2012年12月24日月曜日

安倍新政権がブチ上げるガレキ除染と健康管理被災地ドーム構想の実現度

 自公連立政権が週明け26日、発足する。自民党の安倍晋三総裁と公明党の山口那津男代表は18日の会談で大型補正予算の早期編成や震災復興の加速、民自公3党合意に基づく衆院選挙制度改革の実現など連立政権が取り組む政策課題について意見調整した。
 翌日、補正予算の規模について自民党の高村正彦副総裁は「マクロ経済的に見て10兆円程度のものは必要だ。いつかやらなくてはいけない公共事業であれば、不況の時にやるのが財政上もいいし、景気回復に結びつく」として、防災、減災事業を前倒しで計上する意向を示している。
ぜひ、そうあって欲しいものだが、合わせて求めたいのは被災地復興と原発事故対応のスピードアップだ。
「総理大臣になったら被災地に足を運び、しっかり見て欲しい。まずは状況を認識することからだ。課題などお願いすべきところは引き継ぎ、次の態勢につなげる」
 政権を追われる民主党の平野達男復興相は18日、閣議後の記者会見でこう述べた。
 今になってもそんな悠長な事を言っているからガレキ処理も、放射能の除染作業も遅々として進まないのだ。
 新しい政権がやることは決まっているではないか。速やかにガレキ処理の最終処分場を確保すると共に福島第一原発の封じ込め策を示すことだ。被災地住民の健康不安にも充分に応えているとは言い難い。最先端の医療技術、マンパワーを結集した健康管理センターの設置が待たれる。被災地復興と原発事故対応への政権の思いを目に見える形で内外に示すことが何より重要だ。
 そのためにも第2次安倍内閣の顔ぶれには国民の誰もが納得する人材を充てて頂きたい。
安倍総裁は内閣の要となる官房長官に側近の菅義偉幹事長代行を、盟友の麻生太郎元首相の副総理兼財務相の起用を考えているようだ。新設する経済再生担当相にはこれも側近の甘利明政調会長が有力視されている。景気回復を最優先にする布陣としてはお三方とも実力的には申し分ない。一方で原発を所管する経済産業相や被災地復興の陣頭指揮を執る復興相は世論の矢面に立たされるだけに人選を誤れば政権の命取りになりかねない。注目の人事である。

2012年12月20日木曜日

第2次安倍内閣の顔ぶれと長期安定政権へのハードル

大方の予想通り、自民党は「大勝」した。大手紙のように「圧勝」と書けないのは、安倍政権への期待と不安が入り乱れてのことだ。
期待の方は何より景気対策、被災地復興のスピードのようアップは国民有権者が望むところだ。自民党の政権復帰を金融市場も期待を込めた円安、株高の祝砲で迎えている。
周知のとおり、自民党は選挙公約でインフレ誘導と国土強靱化の公共事業を合わせて名目3%の成長を約束した。さっそく、その実効性が問われよう。
急がれるのは師走の政変劇で懸念される景気の底割れ対策だ。これについて安倍晋三総裁は17日の記者会見で「デフレギャップを埋めることも念頭に置きながら、(2013年度予算の)暫定期間を充分にカバーするものでないといけない」と述べ、年明け通常国会早々にも大規模な補正予算を編成する意向を示した。
ネックになるのは財源問題だ。安倍総裁は盟友で財政出動に積極的な麻生太郎元首相を副総理兼財務相に起用するそうだから、その分、社会保障費の大幅カットが心配でもある。
ただ、そうは言っても国民有権者が自民党に294議席、公明党を併せて衆院の3分の2超の議席を与えてしまった以上、今さら後戻りはできない。
原発についてはどうか。自民党のエネルギー政策は原発維持が基本である。新設はともかく、停止中の原発については安全が確認できたとして再稼働を容認するのは火を見るより明らかだ。東電の国有化や電力供給の発送電分離にも後ろ向きである。
国会で議論を尽くしてもらいたいが、如何せん多勢に無勢、開き直られたら為す術はない。それにタカ派的野心を剥き出しにする安倍総裁の暴走も心配だ。
今回、衆院選の投票率は小選挙区が59・32%、比例区が59・31%だった。いずれも戦後最低である。民主党政権が誕生した前回、09年よりいずれも10%弱下回っている。また、比例区の得票率は27・62%で大敗した前回と同水準だった。有権者の不安を裏付ける結果であり、「圧勝」と呼ぶには程遠い内容である。
もとより自民党政権の誕生を否定するものではない。26日には自公連立政権がスタートする。長期に安定した政権は国民が望むところだ。だからこそ首相となる安倍総裁には一刻も早くタカ派的妄信から目を覚まし、戦後日本の歴史や国民世論と謙虚に向き合う保守の王道を歩んで欲しいと思うのだが。

