2013年12月28日土曜日

天皇陛下傘寿のお言葉に背を向ける安倍自民党の不敬と慢心

 第二次安倍内閣の発足から丸一年が過ぎた。
「一刻も早くタカ派的妄信から目を覚まし、戦後日本の歴史や国民世論と謙虚に向き合う保守の王道を歩んでほしい」とは、発足直前の昨年12月19日付本欄の結びの言葉である。景気回復、日本経済の立て直しを期待してのことだ。
 その言葉どおり、前半の政権運営は麻生太郎副総理兼財務相が主導した年初の財政出動と未曾有の金融緩和、それに運も見方しての円安、株高によって輸出産業を中心に企業業績が回復し、成長率を押し上げ税収も伸びた。国民が期待する以上の成果である。通常国会閉会直後の参院選で自民党は圧勝、衆参ねじれ国会が解消したのは当然の結果だった。
 ところが安倍晋三首相も自民党もこれでタガが緩んでしまった。安倍首相はいよいよ、戦前回帰の軍国少年と化して臨時国会で特定秘密保護法案を強行採決。自民党は国土強靱化の大義を掲げてかつての利権政治に逆戻りである。
 総額96兆円にまで膨れあがった新年度予算案で防衛費は安倍首相の強い意向で前年度比2・8パーセント増の4兆8848億円、公共事業費は12・9パーセント増の5兆9685億円で共に2年連続の増額である。
 これに対して税収は対前年比160%増、7年ぶりに50兆円を超えたが、だったらその分、借金返済に回してくれたら良さそうなものだが、治安、治水、防災は人の命に関わるから声高に反対はできない。
 だからこそ、かねてより無駄な予算の執行を厳しくチェックできるよう予算案の審議だけでなく、会計検査院や衆参両院の決算委員会の機能権限の強化を求めているのだが、選挙制度改革同様、与野党立場を代えても国会改革はなかなか前には進まない。
「民主主義の政治体制はチェックとバランスが必要だが、与党にチェックする機能がほとんどない」
 引退した元自民党幹事長の古賀誠氏が21日のテレビ番組で安倍政権の現状をこう嘆いていた。そうであれば、自民党に衆参両院の多数を与えた有権者の判断が誤っていたことになる。そして何より悔やまれるのは安倍首相に政権運営を委ねたことか。
23日、傘寿を迎えられた天皇陛下より「平和と民主主義を守るべき大切なものとして日本国憲法を作り、様々な改革を行って今日の日本を築いた」とのお言葉が発せられた。
「憲法改正をライフワークだ」と公言して憚らない安倍首相は不敬を恥じ、悔い改めることだ。

2013年12月26日木曜日

夢見る安倍首相が編成した来年度予算案96兆円は見せガネ

政府は24日に閣議決定した14年度予算案の裏付けとなる新年度の経済成長見通しを実質成長率で1・4パーセント、物価の影響を反映した名目成長率を3・3パーセントとした。インフレ誘導による日本経済の規模拡大を唱える安倍政権はデフレ経済の象徴的な指標だった名実成長率の逆転が17年ぶりに解消し、税収が消費税増税と法人税収増で7年ぶりに50兆円を超えるとの見立てである。
しかしながら実質成長率が今年度見通しの2・6パーセントから半減するとなれば楽観は許されない。来年4月に消費税率を引き上げれば、景気の足を引っ張るのだから当然だ。政府は約5・5兆円の経済対策を盛り込んだ13年度補正予算でこれを下支えするが、こればかりはやってみなければ分からない。
厳しい見方をすれば、名目成長率が伸びても物価の上昇に賃金、給料の手取りが追いつかずに家計を圧迫、消費低迷で景気が落ち込めば税収不足を新規国債発行で穴埋めすることになりかねない。
「来年もやはり経済だ。強い経済を取り戻すことが政権の最優先課題であることは間違いない。今こそ、人材、設備に投資すべきだ。皆さんが賃上げの決断をできないわけがない」
安倍晋三首相は19日、企業経営者らを前にした講演でこう強く語りかけた。1年前にも同じ話を聞いた。
翌日には経済界、労働界の代表とでつくる「政労使会議」で「デフレ脱却に向けて、企業収益拡大を賃金上昇につなげる」との合意文書をまとめているが、実が伴わなければ安倍首相は厳しい立場に置かれよう。
その意味で、一般会計96兆円(前年度当初比約3兆2700億円増)の史上空前の規模にまで膨らんだ14年度予算案は、国民に景気回復を期待させるためのいわば“見せガネ”でもある。
 安倍首相が今年の漢字に「夢」を選んだ際、「昨年と大きく空気が変わった。頑張っていけば来年はもっと良くなるのではないかという夢をみんなが見ることができるようになった」と1年を振り返った。空腹は満たされていない。

