2012年12月24日月曜日

安倍新政権がブチ上げるガレキ除染と健康管理被災地ドーム構想の実現度

 自公連立政権が週明け26日、発足する。自民党の安倍晋三総裁と公明党の山口那津男代表は18日の会談で大型補正予算の早期編成や震災復興の加速、民自公3党合意に基づく衆院選挙制度改革の実現など連立政権が取り組む政策課題について意見調整した。
 翌日、補正予算の規模について自民党の高村正彦副総裁は「マクロ経済的に見て10兆円程度のものは必要だ。いつかやらなくてはいけない公共事業であれば、不況の時にやるのが財政上もいいし、景気回復に結びつく」として、防災、減災事業を前倒しで計上する意向を示している。
ぜひ、そうあって欲しいものだが、合わせて求めたいのは被災地復興と原発事故対応のスピードアップだ。
「総理大臣になったら被災地に足を運び、しっかり見て欲しい。まずは状況を認識することからだ。課題などお願いすべきところは引き継ぎ、次の態勢につなげる」
 政権を追われる民主党の平野達男復興相は18日、閣議後の記者会見でこう述べた。
 今になってもそんな悠長な事を言っているからガレキ処理も、放射能の除染作業も遅々として進まないのだ。
 新しい政権がやることは決まっているではないか。速やかにガレキ処理の最終処分場を確保すると共に福島第一原発の封じ込め策を示すことだ。被災地住民の健康不安にも充分に応えているとは言い難い。最先端の医療技術、マンパワーを結集した健康管理センターの設置が待たれる。被災地復興と原発事故対応への政権の思いを目に見える形で内外に示すことが何より重要だ。
 そのためにも第2次安倍内閣の顔ぶれには国民の誰もが納得する人材を充てて頂きたい。
安倍総裁は内閣の要となる官房長官に側近の菅義偉幹事長代行を、盟友の麻生太郎元首相の副総理兼財務相の起用を考えているようだ。新設する経済再生担当相にはこれも側近の甘利明政調会長が有力視されている。景気回復を最優先にする布陣としてはお三方とも実力的には申し分ない。一方で原発を所管する経済産業相や被災地復興の陣頭指揮を執る復興相は世論の矢面に立たされるだけに人選を誤れば政権の命取りになりかねない。注目の人事である。

2012年12月20日木曜日

第2次安倍内閣の顔ぶれと長期安定政権へのハードル

大方の予想通り、自民党は「大勝」した。大手紙のように「圧勝」と書けないのは、安倍政権への期待と不安が入り乱れてのことだ。
期待の方は何より景気対策、被災地復興のスピードのようアップは国民有権者が望むところだ。自民党の政権復帰を金融市場も期待を込めた円安、株高の祝砲で迎えている。
周知のとおり、自民党は選挙公約でインフレ誘導と国土強靱化の公共事業を合わせて名目3%の成長を約束した。さっそく、その実効性が問われよう。
急がれるのは師走の政変劇で懸念される景気の底割れ対策だ。これについて安倍晋三総裁は17日の記者会見で「デフレギャップを埋めることも念頭に置きながら、(2013年度予算の)暫定期間を充分にカバーするものでないといけない」と述べ、年明け通常国会早々にも大規模な補正予算を編成する意向を示した。
ネックになるのは財源問題だ。安倍総裁は盟友で財政出動に積極的な麻生太郎元首相を副総理兼財務相に起用するそうだから、その分、社会保障費の大幅カットが心配でもある。
ただ、そうは言っても国民有権者が自民党に294議席、公明党を併せて衆院の3分の2超の議席を与えてしまった以上、今さら後戻りはできない。
原発についてはどうか。自民党のエネルギー政策は原発維持が基本である。新設はともかく、停止中の原発については安全が確認できたとして再稼働を容認するのは火を見るより明らかだ。東電の国有化や電力供給の発送電分離にも後ろ向きである。
国会で議論を尽くしてもらいたいが、如何せん多勢に無勢、開き直られたら為す術はない。それにタカ派的野心を剥き出しにする安倍総裁の暴走も心配だ。
今回、衆院選の投票率は小選挙区が59・32%、比例区が59・31%だった。いずれも戦後最低である。民主党政権が誕生した前回、09年よりいずれも10%弱下回っている。また、比例区の得票率は27・62%で大敗した前回と同水準だった。有権者の不安を裏付ける結果であり、「圧勝」と呼ぶには程遠い内容である。
もとより自民党政権の誕生を否定するものではない。26日には自公連立政権がスタートする。長期に安定した政権は国民が望むところだ。だからこそ首相となる安倍総裁には一刻も早くタカ派的妄信から目を覚まし、戦後日本の歴史や国民世論と謙虚に向き合う保守の王道を歩んで欲しいと思うのだが。

2012年12月17日月曜日

重大ニュースに掻き消された衆院選の争点と有権者の投票行動

 衆院選終盤、各党の舌戦は激しさを増すばかりだが、このところの相次ぐ重大ニュースが有権者の投票行動に与える影響が気になるところだ。
 例えば、今月2日に山梨県で起きた中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故はどうか。
「耐用年数を超えるものは直ちに改修する必要がある。無駄遣いではない」
自民党の安倍晋三総裁はしたり顔でこう語っている。
 周知のとおり、自民党が政権公約に掲げる「国土強靱化策」の総額200兆円に上る公共事業は防災対策を前面に打ち出している。同様、公明党の「防災・減災ニューディール策」も公共事業に総額100兆円をブチ込む景気対策だ。
 これを民主党は「命を惜しむ投資は惜しまないが、無駄な大盤振る舞いはしない」(野田佳彦首相)と批判する。また、建設国債の日銀買い取り策がセットになった公共事業には懸念もある。
だが、民主党政権が「コンクリートから人へ」の耳障り良い言葉でバラまいた子育て支援や農家の戸別補償も財源は事実上、国債の発行で賄われている。
毎日新聞の直近の世論調査によれば、有権者が今回の衆院選で最も重視するのは景気対策で32%だった。そうであれば、公共事業のバラまきに有権者が心動かされる気持ちも理解できる。自民党の圧勝が伝えられるわけだ。きっと崩落事故の不幸はこれを後押ししたことだろう。
北朝鮮のミサイル発射も自民党には追い風だ。さっそく安倍氏は先に藤村修官房長官が「(ミサイルを)さっさと上げてくれればいい」と記者会見で発言したことを取り上げ、野田政権の危機管理能力に批判の矛先を向けている。
では、敦賀原発の原子炉建屋直下の活断層を認めた10日の原子力委員会の判断は有権者の投票行動にどう影響するのだろうか。
野田佳彦首相は「そもそも断層の話は1970年代から指摘されていたのに、設置を許可したのはどの政権だったか」と当時の自民党政権の責任を強調している。だが、これも野田首相自身が原発再稼働に前向きな姿勢を見せているようでは有権者の心には響くまい。
それに意外だったのは同じ毎日新聞の世論調査で原発やエネルギー政策を重視するのはわずか7%に止まっていることだ。有権者からすれば原発は嫌だが、かといって電気料金の値上げも困るといったところか。「卒原発」を掲げる「日本未来の党」の苦戦を物語る結果である。
投票日は16日。劣勢が伝えられる政党には有権者の心に響く「最後のお願い」を期待したい。

2012年12月13日木曜日

戦後日本を否定する安倍自民総裁が目指す「新しい国」の妄信

自民、民主両党のトップがそれぞれ、10日発売の月刊誌「文藝春秋」が登場している。野田佳彦首相は「決断こそ、我が使命」と題するインタビュー記事だが、間もなく「終わる人」の事はどうでもよろしい。注目して頂きたいのは、圧勝が伝えられる自民党の安倍晋三総裁が寄稿した「新しい国へ」と題する政権構想である。
 冒頭、安倍氏は「政治化として大きな挫折を経験した人間だからこそ、日本のためにすべてを捧げる覚悟があります」と首相再登板への意欲を語っている。挫折とは言うまでもなく07年9月の政権投げ出し事件のことだが、安倍氏は「あの時の経験が政治家としての血肉になっている」そうだ。
 それでいったい安倍氏は首相に返り咲いて何がしたいのか。真っ先に掲げる「デフレ脱却と景気対策」は、自民党が政権公約に掲げる「国土強靱化」の200兆円公共事業とエール大学の経済学者にお墨付きをもらったと安倍氏が胸を張る国債の日銀買い取り策だ。その是非については選挙期間中、各党論戦を交わしていることでもあり有権者の判断に委ねたい。少なくとも公共事業や震災復興については民主党政権よりまだマシだろう。ただし、それだけのことであればわざわざ安倍氏が首相に返り咲くことはない。政権構想の胆はやはり、安倍氏が目指す「新しい国」の有り様であり、その根底にある国家観である。
 逆上れば06年9月、安倍氏が自民党総裁選に出馬した際に発表した「美しい国、日本」と題する政権構想で「戦後レジュームからの脱却」を訴えたが、「新しい国」でも「最大のテーマであることは変わっていない」と言う。本欄で度々指摘してきた憲法改正による国防軍の創設はその象徴である。
 これにも賛否はあろうが、まあいい。それで「戦後レジュームから脱却」した後、安倍氏が目指す「新しい国」とはどんな「美しい国」なのか。
「日本という国は古来から、朝早く起きて、汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら、秋になれば天皇家を中心に五穀豊穣を祈ってきた瑞穂の国」と安倍氏は言う。
 ここまでくれば信仰の領域だから人それぞれ。ただし、安倍氏が首相になれば憲法を改正し、これを国民に押し付けるつもりだから恐ろしい。
「戦後の歴史から、日本という国を日本国民に取り戻す戦い」
安倍氏は結びで今回の衆院選の意義をこう語っている。まずはご自分が正気を取り戻すことだ。

