2013年5月30日木曜日

日本維新・橋下徹大阪市長の「恥舌」釈明会見と失われた日本人の美徳

従軍慰安婦をめぐる一連の発言で窮地に立たされている日本維新の会の橋下徹共同代表が27日、日本外国特派員協会で釈明会見を開いた。
 この中で橋下氏は駐沖縄米軍兵士に対して風俗業活用を勧めた発言について「米軍のみならず米国民を侮辱することにもつながる不適切な表現だった」と謝罪した。
と、ここまでは良かったが一方で戦時下、日本の従軍慰安婦制度を「当時は必要だった」とした発言は撤回せず、「日本だけに特有の問題があったかのように日本だけを批判し、日本以外の国々の兵士による女性の尊厳の蹂躙について口を閉ざすのはフェアな態度ではない」と開き直った。
またこの前日、出演したテレビ番組では「(自民党は)侵略と植民地政策を認めた周辺国に損害と苦痛を与えたことをおわびすると言っているのに、国内向けには(慰安婦の)強制連行はない、自虐史観はだめだと。この二枚舌がダメだ」とその矛先を安倍自民党にも向けている。
その昔、押し入った家人に「戸締まりが悪い」と言い放った「説教強盗」がいた。あるいは北朝鮮労働党や中国共産党の自己正当化の屁理屈にも通じるような。他国の非を詰り責めても自国の非を正当化できるわけではあるまいし。いつまでたってもタレント弁護士の域である。もはや、公党の代表に留まることは赦されまい。大阪市長の職に専念したらどうか。
 歴史認識については安倍晋三首相が先の国会答弁で過去の植民地支配と侵略を認めた「村山談話」を引き継ぐとして、27日の講演で「わが国はかつて、とりわけアジア諸国の人々に対し多大な損害と苦痛を与えた。そのことに対する痛切な反省が戦後日本の原点だった」と述べているとおりだ。従軍慰安婦についても河野談話の継承を24日に閣議決定している。
 政治家個人としての思いは様々だろうが、日本国としての公式の立場はこれ以上でも以下でもない。謙虚は日本人の美徳である。

2013年5月27日月曜日

終盤国会で問われる200兆円公共事業の国土強靱化基本法案で「自衛隊艦艇が接岸可能な港湾整備」の是非

自民、公明両党は20日、「防災・減災等に資する国土強靱化基本法案」を衆院に共同提出した。
基本理念には東日本大震災から得られた教訓を踏まえ「必要な事前防災・減災、迅速な復旧復興に資する施策を実施するとともに、大規模災害などから国民の生命、身体、財産の保護ならびに国民生活と国民経済に及ぼす影響の最小化に関する分野について現状の評価を行う」とある。今後、日本の国土開発の基本方向を定めたもの。いわば、公共事業の憲法である。
「いま、大災害が来ないとも限らない。国民の生命・財産を守るのが法案の主旨だ。党派を超えて1日も早く成立させたい」
法案提出を主導した自民党の二階敏博総務会長はこの日、記者団を前にこう述べた。とりあえず、その志は良とするが、問題はその「強靱化」策の中身だ。
 政府与党はすでに「自衛隊艦艇が接岸可能な港湾の整備」、「緊急輸送道路の無電柱化の推進」、「警察災害派遣隊の拡充」、「緊急消防援助隊の対応力強化」、「災害派遣医療チームの要請」、「医療施設の耐震化」、「金融システムのバックアップサイトの確保」など、具体策の検討に入っている。
 どうだろう。東日本大震災では道路は寸断され、港湾施設は巨大防潮堤共々津波に呑み込まれて被災地は孤立、救出、救援活動の障害になったことは周知のとおりだ。
その教訓を生かすならば「港湾整備」や「無電柱化」の公共事業に巨費を投じるより、被災地対応の揚陸艦やオスプレーなどの大型ヘリを配備した方が、いざというときに役立ちそうなものだ。
それでも公共事業をどうしてもやりたいというのであれば、全国津々浦々、地震や津波だけでなく原発事故にも耐えるシェルターを整備してもらった方が有り難いし、法案の基本理念にふさわしいのではなかろうか。