2013年12月23日月曜日

安倍政権の命運握る来年度予算案と賃上げ

 政府が週明け24日に14年度予算案を閣議決定する。一般会計総額96兆円を超える過去最高の規模だ。ちなみに昨年度は約92兆6千億円。上積み分は消費税引き上げによる税収増を見込んでのこと。併せて日銀が16日に発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)で大企業・製造業の景況感が四半期連続で改善、6年ぶりの高水準となったことも強気の予算編成を後押しする。政府は8月試算で実質1・0パーセントとしていた14年度の経済成長率見通しを1・3パーセントに引き上げる方向だ。
 おとより景気回復は望むところだが、短観は設備投資の伸び悩みも指摘している。大企業・全産業の13年度計画は前年度比4・6パーセント増となったが、前回調査(5・1パーセント)から下方修正。同日に内閣府が発表した日本経済の潜在的な供給力と実際の需要の差を表す需給ギャップは今年7~9月期で1・6パーセントのマイナスだった。
過剰設備でモノを作って売れなければ、企業が新たな設備投資に二の足踏むのも当然だ。
周知のとおり、安倍政権の経済成長戦略は賃金給料の底上げによる内需拡大を旨とするが、現実は相変わらずの円安頼み、輸出産業頼りの先々に危うさ漂う経済指標と言える。
そうであれば予算の使い途にはよくよく眼を光らせておく必要があろう。数字上で成長率が上向いたとしても内実が伴わなければ、持続的な経済成長は望めない。
だからだろう。安倍晋三首相も必死だ。18日には東京下町のメッキ工場を視察した際、「町工場であっても、みんなが頑張って技術を磨き、努力すれば景気回復のチャンスをきっとつかみ獲ることができる」と従業員を前に檄を飛ばしている。さらに視察後には記者団を前に年明け24日召集予定の次期通常国会冒頭に処理する13年度補正予算案に計上された中小企業の試作品開発や設備投資を対象とした「ものづくり補助金」について「賃上げした企業に優先的に出していく」との考えを示した。
すべては結果オーライである。ただひたすら景気回復に注力すれば内閣支持率もきっと持ち直すに違いない。

2013年12月19日木曜日

対アセアン積極平和外交は安倍首相の妄想と独善

「ビジョン、アイデンティティー、そして未来を分かち合う仲間、平和と繁栄とよりよい暮らし、そして心と心の通い合うパートナー。今から40年後、私たちの子や孫もアセアン(東南アジア諸国連合)と日本の間柄とは、確かにそのようなものだと深くうなずくに違いない」
 安倍晋三首相は先週13日夜、日本・アセアン特別首脳会議出席のため来日した各国首脳を招いた夕食会でこんなスピーチをしたそうだ。
 また、各国首脳との個別会談ではミャンマーの鉄道網改修や経済特区のインフラ整備などに総額632億円、ベトナムの高速道路網整備などに約960億円、カンボジアには病院整備などに約100億円の資金援助を含め今後5年間に2兆円の対アセアンへの政府開発援助(ODA)を約束している。
 一方で安倍首相は会議期間中、中国の防空識別圏設定を批判し、各国首脳に対して対中脅威論への同調を求めたが、足並み揃わず不調に終わってしまった。
 高度経済成長期、ODAは日本外交の有力な武器となってきたが、安倍首相が目論む中国包囲網にアセアン諸国を巻き込むほどの効果はもはや期待できない。
 安倍首相のスピーチを意訳すれば、ビジョンとは「妄想」、アイデンティティーは「独善」のことを指す。そしてアセアン諸国が分かち合うのは日本の「ODA」ということになろうか。
 そもそも、アセアン諸国からすれば日本は中国や北朝鮮、韓国と同様、植民地支配の加害国である。さらに言えば、今の中国が脅威であるなら、これを理由にアセアン諸国への軍事的プレゼンスを高めようとする日本もまた脅威であろう。旗振り役の安倍首相が狂信的な右翼思想の持ち主であればなおさらだ。
 安倍首相は積極平和主義と呼んでいるが、主義主張を押し付けられるアセアン諸国の人々にとっては迷惑な話だろう。カネで買えない人の心と信用である。
 
 

