2012年6月28日木曜日

小沢グループが消費税引き上げに反対なら造反ではなく、野田首相の代表再選を阻止するのが筋

 国会は26日、衆院本会議で税と社会保障の一体関連法案を圧倒的多数で可決の運びとなった。当初、21日の採決を明言していた野田佳彦首相は前日の税と社会保障の一体改革特別委員会で「民主党内の手続きなどもいろいろあった。努力したつもりだが、日程がずれたことはおわびしたい」と陳謝したが、結果オーライである。
 採決前、多くのメディアが民主党内の造反議員の票読みを競っていた。小沢一郎元代表が54人以上の造反議員を引き連れ新党を結成すれば、民主党は過半数割れして少数与党に転落することになるが、それはそれで結構なことだ。
もっとも、採決前日に電話をもらった法案反対派の某有力議員は、小沢グループの新党結成の動きに批判的だった。
当然である。今、離党したからといって結果は変わらないし、新党結成に参加してもその先に展望があるわけでもない。何より消費税が第一段階の8パーセントに引き上げられるのは14年4月である。まだ、ずっと先の話だ。本気で引き上げを阻止したいのであれば、チャンスはいくらでもある。
まずは9月の民主党代表選で野田代表の再選を阻止することだ。消費税増税反対派が勝てば、民主、自民、公明の3党合意を白紙に戻した上で民意を問えばいい。そうすれば、民主党は比較第一党の地位に止まることができるかもしれない。と、こんな慰めにもならない言葉を投げかけたのだが。
それにしても愚かしいのは民主党の小沢一郎元代表とその仲間たちだ。小沢夫人の書簡と称する怪文書を週刊文春が報じたのは周知のとおりだ。夫人の書簡については、ねつ造疑惑を追及する民主党の有田芳生参院議員と今週発売の「週刊スパ」で対談しているから、参考にしていただきたい。内容は荒唐無稽だが、夫婦仲違いは事実だから、小沢氏は反論できないでいる。この人の場合「沈黙が美徳」でなく、自分に都合の悪いことをしゃべらないだけだ。それでいったいどんな新党を結成するというのか。お笑いである。

2012.6.25 築地にて


2012年6月23日土曜日

小沢一郎と愚かな仲間たち⑥

 
刑事被告人・小沢一郎は土地購入4億円の出所を正直に語れ

東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年2月2日号(ゲラ刷り)

民主党の小沢一郎元代表が(68)31日、政治資金規正法違反の罪に問われ、ようやく起訴された。これまで一貫して身の潔白を訴えてきた小沢元代表だが、これで晴れて推定無罪の刑事被告人である。今後は、法廷の場で思う存分闘っていただきたい。
 公判のポイントは2つ。小沢元代表の資金管理団体「陸山会」が04年10月に購入した土地代金約3億5千万円を政治資金収支報告書に記載せず、逮捕起訴された同会元事務責任者の石川知裕衆院議員(37)との共謀関係の有無。そしてもう一つ、特に注目しておきたいのが、小沢元代表が貸し付けたとする購入原資4億円の不記載が起訴事実に加えられたことだ。
購入原資については検察審査会が1回目に議決した起訴相当の容疑事実にはなっていない。しかしながら、小沢元代表を不起訴処分とした東京地検特捜部は当初、ゼネコンからの裏献金との見方を示していた。あるいは小沢元代表が過去、深く関与した新生党、新進党、自由党の解党劇で消えた政党助成金の流用が疑われてもいる。その意味で、購入原資4億円の出所解明は単に政治資金報告書の不記載に止まらない。「政治とカネ」にまつわる小沢疑惑の原点と言えよう。
それにもかかわらずこの間、小沢元代表の説明は「銀行からの借り入れ」だったり、「たんす預金」だったり、と二転三転。未だに国会での説明責任を果たしていない。東京地検特捜部も、小沢元代表の自宅に踏み込むことすらせず中途半端に捜査を投げ出してしまった。だったら公判の場で小沢元代表に納得のいく説明を聞きたいというのが、今回の強制起訴である。
検察役の指定弁護士も記者会見で「(4億円不記載を)取り上げて理論構成できるかどうかが、与えられた職責だ」と述べている。
 疑惑解明の舞台は整った。あとは民主党が「政治とカネ」にどうケジメを付け、国民有権者の理解を得るかだ。推定無罪だとはいえ、小沢元代表の政治責任はやはり厳しく問わねばなるまい。
2011.1.31 築地にて

小沢処分に反対する民主党の愚かな仲間たち

東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年2月16日号(ゲラ刷り)

 民主党は14日の党役員会で小沢一郎元代表の処分について裁判が片づくまで「党員資格停止」にすることを決め、今日15日の常任幹事会に諮る。
 資格停止となれば、代表選への出馬も党本部からの政党交付金も受けられないが、裁判が長引くことになれば事実上の永久追放となる。
厳しい処分だが、国会喚問を拒否し続け、党代表の菅直人首相からの離党勧告にも耳を貸さないとなれば致し方なかろう。
もっとも、役員会では興石東参院議員会長、平田健二参院幹事長、羽田雄一郎参院国対委員長の3人が処分に異を唱えている。
前後して同党の小沢派衆院議員一回生でつくる「北辰会」は小沢氏処分に反対する申入書を岡田克也幹事長に渡している。
申入書には反対理由が5つ。「現在、民主党政権としての初の本格的な来年度予算案を審議中であり、国民生活のため予算成立に向けて党一丸となって懸命に取り組むべき重大時期である」と現状認識はいい。噴飯ものはここからだ。
「このような時に、予算成立に向けて足並みを乱しかねない民主党の紛糾を晒すことはあってはならないことであり・・・」
「愛知県知事選挙及び名古屋市長選挙の結果を執行部が真摯に受け止め、その総括と責任の所在を明確にした上で速やかに党内結束を図ることが何よりも優先・・・」
「司法の場で結論が出る前に小沢元代表の処分・措置を決定するような動きは、ひいては我が国の対する野党の各欄戦術に乗った自滅行為であり・・・」
「検察審査会の議決に基づく起訴はあくまでも司法の場において検察の捜査手法について真実を明らかにする性質のものであり・・・」等々。
 要するに国民生活のためと言いながら、実のところは刑事被告人の小沢氏1人のために、来年度予算案を人質に取り、「造反するぞ」と菅首相を脅しているのだ。いやはや、もはや民主党に付ける薬はないのかも。
 


菅下ろしを仕掛ける小沢一郎が「党内一致結束」とは(笑)
東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年4月15日号(ゲラ刷り)

「第1は自然災害に強い地域社会、第2は地球環境と調和した社会システム、第3は弱い人に優しい社会だ」
被災地復興の将来像について菅直人首相は12日の記者会見でこう述べ、「被災地域、住民の要望、声を尊重」、「政界、官界に限らず全国民の英知を結集」、「未来の夢を先取りする未来志向」との三原則を示した上で、野党に対して先に発足した復興構想会議への参加を求めた。
 目指す方向に異論はないが、問題なのは復興の先頭に立つ菅首相の力量である。
同じ日、首相会見を受けて自民の大島理森副総裁が次のように述べている。
「始めからノーというつもりはないが、言葉だけでは進まない。事前にどのような責任と権限があるのか明確に説明し、協力できる環境をつくるのが首相のリーダーシップではないか。首相に本当政治に真摯に取り組む考えがあるのか疑念を持たざるを得ない。政権延命のにおいが消えていない。被災者が求めているのは、さまざま会議をつくって踊ることではなく、政治が安心と希望を示すことだ。パフォーマンス的政治をやっている暇はない」
 国民もきっと同じ思いだろう。ここまで不信感を持たれてしまったら、菅首相の下での挙国一致は難しい。 
 加えて、救いがたいのはこの国難に乗じて菅降ろしの政局を仕掛ける民主党の小沢一郎元代表支持グループの存在だ。
 小沢元代表は13日に行われた小沢支持グループの会合で「初動対応の遅れをはじめ、菅直人首相自身のリーダーシップが見えないままの無責任な内閣の対応は、今後、さらなる災禍を招きかねない」との見解を示した。事実上の倒閣宣言である。
 ところが前日には別の小沢支持グループとの会合で「右往左往している姿が国民に映っている。国民は国そのものが沈没してしまうような思いになってしまう、党内が一致結束し、国会議員を総動員するべきだ」と述べている。
 その党内の結束を乱してきた張本人が、よく言えたものだ。たとえ、菅首相が退陣したとしても、小沢支配の民主党では、国民の信は得られまい。
原発事故後の混乱と被災地復旧の遅れは、菅首相共々、すべての民主党議員が追うべき責任である。党内政局にうつつを抜かしている場合ではなかろう。挙国一致に身を投げ出すことだ。

