2014年6月30日月曜日

先細る安倍政権の骨太成長戦略


首相の諮問機関、政府税制調査会は25日の会合で法人税改革の最終案を大筋了承した。

法人税についてはすでに安倍晋三首相が現行約35パーセントを15年度から数年間で20パーセント台に引き下げることを決めている。焦点となっているのは実効税率引き下げに伴う税収減の穴埋め財源だが、最終案は「必ずしも単年度での税収中立である必要はない」として減税先行を容認。アベノミスクの経済成長を先食いするものだが、失敗すればさらなる財政悪化を招く。結果、借金を背負うのは子や孫の世代であることを指摘しておきたい。

 政府はこの前日、経済財政諮問会議、産業競争力会議の合同会議(議長・安倍晋三首相)で経済財政運営の大枠を示す「骨太の方針」とアベノミクスの改訂版となる経済成長戦略を取りまとめ、規制改革実施計画と併せて閣議決定した。

法人税の実効税率引き下げは改訂版アベノミクスの目玉政策の一つだ。加えて政府は農業・雇用・医療の3分野を中心とした規制緩和によって「日本の『稼ぐ力』を取り戻す」と宣言。法人税減税と規制緩和で民間投資を活性化させ、デフレ脱却と経済再生を目指す。

安倍晋三首相は閣議後の記者会見で「景気回復の風は日本の隅々まで行き渡っておらず、全国津々浦々に届けることがアベノミスクの使命だ。成長戦略にタブーも聖域もない。あるのはどこまでもやり抜く強い意志だ」と述べた。

やる気があるのは結構なことだ。しかしながら、これまでの円安と株高で企業は十分に潤ったはずだが、だからといって国民の暮らしが良くなったわけではない。その上、さらに消費税率を予定通り10パーセントにまで引き上げるとなれば個人消費は落ち込み、企業は設備投資に二の足を踏むことになろう。なおも楽観を許さないアベノミスクである。

2014年6月27日金曜日

驕る安倍自民党


 福島原発の放射能汚染土を保管する中間貯蔵施設の建設をめぐり「最後は金目でしょ」と発言して批判に晒されている石原伸晃環境相は23日、建設候補地の福島県大熊、双葉両町を訪ねて直接謝罪した。

中間貯蔵施設を押し付けられる地元住民の気持ちを思えば、閣僚として恥ずべき発言である。あるいはこの発言が住民の態度を硬化させ、建設計画そのものが宙に浮くことになれば、震災復興は遠退く。謝罪して済む話ではない。辞任こそ免れたが、9月に予定されている内閣改造で交代は確実だ。一時はポスト安倍を伺う存在だったが、これで将来にわたって首相の芽はなくなったとみていい。来年秋の自民党総裁選で再選を目指す安倍晋三首相からすればライバルが一人、消えたことにもなる。

 とはいえ、問われているのは石原氏の政治家としての資質だけではない。多数を背景にした安倍政権そのものの強引な国会運営と慢心が生んだ石原発言でもあるのだ。

 先週末には麻生太郎副総理兼財務相が、「勉強ができない、けんかも弱い、だけど金持ちのセガレ、これが一番(イジメを)やられる」と発言。集団的自衛権容認を訴える中で日本の置かれた安全保障環境をイジメられる子供の立場に置き換えたものらしいが、いかにも突飛な喩えであり、子供たちのイジメを助長しかねない失言だった。与野党伯仲の国会会期中なら間違いなく審議がストップしたはずだ。

 集団的自衛権の行使容認について安倍自民党は海上自衛隊を中東ホルムズ海峡に派遣して機雷掃海をやらせ、さらには国連軍の戦闘行為への参加も可能だとしている。

日本が輸入する原油の8割が通過するホルムズ海峡が機雷で封鎖されれば経済的ダメージは計り知れない。しかし、だからといって、これを許せば自衛隊は世界中どこでも集団的自衛権の行使や国連軍の一員として戦闘行為が可能となる。戦後日本の安全保障戦略を根底から覆すものだ。数に驕り、謙虚さを失った安倍自民党はいずれ国民有権者の鉄槌を喰らうだろう。