2013年12月14日土曜日

サラリーマンに苛酷な安倍政権の14年度税制改正大綱

 自民、公明両党は10日、与党税制協議会で消費税増税に伴う低所得者対策として生活必需品等の軽減税率を導入することで合意した。ただし、焦点となっていた実施時期については公明党が強く主張してきた「税率10パーセント引き上げと同時に」との文言は週内にまとめる14年度税制改正大綱には盛り込まない。
 当然だろう。税制は単純で分かりやすい方がいい。一政党の思惑に振り回されて特例措置を乱発していたら税制は歪になるばかりで、不公平感を助長することになる。
公明党が主張をそっくりそのまま受け入れれば、食料品(酒、外食を除く)や新聞、書籍、雑誌などが軽減税率の対象となり合わせて1兆円超の税収減が見込まれる。
だったらその分、消費税率を上げる必要はないわけで、低所得者層にはこれまでどおり所得、住民税等の各種控除や生活保護、育児、教育等の各種手当ての支給で間に合うはずで、わざわざ消費税を弄る必要はない。
やむを得ず特例措置を認めるにしても消費税が8パーセントに引き上げられる来年4月以降の景気動向を見極めてからでも遅くなかろう。
自民党もしかり。同協議会では来年4月から自動車取得税(地方税)を2パーセント(現行5パーセント)引き下げることでも合意している。こちらは自民党の意向で消費税を10パーセントに引き上げ時の全廃がすでに決まっている。日本経済を牽引する自動車産業に配慮した特例措置だが、その一方で地方では庶民の足として欠かせない軽自動車については15年4月以降、現行7500円の最大1・5倍の増税を検討しているというのだから、低所得者層や田舎暮らしの住民から移動手段を取り上げるに等しい。
自動車取得税の軽減税率導入については日本自動車工業会会長の豊田章男トヨタ自動車社長が政府・自民党に強力に求めてきたもの。これに対して安倍晋三首相が豊田氏に従業員の給料アップを求めているのは周知の通りだ。つまり、自動車取得税の軽減税率導入はその見返りというわけだ。
いったい何のために消費税を引き上げたのか。支離滅裂な与党の税制論議である。

2013年12月13日金曜日

国民が心配なのは内閣支持率の低下ではなく景気の減速

臨時国会が2日の会期延長を経て8日、閉会した。
「朝起きたら静かで、何か嵐が過ぎ去ったようだ」
特定秘密法案を強行採決した翌日、安倍首相はこう漏らしたそうだ。
もとより法案そのものについては、その強引な国会運営と併せて厳しく批判されてしかるべきだが、朝日新聞社が直後に行った緊急世論調査で内閣支持率は46パーセント。前回調査からわずか3パーセント減に止まった。
だからだろう、感想を問われた菅義偉官房長官は9日の記者会見で「今回は多分下がるだろうと予測していた。低いより高い方がいいわけだから、国民に説明すべきことは説明していきたい」と余裕の表情を浮かべている。
国民世論の安倍内閣を見つめる眼差しには、今後の成り行きを見届けたいとの思いも覗く数字だろうか。きっと菅義偉官房長官もそう読み取ったに違いない。
もとより条文を読めば、政府として国家、国民の安全保障に関わる軍事、治安情報の漏洩、流出には何らかの歯止めが必要なことは理解できる。この法律の眼目はスパイの防止、摘発にあるわけだ。
だが、あれもこれもと欲張り、投げ縄広げ過ぎてはかえって使い勝手が悪い。例えるならばアメフトとラクビーを同じルールで縛り、論じるようなものか。誤審乱発とならないよう、まずは公正中立な審判の育成が急務であろう。
安倍首相は「情報保全諮問会議」、「保全監視委員会」、「文書管理官」の三つの安全装置を設置することで国民の知る権利と人権侵害に配慮する姿勢を示している。これまでの議論を無にすることなく、国民の不安払拭に務めていただきたい。
それにしても振り返れば臨時国会、残念なのは秘密保護法案ばかりが注目されてしまい、安倍政権が成長戦略の柱と位置付ける産業競争力強化法や国家戦略特区法案などの重要法案がさしたる議論もないまま素通りしてしまったことだ。
内閣府が9日に発表した7~9月期の実質GDP(国内総生産)は、消費税引き上げを決めた4~6月期比0・3パーセントに止まっている。年率換算では先月14日に発表した速報値の1・9パーセントから1・1パーセントに縮小しており、景気の減速はより明確になった。
年明け通常国会は1月24日に開会予定。嵐はまたすぐにやって来る。
 