2012年12月17日月曜日

重大ニュースに掻き消された衆院選の争点と有権者の投票行動

 衆院選終盤、各党の舌戦は激しさを増すばかりだが、このところの相次ぐ重大ニュースが有権者の投票行動に与える影響が気になるところだ。
 例えば、今月2日に山梨県で起きた中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故はどうか。
「耐用年数を超えるものは直ちに改修する必要がある。無駄遣いではない」
自民党の安倍晋三総裁はしたり顔でこう語っている。
 周知のとおり、自民党が政権公約に掲げる「国土強靱化策」の総額200兆円に上る公共事業は防災対策を前面に打ち出している。同様、公明党の「防災・減災ニューディール策」も公共事業に総額100兆円をブチ込む景気対策だ。
 これを民主党は「命を惜しむ投資は惜しまないが、無駄な大盤振る舞いはしない」(野田佳彦首相)と批判する。また、建設国債の日銀買い取り策がセットになった公共事業には懸念もある。
だが、民主党政権が「コンクリートから人へ」の耳障り良い言葉でバラまいた子育て支援や農家の戸別補償も財源は事実上、国債の発行で賄われている。
毎日新聞の直近の世論調査によれば、有権者が今回の衆院選で最も重視するのは景気対策で32%だった。そうであれば、公共事業のバラまきに有権者が心動かされる気持ちも理解できる。自民党の圧勝が伝えられるわけだ。きっと崩落事故の不幸はこれを後押ししたことだろう。
北朝鮮のミサイル発射も自民党には追い風だ。さっそく安倍氏は先に藤村修官房長官が「(ミサイルを)さっさと上げてくれればいい」と記者会見で発言したことを取り上げ、野田政権の危機管理能力に批判の矛先を向けている。
では、敦賀原発の原子炉建屋直下の活断層を認めた10日の原子力委員会の判断は有権者の投票行動にどう影響するのだろうか。
野田佳彦首相は「そもそも断層の話は1970年代から指摘されていたのに、設置を許可したのはどの政権だったか」と当時の自民党政権の責任を強調している。だが、これも野田首相自身が原発再稼働に前向きな姿勢を見せているようでは有権者の心には響くまい。
それに意外だったのは同じ毎日新聞の世論調査で原発やエネルギー政策を重視するのはわずか7%に止まっていることだ。有権者からすれば原発は嫌だが、かといって電気料金の値上げも困るといったところか。「卒原発」を掲げる「日本未来の党」の苦戦を物語る結果である。
投票日は16日。劣勢が伝えられる政党には有権者の心に響く「最後のお願い」を期待したい。