2013年5月23日木曜日

アベノミクス第2弾!農業所得倍増、インフラ輸出30兆円の大風呂敷は民主党の二の舞か

政府が20日に発表した5月の月例経済報告によれば、「景気は穏やかに持ち直している」そうだ。この日の株価は終値で1万5360円81銭。年初来の最高値だった。
「安倍政権の金融政策、機動的な財政出動が次第に実施過程に入ってきている。そうした中で実質GDPは年率3・5パーセントとV字回復している」
甘利明経済再生・経済財政担当相はこう述べ、アベノミクス効果をアピールした。
アベノミクスについては先週18日、麻生太郎副総理兼財務相が金融緩和、財政出動、成長の“3本の矢”のうち「2番目までは私の仕事でそこまではやった。今度は民間が仕事をする番だ」と述べていたが、はたしてこれが民間投資の拡大につながるかどうか。すべてはアベノミクス“最後の矢”となる成長戦略の出来次第だ。
安倍晋三首相はすでに4月、「女性の活力」を経済成長の原動力と位置づけた成長戦略の第1弾を発表、先週17日には農業改革やインフラ輸出などを柱とする産業競争力強化に関する成長戦略第2弾をブチ上げた。
なんと、今後10年間で農業・農村全体の所得を倍増させるとか。具体的には国別、品目別の輸出戦略に基づき32年までに農林水産品の輸出額を1兆円に倍増させることを目指し、増加する耕作放置地を「農地集積バンク」に集約、事業資金の融資制度を充実させて農業経営の競争力強化をはかりたいとしている。今週にもその司令塔となる「農林水産業・農村地域の活力創造本部」を立ち上げ、自ら陣頭指揮を執る。
また、インフラ輸出についても自らが世界各国をトップセールスに動き、現在約10兆円のインフラシステム受注を平成32年には30兆円を目指す。この他、民間投資拡大のため今後3年間を「集中投資促進期間」と位置づけ、先端技術開発企業を個別に後押しするための規制緩和や日本の放送コンテンツの輸出額を5年後、3倍増に引き上げるための官民ファンド「クールジャパン推進機構」の創設など盛り沢山だ。
 これを民主党の細野豪志幹事長は「かなりの部分が(民主党政権の政策の)約直しというか、組み替えたようなものが多い」と皮肉っていた。
確かにそうかもしれない。大風呂敷を広げるだけに終わった民主党の二の舞にならないよう願うばかりだ。

2013年5月19日日曜日

安倍・橋下コンビの歴史認識を憂う「エセ左翼は仲間を売り、エセ右翼は国を売る」

「アジアの国々に多大な損害と苦痛をあたえたことは安倍内閣としても歴代内閣の立場で引き継ぐ考えだ」
安倍晋三首相は15日の参院予算委員会でこう述べ、日本が過去、アジア諸国に対して犯した侵略と植民地支配を謝罪した1995年のいわゆる村山談話を受け継ぐ考えを示した。
 村山談話について安倍首相はこれまで自虐史観に基づくものとしてこれを否定してきた。4月22日の参院予算委員会では「そのまま継承しているわけではない」と答弁していた
が、国内外の猛反発にあい、ついに白旗をあげてしまったわけだ。当然の帰結だが、この間、安倍首相の言動が戦後日本と日本人の国際的信用をどれほど貶めたことか。猛省を促したい。
 もっとも、安倍首相は15日の答弁で「私は今まで日本が侵略しなかった、と言ったことは一度もない。歴史認識は歴史家に任せるべき問題だ」と開き直っていた。
 エセ左翼は仲間を売り、エセ右翼は国を売る。後の世、安倍首相は間違いなく後者に分類されよう。
 そしてやはり、友は類を呼んだ。安倍首相と手に手を取って憲法9条改正に突っ走る日本維新の会の橋下徹共同代表の従軍慰安婦をめぐる発言である。戦時中、朝鮮半島の慰安所、いわゆる売春宿の運営に旧日本軍が関与していたことを認め謝罪した1993年の河野談話で政治決着したはず。ところが何をトチ狂ったのか橋下氏はツイッター上で「人間に、特に男に、性的な欲求を解消する策が必要なことは厳然たる事実。軍の規律を維持するために当時は必要だった」「国をあげて韓国女性を拉致して強制的に売春させた事実の証拠がないことも厳然たる事実」と突然の雄叫び。大型連休中にノコノコ沖縄に出向き、米海兵隊司令官に「風俗店」の活用を勧めたというのだから開いた口が塞がらない。
「私、安倍内閣、あるいは自民党の立場はまったく違う」とは安倍首相の反応だが、2007年、第一次安倍内閣は「従軍慰安婦の強制連行を直接示す資料は見当たらない」と閣議決定したではないか。何を今さらの卑しき男2人である。

