2013年6月27日木曜日

渡辺善美を御輿に担ぐ「みんなの民主党」で反安倍自民の野党再結集を急げ

 争点なき東京都議選は大方の予想通り、安倍内閣の高い支持率に後押しされた自民、公明両党の圧勝に終わった。合わせて82議席は定数127議席の3分の2に迫る。国政に置き換えれば、外形上は政権に返り咲いた昨年末の衆院選をなぞったような結果である。
 野党はどうか。民主党が43議席から15議席に激減したのは言わずもがな。第3極では34人を公認した維新が橋下徹共同代表の「慰安婦発言」で2議席に止まり、社民、生活、みどりの3党は議席獲得ならず、漁夫の利を得たみんなの党が7議席を獲得。8議席から17議席に倍増した共産党は民主党を押し退け、都議会第3党の地位を占めたのが目を引く。
 さてそうなると一月後に控える参院選も自民、公明両党の圧勝に終わってしまうのか。それとも野党、とりわけ民主党に巻き返しのチャンスはあるのかどうか。カギを握るのは選挙協力の成否と無党派層の投票動向である。
 今回の都議選に当てはめてみると、投票率43・50パーセントは民主党政権誕生直前の09年の54・49パーセントから11ポイント減となり、過去2番目の低投票率だった。つまり、有権者10人のうち6人が棄権に回ったわけだが、これでは元来、無党派層の伸長が党勢の浮沈に直結する都市型政党の民主党は苦戦するはず。
また、各党別の得票率をみると自民党は36・04パーセントで前回より10ポイント増やしているが、一方で民主党は前回40・79パーセントから15・24パーセントに激減。しかし、これにみんなの6・87パーセント、維新の8・25パーセントを加えれば少なくとも数字上は自民党とほぼ互角となる。
そこまで欲張らずとも参院選前、みんなとの合流を先行して新党を結成してはどうか。党名は「みんなの民主党」にして、当面は党首にみんなの渡辺善美代表、ナンバー2の幹事長は民主党の細野豪志幹事長でいい。反安倍自民の受け皿さえあれば、行き場を失った無党派層は再び投票所へ足を運ぶに違いない。その際、両党の接着剤となるのは、野党内を見渡してもやはり、生活の小沢一郎代表くらいしか見当たらない。周知のとおり、小沢氏は現民主党執行部とは良好な関係だ。また、新生党時代には、渡辺氏の父親で当時、自民党の実力者だった故・美智男元幹事長を首相候補に担ぎ出そうとしたこともあった。野合批判はマイナス要因だが、だからこそ何でもありの小沢氏でなければ務まらない大役だ。
自民、公明両党の勝ちは動かないにして、このまま座して死を待つよりいい。自分のことさえ、明日はどうなるか分からないのが政界である。

2013年6月22日土曜日

高市・甘利の冷酷発言で見えてきた安倍自民党圧勝後に切り捨てられる高齢者と原発被災者の悲劇

「悲惨な爆発事故を起こした東京電力福島第一原発を含め、それによって死亡者が出ている状況ではない。最大限の安全性を確保しながら活用するしかない」
 自民党の高市早苗政調会長は17日の講演でこう述べた。原発再稼働に前のめりの安倍政権の立場を正当化したものだ。
 確かに事故直後、被爆で亡くなった人はいないが、だからといって原発の再稼働を許す理由にはなるまい。
「いまだに避難生活を余儀なくされている人々が数多くおられる状況下にあって、常軌を逸した発言」とは、みんなの党の渡辺善美代表のコメントだが、多くの国民もきっと同じ思いを抱いたことだろう。
 同じ日、社会保障と税の一体改革を担当する甘利明経済再生相はテレビ番組で終末期医療のあり方について「(回復の見込みがなく)チューブにつながれて最後を迎えるのは悲惨だと思う人は多い。本人の意思確認をして平穏な道を選びたいという人ならば、それだけで医療費は下がる」と述べている。甘利氏はまた、前日のテレビ番組で高齢者医療費(70歳~74歳)の自己負担額を現行1割から2割に引き上げる考えを示した。
周知のとおり、原発の再稼働も医療費の削減も安倍自民党が掲げる「成長戦略」と「財政健全化」の両立に欠くことのできない喫緊の課題である。
この2人はその設計図を描く党と内閣の責任者だが、こんな発言をするようでは自民党の圧勝が伝えられる参院選後が心配だ。
先に安倍晋三首相は「企業の投資に火を付ける必要がある」として秋の臨時国会で企業の設備投資減税など法人税減税を打ち出す考えを示した。
一方で社会保障費の削減については先に閣議決定した「骨太の方針」で「聖域を設けず」とするに止め、具体的な削減策を選挙後に先送りしている。
有権者の反発を怖れてのことだろうが、高市氏や甘利氏の社会的弱者に配慮を欠いた、あるいは人命を軽んじるような発言を聞けば、安倍政権の企みは大方察しがつこう。
 高市氏は19日、自らの発言を撤回し、謝罪したが、問われたのは言葉ではなく、政治家としての資質であり安倍政権の体質である。