2011.4.13 築地にて 
2011.2.16 築地にて

小沢グループは無駄な抵抗をやめてさっさと出て行けば

 民主党は20日、両院議員懇談会を開き、税と社会保障の一体改革関連法案の修正合意の扱いを野田佳彦首相と輿石東幹事長に一任することを決めた。両院議員総会には党所属国会議員約350人が出席、消費税増税に反対する小沢グループは採決で大量造反の構えを見せ、衆院本会議の採決は週明けに持ち越されたが、ここまでくれば大勢に影響はない。
多くのメディアが小沢グループの造反を危惧するが、民主党の分裂、過半数割れは政治の安定につながるから大歓迎である。
野田首相は今国会の会期を9月8日までの79日間延長する意向を示している。この間に税と社会保障の一体改革関連法案の他、赤字国債発行に不可欠な特例公債法案や公務員制度改革関連法案、衆院選挙区の一票の格差是正など山積する政治課題にケリをつけるつもりだ。同時併行して来年度予算の編成作業もある。これまで以上に自民、公明両党の協力が求められよう。それをいちいち小沢グループに邪魔され、党内調整にもたつくようでは、決められない政治に逆戻りである。立て籠もり犯ではないが、小沢グループには「無駄な抵抗はやめて“出て行け”」と呼びかけたい。
 とはいえ、民主、自民の2大政党が手を結ぶことには不安もあろう。20日には、自民、公明両党を除く野党6党の幹事長・書記長が横路孝弘衆院議長に会い、税と社会保障の一体改革関連法案の採決について「まともな審議もせず早期採決を強行するのは、3党談合の国会への押し付けそのもの。国会の役割を否定する前代未聞の暴挙だ」として修正法案の十分な審議を求めている。
 野党の立場であれば当然の主張だが、今回の修正合意は関連7法案のうち、社会保障制度改革関連法案についは事実上棚上げとなり、残る争点は社会消費税増税関連の2法案のみ。要するに消費税増税への賛否を主張するだけの話だから、どれだけ審議に時間をかけても議論は深まりそうにない。各党の解散戦略とも絡み合ってくれば、なおさらである。  堂々めぐりの議論は決められない政治を助長するだけだ。
今国会、政府提出の82本の法案のうち、これまでに成立したのは27本。成立率32・9パーセントは戦後通常国会で最低の数字である。結果がすべてを物語っているではないか。

2012.6.20 築地にて


2012年6月21日木曜日

小沢一郎と愚かな仲間たち⑤


震災復興最大の障害は小沢一郎の存在である
東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年4月27日号

「今の政権の復興対策に大きなクレームがついた。菅さんがおやりになれるのかという多くの有権者の疑問を示したものだ」
統一地方選で民主党が大敗した24日、自民党の谷垣禎一総裁は記者会見でこう語り、菅首相に強く退陣を求めた。
 ところが菅直人首相は翌25日の参院決算員会で「厳しい結果になり、真摯に受け止めなければならない」と言いながら、震災対応については「政府を挙げてやるべきことはやってきている」と開き直っている。
 ならばと、フジサンケイグループが実施した直近の世論調査では政府の震災対応を評価せずが、62・7パーセント。原発事故いたっては評価せずが実に76・4パーセントに上っている。
 菅首相が選挙結果と世論調査を真摯に受け止めているのであれば、災害復旧の一次補正案の成立を待って潔く身を退くしか選択肢はない。
 ただ、同じ世論調査で内閣支持率が前回調査より3・1パーセント上昇し、21・8パーセント、早期の退陣を求めているのは23・8パーセントに止まっている。一方で原発対応や被災地復興が一段落することまで続けることを望んでいる国民が39・6パーセントもいる。おそらく、菅退陣後の政治空白が心配なのだろう。
 言うまでもなく、最大の懸念材料は民主党内の小沢一郎元代表を支持するグループの存在だ。
 自民、公明両党は政権協力の条件に菅首相の退陣を求めている。ここまでは、小沢支持グループと利害は一致する。
 だが両党はもう一つ、民主党マニフェストの撤回を政権協力の条件にしている。マニフェスト原理主義の小沢支持グループとは真逆の関係だ。加えて小沢氏の「政治とカネ」を厳しく追及してきた経緯もある。そうであれば、菅抜き小沢支配の民主党政権にも期待はできない。国民が菅首相の早期退陣を躊躇するのは当然だろう。それでも小沢支持グループが菅首相に退陣を求めるのであれば、まずはポスト菅の政権の姿を国民に明らかにすることだ。

2011.4.27 築地にて



内閣不信任決議を欠席した小沢一郎の狡猾

東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年6月8日号(ゲラ刷り)

 内閣不信任決議が圧倒的多数で否決されたにもかかわらず、なおも菅退陣の大合唱が鳴り止まないのはいったいどういう理由か。
 菅直人首相は震災復旧・復興のための第2次補正予算案の編成や本予算の執行に必要な特例公社債法案の処理に意欲を見せており、すでに6月22日会期末を迎える今国会の大幅な会期延長に言及している。
 ところが、自民党の石原伸晃幹事長は5日のテレビ番組で「菅内閣は死に体だ。1日も早く辞めてもらいたい。常識的には月内だ」と早期退陣を迫っている。
ちょっと待てよ。不信任決議案が可決されたのならまだ話は分かるが、逆に菅内閣は2日の衆院本会議で信任されたばかりだ。憲法が国会を国権の最高機関と定めている以上、不信任決議案が大差で否決されたことをもっと重く受け止めるべきだろう。つまり、憲政の常道に従えば、退くも進むも本来は菅首相の判断に委ねられるべきところだ。
同じ事が早期退陣を迫る民主党の反菅勢力にも言える。
まずもって菅首相を「ペテン師」呼ばわりしている鳩山由紀夫首相は6日の講演で「自民、公明両党とタッグを組んだ協力関係の中で、安心安全が確保された日本をつくり直していかなければならない」と述べている。日米同盟の信頼関係をぶち壊しておいて、安心安全とはよく言えたものだ。
造反劇の首謀者でありながら、採決に欠席した小沢一郎元代表もしかり。結局、賛成票はたったの2票。小沢元代表ら15人は敵前逃亡し棄権、欠席に回り、不信任決議案の採決に乗じたクーデターは不発に終わっている。
そんな連中が、菅首相の退陣時期や連立政権の枠組みを語る資格があるだろうか。
民主党執行部は賛成票を投じた議員を除籍とし、採決欠席者についても「党員資格停止12か月」の処分案を検討中だ。閉門蟄居の身なれば、万事休す。少なくとも刑事被告人の身となり、すでに党員資格停止中の小沢元代表に出る幕はなさそうだ。

2011.6.6 築地にて






民主党代表選の争点に浮上した小沢一郎の処分見直し
東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年8月24日号(ゲラ刷り)