2013年5月16日木曜日

米議会に「危険な国粋主義者」と呼ばれて砕けた安倍晋三首相の戦後レジュームからの脱却

 読売新聞社が行った直近の世論調査で安倍内閣の支持率は72%(前月比2ポイント減)、不支持は20%(同3ポイント増)で依然として高水準を維持している。大雑把に言えば、政権発足以来の経済政策「アベノミクス」を評価してのことだろう。今夏の参院選の投票先でも自民党が47%で他を圧倒した。ねじれ国会の解消は確実な情勢である。
 一方で安倍自民党が意欲を見せる憲法96条の改正について51パーセントが反対している。参院で3分の2の改憲勢力を得るにはなお不安が残る。安倍自民党にとっては悩ましいところだ。
 だからか、安倍晋三首相は10日のテレビ番組で「まずは長引くデフレ、経済の低迷から脱却する。(選挙までの)約7ヶ月間の成果について問いたい」と述べた。
96条の先行改正に慎重姿勢をみせる連立相手の公明党に対しても「しっかり信頼関係を保つためにも、丁寧に説明しながら議論したい」と配慮を滲ませている。
憲法改正をゴリ押しして国民世論の反発を招き、さらに公明党との選挙協力に支障を来すようでは元も子もないと腰が退けたのか。
もっと言えば、米議会調査局が先にまとめた報告書で「ストロング・ナショナリスト(危険な国粋主義者)」のレッテルを貼られたことも安倍首相には堪えたはず。
この報告書は議員活動用の参考資料だが、「戦時中の日本の行動が不当に批判を受けていると主張する集団との関係」を指摘、日本の植民支配と侵略を謝罪した1995年の村山首相談話や米国が主導した東京裁判を否定し、戦後レジュームからの脱却を訴える安倍首相のタカ派的言動が「日本と韓国、さらに他の(アジアの)国々との関係を悪化させるだろう」と分析している。
そしてきっとそうなるであろうことは、この報告書を待つまでもなく日本人の多くが危惧し、不安を感じているところでもある。
 菅義偉官房長官は「レッテル張りだ」と反発していたが、そうでないと言うのであれば、歴史認識の見直しや憲法改正による国防軍の創設を選挙公約の前面に押し出し国民の審判を仰いだらいい。