2012年12月13日木曜日

戦後日本を否定する安倍自民総裁が目指す「新しい国」の妄信

自民、民主両党のトップがそれぞれ、10日発売の月刊誌「文藝春秋」が登場している。野田佳彦首相は「決断こそ、我が使命」と題するインタビュー記事だが、間もなく「終わる人」の事はどうでもよろしい。注目して頂きたいのは、圧勝が伝えられる自民党の安倍晋三総裁が寄稿した「新しい国へ」と題する政権構想である。
 冒頭、安倍氏は「政治化として大きな挫折を経験した人間だからこそ、日本のためにすべてを捧げる覚悟があります」と首相再登板への意欲を語っている。挫折とは言うまでもなく07年9月の政権投げ出し事件のことだが、安倍氏は「あの時の経験が政治家としての血肉になっている」そうだ。
 それでいったい安倍氏は首相に返り咲いて何がしたいのか。真っ先に掲げる「デフレ脱却と景気対策」は、自民党が政権公約に掲げる「国土強靱化」の200兆円公共事業とエール大学の経済学者にお墨付きをもらったと安倍氏が胸を張る国債の日銀買い取り策だ。その是非については選挙期間中、各党論戦を交わしていることでもあり有権者の判断に委ねたい。少なくとも公共事業や震災復興については民主党政権よりまだマシだろう。ただし、それだけのことであればわざわざ安倍氏が首相に返り咲くことはない。政権構想の胆はやはり、安倍氏が目指す「新しい国」の有り様であり、その根底にある国家観である。
 逆上れば06年9月、安倍氏が自民党総裁選に出馬した際に発表した「美しい国、日本」と題する政権構想で「戦後レジュームからの脱却」を訴えたが、「新しい国」でも「最大のテーマであることは変わっていない」と言う。本欄で度々指摘してきた憲法改正による国防軍の創設はその象徴である。
 これにも賛否はあろうが、まあいい。それで「戦後レジュームから脱却」した後、安倍氏が目指す「新しい国」とはどんな「美しい国」なのか。
「日本という国は古来から、朝早く起きて、汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら、秋になれば天皇家を中心に五穀豊穣を祈ってきた瑞穂の国」と安倍氏は言う。
 ここまでくれば信仰の領域だから人それぞれ。ただし、安倍氏が首相になれば憲法を改正し、これを国民に押し付けるつもりだから恐ろしい。
「戦後の歴史から、日本という国を日本国民に取り戻す戦い」
安倍氏は結びで今回の衆院選の意義をこう語っている。まずはご自分が正気を取り戻すことだ。

2012年12月8日土曜日

維新橋下徹・未来嘉田由紀子に一発逆転の秘策あり

第3極の混乱が心配だ。未来は衆院比例区の候補者名簿の順位付けをめぐり嘉田由紀子代表側近と生活合流組の主導権争いが表明化してしまった。年間31万2000円の子育て支援の選挙公約は生活が持ち込んだようだが、これも余計な付け足しだった。
「子供手当は民主党が失敗したやつだ。5兆円(の財源)がいる。国はとにかくお金がない」と維新の橋下徹代表代行に批判されて反論できないでいる。「卒原発」に期待した有権者もシラケよう。
 もっとも維新も未来を批判できる立場ではない。石原―橋下コンビを「二股の大蛇にしか見えない。原発やエネルギー政策など、どっちを向いているのか分からず、将来を委ねられない」とは野田佳彦首相の街頭演説である。公示直前になって最低賃金制度廃止の選挙公約を撤回したことも浅慮が過ぎよう。
 野田首相は「橋下氏がもともと持っていた非常に切れ味鋭い路線が見えなくなっている」とも述べていたが、同感だ。
 両党共に己の立場をわきまえることだ。強固な支持基盤を持つ民主、自民の2大政党を相手に四つ相撲を取るつもりなら軽く捻られてお終いだ。かつて土俵を湧かした舞の海ではないが、小兵は小兵なりの戦い方があろう。今からでも遅くはない。未来は「卒原発」、維新は「地方分権」一本で勝負することだ。初志、初心を忘れてしまったら烏合の衆でしかない。
 残念ながら第3極政党は小選挙区300のうち47選挙区で維新と未来が、11選挙区で未来とみんなが、16選挙区で維新とみんなが競合する。比例票も含めて無党派2000万票の奪い合い、つぶし合いの選挙戦になりそうだ。このままでは有権者の貴重な一票が議席に結びつかない死票累々である。当然ながら民主、自民の2大政党が漁夫の利を得ることにもなろう。首相の座がちらつく自民党の安倍晋三総裁の高笑いが聞こえてくるようだ。
 安倍総裁のタカ派的体質については本欄で度々問題点を指摘してきたところである。とりわけ、偏狭な愛国心を国民に強要し、これを義務付けようとする憲法観は危険極まりない。
周知のとおり、現行憲法は国民の権利を最大限に担保し、為政者の暴走に歯止めを掛けている。時代の変化に対応して修正、加筆することは否定しないが、国民の義務と権利を逆転させるような安倍的な改憲には反対だ。
自民党の政権復帰は望むところだが、大勝ちすればきっと安倍総裁は暴走するだろう。5日から期日前投票が始まった。有権者のバランス感覚を期待したい。