民主党は代表選の日程について22日の役員会で週明け27日告示、29日投開票する方針を決めた。中1日に党主催の討論会を開催する予定だが、たったの3日間の選挙戦では政策論争は深まらない。しかも、数は力とばかりに刑事被告人の小沢一郎元代表が出しゃばってくれば、国民どっちらけの代表選になりそうだ。
 これまでのところ立候補に意欲をみせているのは、すでに推薦人20名を確保している野田佳彦財相、鹿野道彦農相、馬淵澄夫前国交相の3人に加え、海江田万里経済産業相、小沢鋭人元環境相、樽床信二元国会対策委員長、原口一博前総務相ら。「本命野田に対抗鹿野、穴が馬淵」といったところか。ただし、出馬が取り沙汰される前原誠司前外相の動向次第で戦況は一変する。(もっとも、当初は野田氏の支持にまわるとみられていた前原誠司前外相がここにきて急転直下、出馬を決めたことで戦況は一変した)
 支持層が重なる野田、前原両氏が激突すれば、党内最大グループを抱える小沢元代表が推す候補が、一気に大本命に躍り出ることになるからだ。
それが、鹿野氏になるのか、馬淵氏になるのか。あるいは第三の候補が現れるのか。いずれにせよ、代表選の結果次第では民主党はまたもや小沢支配の恐怖政治に逆戻りである。
前原前外相の出馬が取り沙汰されるの(出馬を決意したの)は、そんな危機意識のあらわれとも言えよう。
小沢氏の党員資格停止処分の見直しが、代表選のにわか争点に浮上してきたのもこのたまだ。
 党内基盤が脆弱な馬淵前国交相は21日のテレビ番組で「新事実によって見直すことは一般論としてあってもよい」と主張、小沢元環境相も「前から処分は厳しすぎると言っている」と述べ、小沢元代表の支援に期待を寄せる。
 これに対して前原前外相は「現執行部の判断を尊重すべきだ」として処分見直しに反対する姿勢を崩していない。
 もっとも、さすがの小沢氏も今回ばかりは、傀儡政権の批判を浴びかねない露骨な候補者支援はやりにくい。人気者の前原前外相が相手となればなおさらだ。
 小沢元代表の次の一手が見物である。あるいは、敵の敵は味方とばかりに党内融和を掲げる野田財務相に乗っかる可能性もなくはないが。
2011.8.22



小沢一郎と愚かな仲間たち④

刑事被告人の小沢一郎が震災復興の妨げになる
東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年9月28日号(ゲラ刷り)

 
 東京地裁は26日、民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐり、政治資金規正法容疑に問われた3被告に有罪判決を言い渡した。
 「越山会」元事務担当の石川知裕衆院議員は禁錮2年執行猶予3年、後任の事務担当者だった池田光智被告は禁錮1年、執行猶予3年だった。もう1人、先に準大手ゼネコン「西松建設」からの違法献金事件で有罪判決を受けている元会見責任者の大久保隆規に禁錮3年執行猶予5年と3人の中で最も重い刑だった。
 大久保被告は公判で部下だった石川被告への指示を否認したが、過去、政治資金規正法違反事件で最高額となる総額約21億7千万円の虚偽記載への関与を東京地裁が認めたことの意味は大きい。
 10月6日にはいよいよ、小沢元代表の初公判が開かれる。土地取引にあてたとされる西松建設からの裏献金の有無も含め、あらためて注目しておきたい。
 さらに、まずまずのスタートを切った野田政権の国会運営にも少なからず影響があろう。
 さっそくこの日、国会は衆院予算員会で野田佳彦首相に対し、自民党の石原伸晃幹事長が小沢氏について「すみやかに議員辞職を求めるなど、民主党代表として指示をされたらいかがでしょうか」と質問したが、野田首相は「司法の判断をついてコメントすることは差し控えたい」と述べるにとどめた。さらに石原幹事長が起訴後、民主党を離党した石川被告に対して「議員辞職勧告決議案を出したら民主党として賛成されるか」と畳みかけた明言を避けた。
 同じ予算員会で自民党の稲田朋美衆院議員は小沢元代表の証人喚問を要求し、理事会で協議することになった。
今国会は30日まで、どうにか逃げ切れるかもしれないが、第3次補正予算案の早期成立に自公の協力を求める次期臨時国会ではそうはいかない。
党内融和を優先して小沢元代表を守るのか、それとも被災地復興か。野田首相だけではなく民主党議員一人一人がいずれ近いうちに決断を迫られることになろう。
2011.9.26 築地にて

刑事被告人の小沢一郎は国会のお荷物でしかない
東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年10月7日号(ゲラ刷り)

 民主党と自民、公明両党は6日に幹事長会談を行う。民主党が求めている第3次補正予算案の3党協議について意見交換が目的だ。この会談で3党協議に道筋がつけば翌7日に補正予算案の「概要」を閣議決定する予定である。
 政府与党としては、今月中旬にも召集する臨時国会を前に3党協議で補正予算の成案が得られれば、国会審議が楽になる。
 だが、公明党の漆原良夫国対委員長は記者団を前に「3党協議はそのまま3党合意を目指すという意味ではない」とクギを刺す。自民党の石原伸晃幹事長も「予算案の提出前に3党で話をしてまとまっていたら談合だ」と述べている。正論だ。
 加えて自公両党は3党幹事長会談で民主党に対し小沢一郎元代表の証人喚問や国会の早期召集、補正予算案と関連法案の早期提出を求める。中でも小沢氏の証人喚問への対応が、与野党協議の前提条件となる。
 自民党の菅義偉元総務相は5日のテレビ番組で元秘書3人が有罪判決を受けた小沢氏の扱いについて「今まで自民党の政治家で辞めなかった人は誰もいなかった。野田政権は国会で説明させようとしない。自民党は全部、証人喚問に応じていた。まったくやらないのはあり得ない。民主党は透明性や政治とカネの問題を言ってきたが、まったく逆行している」と厳しい口調で言い放った。これも正論である。
 石原幹事長は6日の3党幹事長会談「我々が意見を言い、それを政府与党がどう判断するかは別の話だ」とも述べている。
 同じ日、小沢氏の初公判がある。民主党の出方次第では、3党協議の入り口で立ち往生することになろう。
 小沢氏の独りよがりの正義のために、国民の暮らし、被災地住民が犠牲になっては政権与党の資格はない。
 司法の判断をともかく、政治的な決着はそろそろ付けてもらわねば困る。

2012.10.5 築地にて
 
 

小沢一郎が立ち上げた「新しい政策研究会」の卑しき狙い
東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年12月23日号(ゲラ刷り)

 民主党の小沢一郎元代表が21日、新たな勉強会「新しい政策研究会(新政研)」を立ち上げた。設立総会に出席した国会議員は小沢グループを中心に106人、賛同者を含めると136人にのぼった。会長に就任した小沢氏は「私たちが2年前の総選挙で国民に約束した政策は、自民党とは発想も内容も異にする政策だったはずだ。そのことをもう一度思い起こさなければいけない」とあいさつした。事務総長に東祥三衆院安全保障委員長、事務局長に鈴木克昌筆頭副幹事長が就いた。
 周知のとおり鈴木氏はこの前日、消費税増税反対派130人の署名を集め、首相官邸に藤村修官房長官を訪ねている。
刑事被告人となった小沢氏の狙いは、野田佳彦首相が意欲を見せる消費税率引き上げに反対する党内世論を利用した非主流派の再結集による政治的求心力の回復にあることは明かだ。
 消費税の扱いについては、引き上げ時期の条件等でツメの作業は残されているものの、年明け通常国会の法案提出は既定路線である。「新政研」が前面に出て政権の足を引っ張るようなマネをすれば、またまた批判の矛先が小沢氏一人に向かうことになろう。慎重な対応を求めたい。
 国民が求めているのは政争ではなく、政策の実現である。間断なき震災復興と放射能対策はもちろんのこと、社会保障制度の抜本改革も待ったなしだ。目前には金融危機が迫っている。北朝鮮情勢も予断を許さない。
 マスコミが持て囃す橋下徹大阪市長には申し訳ないが、大阪が府であろうが都であろうが、国益からすればどうでもいい話だ。
野田首相は21日、民主党両院議員懇談会のあいさつで「議員定数の削減は来年の通常国会の早い段階で決着をつけたい」と述べ、消費税率引き上げより先に国会議員の定数削減を実現させる意向を示した。
 小沢氏の言葉を借りれば、比例定数の80削減も「国民に約束した政策」である。「新政研」の参加者には比例候補も多数いるが、まさか異論はあるまい。自ら率先して身を削る覚悟を見せて欲しいものだ。

