が行われ、本格論戦がスタートした。最大野党の民主党は岡田克也前副総理、前原誠司元外相、長妻昭元厚労相、古川元久元国家戦略担当相ら政策通を質問者に揃えた。地に墜ちた党勢挽回のきっかけにしたいところだが、論点が噛み合うまでにはまだ時間がかかりそうだ。
 前回も本欄で触れたが、何より国民が期待する賃金上昇をどう担保するかは、今国会で安倍晋三首相からしっかり言質をとることだ。
「賃金が上がらなかったら、われわれは失敗だ」
先週19日のテレビ番組で甘利明経済再生担当相はこう述べていた。来年4月からの消費税増税で物価は上がるが賃金が上がらなければ、当然ながら安倍首相の責任が問われよう。
もう一つ、特定秘密保護法案について安倍首相は「各国の情報機関との情報の交換、政策における意見の交換を行っていく上では、秘密を厳守することが大前提だ。NSC(国家安全保障会議)の機能を発揮させるには、どうしても必要ではないかと考えている」と答弁、来年1月の発足を目指すNSCとは不可分との認識を示した。
それならば、まずはNSCがはたす役割について、それが日本の安全保障にとって必要不可欠な存在なのかどうかも含め、今国会でしっかり議論してもらいたい。NSCにどんな武器を持たせるかは、その後の話しだ。
 もっとも、秘密保護法案の扱いで動向が注目された公明党が早々白旗を掲げ、早期の成立で足並みを揃えてしまった以上、もはや法案成立を阻む手立てはない。
「知る権利」などの文言を法案に盛り込むよう自民党との調整にあたった同党の大口善徳国対委員長代理は19日のテレビ番組で「丸のみしてもらった」と自画自賛していたが、
わざわざ国民の当然の権利を書き込まなければならないところにこの法案の怖さがある。
 政権にしがみついていたいがための安易な妥協が、いずれ国民から「表現の自由」や「信仰の自由」ですら奪いかねない。何しろ相手は憲法解釈を平気でねじ曲げてしまう自民党である。

2013年10月19日土曜日

臨時国会の論戦で注目は賃上げの確約と安倍首相の進退問題

臨時国会、16日に行われた安倍晋三首相の所信表明演説に対する海江田万里民主党代表の代表質問からいくつか注目点をピックアップしてみた。
 まずは福島第一原発の汚染水問題から、安倍首相は「近海の放射性物質の影響は、発電所の港湾内の0・3平方キロメートル内にブロックされている。全体として状況はコントロールされている」と答弁。9月の国際オリンピック総会で「放射能汚染水は発電所の港湾内の0・3平方キロメートル内に完全にブロックされている」としていたが、その後も漏水トラブルは収まらずに認識を改めたのか。
「食品や水への影響は基準値を大幅に下回っている。これが事実だ」
先に安倍首相は所信表明演説でこう述べていたが、ブロックされているのが「汚染水」ではなく「近海への放射性物質の影響」であり、しかも「完全」にはコントロールされていないのであれば、これまでの発言をどう取り繕ってもウソはウソ。潔く謝罪すべきだ。その上で今国会、与野党が論戦を通じ、除染、汚染水処理で知恵を出し合い、オールジャパンの協力体制を築けるかどうか。安倍首相の指導力が問われるところだ。
 もう一つ、取り上げるならばやはり消費税引き上げと5兆円経済対策であろうか。
 海江田代表は「安倍内閣の改革は社会保障を置き去りにし、消費増税と法人税減税の一体改革に変質しつつある」として、安倍政権が導入を検討している解雇特区や復興特別法人税の前倒し廃止を例にあげ「雇用を不安定化させるばかりでは、企業収益が伸びても賃金は下降し、景気の好循環は生まれない。働く者を使い捨てにする企業を大量生産する解雇特区など断じて認められない」と批判、国民の所得増加に向けた道筋を明確に示すよう求めている。
まさに各種の世論調査が示すとおり、国民の生活不安、不満を代弁したものだ。
 これに対し安倍首相は「賃金の動向を調査し、効果を検証し結果を公表する」とは言うが、そうならなかった時はどうするのか。野党からすれば、安倍首相の進退も含め、是非とも具体的な言質をとりたいところである。