2013年6月20日木曜日

参院選圧勝で懸念される安倍自民党の暴走と国会のチェック機能低下

 安倍晋三首相は17日、記者団を前に7月参院選について「自民、公明両党で過半数を目指していくことになる」と述べた。つまり、参院の過半数122議席から与党の非改選59議席を差し引いた63議席が勝敗ラインというわけだ。自民党内では単独70議席以上との強気の読みもあるだけに、陣営の気の緩みを懸念してのことか。そうだとしてもずいぶん控えめな数字である。
 もっとも、安倍政権の是非はともかく、ねじれ国会が解消されるだけでも政治的には大勝利だ。少なくとも次の衆院選まで「決められない政治」の心配はなくなる。
 ただ一方で野党にもそこそこ勝ってもらわなければ、国会のチェック機能は低下する。政権の暴走に歯止めをかける野党の存在がなければ、議会制民主主義は成り立たない。
「野党は最終的に一つの政党になるのがいい。民主党は参院選で惨敗しても衆参で国会議員が100人ぐらいいるから、中心になって新しい器を作る努力をしてほしい」
 小沢一郎・生活の党代表は14日のラジオ番組でこう述べ、民主党に参院選後の野党再結集を求めた。 
 それしかないだろう。新党結成はともかく、曲がりなりにも民主党は唯一、自民党に対抗できる組織政党である。党内に野党を一つにまとめるだけの識見、力量を備えた人材が見当たらないのが残念なところだが、今一度、小沢氏と手を組むのも選択肢の一つだ。
その前にまずは参院選の選挙協力を通じて第3極政党との信頼関係を築き、野党共闘の下地を作ることができるかどうか。
参院選の前哨戦となる東京都議会選挙は自民党の圧勝が伝えられているとはいえ、悲観することはない。
折しも浜岡原発の再稼働問題を抱える静岡県知事選が16日に行われ、夏の参院選挙で再稼働を公約に掲げる自民党が支援した新人候補が、県民の意志を尊重するとした現職候補に大差で敗れた。
民主党が非自民、反安倍政権の受け皿として有権者の信頼を取り戻す時間は、少ないがまだある。

2013年6月17日月曜日

安倍官邸の情報セキュリティー会議が打ち出した「ネット検閲の解禁」で見えてきた言論統制の暗黒日本

 菅義偉官房長官が議長を務める政府の情報セキュリティー政策会議は、10日に正式決定した「サイバーセキュリティー戦略」の中で現行の電気通信事業法が禁じるインターネットの解析や通信内容の履歴保存など、いわゆる「通信の検閲」を可能にするよう法改正の検討を打ち出した。前提にあるのはより複雑、深刻化するサイバー犯罪に対応するためだとか。はたして狙いはそれだけか。
政府は先週7日、外交・防衛政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)設置関連法案を国会に提出、機密情報の漏洩防止を目的にした秘密保全法案をワンセットにして秋の臨時国会で成立を目指す。
菅官房長官は同日の記者会見で「情報漏洩に関する脅威は高まっている。外国との情報共有は(秘密が)保全されるという前提の下で行われる。秘密保全法がなければ、きちんとした情報は取れない」と述べ、両法案の必要性を訴えた。
建前はともかく、「通信の検閲」や2016年から導入される「社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度」と重ね合わせれば、国家による情報統制、個人情報の管理を強化したい安倍政権の狙いははっきり読み取れよう。
折しも米国では国家安全保障局(NSA)や連邦捜査局(FBI)がテロ捜査のためと称し、グーグルやヤフーなどインターネット大手9社の管理サーバーに侵入し、電子メールや利用履歴などの個人情報を秘密裏に収集していたことが発覚。人権擁護団体「米自由人権協会」は11日、これを「われわれの家族や政治、職業、宗教、交遊関係についての詳細を暴露するものだ」と批判し、政府を相手に通話監視の停止や収集した情報の消去を求める訴えを起こしている。
これについて菅官房長官は12日の記者会見で口数少なく「詳細は把握していないが、あってはならないことだ」と述べた。
そのあってはならないことが起きたのだから、法の運用はいわば時の権力のサジ加減でどうにでもなるということだ。メディアも国民も株価の乱高下に一喜一憂している場合ではなかろう。