2012.12.21 築地にて


自民党の政権復帰は大連立が手っ取り早い

 後半国会、最大の焦点だった消費税増税関連法案は民主党と自民、公明両党の修正合意を受け、会期末ギリギリの21日に衆院本会議で採決される。民主、自民両党内にはなおも不満が残るが、可決はまず動くまい。
 一体改革するはずだった社会保障制度の大改革は残念ながら成らなかったが、ものは考えようだ。消費税増税だけを取り上げれば、国民の多くが反対するのも当然だが、強引な制度改革はかえって社会の混乱を招くことになる。消費税の引き上げ実施時期までに、国民の多くが納得できる結論を出してもらえればいい。
 教科書的になるが、税と社会保障の一体改革を分かりやすく言えば、現在の硬直化した国家財政構造を見直すことだ。消費税増税法案が成立したからといって、歳出構造をあらためなければ、税収増も財政再建も画に描いた餅になってしまう。
 周知のとおり、民主党は「子ども手当」や「高校無償化」、「農家の戸別補償」など、国民への直接給付の空手形を切りすぎた。かといって旧来型の無駄な公共事業が復活してもらっても困る。少ない予算で社会保障と景気対策にどう折り合いをつけるのか。野田政権は来年度予算の編成に腰を据えて取り組むことだ。
 そこで注目しておきたいのが、国会の会期延長幅である。民主党は税と社会保障の一体改革の参院審議の他、赤字国債発行に必要な特例公債法案など重要法案の成立を図るため8月までの大幅延長を考えているようだ。
 これに対し自民党は18日、党本部の会合で「民主党の社会保障などの矛盾を暴き出し、積み重ねて衆院解散を勝ち取る」と述べた。8月解散を念頭に置いたものだ。
 今国会会期中に野田首相を解散総選挙に追い込み、政権復帰をはたすことは自民党の基本戦略である。そうなれば、谷垣総裁は秋の自民党総裁選で再選され、首相の座が転がり込んでくるわけだ。
 だが、それでも民主、自民両党の攻守入れ替わるだけで、ねじれ国会の現状は変わらない。決められない政治が続くだけだ。
 ならば、税と社会保障の一体改革で積み上げた修正協議のテーブルを生かし生かし、このまま民自公の三党で来年度予算の編成をやる手はある。自民党は労せずして政権に復帰できるし、そうなれば谷垣総裁も再選をはたせる。政治の安定には、今取り得る最善の選択肢なのだが。

2012.6.18  築地にて

小沢一郎と愚かな仲間たち③

いよいよ現実味を帯びてきた小沢抜き民自大連立
東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年2月22日号(ゲラ刷り)

17日に行われた小沢一郎民主党元代表の公判で元秘書らの検察調書の大半が証拠不採用となった。
 被告本人は口を噤むが、側近の川内博史衆院議員は翌日の自身の政治資金パーティーで「違法な捜査によって集められた証拠だということで、大部分が却下されるという明るい兆しも見えてきた」と述べ、無罪判決への期待を滲ませた。
 むろん検察捜査の在り方は断罪されてしかるべきだが、小沢氏が政治家であり続ける限り、だからといって無罪放免にはならないだろう。
 野党に言わせれば、「判決が(有罪、無罪)のどちだになろうと、もはや政治家としては失格であるということは自明だ」(自民党の脇雅史国対委員長)、「政治的、道義的責任はある。秘書が3人有罪になっているわけだから国会に対する説明責任はある」(公明等の井上義久幹事長)なのである。
 一審判決は4月中旬の予定だが、仮に無罪となった場合でも野党は国会喚問を求めてくるだろう。さてと、民主党執行部はどう対応するのか。
 小沢氏を擁護すれば、国民世論のさらなる離反を招きかねない。かといって、突き放せば党分裂は必至の状勢である。毎度繰り返される小沢問題だが、もううんざりだ。そろそろ、白黒つけてはどうか。
 都合の良いことに、小沢氏は野田政権が進める税と社会保障の一体改革に公然と異を唱えている。
 これについて自民党の谷垣禎一総裁は19日、「野田首相はまず小沢元代表と一対一で話し合い、賛成するなら一緒にやりましょう、反対するなら出て行ってください、と(言うべきだ)」と述べた。
本来は他党が口出しすることではなかろうが、消費税の税と社会保障の一体改革で野党に協力を求めていながら、党内を一つにまとめきれないようでは筋が通らない。政策を前に進めるためには小沢抜き民主、自民の大連立もありだ。

2012.2.20 築地にて

民自急接近で聞こえてくる小沢一郎の歯ぎしり

東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年3月7日号(ゲラ刷り)

 きっと今頃、民主党の小沢一郎元代表は歯ぎしりしていることだろう。
「首相が党内の7割、8割でもまとめて、残りの1割、2割は切るぐらいの重いがないと大きな難局を乗り切れない。これが土俵に上がってがっぷり四つに組む条件になる。反対派に出て行ってもらうというのが一番分かりやすい」
自民党の茂木敏充政調会長は5日、消費増税関連法案への対応についてこう述べ、民自協力の前提条件として民主党内の反対派、つまりは小沢切りを公然と求めた。
 茂木発言はガタつく民主党内の足下を見透かしてのものだが、前日のテレビ番組では野田首相自身が、「首相として不退転の決意と言ったのだから、強い覚悟、重たい決意だ。自分たちの政権のため、野田のためにやる話ではない。国家国民のため、やり遂げなければいけない時にはさまざまな判断がある」と述べ、自民党が求める小沢切り、話し合い解散に前向きな姿勢を見せている以上、もはや民自接近の流れは誰にも止められまい。事がうまく運べば、6月会期末までには解散総選挙になる公算が大だ。
民自協力は本欄で度々、訴えてきたことだけに大歓迎である。もちろん、来年度予算が早期に成立し、税と社会保障の一体改革が前に進めば、国家国民のためでもあるが、復権を目指す小沢氏にとっては大誤算だろう。
 野田首相と自民党の谷垣禎一総裁の極秘会談について小沢氏は3日のテレビ番組で「2人にとって何もいいことはない。なんでこそこそ会うのか」と述べ、不快感を露わにしたが後の祭りである。
 小沢氏はまた、今後の身の振り方について「ベストは民主党が政権交代の初心に帰ることだが、かなえられないなら安定した政権が必要だ。そのための方策を考える」
 と述べ、新党結成、政界再編に動く意向も示している。
 それがいい。消費税反対、TPP反対、改憲反対、原発反対、普天間基地の国内移設反対等々、なんでも反対の旗を掲げて、鳩山由紀夫元首相共々、民主党を離党して鈴木宗男氏の新党大地・真民主党や国民新党、社民党や自民党内の左派グループに声を掛けて大同団結すれば、きっと国民も応援してくれるはず。ただし、4月の一審判決で無罪になってからの話だが。


少数派小沢一郎が振りかざす民主主義の本末転倒

東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年3月9日号(ゲラ刷り)

 来年度予算案が8日、衆院を通過する。歳入の裏付けとなる赤字国債を発行するための特例公債法案の採決は先送りされたが、11年度で期限切れとなる租税特別措置の延長や自動車重量税の軽減、地球温暖化対策税の創設などが盛り込まれた税制改正法案や東日本大震災復興特別会計を設置するための特別会計改正法案などについては国民生活の混乱回避のため自民、公明両党が賛成にまわり、月内にも成立する見通しとなった。民自接近の成果といっていいだろう。
 成果はまだある。5日には与野党の環境相経験者が集まり、東日本大震災で発生したがれき処理について話し合った。
 会合を呼びかけた自民党の小池百合子氏は「国難にはそれぞれが役割を担うべきだ」と語っている。出席者は小沢鋭仁氏や公明党の斎藤鉄夫氏ら5人。「お互いさま」をキーワードに今後、副大臣や政務官経験者にも参加を呼びかけ、「与野党が力を合わせてそれぞれの地域で努力する」(小沢氏)という。それこそが国民が待ち望んできたことだ。
 それなのに民主党内はいまだに小沢グループが国政の足を引っ張ろうとしているのだから情けない。
 野田佳彦首相は週明け13日にも消費税増税関連法案を閣議決定する。これを邪魔しようと小沢氏側近の樋高剛総括副幹事長は6日、小沢グループの会合で「来所右派何が起こるかわからない。12日から東京にいてほしい」と禁足令を出した。
 もう一人の側近、東祥三前内閣府副大臣は「増税法案の答弁を求められた時、副大臣や政務官はどうするのか」と述べ、小沢グループの政務三役の総引き揚げをチラつかせている。いったい何のためにこの人たちは政治家になったのか。
 親分の小沢氏はこの日夜の会合で、野田首相が消費税増税に向けた決意を「51体49でも決めたらみんなで頑張る」と答弁したことを引き合いに出し、「それが民主主義なのか。本当にそれでいいのか」と批判を浴びせている。
 これまで数の論理をさんざんに振り回しておきながらよく言えたものだ。小沢流の民主主義にも困ったものである。