2012年12月8日土曜日

維新橋下徹・未来嘉田由紀子に一発逆転の秘策あり

第3極の混乱が心配だ。未来は衆院比例区の候補者名簿の順位付けをめぐり嘉田由紀子代表側近と生活合流組の主導権争いが表明化してしまった。年間31万2000円の子育て支援の選挙公約は生活が持ち込んだようだが、これも余計な付け足しだった。
「子供手当は民主党が失敗したやつだ。5兆円(の財源)がいる。国はとにかくお金がない」と維新の橋下徹代表代行に批判されて反論できないでいる。「卒原発」に期待した有権者もシラケよう。
 もっとも維新も未来を批判できる立場ではない。石原―橋下コンビを「二股の大蛇にしか見えない。原発やエネルギー政策など、どっちを向いているのか分からず、将来を委ねられない」とは野田佳彦首相の街頭演説である。公示直前になって最低賃金制度廃止の選挙公約を撤回したことも浅慮が過ぎよう。
 野田首相は「橋下氏がもともと持っていた非常に切れ味鋭い路線が見えなくなっている」とも述べていたが、同感だ。
 両党共に己の立場をわきまえることだ。強固な支持基盤を持つ民主、自民の2大政党を相手に四つ相撲を取るつもりなら軽く捻られてお終いだ。かつて土俵を湧かした舞の海ではないが、小兵は小兵なりの戦い方があろう。今からでも遅くはない。未来は「卒原発」、維新は「地方分権」一本で勝負することだ。初志、初心を忘れてしまったら烏合の衆でしかない。
 残念ながら第3極政党は小選挙区300のうち47選挙区で維新と未来が、11選挙区で未来とみんなが、16選挙区で維新とみんなが競合する。比例票も含めて無党派2000万票の奪い合い、つぶし合いの選挙戦になりそうだ。このままでは有権者の貴重な一票が議席に結びつかない死票累々である。当然ながら民主、自民の2大政党が漁夫の利を得ることにもなろう。首相の座がちらつく自民党の安倍晋三総裁の高笑いが聞こえてくるようだ。
 安倍総裁のタカ派的体質については本欄で度々問題点を指摘してきたところである。とりわけ、偏狭な愛国心を国民に強要し、これを義務付けようとする憲法観は危険極まりない。
周知のとおり、現行憲法は国民の権利を最大限に担保し、為政者の暴走に歯止めを掛けている。時代の変化に対応して修正、加筆することは否定しないが、国民の義務と権利を逆転させるような安倍的な改憲には反対だ。
自民党の政権復帰は望むところだが、大勝ちすればきっと安倍総裁は暴走するだろう。5日から期日前投票が始まった。有権者のバランス感覚を期待したい。

2012年12月6日木曜日

比例で伸び悩む安倍自民の危険思想と有権者の良識

 衆院選がいよいよ4日、告示となる。選挙結果を占う世論の動向が気になるところだ。朝日、読売の2大紙が告示直前に実施した世論調査では、衆院比例区の投票先はトップの自民が朝日20%(前回調査より3%減)、読売19%(同6%減)だった。これに対して民主党は朝日15%(同2%増)、読売13%(同3%増)で支持を伸ばしている。
自民党が支持を減らしたのは言うまでもなく、「国防軍」や「日銀法改正」などに象徴される安倍晋三総裁の過激な発言がもたらしたものだ。自民党支持層が安倍総裁の首相としての資質を疑問視したからに他ならない。先の総裁選予備選、地方票で石破茂幹事長に敗れ、議員票で石原伸晃前幹事長に敗れたのも同じ理由である。
タラレバの話をしてもしょうがないが、自民党が谷垣禎一総裁のまま選挙に挑んでいれば、穏健保守・中道の幅広い支持を得て圧勝していたことだろう。悔やまれるところだ。
 さてもう一つ、世論調査の注目は第3極、安倍自民党より以上にタカ派色を前面に出す維新の数字は朝日9%で前回と変わらず、前回2位の読売は13%(同1%減)で民主に並ばれ、一時の勢いはない。
選挙目当てで合体した橋下徹大阪市長と石原慎太郎前東京都知事の2人が原発政策で正反対の発言をしているのだから有権者は戸惑うのも当然だろう。
 また、第3極の未来にしても「卒原発」をめぐる嘉多由紀子代表の発言がブレまくり、小沢支配への批判も影響したのか世論調査は朝日3%、読売5%に止まっている。ちなみに前回調査、未来への合流前の生活と減税合わせて朝日4%、読売3%だったから新党効果は無いに等しい。
 これも理由ははっきりしている。財源問題をあいまいにしたまま、子育て支援31万2千円のバラマキ政策を選挙公約の柱にするようでは社民、共産の二番煎じである。国民の幅広い支持を得ることはできない。「卒原発」を掲げる未来に有権者が期待するのは再稼働や代替エネルギー、核のゴミ処理問題も含めた具体的な政策を掲げて自民、民主の2大政党との堂々の論戦だ。第3極政党それぞれが得意の分野を生かした選挙戦を期待する。

2012年12月1日土曜日

「未来の党」100議席が安倍タカ派政権の抑止力になる

本欄既報どおり、嘉田由紀子滋賀県知事が27日、「卒原発」を掲げて新党「日本未来の党」の結成を表明した。これを受けて「国民の生活が第一」(小沢一郎代表)がその日のうちに同党への合流を決めている。さらに「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」(河村たかし・山田正彦両共同代表)ら非維新の第3極新党が「日本未来の党」の下に結集する予定だ。加えて「日本維新の会」との合流話が不調に終わった「みんなの党」の渡辺善美代表とも政策協議中とのこと。うまく行けば、選挙戦の構図をガラリと変える「台風の目」になるかもしれない。
嘉多知事は同日の記者会見で「未来をつくる結集軸」、いわゆる選挙公約として原発稼働ゼロから全原発廃炉の道筋をつくる「卒原発」に加え、「女性の活用」「安心・安全社会の実現」「消費税増税の前に徹底した無駄削除」「脱官僚」「品格のある外交」を政策の柱に掲げている。特に「卒原発」については「ドイツ並みに10年。政権を取ったら実現する」
とし、隣接する福井県敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」の即刻廃止を訴えている。
 一方、「卒原発」以外の政策については安保防衛政策を含めて政党として確たるものがあるとも思えないが、次期衆院選で原発政策が争点の一つになることを歓迎したい。何より、新党乱立に困惑していた国民有権者もこれで頭の整理ができたのではなかろうか。
大まかに言えば、次期政権の絵柄は民主、自民、日本維新、未来の四つの政党の組み合わせで決まるわけだ。
もっとも、第3極の維新と未来がどんなに議席を伸ばしたとしても比較第一党にはなれない。基本は各種世論調査で優位に立つ自民党と公明党で安定多数の議席を得るかどうかだ。これに維新が補完勢力として加わればより保守色の強い政権が誕生することになる。また、政権転落が必至の野田民主党は先の3党合意もあり、これも自公との連携に前のめりである。
そうであればタカ派の安倍自民党中心の政権を望まないリベラル層や前回、非自民政権を期待して民主党に一票を投じた無党層が未来に向かうことになるはずだ。あるいは100議席を超える勢力を確保することができれば、再び非自民政権を誕生させることができるかもしれない。世論調査が楽しみだ。