2014年6月21日土曜日

公明党が創価学会池田名誉会長を戦争犯罪人にする


 国会は20日に事実上幕を閉じる。自民、公明両党は18日の幹事長、国対委員長会談で集団的自衛権の行使容認の閣議決定を先送りすることで合意した。

 とはいえ、公明党が早々連立離脱カードを封印してしまった以上、安倍首相の暴走を止める手立てはない。あるいは、山口那津男代表が混乱の責任を取り辞任、新たな代表の元で仕切り直しするとなれば結末は変わってこよう。

 公明党にとって護憲平和の看板を下ろすことは党存続にかかわる。このままズルズル、安倍政権の「下駄の雪」として生き恥を晒すのか。それとも結党の原点に立ち戻り、党再生の道を選ぶのか。腹をくくることだ。

 連立離脱を恐れることはない。このまま政権与党に留まれば、公明党だけでなく創価学会の池田大作名誉会長までが後々、戦争犯罪人として歴史に名を刻むことになるかもしれない。それに安倍晋三首相が来年秋の自民党総裁選で再選されるとは限らない。しばしの間、政権の外から事の成行きを見守ることも選択肢の一つだ。

 安倍首相が強気の姿勢を崩さないのは、維新やみんなの党の数をあてにしてのことだろうが、全国に強固な党組織、支持基盤を持たない政党は、いずれ消えてなくなる。しかも、自民党議員の多くは創価学会票の上積みで当選を果たしている。来年の統一地方選とその先の国政選挙を見据えれば、公明党抜きの自民党政権はあり得ない。

 万が一にも安倍首相が、公明党を連立離脱に追い込むようなことになれば、それこそ自民党内から反安倍の狼煙が上がるはず。その動きに乗じて自民党内に手を突っ込み、安倍首相の総裁再選を阻止すればいいのだ。

 あるいは公明党が閣議決定の閣僚署名を拒否し、閣外協力に転じるだけでも安倍首相の政治的求心力は確実に弱まる。

併せて今のうちから500万票とも言われる支持母体の創価学会員を総動員して自民党に入党させ総裁選の投票権を得ておくことだ。

そうすれば、公明党が信頼できる新しい総理総裁の下、再び連立内閣に加われば安倍内閣の閣議決定を覆すこともできよう。

中国軍機の異常接近で衝撃のビデオ映像公開


 中国軍機が東シナ海上空でまた、自衛隊機に異常接近したそうだ。防衛省の発表では11日午前11頃と正午頃の2度、中国軍のSu27戦闘機2機が航空自衛隊のYS11EB電子情報収集機と海上自衛隊のOP3C画像情報収集機の背後から30~45メートルまで近づき抜き去ったとのこと。翌日には外務省の斉木昭隆次官は前回同様、駐日中国大使に厳重抗議を行っている。

 ところが、中国側は謝罪するどころか非は日本側にあるとして、パトロール中の中国機に自衛隊のF15戦闘機2機が接近、追跡してきたとする衝撃のビデオ映像を公開したのだった。

 非はいったいどちらにあるのか。小野寺五典防衛相は12日の記者会見で「映像を見たが、一定の距離を取って自衛隊機は安定した飛行をしている」と反論。菅義偉官房長官は13日の記者会見で「自衛隊機の対領空侵犯措置は自衛隊法に従い、国際法の範囲内で適切に行われている」として映像の撤回を求めている。

 日本側の主張を信じたいところだが、それにはやはり、中国の主張を覆すための映像なり飛行記録なりの確たる証拠を示して欲しいものだ。あるいは公開できない軍事機密であれば、日中で水掛け論になるに決まっているのになぜ、異常接近の事実だけを公表したのか理解に苦しむ。後ろめたいところでもあるのかと勘繰りたくもなる。

 12日に行われた参院外交防衛委員会で小野寺防衛相は今後、自衛隊機にビデオカメラを設置するなどの対応策を検討する考えを示したが、もっと早くに手を打つべきところだ。

 もとより、中国の狙いが自ら敷いた防空識別圏の既成事実化にあることは言うまでもないが、どちらに非があろうとも事故が起きてからでは後の祭りだ。 

2020年には東京五輪が開催される。万が一にも民間航空機が巻き添えになるようなことになれば、取り返しがつかない。日中の防空識別圏が重なる空域での安全ルールを早急に詰める必要があろう。

集団的自衛権で公明党をビビらせた政教一致の脅し


 今国会はさしたる波乱もなく22日に会期末となる。残すところ政府は年末に取りまとめる来年度予算案と税制大綱に向けた「骨太の方針」、そしてもう一つが新たな日米ガイドライン作成のために集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈の見直しを急ぎ閣議決定したいところだ。