2012.3.5 築地にて

2012年6月19日火曜日

小沢一郎と愚かな仲間たち②

小沢切りで税と社会保障の一体改革を前に進めよ
東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年3月28日号(ゲラ刷り)

国会は今週も引き続き、参院予算員会を舞台に野党自民党が野田内閣を袋叩きにしている。参院自民党の存在感を見せつけたいのだろう。言うまでもないが、田中直紀防衛相が最大のターゲットである。ボコボコにしたらいい。さっさと問責決議案を提出してクビにすることだ。ただし、参院自民党の役目はそこまで。事後はいよいよ谷垣禎一総裁の出番である。
「首相の選択肢は二つだ。党内融和を重視し、小沢さんにひれ伏すのか。大きな意味で野党との協力を求め、解散して党内を整理するのか」
 自民党の谷垣禎一総裁は25日の講演でこう述べ、消費税増税関連法案の党内調整にもたつく野田佳彦首相に小沢切りを促した。
 谷垣氏は講演後の記者会見で「野田首相が(消費税率引き上げに)非常に強い決意を持っていることは信じようと思っている」とも述べている。
 野党第一党の党首が、ここまで踏み込んだ発言をするからには、野田首相にも誠意のある対応を求めたい。
 小沢切りを決断する一つのタイミングは消費税増税関連法案の閣議決定を予定している3月30日だ。
 野田首相は26日の参院予算員会で「党代表選で最優先の公約に掲げた。不退転の決意で実現しようという思いを共有してもらいながら、引き続きみんなで一緒に法案を提出し、成立に向けて努力していきたい」と述べていた。
 気持ちは分かるが、増税反対派はこれまで散々、政権の足を引っ張ってきたいつもの連中である。党内をまとめるのは至難の業だ。しかも、増税反対派を裏で操る小沢一郎元代表は24日のテレビ番組で「とても採決するような状況にはならない」とまで言い切っている。これでは仮に閣議決定にたどり着けたとしても法案成立どころか、衆院通過さえ危ぶまれよう。
自民党の森善朗元首相が25日の講演で「国のためにこうあるべきだと谷垣さんが思うなら、(消費増税に)賛成してしっかり副総理に入ればいい」と述べていた。たまには良いことも言う。
大連立の是非は別にしても、消費税増税関連法案の成立には民自協力が不可欠だ。小沢切りがその前提条件であれば、野田首相が迷うことはない。 

2012.3.26 築地にて

消費税増税法案の国会提出を邪魔する小沢グループの愚
東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年3月30日号(ゲラ刷り)

「こんな滅茶苦茶な話があるか」
「文句があるやつは9月の代表選で戦えばいい」
怒号と罵声が入り乱れる中で民主党は28日未明、消費税増税関連法案の事前審査を終えた。
 ほんと、滅茶苦茶な話である。何が滅茶苦茶なのかと言えば、昨年秋の党首選で消費税引き上げを主張し圧勝した野田佳彦首相の政権運営に難癖付け、国政を停滞させておきながら平気な顔をしている刑事被告人、小沢一郎元代表とその仲間たちの所業である。
「残念ながら打ち切られたが、最後まであきらめず、これからも議論を求めていきたい」
 とは増税反対派の急先鋒、川内博史衆院議員の弁だ。
 小沢氏本人もテレビ番組で「国会に提出しても議論されるかどうかも見通しが全く立たないまま突っ込んでいく感じだ」と批判するが、そうではなかろう。
消費税増税関連法案は30日の閣議決定を経て国会に提出される。民主党議員としてやるべきことは、政権を支え、法案成立に全力を尽くすことだ。
それが嫌なら離党するのが筋である。折しも国民新党の亀井静香代表も消費増税関連法案に反対している。連立を離脱するそうだから、一緒になって増税反対派の新党を結成したらどうか。その方が国民にも分かりやすい。増税反対派が党を割れば、野田首相も身軽になるからお互いのためだ。
国会は4月に入ると与野党の攻防がいよいよ激しさを増す。自民、公明両党は28日、幹事長・国対委員長会談を行い、参院に田中直紀防衛相の問責決議案を提出する方向で検討に入った。席上、提出時期について自民党の石原伸晃幹事長は「(自民党の)参院側は2012年度予算案が成立した頃を検討している」と説明。これに対して民主党の羽田雄一郎参院国対委員長は記者会見で「問責でゴタゴタして日本の危機は守れるのか」と反論していたが、説得力は今一つ。田中防衛相の進退をめぐり野田首相は早々、厳しい判断を迫られよう。それこそ党内のゴタゴタにいちいち付き合っていたら、政治は前に進まないのである。

2012.3.28築地にて



増税反対で集団離党の構えを見せる小沢グループの愚
東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年4月4号(ゲラ刷り)

消費増税法案の成立が先か、それとも解散総選挙が先か。4月以降、政局の焦点はつまるところこの一点に尽きよう。どちらが先になるにしても民主、自民双方に「話し合い解散」の機運が高まってきていることだけは確かだ。
自民党の谷垣禎一総裁は2日に行った講演で「果敢に突っ込んでいく前から『話し合い解散だ』ということはない。(与野党が)ぶつかり合ったあげく、われわれが言う(法案成立前の)解散に代わるリーズナブルなけじめ論が出てくれば、全く排除するとは言っていない」と述べ、消費増税法案成立後の解散総選挙を容認する姿勢を見せている。
 ここ数日の自民、公明両党幹部の発言を拾ってみれば、まずは自民党の石原伸晃幹事長は野田首相が解散時期を示した上で「(民主党が)最低保障年金と年金一元化を棚上げして自民党と歩調を合わせれば、議論は非常にかみ合ったものになってくる」と言い、同党の茂木敏充政調会長は「(増税に反対する)民主党の小沢一郎元代表や国民新党の亀井静香代表を説得し、納得してもらえないなら、そういう人たちには出て行ってもらう。これぐらいの気概がないと与野党間で真剣な議論ができない」と小沢、亀井切りを求めている。
 もう一人、公明党の漆原良夫国対委員長は「大きな法案の審議は特別委員会を設置して毎日するのが正しいやり方だ」として衆院で100時間の審議時間を求めている。いちいちもっともな話だ。
 野田首相がこれを一つ一つクリアしていけば、消費増税法案の成立が見えてくる。このうち小沢、亀井切りについてはもはや秒読みの段階。消費増税法案に反対する小沢グループは党役職に就く29人が党執行部に辞表を提出している。これは事実上の倒閣運動、野田首相に不信任を突きつけたのも同然である。もちろん、除名、離党覚悟のことだろう。
 2日、同グループでただ一人離党届けを提出した木内孝胤衆議は記者団に囲まれ「自分の信念を貫くには離党が最良だ」と述べていた。
政権与党の一員としての責任を放棄してでも守るべき信念とやらがあるのであれば致し方ない。いずれ小沢氏ら造反予備軍も後に続くことになろう。
 