2013年10月17日木曜日

なぜ急ぐ秘密保護法案の成否で問われる公明党の存在意義

15日召集の臨時国会は安倍晋三首相の所信表明演説を受け、翌日から各党の代表質問が始まった。実のある論戦を期待したいが、会期は12月6日まで53日間しかないというのに、政府与党は30本もの法案成立を目論む。乱暴が過ぎよう。
 とりわけ慎重な審議を求めたいのは、国家機密の情報漏洩に厳罰を科す特定秘密保護法案と国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案である。
日本版NSC設置法案については十分な審議日程を確保するため「国家安全保障に関する特別委員会」を設置するそうだ。
一方、秘密保護法案については公明党が、国民の「知る権利」や「表現の自由」、「取材の自由」を担保することや「特定機密」の指定基準を作成する有識者会議の設置を求めている。これに対して自民党は「知る権利への十分な配慮」との修正案を示したものの、「取材の自由」「表現の自由」については憲法に規定されているとして難色を示しており、法案の最終とりまとめに向けて政府与党は最終調整を急ぐ。
両法案の扱いについて自民党の石破茂幹事長は13日のテレビ番組で「一緒にやるべきだ。切り離して(来年の)通常国会に送る必然性があるとは思わない」と述べている。しかしだ。
そもそも自民党は基本的人権を制約し、国家管理の強化のための憲法改正を目指している。ここで公明党が妥協して法案成立に協力すれば、それこそ安倍政権のなし崩し的な解釈改憲を許してしまうことにもなりかねない。さらに言えば、集団的自衛権の容認に向けた解釈改憲と併せ、戦後民主主義の見直しを迫る重要法案である。
安倍首相は集団的自衛権の憲法解釈の変更について、慎重姿勢をみせる公明党に配慮して来年4月、14年度予算案の成立以降に先送りする考えを示している。
秘密保護法案についても同様、成立を急ぐ「必然性」があると思えない。公明党の存在意義が問われる臨時国会である。

2013年10月15日火曜日

臨時国会で虚実見極めたい安倍政権の5兆円経済政策と放射能汚染水対策

 臨時国会が15日、召集された。安倍晋三首相は成長戦略実現国会と名付けた。消費税率引き上げに伴う景気の腰折れ対策となる5兆円の補正予算と産業競争力強化法案、国家戦略特区関連法案の成立を目指すが、それで事足りる国会ではない。
 政府与党が成立を目指す法案を並べれば、特定秘密保護法案や国家安全保障会議(日本版NSC)創設関連法案の2法案は、安倍自民党の憲法改悪、国権の強化、基本的人権の制約につながりかねない危険な法案だ。経済対策の甘い言葉に惑わされて唯々諾々と法案成立を許せば、後になって国民は「こんなはずじゃなかった」と後悔することになろう。
 懸案はまだある。安倍首相が「完全にコントロール下にある」とウソをついた放射能汚染水や焼却灰の処理については、政府の姿勢を質す必要がある。
 7日に行われた参院経済産業委員会の放射能漏れ問題に関する閉会中審査に参考人として呼ばれた東電の広瀬直己社長は、汚染水対策費として今後10年間に必要な1兆円の資金の調達する際、「電機料金が上がることがないようコストダウンに努めたい」と答弁していた。だが、このまま東電任せにしていては、原発事故は収束に向かうどころか、かえって事態は悪化させることになりかねない。
 このため自民党の原発事故被害者支援・事故収束委員会(額賀福志郎委員長)が国費投入を可能にするため現行、除染費用全額を東電に負担させるとした「除染特別措置法」の改正や廃炉、汚染水対策、賠償などへの国の関与を強化するため「福島復興加速化特措法」の成立を求めている。
 電力エネルギー政策について政府は発送電分離に向けた電力システム改革推進するため臨時国会に電気事業法改正案を提出する予定だが、むしろ最優先に取り組むべきは原発の再稼働問題も併せた震災復興、放射能汚染対策の練り直しではなかろうか。本欄が名付けるとすれば「放射能ダダ漏れ対策国会」としたいところだ。
何しろ臨時国会の会期は53日間しかない。安倍首相がこだわりを見せる日本版NSC法案や秘密保護法案については緊急性が乏しく、年明け通常国会に先送りするがよろしかろう。