2013年6月13日木曜日

これでは民主党政権と変わらない!アベノミクスの大言壮語と募る国民の疑念

「秋には思い切った設備投資減税を打ち出したい」
安倍晋三首相は10日に行われた政府与党連絡会議でこう述べ、秋の臨時国会に法人税減税など、資本の流動化を促す「産業競争力強化法案(仮称)」を提出する考えを示すと共に例年、12月がヤマ場となる与党の税制改正論議を前倒しするよう求めた。
法人税減税は長年、経済界が強く求めてきたものだが、安倍首相が先に発表した成長戦略第3弾に盛り込まれず、株価の急落を招いてしまったことは周知のとおりだ。参院選を前に安倍首相は成長戦略への疑念を払拭する必要に迫られたわけだ。
幸い株価は持ち直し、この日内閣府が発表した1~3月期の国内総生産(GDP)は前期比1・0パーセント増となり、年換算も4・1パーセントに上方修正されている。
これを受けて菅義人官房長官は「景気の先行きに私たちは自信を持っている。今後とも安倍政権の経済政策の“3本の矢”をしっかりとスピード感を持って進めていきたい」と述べた。
しかしながら同じく内閣府が発表した5月の街角景況感は前月比マイナス0・8ポイントで2~3ヵ月後の見通しを示す先行き判断指数もマイナス1・6ポイントにまで落ち込んでいる。とりわけ、家計と雇用は依然として足踏み状態が続いており、明るい展望は見出せない。
 これも株式市場同様、成長戦略への疑念が根底にある。とりわけ、安倍首相が成長目標に掲げる桁違いの「数字」は、どこか投資詐欺の「高配当」に似ているような。
 成長戦略でブチ上げた「国民総所得(GNI)一人当たり150万円」は、その最たるものだ。しかも安倍首相は8日の街頭演説で「私たちは10年間で平均年収を150万円増やす」とも述べている。
数字面は同じ150万円だが、国民総所得と個人所得とでは意味するところはまったく異なる。
菅官房長官は「首相は分かりやすく説明しようとしたんだろう」と釈明していたが、どちらにしても、大言壮語、これ以上の“恥の上塗り”は止めにしないか。

2013年6月8日土曜日

安倍首相が力説した「10年後、国民総所得一人当たり150万円増」のタラレバ詐術

 安倍晋三首相は5日、都内の講演で成長戦略第3弾を発表した。キーワードは「民間活力の爆発」だとか。具体的には「国家戦略特区の創設」や薬のインターネット販売の自由化、インフラ整備に民間資金を活用する社会資本整備(PFI)を導入することで10年後に国民総所得(GNI)一人当たり150万円増を目指すとしている。
「海外経済にも恵まれて、成長シナリオを実現できれば、一人あたりの国民総所得は最終的には年3パーセントを上回る伸びとなり、10年後には現在の水準から150万円増やすことができる」
 壇上で安倍首相はこう力説した。
ぜひ、そうあって欲しいものだが、経済特区は過去何度も導入されたが成功した話は聞かないし、薬をインターネットで売ることがどうして国民総所得を押し上げることになるのかピンとこない。何より、国民総所得が増加したとしても個人の賃金・所得の増加を約束するものではないから過剰な期待は禁物である。
「日本経済再生」を掲げて誕生した安倍政権は「異次元の金融緩和」とこれに続く「大規模な財政出動」によって市場の期待を集めた。そして4月、「女性の活力」を経済成長の原動力とする医療福祉分野の成長戦略第1弾を、5月には農業所得倍増やインフラ輸出3倍増を目指すとした成長戦略第2弾を発表している。
これで「アベノミクス」3本の矢は出揃った。メニューは豪華だけれども、実現に至る“レシピ”がどうもはっきりしない。料理人の腕も怪しいものだ。しかも国民は三ツ星のフランス料理を求めているわけではない。
だからだろう。安倍首相が頼みとしている市場の反応も冷ややかだ。この日、日経平均株価の終値は前日比518円89銭安の1万3014円87銭で、今年3番目の下げ幅となった。外国為替市場はドルが売られ1ドル99円台まで円高が進んだ。
 このまま市場が冷え込むことはないだろうが、安倍首相はあれもこれもと欲張らずに優先順位を決め、国民が成長を実感できる政策を確実に詰めていくことだ。