2012年11月29日木曜日

嘉田滋賀県知事の「卒原発」第3極新党を歓迎する

来月4日の衆院選告示を前にもう一つ、第3極に新たな結集の動きが出てきた。
「脱原発」を掲げた新党の結成を検討している滋賀県の嘉田由紀子知事(62)の下に「国民の生活が第一」(小沢一郎代表)や「みどりの風」(谷岡郁子共同代表ら)、「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」(河村たかし・山田正彦両共同代表)らが大同団結して民主VS自民、公明両党に「日本維新の会」を加えた三つ巴と言われる選挙戦の構図に割って入ろうというのだ。
嘉田知事は「脱原発」の他に「TPP参加凍結」「消費税増税凍結」などを公約の柱にする方針であり、政策的には各党に大差はないから合流は充分に可能である。少なくとも選挙優先で政策を度外視して合流した「日本維新の会」(石原慎太郎代表、橋下徹代表代行)よりは解りやすいし、きっと国民有権者も歓迎してくれるに違いない。
さて、そうなると気になるのが残る第3極の身の振り方だが、「みんなの党」(渡辺善美代表)と「日本維新の会」の合流話は暗礁に乗り上げている。ネックになっているのは選挙区事情によるところが大きい。
「日本維新の会」は26日時点で149人、「みんなの党」は60人の公認候補を決めている。このうち22人が小選挙区で競合することになるから共倒れは必至だ。
 だったら「じゃんけんで決めてもいい」と合流要請した橋本代表代行の発言に渡辺代表が不快感を示したのは周知のとおりだ。だからといってこのまま選挙戦に突入すれば、「みんなの党」は2分化した第3極の中で埋没してしまうことにもなりかねない。政策的な一致を見出せるものなら、選挙区調整の小異を捨てギリギリまで合流に向けた努力を続けてもらいたい。
 何より政党の数が14もあるのは異常だ。第3極新党の乱立は民主VS自民の2大政党を利するだけである。その分、当落に影響を与えない死票が増えて国民有権者の意志が国政に反映されなくなる危険を孕む。本来ならば、2大政党がウィングを広げて国民の多様なニーズに応えるべきだが、民主、自民両党共に純化路線に向かっているようだから期待できない。
 近い将来、定数是正、削減だけといわず、衆参両院の在り方を含めた抜本的な選挙制度の改革が待たれるところだ。

2012年11月26日月曜日

衆院選の争点に急浮上した安倍自民「経済再生策」の吉凶

衆院選の争点に急浮上した安倍自民の政権公約

 安倍自民党は21日、政権公約をまとめた。大まかには政権を担うにふさわしい出来映えである。詳細は他に譲るが、注目しておきたいのは、国民有権者の多くが渇望する「経済再生」を前面に打ち出していることだ。
 何より民主党政権時代の「縮小均衡の分配政策」から「成長による富の創出」への転換を図るとして、「名目3%以上の経済成長」を目標ではなく、「達成する」と明記している点に政権復帰への意気込みが伝わってくる。
 具体的にはデフレ・円高からの脱却を最優先に「物価目標を2%」に設定し、場合によっては「日銀法を改正」してでも政府主導で「大胆な金融緩和」を実現。残る1%、つまり名目成長率から物価上昇率を差し引いた実質成長分を先にまとめた総額100兆円規模の「国土強靱化」策、つまりは公共事業を推進することで稼ぎ出す算段だ。
 乱暴な言い方をすれば、政府発行の建設国債を日銀に強制的に買い取らせて公共事業をやれば「経済再生」ができるということか。
「政権を取ったらまずは補正予算を大きく組む。(景気に)即効性のあるものを検討中だ」
政権公約を取りまとめた自民党の甘利明政調会長は21日のテレビ番組でこう述べていた。
ずいぶんと気前の良い話だが、その景気対策の原資を国債で賄うとなれば、手放しでは喜べない。
「公共事業をばらまき、日銀に全部ツケ回しするということだ。軍事独裁政権じゃあるまいし、公党の代表としてはもちろん、一国のリーダーとしてもふさわしくない」(中塚一宏金融担当相)
「財政規律が失われ、金利上昇や急激なインフレを招く怖れがあり、禁じ手だ」(城島光力財務相)
 政府内からこんな批判が出てくるのも当然だろう。
 だがしかし、だからこその選挙公約であり、選挙を通じて各党の論戦を期待したいところでもある。
 自民党は「ウソつき」呼ばわりされたくなければ今のうち、政権公約の一つ一つを丁寧に分かりやすく国民に説明しておくことだ。

サルでも解る世論調査と衆院選獲得議席の相関関係

 次期衆院選の獲得議席数を世論調査の結果から予想してみた。ざっくりとした数字だが、まずは投票率を前回09年、前々回05年の衆院選と同レベルの70%程度と仮定すると、投票総数は小選挙区、比例区共に約7000万票だ。このうち強固な支援組織を持つ既存政党の基礎票を過去の実績から弾き出してみると、最悪でも民主党1600万票、自民党2000万票、公明党800万票、共産党300万票、社民党100万票は獲得するはずだ。そして、これを全部足した4800万票を得票総数7000万票から差し引いた残りの2200万票が、選挙の風に左右されるいわゆる無党派層の票ということになる。
周知のとおり、前回衆院選で300議席を獲得した民主党は小選挙区で1800万の無党派票を上積みして自民党に競り勝った。前々回、自民党が300議席を獲得した小泉郵政選挙はこれの逆パターンだ。小選挙区の民主VS自民の基本構図は今回も変わらない。注目の「日本維新の会」、「国民の生活が第一」、「みんなの党」など第3極新党の候補が小選挙区で民主VS自民の構図に割ってはいるのは容易ではない。小選挙区300のうち、当選の可能性があるのは前職、首長経験者や大阪限定の新人候補を合わせてもせいぜい30~50議席止まりだろう。
第3極新党浮沈のカギを握るのはやはり比例区180議席の行方である。仮に第3極新党が公示前に一つの党に結集し、無党派層の2200万票を総取りしたとすれば一議席30万票の比例区で70議席を獲得、小選挙区と合わせ120議席となり、政局のキャスティングボードを握る堂々たる第3極だ。
「日本維新の会」と「太陽の党」が政策の一致をみないままに合流したのはそのためだ。野党から野合批判を浴びるのは当然だが、それでも毎日新聞が行った直近の世論調査で13%が比例の投票先に「日本維新の会」を上げている。トップは自民党の17%、民主党は12%で維新に追い抜かれてしまった。
 現時点、少なくとも比例区では民主、自民両党と第3極新党の三つ巴の争いになりそうな調査結果だが、支持政党を決めるのは政策をよく吟味してからでも遅くはない。

2012年11月19日月曜日

野田民主党は「奇襲解散」でいったい国民に何を問うのか

 野田佳彦首相が14日、自民党の安倍晋三総裁との党首討論で「16日に解散してもいい。やります」と述べたのは、周知のとおりだ。
「次期通常国会で(衆院の)定数削減を必ずやると決断してもらえるなら」との条件付きとは言え、野田首相が具体的な解散日にまで踏み込んだのは想定外だった。
 とはいえ、早期解散は自民、公明両党だけでなく、多くの国民有権者が望むところであり、野田首相が示した定数削減のハードルも決して高くはない。
 自民党はさっそく、党首討論後の幹部会で「首相の提案に全面的に協力する」(安倍総裁)方針を決めている。
民主党が同日に国会提出した衆院選挙制度改革法案は一票の格差是正の「0増5減」と比例定数「40削減」を盛り込んでいる。野田首相はこのうち、自公両党が難色を示している定数削減について次期通常国会で実現するよう確約を求めている。つまりは、かねてより自公両党が主張してきた「0増5減」の優先処理を追認したにすぎないのだ。
それでいったい野田首相は何を掲げて国民に信を問うつもりなのか。一部報道では、「第3極の選挙態勢が整う前の解散で選挙を有利に戦いたい」との思惑を指摘するが、問うべき信がなければ、選挙戦術もへったくれもない。いわば、民主党候補者を素手で戦場に送り出すようなもの。何より、国民有権者を愚弄する前代未聞の解散劇となろう。
党首討論後、民主党の輿石東幹事長は、「16日に解散したいと首相が言ったのだから、撤回することはないだろう。首相が首相の専権事項で首相が判断したのだから、それでいいのではないか」と述べているが、党内はそうすんなりと収まりそうにない。
解散を阻止するため、鹿野道彦前農林水産相を指示するグループは同日、輿石幹事長に対して両院議員総会の開催を申し入れた。閣僚からも解散の署名を拒否する声も上がっている。
このまますんなりと16日解散に突き進むのかどうか。

2012年11月15日木曜日

毎日新聞「16日」解散スクープ報道に永田町の疑心暗鬼

 解散時期をめぐる与野党の攻防は今週がヤマ場となる。早期解散を求める国民世論の声は日毎高まるばかりだ。だからか、マスコミ報道も年内解散に前のめりである。11日夜に行われた野田佳彦首相と民主党の輿石東幹事長との会談を受けて「年内解散に踏み切る意向を固めた」(朝日新聞)、「最短で今週末16日解散・27日公示・12月9日投開票とする案も浮上」(毎日新聞)と報じている。
 是非そうあって欲しいものだが、会談では野田首相が解散3条件としている特例公債法案、衆院選挙制度改革法案の成立と社会保障改革国民会議の設置に向けた野党との調整、東京都知事選や次期衆院選への対応などが話し合われたようだが、解散時期に言及したかどうかは定かではない。
12日に行われた衆院予算員会では自民党の山本有二元金融担当相が「うそつきにならない年内解散。うそつきになる来年の解散。どちらか」と迫ったが、野田首相は「特定の時期を明示するつもりはない」となおも明言を避けている。
 野田首相からすれば、そもそも何故に解散時期を明示しなければならないのか。もっと言えば、野田首相が「近いうち解散」を明言したのは8月だから、今さら解散がいつになったとして嘘をついたことに変わりない。どうせ嘘つき呼ばわりされるのであれば年末、せめて自らが手がけた来年度予算案を掲げて国民に信を問いたいとの思いもあろう。
「12月9日投開票の日程なら第3極の準備が間に合わない。脱原発とTPP(環太平洋パートナーシップ協定)推進、(衆院の)定数削減を争点にする」
 毎日新聞は年内解散の根拠として野田首相に近い与党幹部のこんな発言を引用している。
 だが、この発言が首相周辺から出たものであれば額面通りには受け取れない。
折しも12日午前、東京高裁で「国民の生活が第一」の小沢一郎代表に無罪判決が出ている。あるいは首相周辺がこの無罪判決報道を潰すため、子飼いの記者に年内解散をリークしたとも考えられよう。それとも野党に審議協力を促すための騙し絵に使ったのかもしれない。疑えばキリがないが、答えは直、明らかになる。