2013年5月11日土曜日

後半国会の主役は陰の幹事長・二階敏博と200兆円公共事業「国土強靱化」利権

  陰の幹事長とも言われる自民党の二階俊博総務会長代理が7日、自らが率いる派閥「志帥会」の政治資金パーティーを開いた。公称3千人の来場者数は先に行われた麻生派「為公会」の2千500人を越える規模だ。その集客力の源泉になっているのが、二階氏が主導する「国土強靭化」のための総額200兆円にのぼる公共事業であることは永田町では周知の事実だ。「東日本大震災のような災害で再びあのような悲しい思いを、日本のどの地域にもさせてはいけない。国土強靭化法案を今国会で必ず通す」 壇上に立った二階氏がこう言い放つと会場は破れんばかりの拍手に沸いた。 確かに災害に強い国土であることにこした事はないが、一方で公共事業の垂れ流しを危惧する声も聞こえてくる。二階氏はまったく意に介していないようだが野党は夏の参院選でこれを攻めてくるはず。強引に法案成立に突き進めば、後半国会の争点に浮上する可能性がある。   ねじれ国会解消を最優先に手堅い政権運営に努めてきた安倍晋三首相がどう判断するか見物だが、まずは反国土強靭化で野党が足並みを揃えることができるかどうかにかかっている。 もっとも連休明けの国会は7日、民主党など野党7党が共同で川口順子参院環境委員長の解任決議案を提出、これに反発した自民、公明両党は翌日の参院予算員会を欠席している。 参院選を前に与党との対決ムードを盛り上げたい野党の立場も分からぬではないが、連休中に外遊した川口委員長が届け出なく委員会を欠席したことが解任動議提出の理由というから、野党共闘も善し悪しか。 また7日の参院法務委員会では自民党の6人の委員のうち3人が欠席したため開会できずに流会となってしまった。国民からすれば、与野党ともに“ふざけるな”である。

2013年5月9日木曜日

妊娠出産の義務化も視野に入れる安倍晋三首相の憲法観と家庭の事情

子供の日の5日、安倍晋三首相はお得意のLINEを使い、小中学生に向けて質問を募集した。本人曰く、「総理大臣の仕事をしていると、普段なかなか子供たちとお話する機会もありません」とのこと。仕事からプライベートに踏み込んだものまで様々な質問が寄せられたそうだが、日常、LINEを使いこなしている小中学生がどれだけの数いるものなのか。まずもって子供にスマートホンを買い与えるような家庭は少数派だろう。
まあいい。せっかくだからと中3の愚息に質問させてみたら「安倍首相はなぜ、子供がいないのですか?なぜ、無理やり柔剣道をやらせるのですか?子供がいたら軍隊に入れますか?TPPに参加すると美しい棚田を守れるのですか?」等々、質問の嵐。
安倍首相は「いくつかの質問について、後日ぜひお答えしたい」と言っているから、楽しみに待つとしよう。
そして共働きの妻が横で一言、「子育てしたことない人に9条改正とか教育改革とか言われても説得力ないわよね」
確かに一理あり。子を持つ母の声なき声を代弁したものだろう。
周知のとおり、安倍首相は「女性の活力」を経済成長の原動力として位置づけ、少子化対策として産休育休の制度改正や待機児童の受け入れ体制整備など様々な施策を打ち出す予定だ。
ところがその一方で愛国心だの国防軍だの言われたのでは、産み育てることへの躊躇いも出てこよう。
また、少子化対策には女性の妊娠・出産を促すための啓発事業が盛り込まれる。これは医学的に妊娠・出産の適齢期と言われる25~35才を過ぎると加齢に伴い卵子が老化して妊娠することが難しくなり、不妊治療の効果が得られにくくなることなどを周知徹底させることで晩婚・晩産に歯止めをかけようというのだが、大きなお世話だ。かつて自民党に「女性は子供を産む道具」と口走った大臣がいたのを思い出す。そのうち安倍自民党は憲法で妊娠・出産を義務化するとまで言い出しかねない。女心も母心も理解できずにどうして“女性の活力”を引き出せようが。