2013年10月10日木曜日

桜田文科副大臣の放射能汚染ゴミ発言と復興税の使い途を考える

「原発事故で人が住めなくなった福島に置けばいいのではないか」
 とは、放射能汚染ゴミの焼却灰の処理をめぐる桜田義孝文科副大臣の5日の発言である。
 これを伝え聞いた菅義偉官房長官が「誤解を与えるような発言は慎むべきだ」と電話で注意した際、本人は「灰を一時保管している地元は困っている。そういう考えがあるのではという思いから発言した。私個人がそういった主張をしているわけではない」と釈明したそうだ。
確かに内閣の一員として軽率な桜田発言ではあるが、福島第一原発の周辺地域は実際に人が住める環境ではない。行き場のない焼却灰の最終処分場にするのも一つの考え方だ。政府行政がやるべきこと、できることとできないことの本音を語り合う時期が来ているのではないかとも思う。
本欄で度々取り上げてきた復興特別税についても同様にその存廃も含めて突っ込みどころは多々ある。
復興税を負担する側からすれば、復興税を廃止して消費税の一部を復興資金に回すことや、復興税率の引き下げで税負担の公平化をはかることは選択肢となろう。
ただ、産経新聞が行った直近の世論調査では復興特別法人税の一年前倒し廃止について53・9パーセントが「支持しない」としている。「支持しない」のが被災地住民を慮ってのことなのか、企業優遇への不満の表れなのかははっきりしないが、読売新聞の調査では66パーセントが廃止に反対する一方、福島第一原発の廃炉や放射能の除染費用を国が財政支援することに対しては78パーセントが理解を示している。
おそらくは本来、東電が負うべき原発の事故対応と震災復興を併せて政府が一体的に取り組むこと求めてのことだろう。
福島第一原発について自民党は事故処理に巨額の資金が必要なため東電から切り離して別会社にすることを検討中だ。
そうであれば、復興税の一部を廃炉や汚染水漏れ対策に使ってはどうか。少なくとも法人税だけを廃止するより国民の理解を得られるはずだ。

2013年10月5日土曜日

賃金上がらず国民に重くのしかかる消費増税と震災復興税

「国の信認を維持し、社会保障制度を次世代にしっかり引き渡すことが私の内閣に与えられた責任だ。大胆な経済対策を実行することで経済再生と財政健全化は両立しうる」
消費税率の引き上げを決めた安倍晋三首相は1日の記者会見でこう述べた上で消費税収の使途を社会保障費に限定すると明言した。
是非もないが、一方で安倍首相は12月上旬をメドに5兆円規模の経済対策をまとめ、今年度の補正予算と来年度予算に盛り込むとも。それで景気が良くなり税収増につながれば文句はないが、失敗すれば、垂れ流した5兆円の財源は国債の発行か、消費税で穴埋めするしかない。そうなれば国際公約とも言える15年度の基礎的財政収支の赤字半減は困難となろう。とは考えられる最悪のシナリオだ。
そうならないことを祈りたいが、こればかりはやってみなければ分からない。後は野となれ山となれ、の消費税率の引き上げである。
また、安倍首相が次世代に引き渡すべき社会保障制度の全体像は漠としたまま、医療介護保険の負担増と年金給付額の削減だけが先行している現状では、老後の不安は増すばかりだ。さらに被災地復興の国民負担が重くのし掛かる。
復興法人税の廃止については被災地住民の反発を恐れた安倍首相が結論を12月に先送りしてしまったが、賃金給与が上がらなければ今度は負担する国民から不満が吹き出し、怒りの矛先が被災地住民に向かうことにもなりかねない。法人税の廃止ではなく、所得、住民税を含めた復興税税率の見直し、あるいは復興予算を一般財源化して消費税収の一部を充てる手もある。いずれにせよ、消費税増税後の動向を見極めてから結論を出しても遅くはない。
経済産業省が2日に「消費税転嫁対策室」を設置したそうだ。大企業が立場の弱い仕入れ先の中小企業に消費増税の負担を押し付ける「買い叩き」などの不公正取引を監視するためだが、安倍政権が集めた税金の使途について国民はこれまで以上に厳しく監視する必要がありそうだ。