2012年11月13日火曜日

安倍自民の「太陽政策」と石原「太陽の党」が織り成す不可解な季節

 野田佳彦首相が解散条件の一つと位置づける特例公債法案が8日に審議入りする。自民党の安倍晋三総裁が「太陽政策」にカジを切ったことから法案成立のメドは立った。次はこれに野田首相がどう応えるかだ。安倍総裁は今週中に衆院解散の可否を明らかにするよう求めている。
 ところがこの期に及んでもなおも野田首相は「(衆院解散の)環境整備をするのが前提だ。聞きたい事があるなら、党首討論で国民に見える前でやった方がいい」と述べて言葉を濁す。党首討論は週明け14日に開催の予定だ。
 自民党内には「民主党は料金を一度も払わず、ご飯だけ食べる。安倍さんは新しくできた執行部だから食い逃げに免疫がない」(伊吹文明元幹事長)と安倍総裁の太陽政策を懸念する声もある。期待半分、とりあえずは野田首相の出方を見守るしかなかろう。
 週明けにはもう一つ、東京都知事選(11月29日告示、12月16日投開票)に向けた動きも慌ただしさを増す。政権復帰を目指す自民党にとっては試金石となる首都決戦だ。6日には党本部で安倍総裁、石破茂幹事長ら執行部と石原伸晃会長、内田茂幹事長ら都連幹部が対応を協議したが、結論を得るまでには至らなかった。
自民党内には石原慎太郎前知事の後継指名を受けた猪瀬直樹副知事を推す声があるものの、都議会自民は猪瀬氏の人間性に疑問符を付けて難色を示している。
あるいは候補者調整にもたつくようなことになれば、ギリギリのところで知事選の陣頭指揮をとる伸晃氏の出馬を促す声も出てこよう。
伸晃氏であれば猪瀬氏と同様、第3極の結集を目指す「石原新党」との全面対決は避けられるが、先の自民党総裁選での発言を持ち出すまでもなく、こちらも人間性には大いに疑問符が付く。ましてや都知事の親子禅譲には都民の反発もあろう。いずれにせよこの一週間、出ては消えての候補者擁立のドタバタ劇は続くことになろう。
それにしてもだ。都知事選で独自候補の擁立もままならず、どの面下げて年内解散を迫れようか。万が一にも第3極に相乗りするようでは民主党の人材不足を笑えまい。

2012年11月8日木曜日

安倍自民の太陽路線転換で囁かれる解散密約説

直近の世論調査で野田内閣の支持率は共同通信17・7%、読売新聞19%、フジ産経グループ21・5%で各社とも政権発足以来、過去最低となった。不支持は逆に共同通信66・1%、読売新聞68%、フジ産経グループ65・7%となり、過去最高を記録した。 
政権末期を裏付ける数字だが、幕引きするにしても国民生活への配慮は欠かせない。政治に知恵と良識が求められるところだ。
とりわけ注目しておきたいのが、政権復帰が確実視される自民党の対応である。遮二無二年内解散に突き進むだけでは、それこそ無責任野党の誹りは免れない。
だからだろう、先の自民党総裁選で最強硬派と目されていた安倍晋三総裁も柔軟路線に転じている。5日のテレビ番組で安倍総裁は解散時期について「12月9日か16日が投開票の限度で、11月22日には衆院を解散しないといけない」と述べ、特例公債法案と衆院選挙制度改革法案の早期成立と社会保障制度改革国民会議の設置に協力する姿勢をより鮮明に打ち出した。
永田町では柔軟姿勢に転じた安倍総裁と野田首相の年内解散の密約説が流布されているが、そうではなかろう。安倍総裁が政局より国民生活を優先すれば、結論は自ずとそうなる。
 その上で野田首相が年内解散を決断してくれれば言うことはないが、先のテレビ番組で安倍総裁は「自民党が与党になれば来年度予算を組み直さないといけない。(予算の成立は)来年4月を大きくまたぐことになるから、暫定予算になる」とも述べている。国会日程上、解散総選挙の時期が年明けにずれ込むことを想定しての発言だ。
公債特例法案は今週、野田首相がアジア欧州会議(ASEM)首脳会議から帰国する7日以降に審議入りする。民主党は16日までに衆院を通過させ、22日頃に参院で可決・成立させる日程を描くが、残る衆院選挙制度改革法案は野田首相がなおも定数削減にこだわっているため、先行きに不透明感漂う。早急に野田首相と安倍総裁のトップ会談で結論を出すことだ。

2012年11月3日土曜日

安倍圧勝の代表質問と参院正常化で見えてきた解散シナリオ

 自民党の安倍晋三総裁は31日に行われた衆院の代表質問で、経済対策への取り組みを理由に解散先延ばしを図る野田佳彦首相に対して「国家国民のために一国も早く信を問うことが最大の経済対策だ」と言ってのけた。
 安倍総裁はまた、懸案となっている特例国債法案の成立や衆院の定数是正、社会制度改革国民会議の早期開催に協力する姿勢を示した上で「これらに積極的に取り組まず、責任を野党に押し付け、政治空白を作ったのはあなた方だ」と厳しく批判した。まさに我が意を得たり、本欄が指摘してきたとおりの発言である。
 ところが野田首相はまったく意に介さず、逃げの答弁に終始。両者初の論戦は安倍総裁の圧勝に終わった。
 ただ、だからといって野田首相を直ちに解散総選挙に追い込めるわけではない。まずは国会審議の土俵に上がらなければ、逆に解散先送りの口実を与えてしまうことになる。
 案の定、代表質問に立った民主党の仙谷由人副代表は自民党が野田首相の所信表明演説を参院が拒否し、衆参で国会対応が異なることを批判。さらに同党の輿石東幹事長は、自民、公明両党が求める衆参両院での予算員会開催について「首相の考え方を基本に議論を展開してもらうのが普通の道筋だ」と述べて背中を向けたままだ。参院自民党の強硬姿勢が、結果として野田政権の延命に手を貸す珍妙な構図である。
 困った自民、公明両党をはじめとする野党各党は、2日に参院本会議を開き、先の国会で問責を受けた野田首相の対応をただすための「緊急質問」を行うことをケジメとして、野田首相の所信表明演説を受け入れる大義名分としたいようだ。
「緊急質問」とは耳慣れないが、中曽根政権下の1985年以来だというからそのはず。国会法ではまさに緊急時の場合、参院が議決すれば、首相は本会議出席を拒めないそうだ。
 ともかく、多少の回り道はあったもののこれで参院が正常化に向かうことになろう。国会審議に協力することで野田政権の延命を危惧する声もあろうが、ゴネて寝込んで手を貸すよりはまだマシだ。腹立たしいが、しょうがない。

2012年11月1日木曜日

追いつめられた野田首相の最後の仕事は解散総選挙で政治の混迷に終止符を打つことしかない

臨時国会が始まった。
「いらずらに政局と結び付け、権力闘争に果てしないエネルギーが注がれる政治を繰り返して良いはずがない」
「やみくもに政治空白をつくって、政策に停滞をもたらすことがあってはならない」
 野田佳彦首相は29日に行った衆院の所信表明演説でこんな言葉を並べ立て、野党に審議協力を求めた。参院が野田首相の所信表明演説を拒否したことを当て擦ったもの。確かに言論の府にあるまじき暴挙だが、これを許した野田首相の責任も重大だ。
何より先の通常国会、野田首相が政治生命を賭けて取り組んだ消費税の引き上げは、その野党が政局に結びつけず、審議協力したからこそ実現したもの。この時、野田首相が約束した「近いうち解散」は、いったいどうなってしまったのか。
しかも野田首相は「日本経済の再生が野田内閣の最大の課題だ。道半ばの仕事を投げ出すわけにはいかない」とも述べ、政権維持に意欲さえ見せている。悪あがきが過ぎよう。
28日には、次期衆院選の前哨戦とも言える鹿児島3区の補選で民主党が推薦する国民新党の候補が敗れ、翌29日には党所属の衆院議員2人が離党したため、与党の過半数(240)割れまであと5議席。さらに石原新党の結成にも与党から複数の議員が合流を決めており、このまま野田首相が解散時期を拒み続けたとしても、内閣不信任案が可決されれば万事休すだ。
加えてポスト野田の有力候補の一人である前原誠司国交相にスキャンダル浮上である。秘書の自宅を政治団体の「主たる事務所」として経費計上していたというのだ。
安倍政権下、同様の疑惑で松岡利勝農林水産相が野党に追及されて自殺、後任の赤城徳彦農水相や佐田玄一郎行政改革担当相が辞任に追い込まれたことが思い出される。一部メディアが報じたものだが、事実ならば政治資金規正法に抵触する疑いがある。暴力団との交流で辞任した田中慶秋前法相共々、野田首相の任命責任が問われよう。
もとより政治空白も政策の停滞も許されないが、原因をつくっているのは民主党の党利党略、「近いうち解散」を決断できない野田首相自身にあることは誰の目にも明らかだ。