2012年4月2日 築地にて
 

民自公の大連立で社会保障と税の一体改革のスピードアップを

 社会保障と税の一体改革をめぐる民主党と自民、公明両党の修正協議はこの一両日がヤマ場となる。協議の成否は、最低保障年金制度の創設や後期高齢者医療制度の廃止など、民主党が掲げるマニフェストを撤回するかどうかの一点にかかっている。
自民党は現行制度の維持充実を前提とした同党の社会保障制度改革基本法案を丸飲みするよう迫り、13日の公明党との幹事長会談では15日を期限に修正合意が不調に終われば協議を打ち切る方針を決めている。会談では内閣不信任決議案や問責決議案提出の段取りも話し合われたようだ。
これを受けて野田佳彦首相は同日の参院予算委員会で「成立を期すための大きな提案と受け止めている。可能性を含め子細に検討している」と述べ、直後に臨んだ政府・民主党3役会議で「基本法案に民主党の主張を取り込んで、15日までに修正合意し、まとめてほしい」と指示を出した。と、ここまでは本欄の描いたシナリオ通りの展開である。
また、これとは別に自民、公明両党は「原子力規制委員会」設置法案やイラン産原油の輸入継続を図るための特別措置法案、「大阪都」構想実現のための法案の3法案について今国会会期中の成立に前向きな姿勢を見せている。有り難いことではないか。
会期末が迫る中、今年度予算の執行に必要な公債特例法案をはじめ、ことほど左様に国民生活に直結する重要法案が成立を待っている。今回の修正協議が成れば、これらの法案処理のスピードアップにもつながるはず。
ところが野田政権を支える立場の民主党内は法案処理には目もくれずに、相変わらずの足の引っ張り合いである。呆れるばかりだ。
「今は与野党合意に苦労している。解散総選挙後に大連立か、協議体をつくって民自公3党が参加し、懸案を解決していくことが必要だ」
公明党の井上義久幹事長は12日の講演でこう述べた。大連立には異論もあろうが、何も決められない今の民主党政権よりはまだマシだ。今回の修正協議がそのための地均しになれば良いのだが。

2012.6.13   築地にて

2012年6月18日月曜日

小沢一郎と愚かな仲間たち①

検審控訴で遠退いた小沢一郎の完全復権
●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年5月11日号 

民主党の小沢一郎元代表(69)の一審無罪判決を受けて今後の対応を協議していた検察官役の指定弁護士3人は9日、「一審判決には看破しがたい事実誤認がある」(大室俊三弁護士)として東京高裁に控訴する方針を決めた。賢明な判断である。
そもそも一審判決は、政治資金報告書への虚偽記載で小沢氏と元秘書との間に「報告・了承」があったことを認めていながら、共謀罪については「虚偽記載にあたると認識していなかった可能性があり、故意の立証が不十分」と退けてしまった。限りなく黒に近い無罪判決である。
しかも、無罪判決の根拠となった虚偽記載の認識については公判で争われた形跡はなく、無罪判決のための後付けの理屈でしかない。指定弁護士側からすれば「看破しがたい事実誤認」である。高裁の判断が見ものだ。とはいえ、指定弁護士側もこれまで以上により説得力のある「故意の立証」が求められよう。
かくして渦中の小沢氏は再び刑事被告人に逆戻りだ。これでは党員資格停止処分が解除されても、完全復権の道のりはなお険しく、いいや、ほとんど絶望的である。
小沢氏は「理解に苦しむ。早期に公訴棄却もしくは無罪という結論が得られるよう、万全の対応を取りたい」との談話を発表したものの、手詰まり感は否めない。
 むちろん、政局混迷の元凶ともいえる小沢氏の不幸は、国民にとっては歓迎すべきことだ。
今国会、税と社会保障の一体改革はせめて道筋だけでも示してもらわなければ困る。それを消費税増税一つだけを取り上げ、政局の道具にするような小沢氏の政治手法は百害あって一利もない。本来は司法の手を煩わせるまでもなく、政治の自浄力が問われるところだ。
小沢氏の控訴を決めた指定弁護士の判断を待たずに党員資格停止処分の解除に走ったのは民主党の輿石東幹事長である。声を大にして異を唱えた党幹部は前原誠司政調会長一人のみ。情けない話だが、これが民主党の限界である。

2012.9  築地にて


刑事被告人・小沢一郎への過剰な期待は禁物である
●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年6月1日(ゲラ刷り)
 国民注視の中で30日に行われた野田佳彦首相と民主党の小沢一郎元代表との話し合いは不調に終わった。消費税増税関連法案の今国会成立に協力を求める野田首相に対して小沢元代表は「大増税の前にやることがある。賛成と言うわけにはいかない」とこれを拒否。会談後、記者団を前に「政権交代に向けた総選挙で無駄を省き、その財源で政策を実行すると言った。国民は約束が緒についていないという認識を持っている。年金制度改革などのビジョンが忘れ去られ、増税だけが前面に出ている。とても一体改革とは言えない」と述べ、消費税増税に前のめりの野田首相を批判した。
会談をセットした輿石東幹事長は「党内結束のため、さらに汗をかきたい」と述べていたが、野田首相に仕える幹事長としてやるべきは、小沢氏を説得し、党の決定に従わせることである。それができなければ、小沢氏には党から追い出すのが次の仕事だ。汗のかき方を間違わないでもらいたい。
「あくまでも、民主党の党内問題だ。野田さんには党内対策のため(だけ)に、エネルギーを注ぐひまはない。大事なのは野党にどう対応していくかだ。仮に党内が収まっても成立するわけじゃない」
 たちあがれ日本の園田博之幹事長の発言だが、まったく同感である。
 この日行われた衆院の社会保障・税一体改革特別委員会で岡田克也副総理は「最終的に(小沢氏の)了解を得られなかったのは残念だが、首相の全くぶれない姿勢が明らかになった」と述べていた。
中途半端な妥協は国益を損なう。ここまでくれば野田首相も小沢元代表も党分裂覚悟でそれぞれが信じる道を突き進むことだ。どちらが正しい道かは、いずれ国民が判断するだろう。
もっとも小沢氏の政治行動には過去、国民は幾度となく振り回され、煮え湯を飲まされてきた。ましてや刑事被告人となった小沢氏の政治力に過剰な期待は禁物である。


2012.5.30  築地にて

小沢グループの邪悪な謀み粉砕せよ
●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年6月8日号(ゲラ刷り)


自民党の谷垣禎一総裁は6日、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革法案をめぐる民主党との修正協議に応じる意向を示した。
周知のとおり、野田首相は同関連法案の衆院採決の期限を6月21日の会期末と決め、自ら退路を絶った。逆算すれば、18日にメキシコで開催のG20首脳会議出発前、15日までに修正協議をまとめておかなければ国会日程上、間に合わない。そうなれば野田首相は政治責任を問われて政局は混乱し、国民生活は大打撃を受けるところだった。谷垣総裁の決断を高く評価したい。
さて、そうであれば次は野田首相が決断する番だ。社会保障と税の一体改革関連法案は全部で7本あるが、修正協議に費やす時間は残り少ない。両党の主張に隔たりが大きい法案はこの際、継続審議なり廃案にして、仕切り直してはどうか。自民党は最低保障年金制度や後期高齢者医療制度廃止の撤回を求めている。社会保障制度の大改革は与野党の立場を越え、じっくり時間をかけて結論を出した方がいい。
それに7法案すべてを今国会で成立させるためには大幅な会期延長が必要となる。参院の審議日程を衆院と同じ100時間程度確保するには延長幅はざっと40日、最悪8月お盆をまたぐ長丁場となろう。そして9月、民主、自民両党は代表選に雪崩れ込むが、野田首相と谷垣総裁の2人共に再選される保障はない。民主党内には国会会期の大幅延長を口実にした代表選前倒しの声もある。野田首相の再選を阻み、修正協議の破綻を狙ったものだ。誰と言わずともお分かりだろう。消費税増税と話し合い解散に反対する連中である。
彼らの邪悪な謀みを粉砕するためにも、野田首相は欲張らずに合意可能な修正法案を成立させ、できるだけ早く国会を閉じてしまうことだ。
その上で話し合い解散に進むもよし、あるいはこのまま民自大連立で積年の政治課題を一気に片づけてしまうのもいい。解散は先送りとなるが、自民党の政権参加で政治が前に進むのであれば、反対する理由はない。国民も理解してくれるだろう。