2013年10月3日木曜日

「家計」を冷遇するアベノ増税と5兆円経済対策の筋悪

来年4月からの消費増税に伴う五兆円の経済対策で安倍晋三首相は東日本大震災の「復興特別法人税」を今年度限りで打ち切ることを決めた。
 政府は「企業がデフレマインドを脱却し、継続的な賃上げの第一歩を踏み出すためには、きっかけが重要」とその意義を強調する。景気の腰折れを懸念してのことらしい。
 それならば、家計が負担している復興特別所得、住民税も同時に廃止した方が、より効果的だと思うのだが、こちらは「復興事業の実施を困難にする」との理由で据え置かれた。だったらなぜ法人税だけを廃止にするのか、と言いたくなる。「企業優遇」との批判が聞こえてくるが、むしろ、「家計冷遇」と呼んだ方が分かりやすい。「筋悪」の政策である。
「どうしてもやりたいなら、一時、建設国債を増発し、復興特別会計に繰り入れてあげれば(被災地の)地元は安心する」
 税制に詳しい伊吹文明衆院議長は28日のテレビ番組でこう述べていた。
しかしながら、そもそも復興税は民主党政権時代、復興事業費を確保するため導入されたものだが、振り返れば被災地の復興は遅々として進まず、12年度だけでも3兆4270億円が未消化に終わっている。復興予算の流用も後を絶たない。それでいて復興法人税だけ廃止して、国債発行で国民にさらなる借金を強いるのは筋が違う。
将来にわたる被災地復興の青写真を焼き直し、必要な予算を積み上げた上で復興税の存廃も含めた税負担のあり方を差し示してもらわなければ、負担する国民の理解は得られまい。
「筋悪」の政策はまだある。安倍政権は成長戦略の柱の一つ、「国家戦略特区」で従業員の解雇要件や労働時間の規制を緩和する、いわゆる「解雇特区」の導入を検討している。
 これは企業が従業員との間で個別に解雇条件や給与、労働時間等の待遇を細かく取り決めて雇用契約を交わす欧米型の雇用形態だ。秋の臨時国会で関連法案が成立する見込みだが、労働者派遣法がそうであるように運用次第では「労働者冷遇」との批判を浴びよう。  
暮らしの先行きに不安ばかりが募る。秋の臨時国会は今月15日召集の予定である。