2012年10月29日月曜日

タカ派気取りの安倍自民党総裁が謀む思想教育の危険

 週刊新潮のスクープ報道で田中慶秋法相(74)が辞任に追い込まれた。民主党政権になって辞任、更迭された大臣はこれで何人目になるのか。いちいち名前を上げ、数え上げるのも面倒だからやめておく。
民主党の仙石由人副代表が「なぜ、こういう人事をしたのか本当に分からない」とテレビ番組で嘆いていたが、この人だって大臣失格だった。すべては民主党の人材不足に尽きよう。
本欄で度々指摘してきたところだが、特に3・11以降、民主党政権の為すことやること目を被うばかりである。だからこそ、自民党の協力を得るよう進言もしてきたが、もう遅い。
「田中氏が野田佳彦内閣にとって迷惑だから辞めろと言う以上に、今の内閣は国民にとって迷惑だから、早く国民の信を問うてもらいたい」
 自民党の高村正彦副総裁は24日、記者団を前にこう述べている。それしかないだろう。
 かといって自民党の政権復帰にも不安はある。安倍晋三総裁は23日に行われた「教育再生実行本部」の初会合で「民主党政権では教育基本法の精神が生かされていない。自民党が近いうちに政権を取った際の教育再生案を持ちたい」
と述べた。
 教育基本法が安倍政権下に改正されたことは周知のとおり。特出すべきは日本の伝統文化を尊重し、愛国心を育むことを教育目標に掲げたことだ。評価する声は多いが、気になるのはその中身と実際の運用である。今年から始まった公立中学校での武道の必修化もその一つ。やりたい人は道場に通えば済むことをどうしてわざわざ教育現場に押しつけるのか理解に苦しむ。
確かに柔道は日本のお家芸ではある。「礼に始まり礼に終わる」、「柔よく剛を制す」はいかにも日本的価値を象徴しているように見える。伝統文化と言えなくもないが、教育現場は指導者不足で混乱しているようだ。そうであろう。いつだったか大学教授でオリンピックのメダリストが教え子に婦女暴行容疑で訴えられていた。柔道家がすぐれた教育者になるとは限らない。しょせんは格闘技である。
あるいは歴史教科書はどうか。愛国教育に反するものは排除するのだろうか。子供に自虐史観を植え付ける教育は論外だが、愛国教育も行き過ぎれば、偏狭なナショナリズムを芽生えさせよう。
むやみやたらに日本の伝統文化や愛国心を振り回すタカ派気取りの安倍総裁が首相に返り咲けばそうなる。
だから自民党の政権復帰も期待半分、悩ましいところだ。
 

2012年10月26日金曜日

政局より政策優先で「年内解散」手形に裏書きした前原国家戦略相の思惑

  政府・民主党は22日、臨時国会を29日に召集し、会期を11月30日までの33日間とする方針を決めた。自民、公明両党が求める年内解散の確約を拒否したままの見切り発車である。それでどうやって政治を前に進めることができるのか。
野田佳彦首相は先週19日に行われた自民、公明両党との党首会談で懸案となっている衆院選挙制度改革について「0増5減」の先行実施に言及、公債特例法案については予算案との一体処理のルールづくりを呼びかけている。かねて本欄で指摘したとおりの展開だ。
政権復帰が見えてきた自公両党が乗れない話ではない。党首会談は物別れに終わったが、望みはまだある。ただし、乗り越えるべきハードルはなおも高い。
自民党の石破茂幹事長は20日の講演で「13年度予算編成はしないとか、懸案の処理後に速やかに解散するとか、言い方はいろいろある」と述べ、再度の党首会談で野田首相が「近いうち」解散の時期をより具体的に示すよう促している。
堂々めぐりのやり取りだが、翌日には前原誠司国家戦略相が「年明けに解散したら“近いうち”ではない。年内に解散しないことはないと思う。首相は誠実な人だから、自分の言ったことには責任を持たれる」と述べている。
民主党内最大グループを率いる前原氏の、しかも重要閣僚の発言であれば、いわば野田首相振り出しの「年内解散」手形を裏書きしたようなもの。自公両党にとっては頼もしい助っ人だ。さらに言えば、前原氏と石破氏が党派を越えた信頼関係で強く結ばれていることは周知の通り。共に保守勢力の再結集を目指す政界再編論者であり、政局優先の政治を嫌う点でも共通している。あるいはこの2人が水面下で呼応しての発言であれば、臨時国会前の決着も有り得よう。
いずれにせよ野田首相が本気で懸案解決に自公の協力を得たいのであれば、せめてもう半歩だけ「近いうち」解散に踏み込む必要がある。
朝日新聞が行った直近の世論調査で野田内閣の支持率は過去最低の18パーセントにまで落ち込んでしまった。これ以上の政権延命は許されないと知れ。

2012年10月20日土曜日

沖縄振興予算3000億円垂れ流しとオスプレイ破壊工作の不愉快

自衛隊と在日米軍は11月5日から始まる日米共同演習の一環として、沖縄県の無人島を舞台に離党奪還訓練を実施する。
奪還訓練には島しょ防衛専門の陸上自衛隊西部方面普通科連隊や在沖縄第31海兵遠征部隊などが参加、尖閣諸島の領有権を主張する中国の動きを牽制する狙いがある。もっと言えば、韓国が占領、実効支配する竹島の奪還を想定してのことかもしれない。先月、米グアムで実施した同様の訓練と併せて初の試みとなる。こうした訓練がこれまでなかったのも不思議だが、それなりの外交的配慮があってのことだろう。中韓両国の出方が見物である。
言うまでもなく、日本の防衛には日米安保条約に基づく在日米軍の存在は欠かせない。それがどうしたことか15日には沖縄県の仲井真弘多知事が、樽床伸二沖縄担当相に対して普天間飛行場に配備された垂直離着陸輸送機「オスプレイ」の配備見直しを求める要望書を手渡した。加えて、3000億円もの巨額の沖縄振興予算が欲しいとも。こう言っちゃ失礼だが、まるで国民の安全を人質にとって売値をつり上げる武器商人のようだ。違和感を覚えるのは著者だけではあるまい。
政府は昨年も沖縄振興に同規模の予算を配分しているが、樽床担当相は「物事は2年目が非常に大事と認識している。全力で取り組む」と応えている。
だったら仲井真知事もオスプレイの受け入れ、普天間基地の辺野古移設で沖縄県民を説得する、くらいのことは言ってもらわなければ国民の理解は得られまい。
一部の活動家がオスプレイ飛行の妨害行為を繰り返しているそうだ。有事であれば、破壊工作である。まさか中国の属国になることを望んでいるわけではなかろう。
折しも民主党は16日の常任幹事会で党員停止処分が解けた鳩山由起夫元首相の最高顧問復帰を決めた。
振り返れば日米関係の悪化と中国の増長は、この人の軽はずみな一言から始まった。その上、血税3000億円を注ぎ込んでなおも日米両政府に対する沖縄県民の不信を拭えない。この悪循環を断ち切るためには人心一新、早期の解散総選挙が求められるところだ。

2012年10月18日木曜日

命運尽きた野田首相と年内解散の3条件

 民主党と自民、公明両党の3党幹事長会談が15日、国会内で行われた。席上、民主党の輿石東幹事長は臨時国会を今月末に召集する方針を示し、党首会談の週内開催を求めた。
 これに対して自民党の石破茂幹事長は「首相が近いうちに信を問うと言った。そのことを受け止めてもらわないと困る。国民との約束でもある」と述べ、続いて公明党の井上義久幹事長が「12月の早い段階の総選挙がタイムリミットではないか」と畳みかけて早期解散の確約を迫った。もちろん、輿石氏がこれをすんなり受け入れるわけがなく、結論は18日の再会談に持ち越された。双方角突き合わるだけの会談であれば芸のない話だが、再会談には少しだけ希望がある。
 周知のとおり、臨時国会の最優先課題は特例公債法案と衆院の選挙制度改革である。
 このうち選挙制度改革について民主党は最高裁で違憲が指摘された小選挙区の定数是正に加え、比例定数の40削減を主張していたが、ここにきて自民党が求める小選挙区「0増5減」の先行実施に柔軟姿勢を見せている。
 比例定数の削減は野田政権が消費税率引き上げの免罪符であり、身を切る改革の象徴である。
一方で大幅な選挙制度改革は国民への周知期間が長期となるため、野田首相が解散先送りの口実にもなる。これでは早期解散を求める自民党が飲めるはずがない。
逆に言えば、次の幹事長会談で輿石幹事長が「0増5減」の先行実施と周知期間を明確にすれば、野田首相の「近いうち」解散により踏み込んだニュアンスを持たせるこができよう。
加えて民主党は15日の役員会で次期衆院選マニフェストの作成に向けた「マニフェスト検討委員会」の設置を決めた。11月中のとりまとめを目指している。
定数是正と選挙公約が整えば、解散ムードは否が応でも高まろう。自民、公明両党もこの辺りで矛を収めて土俵に上がった方がいい。そして野田首相は国民有権者の多くが早期解散を望んでいることを重く受け止めるべきだ。このまま居座るようでは、決められない政治に逆戻りである。