 

2013年12月7日土曜日

中国の防空識別圏設定で国民の生命を危険に晒した安倍首相の判断能力は子供以下

4日、発足したばかりの国家安全保障会議(日本版NSC)が初会合を開いた。外交・安全保障に関する国内外の情報を一元管理し、官邸主導で迅速に安保政策を推進するとの触れ込みだから、きっと東シナ海に防空識別圏を設定した中国への対応が話し合われたに違いない。
 折しもこの前日、安倍晋三首相は来日したハイデン米副大統領と会談後の共同会見で「この空域で自衛隊と米軍の運用を含む日米の対応を一切偏向しないことを確認した」と胸を張った。一方のハイデン副大統領は「現状を一方的に変えようとする試みは深く懸念している」と述べるにとどめている。
 防衛上、日米の緊密な連携は当然のことだが、だからといってこれを念仏のように唱えるだけではあまりに芸が無さ過ぎる。
 しかも、この問題で安倍首相は決定的なミスを犯している。中国が要求する民間航空会社の飛行計画書提出を米国の対応を待たずに拒否してしまったのだ。その後、米国が軍事と民間は別としてこれを事実上容認したことは周知のとおりである。
 乗客の安全を第一に考えるならば、どちらの判断が正しいかは明かだ。万が一にも日本の民間航空機が撃墜されるような事態になれば、取り返しがつかない。そのくらいのことは子供でも判断がつこう。
つまり安倍首相の判断能力は子供以下、先にシリアへの軍事制裁をめぐっても国際社会の動向を見誤り、先走ってアサド政権打倒まで口走っている。いったいどんな情報に基づいてこんな判断なされたのか。外交戦略、戦術とやらがあるとすれば、それも含めて国民の知りたいところだが、特別秘密保護法案が成立すれば失態、失政も「特別秘密」となる。
「各閣僚がそれぞれの立場で政治的リーダーシップを発揮し、NSCを中心とする安全保障政策の推進にしっかり寄与して欲しい」
 安倍首相は3日、日本版NSC発足に伴い解散となる安全保障会議でこう挨拶した。
しかしながら、どんな優れた組織も情報も無能なトップの下では宝の持ち腐れとなろう。

2013年12月5日木曜日

テロより怖い秘密保護法案と安倍ー石破コンビに汚され歪められた保守政治

自民党の石破茂幹事長が自身のブログ(11月29日付)で特定秘密保護法案に反対するデモなどの抗議行動を「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」と断じた。また、1日の講演では「人が恐怖を感じるような音で、絶対にこれは許さない、と訴えることが、本当に民主主義にとって正しいことなのか」とも述べている。
まさにこれこそが前回、本欄が指摘したとおり、衆参両院で絶対安定多数を得た安倍政権の驕りであり、エセ保守政治家の増長に他ならない。
国民の声に謙虚に耳を傾けることこそが保守政治の神髄であり、戦後民主主義の拠り所でもあろう。それを五月蠅いと感じるのは石破氏が聞く耳持たないからであって、それをテロと同質に論じることに国民はむしろ民主主義を否定する独裁者の恐怖を感じるのである。
石破氏だけではない。朝日新聞社が行った直近の世論調査で国民の50パーセントが特定秘密保護法案に反対、継続審議を求める声は56パーセントに達している。おそらく、審議を尽くすほどにこの法案のいかさま具合が国民に知れ渡り、反対の声が今以上に勢いを増すことになろう。
そうであればここはやはり、国民世論に従い、継続審議にすることが権力を握る者の分別というもの。
ところがエセ保守政治家は、こんな民主主義のイロハすらも理解せずに、法案成立にひた走る。仮に継続審議となれば、強行突破を主導した菅義偉官房長官の責任問題が浮上することになるからだ。さらに年明け通常国会、勢いを増す国民世論に抗しきれずに最悪、廃案に追い込まれてしまえば、安倍内閣そのものがもたなくなるから退くに退けない。詰まるところ国家国民のことよりも我が身大事のエセ保守政治家たる所以である。
ついでにいえば、安倍晋三首相が国民世論の反対を押しきってまで強行採決にこだわるのは、60年安保改定を強行した祖父・岸信介元首相への憧れもある。きっと今頃、国会周辺をデモ隊に包囲され、決死の覚悟で安保改定を成し遂げた祖父の姿を自らに重ね合わせて悦に入っていることだろう。しかも、それが保守政治家のあるべき姿だと勘違いしているのだからなおさら、この政権は始末が悪いのである。