2013年9月30日月曜日

安倍首相の価値観外交と自衛隊の海外派兵で問われる日本の国際貢献のあり方

国連総会出席のためニューヨークに滞在中の安倍晋三首相は25日(日本時間)、フランスのオランド大統領との会談でシリアの化学兵器全廃に向けて「化学兵器禁止機関(OPCW)の(査察や検証の手順に関する)決定を補強する強力な国連安全保障理事会決議が採択されるべきだ」との考えを示した。
国連安保理では、米英仏の3カ国がシリアに対して国連憲章第7章に基づく軍事制裁を含む決議案の採択を目指しているが、安倍首相の発言はこれに同調する姿勢を鮮明にしたもの。もっと言えば、けしかけているようにも見える。
万が一にも軍事介入となれば安倍首相は国連決議を盾に喜々として自衛隊を派遣するはずだ。
そうならなくても、安倍首相が意欲を見せる集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈が変更されれば、国連決議なしでも自衛隊の海外派兵が可能となる。
首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇、座長・柳井俊二元駐米大使)が年末までに提言をまとめる予定だ。前後して秋の臨時国会では国家安全保障会議(日本版NSC)、特定秘密保護法案の成立が見込まれている。
言うまでもなく、すべては交戦権を放棄した現行憲法への挑戦であり、自衛隊の国防軍化に道を拓く謀みである。
良く言えば、日本の国際貢献のあり方を問い直す試みでもあろう。議論するのは結構なことだが、国民の理解を得る努力なしに安倍首相一人、先走ってもらっては困るのだ。
「国民が懸念するような方向に(政府が)急進的に、一方的に奨めることがあれば、我々は堂々と言うべきことは言う」
 公明党の山口那津男代表は24日の講演でこう述べ、集団的自衛権の行使に前のめりの首相を牽制した。
ぜひ、そうあって欲しいものだが、同様の声が自民党内から上がってくればなお、国民は安心だろう。
 

2013年9月26日木曜日

消費増税と抱き合わせの5兆円経済対策でも救えない非正規労働者

 安倍晋三首相が来年4月の消費税率8パーセント引き上げを決断した。週明け10月1日にも正式表明する。きっと東京五輪の招致決定が安倍首相の背中を一押ししたに違いない。今後の注目点は政府が消費増税と抱き合わせで打ち出す5兆円規模の経済対策と国民生活への影響である。
 経済政策の目玉は設備投資減税3000億円と復興法人税を1年前倒しで廃止することによる8800億円の税負担軽減など。計約1兆4千億円超の企業減税となる見込みだ。
 企業の設備投資を促す一方、負担軽減で浮いた資金を雇用や給与増につなげて懸念される消費増税後の景気の腰折れを回避したいとしている。
設備投資減税はともかく、国民からすればやはり気になるのは消費税率3パーセント分の負担増と給与・賃金の上昇幅との兼ね合いだろう。
「経済がマイナスからプラスに反転する動きが出ている。これを企業収益、賃金、雇用の拡大に伴う経済の好循環につなげられるかどうか。ここが勝負どころだ」
 安倍晋三首相は20日に行われた経済、労働界の代表と経済政策を協議する「政労使協議」の場でこう述べている。おっしゃるとおり、いくら企業収益が改善しても雇用の拡大や賃金の上昇につながらなくては、国民の暮らしを圧迫し、消費は冷え込む。
 このため政府は現行、賃上げ率「5パーセント以上」の企業を対象にしていた賃金増加分の10パーセント減税措置の基準を「3パーセント以上」に緩和するなど賃上げ環境を整備し、さらに企業に対して減税分の使途の公表を促すそうだ。
 また、低所得者対策として「住民税非課税世帯」の約2400万人を対象に一人一万円を支給。このうち年金受給者や低所得者のひとり親に支給される「児童扶養手当」を受け取っている人には5千円の上乗せを検討、総額で3000億円程度の支出増となる大盤振る舞いだ。注文を付けるなら、非正規労働者の待遇改善で具体策が欲しいところか。
何やら社会主義国家の統制経済と見紛うばかりの安倍政権だが、裏を返せば、それほどまでに日本経済が病んでいるとも言えようか。