2012年10月13日土曜日

民主独自調査で80議席、それでも野田首相は「近いウチ解散」から逃れられない


民主独自調査で80議席、それでも野田首相は「近いうち解散」から逃れられない

 野田改造内閣が発足して10日も経つのに臨時国会の召集日が決まらない。周知のとおり、赤字国債の発行を可能にする特例公債法案の成立は、臨時国会の最優先課題である。万が一にも成立が遅れ、予算の執行が滞るようことになれば、政府与党の責任は重大だ。  
 ところが、民主党の輿石東幹事長は9日の記者会見で「いつ開くかは私が決める話ではない」と述べてまるで意に介さず。11日には民主、自民両党の新執行部が初めて顔を合わせるが、野田佳彦首相は自民、公明両党が求める年内解散に応じるつもりはなく、両者睨み合ったままだ。
 民主党は「国民に不便をかける」(安住淳幹事長代行)として政党交付金の申請を見送るそうだが、そんな批判逃れのパフォーマンスが通用するはずがない。
 しかも野田首相は10日、民主党の安住淳幹事長代行、細野豪志政調会長らを首相官邸に呼び入れ、次期衆院選のマニフェスト作成を指示している。
 年内解散に向けた自民、公明両党に対するメッセージにも取れなくはないが、細野政調会長は会談後、記者団を前に「(政権交代)約3年間の反省を踏まえ、議員だけで議論して決めるのではなく、国民の声を聞く事も大事だ」と述べている。
 何の事はないマニフェスト作成に時間をかけて、解散先送りの言い訳にするつもりなのだ。
 今さら選挙用にマニフェストを作成してもどうなるものではなかろう。過去3年間、民主党が掲げたマニフェストで国民の生活はズタズタにされてしまったではないか。
 解散権は首相の専権だが、先に消費税の引き上げを引き換えにしてこれを売り渡したのは野田首相である。
「12月9日投票は譲れない」(山口那津男公明党代表)とまでは言わないが、局面打開のため、野田首相には「近いうち」以上の言質を求めたい。
 民主党選対が行った直近の選挙情勢分析は、年内解散総選挙の場合、同党の獲得議席を80台前半と弾き出している。
 落選の恐怖に戦き、これ以上、国民有権者を愚弄するようでは選挙結果はさらに厳しいものになろう。

2012年10月12日金曜日

落選に怯える民主党議員のあきれた血税蓄財術

「福島の復興再生の基盤となる除染をスピードアップしなければいけない」

 野田佳彦首相は7日、福島第一事故現場を視察した際、記者団を前にこう述べた。すでに先の内閣改造で初入閣した担当大臣の長浜環境相に対し除染加速化の包括的な対策作りを命じているそうだ。

 具体的には環境省の拠点「福島環境再生事務所」への権限移譲、関係府省の連携強化除染の進捗状況の住民への情報提供などを検討課題にあげている。

 野田首相の現地視察は昨年9月以来2度目となるが、この1年、消費税税率の引き上げのことで頭が一杯で被災地のことは2の次、3の次だったということだろう。こんな初歩的な対策も講じられていなかったのかと、今さらながらに怒りが込み上げてくるのは筆者だけではあるまい。しかも、ここにきて次々に明るみなる震災復興予算の流用問題である。

 復興予算は5年間で19兆円、このうち今年度当初予算までにすでに18兆円を計上している。財源は早期の被災地復興を願う国民の理解を得て、別枠の復興増税、赤字国債で賄われることになっている。ところがその国民の血税が、たとえば財務省では「震災時の業務継続のため」として全国の税務署改修工事に、法務省では「被災地域における再販防止背作の充実・強化」を名目にした事業予算が、北海道や埼玉県の刑務所で実施された職業訓練に使われていたというのだから、開いた口が塞がらない。

平野達男復興相は7日のテレビ番組で「きちんと精査し、来年度はできるだけ被災地に特化した予算を作りたい」と述べ、復興予算の編成に瑕疵があったことを認めた。ならば、責任を取り即刻辞任するべきだが、事の重大さは一閣僚の出処進退のレベルでは収まらない。野田首相は来年度予算案の編成に意欲を見せているようだが、迷惑な話である。

むろんこの3年間に積もり積もった民主党政権の失政は、野田内閣が総辞職したところでチャラにはならない。それが故に野田首相は、国民へのせめてもの置き土産にと消費税増税法案の成立と引き換えにした「近いうち解散」を自民、公明両党と約束したはず。聞くところでは、次期衆院選の民主党立候補者の多くが、地元選挙区の政治活動を自粛し、政党交付金や議員歳費を節約して落選後の生活資金をため込んでいるそうだ。これも血税の垂れ流しに他ならない。早期解散が求められるところだ。

2012年10月8日月曜日

民主党政権の「経済再生戦略」は砂に水撒く投資詐欺

 野田政権の経済財政運営で新しく舵を握ることになった前原誠司国家戦略相は2日の記者会見で来年度予算案の編成について「財務省主導ではなく、内閣府、内閣官房中心に与党と連携しながらやっていく」と述べた。 予算編成権を首相直属の「国家戦略局」が主導することは民主党がマニフェストに真っ先に掲げた政権交代の原点だが、何を今更の感がある。 しかも、野田政権が先に示した来年度予算の概算要求額は政府・民主党の「日本再生戦略」に掲げた11の成長戦略と38の重点政策への予算要求を積み増したために、100兆円を越える史上空前の規模となっている。 「日本再生戦略」では環境関連で50兆円以上の新規市場と140万人以上の新規雇用、医療介護分野でも50兆円、284万人の雇用を創出するとしている。 だが、いずれも民主党がマニフェストに掲げた経済政策を焼き直したたけのこと。過去3年間の民主党政権の経済運営を省みれば、砂に水を撒くようなものだ。 こんなまるで投資詐欺のような話を政治主導でやるというのならば、消費税をどれだけ引き上げても借金は膨らむばかりで、やがて日本経済は破綻、ギリシャの二の舞である。 そもそも民主党は政治主導をはき違えているのではないか。 自民党の安倍晋三総裁は3日、福島圏相馬市の被災地住民や自治体首長との懇談で「市町村任せではなく、国が前面に出て取り組むべきだ。復興庁は縦割り予算を廃し、スピードアップしなければならない。われわれが一日も早く政権に復帰しなければならない」と述べた。 まさに遅々として進まない震災復興と原発事故の対応にこそ、行政組織の枠を超えた政治主導が求められるところだ。 民主党政権はもういいだろう。野田佳彦首相は秋の臨時国会、赤字国債発行のために公債特例法案を成立させなければならない。3日の支援組織「連合」の集まりで「危機感を野党にも共有してもらい、次期国会で速やかに可決すべく、野党の協力が得られるよう呼びかけていく」と述べている。 だったら自民、公明両党との約束どおり「近いうち解散」を実行するしかない。それが消費税増税法案を成立させた野田首相のとるべき花道だ。

2012年10月4日木曜日

解散先送りで野田首相が謀む自民党との憲法改正大連立

 第3次野田改造内閣が1日、発足した。18人の閣僚のうち、10人を入れ替える大幅改造である(別掲参照)。ただ、岡田克也副総理、藤村修官房長官、玄葉光一郎外相、枝野幸男経済産業相ら主流派主要閣僚が留任したため、目玉人事と呼べるのは田中真紀子元外相の文部科学相起用くらいか。マスコミ報道は田中文科相が独り占めである。 
だが、サプライズ人事に目を奪われているようでは今回の改造人事に込められた野田佳彦首相の真の狙い、思惑を見誤ってしまう。
「山積する内外の諸課題に対処し、政府・与党の連携を深め、内閣機能を強化するためだ」野田佳彦首相は同日の記者会見でこう述べた。
 その言葉どおり、外に向かっては領土問題でギクシャクする日中、日韓関係の修復や日米同盟の強化、再構築は野田首相が取り組むべき課題である。内政においても、やり残した社会保障制度改革に道筋を付けなければなるまい。震災復興、原発の事故処理、再稼働問題も重くのし掛かってくる。景気対策も急ぎ求められるところだ。
 しかしながら、すでに国民の信を失っている民主党政権にいったい何が期待できよう。ましてや衆参ねじれ国会、参院で問責決議を受けた野田首相の下であればなおさらである。
 まずは秋の臨時国会、野田首相は赤字国債の発行を可能にする公債特例法案を成立させなかればならない。3党合意に基づく「社会保障制度改革国民会議」の早期開催、衆院選挙制度改革もある。自民、公明両党の協力が不可欠なところだ。
にもかかわらず、野田首相は両党が国会審議への協力と引き換えに求めている「近いうち解散」に応じる気配はない。それでどうやって臨時国会を乗り切るつもりなのか。
一つのヒントは改造前日、民主党との対決姿勢を鮮明にする安倍総裁は講演で憲法改正を次期衆院選の争点にする考えを示し、「まずは96条から始めたい」と述べていることだ。
96条は憲法改正の発議に衆参両院議員の3分の2以上の賛成を定めおり、安倍発言はこの改憲のハードルを下げることを主張したものだ。
そうであれば今すぐにでも民主、自民両党合わせて96条改正に必要な3分2の頭数を揃えることは可能だろう。これを野田首相が国会審議への協力と引き換えに逆提案すれば安倍総裁に拒否する理由はない。
自民党の安倍総裁、石破茂幹事長の2人と同じタカ派改憲論者の前原前政調会長の入閣にそんな野田首相の下心が透けて見えるのだが。