2013年6月6日木曜日

橋下徹大阪市長にシッポを振った公明党の乱心と創価学会800万票の怒りの矛先

「我が国の防衛力体制強化は地域の平和と安定の強化に不可欠だ。日本の右傾化を指摘する声もあるが、全くの誤解だ。安倍政権は周辺諸国に誤解と不信を招いた野党党首の発言や歴史認識に組みしない」
 小野寺五典防衛相は1日、アジア安全保障会議の演説でこう述べた。野党党首とは「日本維新の会」共同代表の橋下徹大阪市長のことだろう。
 昨年末の衆院選で安倍自民党は橋下市長との蜜月ぶりを演出していたはずだが、見事なまでの手の裏返しである。
 それにもとはと言えば、右傾化への懸念は橋下氏にではなく、安倍政権そのものに向けられたもの。村山談話や河野談話に難クセつけ、国防軍の創設や憲法9条の改正を言い出せば、「右傾化」を指摘されても当然だ。
 先に自民党の安全保障調査会と国防部会がまとめた「防衛計画の大綱」への提言には、中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発への対抗策として、「適地攻撃能力の保有」や「海兵隊的機能の保持」などが検討項目として盛り込まれている。
 具体的には垂直離着陸型輸送機「オスプレイ」や水陸両用車の配備、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)やイージス艦の増強するよう求めている。
これが現行憲法の規定する「自衛のための戦力」の枠内に収まるのかどうか。収まらないとすれば当然ながら憲法改正の議論も出てこよう。
 そのこと自体、他国にとやかく言われる筋合いではないが、安倍自民党の「タカ派的」言動が重なれば、誰であろうとかつての「軍国日本」を連想しよう。
小野寺防衛相が言うように、日本の防衛力体制強化が地域の平和と安定強化に不可欠ならば、まずは国民に充分な情報を提供し、疑問や不安を払拭することが先決だ。
平和の党を標榜する公明党の役割も重要だ。目先の利益、党利党略を優先して安倍自民党の「タカ派」的体質に引きずられ、追随すればいずれ有権者(創価学会員)に見放されよう。結党の精神を取り戻して欲しいものだ。

2013年6月1日土曜日

参院選で問われる自民党「アベノミクス3本の矢」と社会保障費大幅削減策の中身

 安倍政権が目指す「日本経済再生」の処方箋づくりが急ピッチに進んでいる。29日には政府の産業競争力会議が「日本産業再興」「戦略市場創造」「国際展開戦略」を3本柱とする成長戦略の骨子をまとめた。
 取りまとめ役の甘利明経済再生担当相は「施策の羅列ではなく、成長への道筋を国民に分かりやすい形で打ち出す」として、今後、2030年を最終目標とする中長期の工程表だけでなく、個々の政策に数値目標と達成年次を示す政策成果指標(KPI)を設定する方針を示した。6月14日に閣議決定する予定だ。
 また、同時期に経済財政諮問会議がまとめる今後の財政運営の基本方向を定める「骨太の方針」には、金融緩和、財政出動、成長戦略のいわゆる「アベノミクス」の三本の矢で早期にデフレ脱却をはかるとともに財政健全化を進め、「停滞の20年」から「回復の10年」への転換を目指すことが盛り込まれる。
 それが「日本経済再生」につながるのであればけっこうなことだが、気になるのは財政健全化の道筋だ。
 27日に「財政制度等審議会」がまとめた報告書は財政健全化について「経済成長のみでは実現できない。政府は財政収支の改善に真正面から取り組まなければならない。具体的な成果をあげなければ、日本経済への市場の信認を失って金利急騰を招き、金融緩和の効果を減殺することになりかねない」と指摘し、消費税率を予定どおり引き上げることや社会保障費の大幅カットを求めている。
 具体的には運営する市町村によって保険料の格差が大きい国民健康保険の都道府県への移管、介護保険で給付の約3割を占める要介護2以下の給付を削減し重度者に重点配分や薬価の保険適用の上限を後発医薬品の価格までとして、先発品との差額を幹事の自己負担とすることなど。報告書は他に高校授業料無償化の代替案として文科省が検討している「給付型奨学金」を不要とした。
国民の暮らしを直撃する社会保障費を削る一方、国債を乱発して公共事業をバラまくのであれば世論の反発を招くことにもなりかねない。参院選を前に、はたして安倍首相がどこまで踏み込んで社会保障費の削減策を打ち出せるものか。逃げずに堂々、国民に信を問うて欲しいものだが。