2012.6.6  築地にて

2012年6月14日木曜日

民主と自民jは増税先行で社会保障と税の一体改革法案の修正協議の合意を急げ

 社会保障と税の一体改革関連法案の修正協議は今週がヤマ場となる。民主、自民両党は11日、税制分野の修正協議で消費税税率10パーセントを2段階で引き上げることで一致したが、焦点となる低所得者層対策については結論を持ち越した。
 政府・民主党が税率を10パーセントに引き上げた段階で所得税控除と現金支給を組み合わせた「給付付き税額控除」の導入を検討している。これに対して自民党を税率8パーセントに引き上げた段階で生活必需品などへの軽減税率の導入を検討すべきだと主張している。ただ、消費税増税の基本的方向で一致し、双方が低所得者対策の必要性を認めているのだから、細かい話は後回しにしてでも法案採決の環境作りを急ぐことだ。
 一方、前日に行われた社会保障分野の修正協議は自民、公明両党は最低保障年金制度の創設と後期高齢者医療制度廃止の撤回を求めたが、民主党が難色を示して物別れに終わった。双方の隔たりは大きい。
しかしである。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が実施した直近の世論調査によれば、内閣支持率は28・2パーセントでほぼ横ばい、不支持率は依然として6割台の高水準だ。民主党の支持率は13・1パーセントで政権交代以降最低を記録した。
すでに国民の信を失ってしまった野田政権に与野党が大きく対立する社会保障制度の大改革をまとめられるわけがない。
 幸いなことに自民党は将来的な年金・医療制度改革については「社会保障制度改革国民会議」に議論を委ねるよう求めており、これに乗っかれば少なくとも消費税増税だけは実現できる。
 増税先行との批判は免れないが、野田首相の覚悟次第だ。仮に今国会、消費税増税関連法案だけを可決成立させた場合、8パーセント引き上げは14年4月、15パーセントへの引き上げは2015年10月だ。実際の引き上げを起点に考えれば、社会保障制度の大改革については無理して結論を急ぐことはなかろう。

2012.06.11 築地にて

野田政権の1年その⑨

●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年6月6日号(ゲラ刷り)

 野田佳彦首相は4日午後、国会会期末が迫る中でようやく内閣改造に踏み切った。国会会期中の改造人事は異例だが、その理由を野田首相は記者会見で「社会保障と税の一体改革を含め、諸懸案を前進させるための環境整備をすべく、機能強化の観点から適材適所の人事だ」と述べた。言うまでもなく、自民党が求める問責2閣僚のクビを切るための改造である。
「私は職責を果たしてきた。今後とも日本の安全保障、沖縄の負担軽減、自衛隊の活動に力を尽くしたい」(田中直紀防衛相)
「私自身の不注意があった。国会でブレーキになると国民に迷惑が掛かるから、首相の指示に従った」(前田武志国交相)
問責2大臣はそれぞれにこんなコメントを残して閣外に去った。
 後任の防衛相には拓殖大学大学院の森本敏教授が、国交相には参院から羽田雄一郎国対委員長が起用された。この他に農林水産相に参院から郡司彰農林副大臣、法務相に滝実法務副大臣、国民新党枠の郵政民営化担当相は松下忠洋副大臣が昇格した。
こう言っては失礼だが民主党の人材もついに底をついたか。機能強化どころか、「野田残飯内閣」である。
とりわけ防衛相の民間人起用には開いた口が塞がらない。テレビで馴染みの安全保障の専門家らしいが、一民間人に国家国民の命を丸投げするとは無責任極まりない。
自民党はこの人事を「田中氏で相当懲りたので専門家を外から登用したと思うが、シビリアンコントロールや安全保障は国の根幹。民主党内に適材がいないことの表れだ」(石原伸晃幹事長)、「政治家でない以上、責任を取れない。やってはならないことだ」(石破茂元防衛相)と批判している。同感だ。
 改造人事に合わせ、野田首相は同日の政府・民主党3役会議で自民党消費税関連法案の修正協議を開始するよう指示し、輿石東幹事長に対して自民党が修正協議の前提としている衆院社会保障・税一体改革特別委員会の中央公聴会日程を詰めるよう迫った。
野田首相にとっては国の安全保障より、消費税増税の実現が大事とみえる。ならば自民党には法案成立への協力をお願いしたい。こんな政権がダラダラ続いたら年金を受け取るより先に、この国が滅んでしまわないか心配である。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年6月8日号(ゲラ刷り)

自民党の谷垣禎一総裁は6日、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革法案をめぐる民主党との修正協議に応じる意向を示した。
周知のとおり、野田首相は同関連法案の衆院採決の期限を6月21日の会期末と決め、自ら退路を絶った。逆算すれば、18日にメキシコで開催のG20首脳会議出発前、15日までに修正協議をまとめておかなければ国会日程上、間に合わない。そうなれば野田首相は政治責任を問われて政局は混乱し、国民生活は大打撃を受けるところだった。谷垣総裁の決断を高く評価したい。
さて、そうであれば次は野田首相が決断する番だ。社会保障と税の一体改革関連法案は全部で7本あるが、修正協議に費やす時間は残り少ない。両党の主張に隔たりが大きい法案はこの際、継続審議なり廃案にして、仕切り直してはどうか。自民党は最低保障年金制度や後期高齢者医療制度廃止の撤回を求めている。社会保障制度の大改革は与野党の立場を越え、じっくり時間をかけて結論を出した方がいい。
それに7法案すべてを今国会で成立させるためには大幅な会期延長が必要となる。参院の審議日程を衆院と同じ100時間程度確保するには延長幅はざっと40日、最悪8月お盆をまたぐ長丁場となろう。そして9月、民主、自民両党は代表選に雪崩れ込むが、野田首相と谷垣総裁の2人共に再選される保障はない。民主党内には国会会期の大幅延長を口実にした代表選前倒しの声もある。野田首相の再選を阻み、修正協議の破綻を狙ったものだ。誰と言わずともお分かりだろう。消費税増税と話し合い解散に反対する連中である。
彼らの邪悪な企みを粉砕するためにも、野田首相は欲張らずに合意可能な修正法案を成立させ、できるだけ早く国会を閉じてしまうことだ。
その上で話し合い解散に進むもよし、あるいはこのまま民自大連立で積年の政治課題を一気に片づけてしまうのもいい。解散は先送りとなるが、自民党の政権参加で政治が前に進むのであれば、反対する理由はない。国民も理解してくれるだろう。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年6月13日号(ゲラ刷り)


 社会保障と税の一体改革関連法案の修正協議は今週がヤマ場となる。民主、自民両党は11日、税制分野の修正協議で消費税税率10パーセントを2段階で引き上げることで一致したが、焦点となる低所得者層対策については結論を持ち越した。
 政府・民主党が税率を10パーセントに引き上げた段階で所得税控除と現金支給を組み合わせた「給付付き税額控除」の導入を検討している。これに対して自民党を税率8パーセントに引き上げた段階で生活必需品などへの軽減税率の導入を検討すべきだと主張している。ただ、消費税増税の基本的方向で一致し、双方が低所得者対策の必要性を認めているのだから、細かい話は後回しにしてでも法案採決の環境作りを急ぐことだ。
 一方、前日に行われた社会保障分野の修正協議は自民、公明両党は最低保障年金制度の創設と後期高齢者医療制度廃止の撤回を求めたが、民主党が難色を示して物別れに終わった。双方の隔たりは大きい。
しかしである。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が実施した直近の世論調査によれば、内閣支持率は28・2パーセントでほぼ横ばい、不支持率は依然として6割台の高水準だ。民主党の支持率は13・1パーセントで政権交代以降最低を記録した。
すでに国民の信を失ってしまった野田政権に与野党が大きく対立する社会保障制度の大改革をまとめられるわけがない。
 幸いなことに自民党は将来的な年金・医療制度改革については「社会保障制度改革国民会議」に議論を委ねるよう求めており、これに乗っかれば少なくとも消費税増税だけは実現できる。
 増税先行との批判は免れないが、野田首相の覚悟次第だ。仮に今国会、消費税増税関連法案だけを可決成立させた場合、8パーセント引き上げは14年4月、15パーセントへの引き上げは2015年10月だ。実際の引き上げを起点に考えれば、社会保障制度の大改革については無理して結論を急ぐことはなかろう。


野田政権の1年その⑧

 ●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年5月16日号(ゲラ刷り)