2012年9月30日日曜日

御輿はやっぱり軽かった自民党議員が選んだ新総裁


神輿はやっぱり軽かった自民党議員が選んだ新総裁

 安倍晋三元首相が新総裁に選出された。各候補の獲得票数は一回目が石破茂前政調会長199(地方165、議員34)、安倍晋三元首相141(地方87、議員54)、石原伸晃幹事長96(地方38、議員58)、町村信孝元官房長官34(地方7、議員27)、林芳正政調会長代理27(地方3、27)。決選投票は安倍氏108、石破氏89の結果となった。
 地方票で圧勝した石破氏だが、議員票は当初から懸念されていたとおり、脱派閥を訴え、長老支配を批判したことが裏目に出たようだ。逆に石原氏は、派閥長老の支持を得たことで地方票に逃げられてしまった。その間隙をついて反石破の議員票と反石原の地方票を取り込み、漁夫の利を得たのが安倍氏の勝因である。
 とはいえ近い将来、政権復帰が確実視される中での総裁選であれば、党内基盤が脆弱な石破氏に党運営を委ねるのも冒険がすぎよう。その意味では安倍氏を選んだ議員のバランス感覚を否定するものではない。
 いずれにせよ、本欄一押しの町村信孝元官房長官が早々姿を消してしまえば、誰が新総裁に選出されてもドングリの背比べのレベルである。
 いやいや、自民党議員にとっては担ぐ神輿は軽い方が使い勝手がいいに決まっている。そうであれば、議員票が小煩い石破氏ではなく安倍氏に向かったのも頷けよう。
 案の定、安倍氏を担いだ面々のさっそく始まったポスト争い。とりわけ、安倍氏擁立にいち早く動いた中川秀直元幹事長、甘利明元経済産業相、塩崎恭久元官房長官、菅義偉元総務相の四人による幹事長争奪戦が見物である。
 勝ちが見えた次期衆院選を幹事長として取り仕切ればカネと人事は思いのまま。野党暮らしの3年間の苦労を知らずに、ラクして政権与党の幹事長である。これほど美味しい話はない。だが、安倍氏がこれを許して4人を重用すれば、党内の反発は必至だ。とりわけ、
安倍勝利の最大の功労者である麻生太郎元首相の怒りは火を見るより明らかだ。
 この4人には雑巾がけがお似合いである。安倍新総裁には、野田政権を早期解散に追い込み、政権復帰をはたすための骨太の人事を期待したい。
2012.9.26  築地にて

2012年9月28日金曜日

自民党総裁選で成るか古賀・青木の安倍・麻生包囲網

 自民党総裁選はいよいよ大詰め、石破茂前政調会長と石原伸晃幹事長、安倍晋三元首相の3候補が三つ巴の激しい戦いを繰り広げつつ、26日の投開票へとなだれ込む。
今現在、各種報道では地方票300のうち40%、120票以上を石破氏が固めたとされているが議員票を合わせた一回目の投票で過半数を得る情勢にはなく、上位2候補が議員票200のみで争う決選投票に駒を進めることになる。
そこで頭の体操してみたい。決戦投票の組み合わせは、石破VS石原、石原VS安倍、安倍VS石破の3通りだ。
勝敗を決するのは決選投票に残れなかったいずれかの候補と町村信孝元官房長官、林芳正政調会長代理の各陣営が握る票の出方である。
そこでたとえば5人の候補を対中外交、尖閣問題への対応で色分けすると、安倍、石破両候補は離党防衛のために緊急展開できる海兵隊の創設を主張する。石原、町村、林の3氏もこれを否定しないが、まずは外交努力を優先するべきとの立場だ。
もう一つ、対野田政権との間合いについて、石破、町村、林の3候補が3党合意に基づく「社会保障制度改革国民会議」の早期設置や秋の臨時国会での公債特例法案処理に前向きな姿勢を示しているのに対し、安倍、石原両候補はあくまで早期解散総にこだわり対決姿勢を強調する。
さて、こうなると安保外交で主張が重なる安倍、石破両候補だが、野田政権との間合いでは安倍氏は石原氏と、石破氏は町村、林両氏と近い。
そうであれば例えば安保外交で似たもの同士の安倍VS石破の場合、野田政権との間合いからして石原氏は安倍に、町村、林両氏は石破氏の支援に回ることになるのだが、そうならないところが自民党政治の分かり難いところだ。
まずもって石原支援に回った古賀派会長の古賀誠元幹事長、山崎派会長の山崎拓元幹事長、額賀派オーナーの青木幹雄元官房長官の3人は、安倍氏の後ろ盾になっている麻生太郎元首相と犬猿の仲だ。そして何より石原氏自身が「平成の明智光秀」と口汚く罵られては、安倍氏の支援に回ることは有り得ない。石破氏や町村氏も同様に麻生元首相の口撃の被害者であり、古賀派に所属する林氏も含めて安倍―麻生包囲網が形勢されることになろう。
これが安倍VS石原になっても大差ない。石破陣営から一部、安倍氏に流れるだろうが、四方敵に回してしまった麻生氏の存在がネックとなり安倍票は言われているほどには伸びない。
あるいは当初の予想どおり、石原VS石破となった場合は町村、林両陣営が派閥実力者の支援を受ける石原氏の支援に回るのは既定路線だ。党内基盤の脆弱な石破氏が勝つとすればやはり、地方票で石原氏に圧倒的な差をつけるしかないのだが、いざ。
2012.24 築地にて

2012年9月25日火曜日

タカ派右翼の街宣活動と化した自民党総裁選の勘違い


 自民党総裁選で本欄イチ押しの町村信孝元官房長官が体調不良で緊急入院してしまった。病状は不明だが、総裁選について町村氏本人はなおも意欲を見せているそうだ。
 だが、健康不安を抱えていては、野党第一党を率いて次期衆院選は戦えまい。残念だが、ここはいったん兵を退き、病気療養に専念することをお勧めする。
 さて、そうなると総裁選の構図はガラリと変わってくる。当初、町村派が分裂選挙に突入したことで額賀、古賀、山崎派の支援を受けた石原氏が議員票で有利との見方がされていた。
 また、地方票300は直近の世論調査通りだと、石破茂前政調会長が120票、残り180票を石原伸晃幹事長と安倍晋三元首相がそれぞれ90票ずつ分け合い、両氏が決選投票進出をかけて2位を争う展開だが、町村支持の30票の行方次第では大波乱もありだ。
 漏れ伝えられるところでは、町村派のオーナーである森喜朗元首相は派閥分裂を回避するため安倍氏を支持するそうだ。
 安倍氏の議員票は麻生、高村派を加えて40票前後だが、これに町村支持の30票がそっくり上乗せされれば一回目の投票で安倍氏が本命石原、対抗石破を抑えてトップに立つことになる。さらに言えば2位、3位連合を模索していた安倍、石破両氏が決選投票で争うことにもなりかねないのだ。
 それが党内民主主義の結果であれば致し方ないが、どちらが勝つにしても自民党のタカ派路線はより鮮明になることだけは確かである。「選挙の顔」としても悪くはない。
 ただ時節柄、しょうがないにしても領土問題で勇ましい言葉を連呼するだけの総裁選にはどこか物足りなさを感じてしまうのである。
 街頭に立つ総裁候補たちが馬鹿丸出しにタカ派右翼度を競い合っているようでは、国民もシラけよう。もとより、自民党の政権復帰は望むところである。それは自民党が持つ保守政党の懐の深さと手堅い政権運営を期待してのことだ。勘違いしないでほしい。
2012.9.19 築地にて