 このうち骨太の方針について自民党は11日、政調全体会議・日本経済再生本部合同会議が開き、概ね政府与党内の調整を終えた。

 注目された法人税の実効税率引き下げには党内になお慎重論が燻っているが、安倍首相の意向通り、来年度から数年かけて20パーセント台(現行34・62パーセント)に引き下げることが骨太の方針に盛り込まれる。

 消費税増税や社会保障費の負担増で国民に我慢を強いる中での法人税率の大幅な引き下げが近い将来、安倍政権の終わりが始まる分岐点に位置づけられることになるかもしれない。

 また、集団的自衛権については同日、公明党との調整役を担う自民党の高村正彦副総裁が北川一雄副代表との会談で、20日までに閣議決定したいとの意向を伝えたが、公明党はなおも慎重姿勢を崩していない。

 この前日に行われた「安全保障法整備に関する与党協議会」では自衛隊による米艦防護の憲法解釈で激論が交わされている。

 際限のない集団的自衛権行使に歯止めをかけたい公明党は個別自衛権の拡大解釈で対応できるとし、自民党がこれに反論する構図だ。会期末の閣議決定を波乱なく終えるには、自民党の譲歩が必要なところだ。

 ところが同じ日、内閣官房参与の飯島勲氏が講演で公明党が集団的自衛権の行使容認を認めなければ、同党と支持母体「創価学会」の関係で従来「政教分離原則」に反しないとしてきた憲法解釈を政府が見直す可能性を指摘。菅義偉官房長官はこれを直ちに否定したものの、こうした脅しともとれる発言が政権中枢部から発信されたことが少なからず与党協議に影響を及ぼすことになろう。脅しに屈服する形で自民党の主張を飲み込めば、政教一致を自ら認めることになるからだ。公明党の出方に注目したい。

天井が見えた日本の経済成長と日銀の言い逃れ


「2020年度のプライマリーバランス(国と地方の基礎的財政収支)黒字化と財政健全化を進めるが、経済成長をしっかりと進めるうえで法人税改革を行う」

 安倍晋三首相は9日午前の参院決算委員会でこう述べ、来年度からの法人税の実効率引き下げを実施する意向を示した。

 周知のとおり、安倍政権の経済再生戦略は経済成長と財政健全化を同時に成し遂げようとするものだが、共倒れすれば日本経済は壊滅的なダメージを受ける。

 麻生太郎財務相は6日の記者会見で税率引き下げに伴う恒久的な穴埋め財源の必要性を説き、経済成長による税収増を当てにした無条件の引き下げには慎重姿勢を示している。

一方、これに異を唱えるのが甘利明経済再生担当相だ。同日の記者会見で「経済規模を大きくするという視点を忘れては財政再建できない」と述べ、税収増を穴埋め財源に活用すべきだと主張。上手くいけば、それにこしたことはない。だが、経済は生き物だ。楽観は禁物である。

日銀の黒田東彦総裁は7日に開かれたヨルダンの国際経済学会でアベノミスクの金融緩和策について「金融市場、実態経済および物価、期待のいずれもが好転しており、所期の効果を発揮している」と述べた。

しかし、本当にそうか。とりわけ実態経済はいまだ成長軌道に乗ったとは言い難く、一進一退の蛇行線を描いている。

6日に内閣府が発表した4月の景気動向指数は前月比3・4パーセント下落、2か月ぶりに悪化し転じた。東日本大震災が発生した11年3月の6・7パーセント以来の下げ幅だ。景気の基調判断も「改善している」から12年10月以来、1年6か月ぶりとなる「足ふみしている」に下方修正された。

4月の消費税率引き上げの影響もあろうが、安倍首相は今秋にはさらに10%に引き上げる意向示している。先行きはなお不透明だ。

だからか、黒田総裁も先の講演で「効果や波及メカニズムは解明されていない点もある」と述べている。つまり、日銀としてやることやり、成果も出たが、後のことは分かりません、と言っているのだ。

しかも、日銀の佐藤健裕審議委員は5日の講演で「日本経済は思いの外、早く供給の天井(限界)にぶつかりつつある。より望ましいのは生産性の向上に見合った賃金の上昇であり、それとバランス良く物価が上がっていく姿だ」と述べている。