 読売新聞が行った直近の世論調査で野田内閣の支持率は30パーセントだった。意外に堅調である。消費税の引き上げにも56パーセントが賛成している。一方で審議中の政府、民主党の消費税増税法案には48パーセントが反対している。また、自民、公明両党が早期実施を求める衆院の解散総選挙の時期については、来夏の任期満了まで「行う必要がない」との回答が42パーセントに上った。
 つまり、国民の多くは消費税増税を法案の成立を条件とする今国会中の話し合い解散には否定的なのである。
 おそらく消費税の引き上げに反対する国民の多くが目先の重税感に惑わされているかだろう。中でも日常生活により不安を覚える低所得者層は消費税増税へのアレルギ反応が強い。しかしながら、消費税増税で社会保障費の財源不足が解消されれば、その果実は何よりその低所得者層や社会的弱者に真っ先に振り分けられることになるのだ。それに財政再建を先送りすれば、国債償還の金利負担が財政を圧迫し、社会保障費の先細りを招くことになり、低所得者層や社会的弱者の切り捨てにつながる。だからこそ、消費税増税を急がなければならないのである。
 もう一つ解散総選挙の時期について、世論調査に従えば任期満了まで残り1年、衆参同日選挙となる。
「なかなか話し合い解散にはならないのではないか」
民主党の輿石東幹事長は14日の記者会見でこう述べた。先週11日には「来年7月に参院選がある。次期衆院選は一緒でいいんじゃないですか。ダブル選挙だろう」とも述べている。
世論調査の結果通りの発言だが、幹事長とはいえ、参院議員の輿石氏には政局を作り出すだけの求心力はない。ましてや今国会、野田佳彦首相が消費税増税法案の成立に政治生命を賭して臨んでいる以上、自民、公明両党の協力を得るためにいずれ近いうちに解散カードは切ることになろう。
政治を前に進めるためであれば、きっと国民も理解してくれるに違いない。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年5月23日号(ゲラ刷り)


国会は21日、衆院の社会保障・税一体改革特別委員会で2日目の基本質疑が行われ、法案成立のカギを握る自民党から石原伸晃幹事長、伊吹文明元財務相、鴨下一郎元環境相ら政策通、実力者が質問に立った。
 内容を大雑把に言えば、消費税の引き上げを実現するためには問責2大臣の交代と、民主党のマニフェスト違反を率直に認め、国民に謝罪した上で自民党案を丸飲みすること。
また、伊吹氏は「民主党政権に改革を実行する正当性はない」とも述べており、早期の解散総選挙を求め、今国会、万が一にも法案採決を先送りするようなことになれば、内閣不信任決議案や首相問責決議案の提出も辞さずの構えだ。これまで通り、一貫した主張である。
これに対し野田佳彦首相は「真摯な議論を通じ結論を出す」と述べ、民主党マニフェストにある最低保障年金制度などの撤回に含みを持たせた。
野田首相はまた、民主党の輿石東幹事長が先に「衆院小選挙区の一票の格差が解消されていないため解散は困難」との見方を示していることを「解散は大衆党議で決める話ではない。自分の腹の中で(決断し)、必要なときに行うのが基本だ」と述べた。これは早期の解散総選挙の可能性を匂わせたもの。野田首相と自民党との距離は少しずつだが、確実に狭まりつつある。
これに呼応して民主党は同日、社会保障・税一体改革推進会議の初会合を行い、議長の輿石幹事長は「党政府で言うことが違っているとの報道があるが、そんなことがないように一体で臨んで行こう」と述べた。
同会議のメンバーには藤井裕久党税制調査会長、仙石由人政調会長代行、衆院社会保障・税一体改革特別委員会の鉢呂吉雄筆頭理事らが顔を揃え、野党との修正協議で党内意見を集約する場となる。
とはいえ今国会、6月21日の会期末まで残り1カ月。民自協力のスピードアップにはやはり問責2大臣には犠牲になってもらうしかない。
一部には民自接近を大政翼賛、談合政治と批判する声があるが、税制や社会保障制度、選挙制度などの大規模な国家システムの変更が、政権交代の度に、あるいは政権与党だけの思惑だけでコロコロ変わるようでは混乱を招く。談合が反社会的なのは、国民が不利益を被る場合であり、刑法や独禁法が禁じている通りだ。
これに対して与野党協議は政治が合意形成を得るための手段であり、それが国益にかなうならば談合批判は当たらない。むしろ、大歓迎である。


 
●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年5月25日号(ゲラ刷り)



格付け会社のフィッチ・レーティングスが22日、日本国債の格付けを「AA-」から「A+」にワンランク引き下げた。
日本国債は昨年1月にスタンダード&プアーズが、同年8月に米ムーディーズ・インベスターズ・サービスがいずれも下から4番目に格下げしている。それがさらに下から数えて3番目にまで落とされてしまった。
「日本の公的債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率が高水準で上昇しており、国債の信用リスクが高まっている」(フィッチ社)のが格下げの理由である。すぐ下の「A」ランクにはスペイン、最下位「A-」ランクにはイタリアがいるが、周知のとおり、いずれも先に財政破綻したギリシャの次が懸念される問題国だ。
 日本の財政再建の先行きにも同様に厳しい見通しを示したものと言えよう。消費税増税法案の成否についても当然ながら「15年度までに消費税率を5パーセントから10パーセントに引き上げ、財政健全化を図る戦略は、政治リスクにさらされている」(前同)と悲観的である。
 野田佳彦首相は23日の衆院社会保障と税の一体改革特別委員会でこの事を問われ、「民間会社の評価について逐一コメントしない」としつつ、「財政健全化に関わる法案の審議に市場も警戒感を持ち、国際社会も非常に注目していることは心の中に抑えながら議論しなければいけない」と述べた。
 ならば野田首相は自民党の声にしっかり耳を傾けることだ。
 破綻した民主党マニフェストの辻褄合わせのための消費税増税に自民党は反対している。本欄も同じ立場だ。このまま人気取りのバラマキ政策を続けていては消費税率をいくら上げてもキリがない。ましてや先の総選挙で惨敗した自民党であればなおさらである。
 自民党の伊吹文明元幹事長ではないが、そこのところで野田首相が「チマチマ」していては話が前に進まない。つまりは「やる気がない」ということになる。
 民主党内の一部からは、今国会中の消費税増税関連法案の採決先送りや大幅な会期延長論も囁かれている。愚かな輩だ。
 民自協力が成らなければ、日一日と借金返済の金利がかさむばかりか、今年度予算の執行を担保する国債すら発行できない。苦しむのが国民だということがどうして解らないのか。

●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2102年6月1日号(ゲラ刷り)

国民注視の中で30日に行われた野田佳彦首相と民主党の小沢一郎元代表との話し合いは不調に終わった。消費税増税関連法案の今国会成立に協力を求める野田首相に対して小沢元代表は「大増税の前にやることがある。賛成と言うわけにはいかない」とこれを拒否。会談後、記者団を前に「政権交代に向けた総選挙で無駄を省き、その財源で政策を実行すると言った。国民は約束が緒についていないという認識を持っている。年金制度改革などのビジョンが忘れ去られ、増税だけが前面に出ている。とても一体改革とは言えない」と述べ、消費税増税に前のめりの野田首相を批判した。
会談をセットした輿石東幹事長は「党内結束のため、さらに汗をかきたい」と述べていたが、野田首相に仕える幹事長としてやるべきは、小沢氏を説得し、党の決定に従わせることである。それができなければ、小沢氏には党から追い出すのが次の仕事だ。汗のかき方を間違わないでもらいたい。
「あくまでも、民主党の党内問題だ。野田さんには党内対策のため(だけ)に、エネルギーを注ぐひまはない。大事なのは野党にどう対応していくかだ。仮に党内が収まっても成立するわけじゃない」
 たちあげれ日本の園田博之幹事長の発言だが、まったく同感である。
 この日行われた衆院の社会保障・税一体改革特別委員会で岡田克也副総理は「最終的に(小沢氏の)了解を得られなかったのは残念だが、首相の全くぶれない姿勢が明らかになった」と述べていた。
中途半端な妥協は国益を損なう。ここまでくれば野田首相も小沢元代表も党分裂覚悟でそれぞれが信じる道を突き進むことだ。どちらが正しい道かは、いずれ国民が判断するだろう。
もっとも小沢氏の政治行動には過去、国民は幾度となく振り回され、煮え湯を飲まされてきた。ましてや刑事被告人となった小沢氏の政治力に過剰な期待は禁物である。