2012年9月20日木曜日

自民党総裁選の動向調査で産経新聞に安倍票水増し疑惑浮上

 週明け大手各紙が報じた自民党総裁選の動向調査が興味深い。とりわけ、産経新聞社は国会議員199人のうち安倍晋三元首相(57)は50人近くの支持を集め、石原伸晃幹事長は40人以上を確保、続く石破茂前政調会長(55)は30人以上、町村信孝元官房長官は約30人を固め、林芳正政調会長代理(51)は20人を超す支持を集めたとしている。
 事前の予想では党重鎮、派閥長老の支持を得た石原氏が議員票で有利とみられていたが、産経の調査どおりなら、地方票で優勢が伝えられている石破氏と安倍氏が石原氏を抑えて決勝に進出する可能性が出てきたわけだ。産経はこれを「安倍氏 議員トップ」の見出しを掲げ、喜々として伝えている。
 それはそれでけっこうな事だが、いったいどんな調査を行ったのか気になるところだ。何より産経の報道が正しければ、各候補の支持票を単純に足し合わせて170人以上、
つまり衆参両院の自民党所属議員のほとんどがすでに支持候補を決めていることになる。だとすれば、議員一人ひとりが産経の調査にだけバカ正直に答えたのか。そうでなけれ
ば、取材した記者なりの判断基準を示さなければ客観性が担保されない。あるいはどちら
でもないとすれば、安倍元首相にゲタを履かせたヤラセ記事か。
 これに対して読売、毎日の2紙はとりあえず地方票の動向に焦点を当てている。
 読売は自民党員と確認した1640人に回答を得た(電話調査)として石破37%、安倍21%、石原20%、町村6%、林2%の結果を報じている。
 毎日は全国世論調査の自民党支持層を対象にした調査で石破38%、安倍29%、石原19%、町村5%、林3%だった。石破氏の有利は動かないが、石原、安倍が決勝進出を争う展開である。こちらの調査はまだ信用できる。
本欄がイチ押しの町村氏はキャリア、識見、安定感で他候補の追随を許さないが、残念ながら支持は伸びていない。目先、「選挙の顔」にならないとの評価だろう。同じ理由で出馬断念に追い込まれた谷垣総裁が投じる一票に注目したい。
2012.9.17 築地にて

2012年9月15日土曜日

安倍元首相は自民党より維新の総裁を目指したらどうか

「6年前総理に就任し、病気のためとはいえ、職を辞することにした。心からおわびしたい。この5年間、責任をどう取るべきか考えていた。全身を投げ打って立ち向かえとの同士の声にこたえたいと決断した」
自民党の安倍晋三元首相(町村派)は12日の記者会見でこう述べ、総裁選への出馬を正式表明した。13日には参院議員の林芳正政調会長代理(古賀派)が出馬会見を行った。
 これにてポスト谷垣の総裁選は石原伸晃幹事長(山崎派)、町村信孝元官庁長官(町村派)、石破茂前政調会長(無派閥)と合わせた5人の有力候補が出揃ったことになる。
それにして理解に苦しむのが安倍氏の出馬である。お詫びし、責任を感じているのであれば、選ぶべき道は他にあろう。
 安倍氏は記者会見で「日本の領土領海、日本人の命を断固として守る。憲法改正に取り組み、国民の手に憲法を取り戻す」とも述べていた。それならば、安倍氏じゃなくても、と言いたくなる。
 それにどう贔屓目に見積もっても、この3年間の谷垣路線を否定する安倍氏に勝ち目はない。一回目の投票で石原、石破両氏に大差を付けられるようなら政治生命すら危ぶまれよう。
 あるいは勝敗を度外視しての出馬であれば、橋下徹大阪市長が率いる「日本維新の会」に合流する手は残されている。
「日本維新の会」にはすでに民主党の松野頼久元官房長官や自民党の松浪健太衆議、「みんなの党」の小熊慎司参議など7人が参加を表明、さらに次期衆院選には東国原英夫前宮崎県知事や中田宏前横浜市長らの出馬が取り沙汰されている。いずれ劣らぬクセ者ゲテ者ばかりの政党になりそうだから、元首相の安倍氏が合流すれば、党首の座は約束されたようなものだ。憲法改正に好きなだけ取り組んだらいい。それに安倍氏が党首になれば、きっと尖閣や竹島に政党支部を置き自ら先頭に立って日本の領土領海を守ってくれるはず。そしてついには近い将来、尖閣、竹島出身の国会議員が誕生することになるかもしれない。
安倍氏の政治手腕に期待するところである(笑)。

2012年9月13日木曜日

谷垣不出馬で党重鎮が批判した安倍元首相のどのツラ下げての出馬表明

 案の定、自民党の谷垣禎一総裁が出馬辞退に追い込まれた。民自公3党路線で消費税増税の大業を成し遂げたにもかかわらず国会終盤、これを否定する問責決議案に同調して自ら再選の芽を摘んでしまった。「ウオンゴール」である。
「執行部の中から(石原伸晃幹事長と)2人が出るのはよくない。誰が次の総裁になっても政権奪還の路線と3党合意を軌道に乗せる仕事をはたしていきたい」
 谷垣氏は10日の緊急記者会見で不出馬の理由をこう述べている。残念だが致し方ない。
 さて、こうなると総裁選の構図はガラリと変わる。
自民党所属議員がこの谷垣氏の言葉を重く受け止めるなら、まずは3党路線を真っ向から否定する安倍晋三元首相の再登板は論外である。
谷垣氏と同じ京都選出で3党合意を牽引した伊吹文明元自民党幹事長も「あと一歩で首相というときに3年間、何も言ってこなかった人が総裁選に名乗り出てくるのは違うんじゃないか」と言う。名指しは避けているが、安倍氏の出馬表明を批判してのものだ。
逆に言えば、谷垣後継の有資格者は石原幹事長、石破茂前政調会長に加え、目立たないが伊吹氏と共に3党合意に尽力した町村信孝元官房長官の3人。ただ、町村氏についてはキャリア、実力申し分ないが、選挙の顔としては石原、石破に見劣りするから事実上、この2人に絞られる。どっちが勝っても自民党の世代交代を印象づける総裁選になるから悪くはない。
ただ、周知のとおり石原氏は町村派オーナーの森喜朗元首相や額賀派オーナーの青木幹雄元官房長官、派閥会長の古賀誠、山崎拓両元幹事長など党実力者の支持を満遍なく得ており、加えて谷垣氏の後継指名を受けて基礎票で石破氏を圧倒する。
石破氏がこの劣勢を跳ね返すには300の地方票で過半数を得るか、石原氏にダブルスコアの差をつけることが絶対条件だが、ハードルは高い。石破氏が目指す脱派閥政治は正しいが、理想と現実は別ものである。
2012.9.10 築地にて

2012年9月8日土曜日

自民党総裁選で”スネに傷”の安倍元首相は石破前政調会長を支援したらどうか


 安倍晋三元首相は5日、自民党総裁選出馬に向けて立ち上げた「新経済成長戦略勉強会」の設立総会を開いた。
 注目された参加者の数は衆参あわせて計47人。この数字がそのまま総裁選の得票に結びつくわけではないが、同じ町村派から出馬に意欲をみせる同派会長の町村信孝元官房長官や再選を目指す谷垣禎一総裁ら他の有力候補にとってはプレッシャーだろう。
 あるいはこれに怖じ気づいた町村、谷垣両氏が不出馬となれば、総裁選は安倍氏と石破茂元防衛、石原伸晃幹事長との三つ巴の戦いとなる。
 石破氏はすでに20人の推薦人を確保しており、国会会期末となる今週末にも出馬表明する構えだ。
 また、石原氏は4日、出身派閥・山崎派の山崎拓会長との会談で「谷垣総裁が立候補しなかった時は立候補させてほしい」と述べ、総裁選出馬に理解を求めた。
 安倍、石破、石原の3氏はタカ派に分類されるが3者3様、一長一短あるあるが、安倍氏は首相として臨んだ前回の参院選に敗北し、腹痛で政権を放り出した記憶が生々しい。余計なお世話かもしれいが、石破氏と政策が近く、支持層が重なり合うのであれば、今回は石破氏の支援に回ってはどうか。
 まあいい。総裁選の構図がどうであろうと野田佳彦首相の続投が既定路線の民主党の代表選よりはマシだ。
 対抗馬に名前が上がっている原口一博前総務相や山田正彦元農相あたりだと話にならない。どうせなら、民主党結党の原点を思い出すため、鳩山由紀夫元首相と菅直人前首相に再出馬をお願いしたらどうだろう。
 もちろん皮肉だが、話のついでにもう一つ。橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」が国政進出でもめている。
 維新の会は政党要件を満たすため、民主党の松野頼久元官房副長官や自民党の松浪健太衆議ら5人以上の現職国会議員を集めて近く新党を結成する予定だが、これに大阪府議会議員ら結成当初のメンバーが次期衆院選の候補者選定も含め「誰が何を決めているのかさっぱりわからない」と反発。各種世論調査の好調な支持率が、「大阪維新の会」の足並みを乱すとは皮肉なものだ。
 もっと言えば、野田首相が今国会会期末の今週末、解散総選挙に打って出るとの話もあった。そうなれば、現職国会議員は即刻失職するから「大阪維新の会」の国政進出は阻まれ、谷垣総裁も続投できたのだが。