2013年9月23日月曜日

安倍首相は消費増税、汚染水問題で野党が求める早期の臨時国会召集に応じよ

自民党は17日の総務会で今月末に任期切れとなる石破茂幹事長ら党幹部9人の再任を決めた。併せて安倍晋三首相は内閣改造を時期通常国会後に先送りする意向を示しているが、一方で党内各派閥に配慮して今週中にも副大臣、政務官人事を行う予定だ。
「現時点で骨格を変える必要はない。腰を据えた仕事が国民の期待に応えることだ」
 菅義偉官房長官は同日の記者会見で安倍首相の考えをこう代弁した。
 ポスト安倍を窺う石破幹事長も総務会後の記者会見で「やらねばないない課題は極めて多く、大変重いものだ。党一丸となって総理総裁を支え、実現する」と述べている。
是非もないが、問題なのはやるべき安倍政権の課題、仕事の優先順位とその中身であろう。
たとえば、安倍首相は機密情報を漏洩した公務員らへの罰則強化をはかる特定秘密保全法案を国家安全保障会議(日本版NSC)創設法案と併せ、10月15日召集予定の臨時国会で成立させたいとしている。
しかしながら、両法案共に臨時国会で取り上げるほどに国民にとって緊急度、優先度が高い案件とは思えない。さらに言えば、憲法が保障する国民の基本的人権に関わる法案である。審議日程を充分に確保できる時期通常国会でそれこそじっくり腰を据えた論議が求められよう。あるいは安倍首相がそれほど重要視する法案であれば、早期に臨時国会を召集するべきところである。
民主、維新、みんな、共産、生活、社民の6党は18日、自民、公明両党に対して福島第一原発の汚染水漏れや消費税率の引き上げをテーマにした衆院予算員会の集中審議と原発汚染水問題に関する衆院経済産業委員会の閉会中審査の開催と併せ、臨時国会召集の前倒しを求めた。
はたしてこれに「汚染水は完全にブロックされている」とウソをついた安倍首相はどう応じるか。目下、国民にとって最も関心度の高い政治課題であることは言うまでもない。

2013年9月20日金曜日

高支持率に浮かれる安倍首相には浮かばない「シルバーオリンピック開催」の発想と超高齢化社会の都市のあるべき姿


 2020年東京五輪の開催決定で内閣支持率は急上昇である。
 読売新聞が先週末に行った調査では前月比5ポイント増の67パーセント、4月調査以来5ヶ月ぶりに上昇に転じた。また、同調査で五輪開催そのものについても国民の8割以上が「国民に夢や目標を与える」「経済の活性化につながる」として前向きに評価している。  
 五輪開催をアベノミクスの第4の矢と位置づける安倍首相は13日に行われた経済財政諮問会議で「15年続いてきたデフレ、縮み経済を払拭する起爆剤だ。地域の頑張り、創意工夫を引き出せるよう議論して欲しい」と述べて五輪開催の前景気を煽った。席上、五輪担当相を兼務することになった下村博文文科相が今後の取り組み方針を示した「2020ニッポン再生 夢ビジョンJAPAN」発表。それによると、東京を「国家戦略特区」に指定して医療や教育、都市開発に関する規制緩和を実施、競技場や宿泊施設などの整備には民間資金や経営ノウハウを生かすPFI(民間資金活用による社会資本整備)の導入を検討課題にあげ、さらには五輪開催期間中の安価で安定的な電力供給の確保に向け再生可能エネルギーの増税や原発の再稼働にも言及している。
 いわば、安倍首相は七年後の東京五輪を先食いする形で内閣支持率を押し上げたわけだが、少々悪のりが過ぎよう。
 総務省が発表した人口推計では15日時点、65歳以上の高齢者人口は3186万人となり、総人口に占める割合が初めて25パーセントに達したそうだ。また近年、高齢者の孤独死は毎年、5000人以上に上っている。
 つまり七年後の東京五輪は世界で初めての超高齢化都市での開催となるのだが、経済成長一辺倒の安倍首相や東京都の猪瀬直樹都知事には、この最も基本的で重要な視点が欠けてやいまいか。高齢化社会のあるべき都市の姿を示してこその東京五輪でありスポーツの祭典である。パラリンピックと併せ、シルバーオリンピックの初開催国になるくらいの大胆な発想の転換を求めたい。