内需拡大による持続的な経済成長を目指したはずのアベノミスクの成果が、限定的なものに止まっていることを認めたものだ。

それでどうやって法人税減税の財源穴埋めをするのか。先を確実に見通した議論をするべきだろう。

2014年6月11日水曜日

法人減税と献金あっせん再開にみる新たな政財癒着の構図


政府・与党は今月まとめる経済財政運営の「骨太の方針」に法人税の実効税率の引き下げを明記する方向で調整に入った。安倍晋三首相の意向に沿ったものだ。

「グローバル経済の中で競争に打ち勝っていけるよう、法人税の構造を成長志向型に変える」

 安倍晋三首相は3日、来賓として出席した経団連の定時総会のあいさつでこう述べた。

 これに対してこの日、経団連新会長に選出された東レの榊原定征会長(71)は、就任のあいさつで「政治と経済は車の両輪。政治との連携を一段と強め、強い経済の実現に協力していく」と述べ、現状35パーセント程度の法人税実効税率を将来的にはOECD並みの25パーセントまで引き下げるよう強く求め、その見返りに長く途絶えていた自民党に対する「政治献金のあっせん」の再開に前向きな姿勢を見せている。

 法人税の実効税率引き下げは、安倍政権の経済再生戦略の目玉だ。首尾よく企業の競争力が高まり、税収増につながればいいが、政府与党内には税収の落ち込みによる財政規律の乱れを危惧する声も根強く残る。

 引き下げるにしても最低限、「恒久財源を確保し、(増減税が同額の)税収中立の中で実現する。単年度の税収の上振れを財源とすることは厳に慎むべきだ」と自民党税制調査会の野田毅会長はクギを刺す。

さらに言えば、恒久財源探しの矛先が配偶者控除の見直しなど、国民生活を圧迫するようなことがあってはならない。

厚労省の毎月勤労統計調査(速報)によると4月、一人当たりの現金給与総額に物価変動の影響を加味した実質賃金指数は、前年同月比で3・1パーセント下落、09年12月の4・3パーセント以来のマイナス幅だった。

現金給与総額から残業代などを差し引いた所定内給与は0・2%減で23か月連続減少している。消費税の引き上げに伴う物価の上昇に賃上げが追いついていない。

それでいて新たな負担を国民に強いるのであれば、これはもう、経済再生に名を借りた政財界の癒着である。

2014年6月8日日曜日

安倍積極平和外交のご都合主義

アジア安全保障会議(シャングリラ会合)に出席のためシンガポールを訪問していた安倍晋三首相が31日、帰国した。
「既成事実を積み重ね、現状の変化を固定しようとする動きは、強い批判の対象とならざるを得ない」
 同会議で基調講演を行った安倍首相とこう強く訴え、アセアン首脳に同調を求めた。
 安倍首相はまた、「アセアン各国の海や空の安全を保ち、航行・飛行の自由を保全しようとする努力に対し、支援を惜しまない」とも述べ、南シナ海の領有権をめぐり中国と対立するフィリピン、ベトナム両国への支援を約束した。
 アセアン諸国と連携して中国の海洋進出を牽制することが狙いだが、安倍首相の突出した対中強硬姿勢だけが際立つ。本欄で度々、指摘してきたことだが、日本が中国の脅威を口実にしてアセアン地域の安全保障に直接介入するようなことは決してあってはならないことだ。
 安倍首相が唱える「積極平和外交」には、こうしたキナ臭さが常に漂うのである。
 そもそも、南シナ海での領有権問題は尖閣諸島を巡る日中の対立とは次元が異なる。同盟国ならともかく、何故安倍首相は頼まれもしない他国のトラブルに、首を突っ込みたがるのか。中国の脅威を叫ぶだけでは、国民の理解は得られまい。
 いったい既成事実を積み重ね、現状の変化を固定する中国の動きを誰が否定できよう。
かつての欧米や日本がそうであったように、領土は既成事実の積み重ねそのものだ。

 安倍首相は息つく暇なく、4、5両日開催のロシア抜き先進7カ国(G7)首脳会談に出席するためベルギーのブリュッセルに向かう。日本は米国と共に中国を名指し批判する文言を共同宣言に盛り込むよう働きかけているそうだ。あるいは、中国の非をそこまで声高に叫ぶなら、北方領土を不法占拠したままのロシアも同様、厳しく指弾しなければご都合主義と笑われよう。