2013年5月6日月曜日

「公開大反省会」を開催する民主党が作成したアベノミクス批判ビラの目クソ鼻クソ

国会は連休明けから後半戦に突入するが、すでに今年度予算案は15日の参院本会議決で与野党が合意済みであることから、波乱要因は見当たらない。一つあるとすれば、衆院の選挙制度改革くらいか。30日、街頭に立った民主党の野田佳彦前首相は自民、公明両党が今国会、衆院小選挙区「0増5減」区割り法案の先行処理と定数削減の先送りを決めたことに対し「安倍晋三首相は2012年11月の党首討論で約束したと言っているが、大きな間違いだ。0増5減だけを約束したのではなく、政界も身を切る覚悟を示さなければいけない」と批判した。
確かにその通りだが、当時を振り返ってみれば定数削減の確約を条件に解散に踏み切った野田首相も一方の当事者だから責任の一端はあろう。
民主党は選挙制度改革を参院選の争点にしたいようだが、そうであればなおさら、とりあえず違憲状態の解消し、定数削減などの抜本改革は7月参院選の結果を待って仕切り直しするしかない。
参院選は早ければ7月4日公示、21日投開票となる。第2次安倍政権発足後初めての本格的な国政選挙だ。最大の関心事はアベノミクスの経済再生戦略と自民党が政権公約に掲げる「憲法改正」を国民有権者がどう評価するかだ。
自民党はすでに47選挙区に49人、比例24人の公認候補の擁立を決めている。さらに連休明けにも「地方再生なくして日本再生なし」とする経済政策をまとめ、政府の日本経済再生本部が6月に策定する経済成長戦略や参院選の公約に反映させる。
具体的には「法人税ゼロ特区」の設置や地域企業向け「小口投資」の税制優遇、企業育成のための「ベンチャー創造会議(仮称)」設置や働く女性を支援する「家事支援税制」など盛り沢山だ。
自民、公明両党で63議席を上回ればねじれ国会は解消、さらに日本維新の会とみんなの党を加えて162議席を上回れば「憲法改正」が視野に入る。
民主党はといえば、先月30日の両院議員懇談会で「バブルではなく実態経済で経済を回復し、格差を縮小します」「アベノミクスで皆さんの生活はよくなりましたか?!」などと記されたアベノミクス批判のビラを配布、11日には若い世代を対象に「公開大反省会」を開催してインターネットで生中継するそうだから、呑気なものだ。

2013年5月2日木曜日

北方領土2島ポッキリでプーチン露大統領の手を握った安倍晋三首相の売国奴的タカ派体質

 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は29日の首脳会談で日ロ平和条約締結に向け小泉政権以降、長らく棚上げ状態になっていた北方領土返還交渉を再スタートさせることで合意した。共同声明にはこの他、安全保障や経済分野の協力推進、文化・スポーツ交流の活性化などが盛り込まれた。
 日ロ接近の背景には中国の台頭と北朝鮮の核問題など緊迫する東アジア状勢や極東地域の経済開発を期待するロシアと日本のエネルギー事情がある。あるいは参院選を前に外交成果をアピールしておきたい安倍首相の思惑もあろう。
ただ、北方領土の返還をちらつかせて経済協力を引き出すのはロシアの常套手段だ。今回の訪ロにも日本企業約40社120人が同行している。日本は過去、ロシアに何度も煮え湯を飲まされてきただけに油断は禁物だ。
 北方領土について言えば、柔道家のプーチン大統領は「引き分け」との言葉で56年の日ソ共同宣言に盛り込まれた歯舞・色丹2島の返還を交渉のスタートにしたいようだが、安倍首相の交渉相手はロシア政府だけではない。日本政府は戦後一貫して4島一括返還を求めてきたが、ソ連崩壊後の90年代半ば以降、橋本、小渕、森と続く3政権はこれを前提としながらも、4島の帰属問題を領有権と施政権とに分け、その態様返還時期については柔軟姿勢に転じている。併せて対ロ経済技術協力を加速させたことが、01年3月に森喜郎首相とプーチン大統領とのイルクーツク声明につながり、領土交渉はロシアがまず歯舞、色丹の2島を日本に返還、残りの択捉、国後2島については平和条約締結後に帰属問題を解決することで合意をみる。ところがこれに待ったをかけたのが小泉内閣の発足で外相に就任した田中真紀子氏だった。この時、小渕、森両政権で対ロ外交を主導した鈴木宗男氏は国民世論に「売国奴」と罵られ失脚している。
そうであれば、イルクーツク声明の当事者であり、今回も「引き分け」を口にするプーチン大統領と返還交渉を再スタートさせる安倍首相も「売国奴」にならないか。
「日本とロシアがパートナーとして協力の次元を高めていくことは、時代の要請であり国際社会の平和と繁栄に寄与することになる」
 首脳会談の冒頭、安倍首相はこう述べたそうだが、領土返還交渉の先行きはまったくの視界不良である。