2012年12月6日木曜日

比例で伸び悩む安倍自民の危険思想と有権者の良識

 衆院選がいよいよ4日、告示となる。選挙結果を占う世論の動向が気になるところだ。朝日、読売の2大紙が告示直前に実施した世論調査では、衆院比例区の投票先はトップの自民が朝日20%(前回調査より3%減)、読売19%(同6%減)だった。これに対して民主党は朝日15%(同2%増)、読売13%(同3%増)で支持を伸ばしている。
自民党が支持を減らしたのは言うまでもなく、「国防軍」や「日銀法改正」などに象徴される安倍晋三総裁の過激な発言がもたらしたものだ。自民党支持層が安倍総裁の首相としての資質を疑問視したからに他ならない。先の総裁選予備選、地方票で石破茂幹事長に敗れ、議員票で石原伸晃前幹事長に敗れたのも同じ理由である。
タラレバの話をしてもしょうがないが、自民党が谷垣禎一総裁のまま選挙に挑んでいれば、穏健保守・中道の幅広い支持を得て圧勝していたことだろう。悔やまれるところだ。
 さてもう一つ、世論調査の注目は第3極、安倍自民党より以上にタカ派色を前面に出す維新の数字は朝日9%で前回と変わらず、前回2位の読売は13%(同1%減)で民主に並ばれ、一時の勢いはない。
選挙目当てで合体した橋下徹大阪市長と石原慎太郎前東京都知事の2人が原発政策で正反対の発言をしているのだから有権者は戸惑うのも当然だろう。
 また、第3極の未来にしても「卒原発」をめぐる嘉多由紀子代表の発言がブレまくり、小沢支配への批判も影響したのか世論調査は朝日3%、読売5%に止まっている。ちなみに前回調査、未来への合流前の生活と減税合わせて朝日4%、読売3%だったから新党効果は無いに等しい。
 これも理由ははっきりしている。財源問題をあいまいにしたまま、子育て支援31万2千円のバラマキ政策を選挙公約の柱にするようでは社民、共産の二番煎じである。国民の幅広い支持を得ることはできない。「卒原発」を掲げる未来に有権者が期待するのは再稼働や代替エネルギー、核のゴミ処理問題も含めた具体的な政策を掲げて自民、民主の2大政党との堂々の論戦だ。第3極政党それぞれが得意の分野を生かした選挙戦を期待する。

2012年12月1日土曜日

「未来の党」100議席が安倍タカ派政権の抑止力になる

本欄既報どおり、嘉田由紀子滋賀県知事が27日、「卒原発」を掲げて新党「日本未来の党」の結成を表明した。これを受けて「国民の生活が第一」(小沢一郎代表)がその日のうちに同党への合流を決めている。さらに「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」(河村たかし・山田正彦両共同代表)ら非維新の第3極新党が「日本未来の党」の下に結集する予定だ。加えて「日本維新の会」との合流話が不調に終わった「みんなの党」の渡辺善美代表とも政策協議中とのこと。うまく行けば、選挙戦の構図をガラリと変える「台風の目」になるかもしれない。
嘉多知事は同日の記者会見で「未来をつくる結集軸」、いわゆる選挙公約として原発稼働ゼロから全原発廃炉の道筋をつくる「卒原発」に加え、「女性の活用」「安心・安全社会の実現」「消費税増税の前に徹底した無駄削除」「脱官僚」「品格のある外交」を政策の柱に掲げている。特に「卒原発」については「ドイツ並みに10年。政権を取ったら実現する」
とし、隣接する福井県敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」の即刻廃止を訴えている。
 一方、「卒原発」以外の政策については安保防衛政策を含めて政党として確たるものがあるとも思えないが、次期衆院選で原発政策が争点の一つになることを歓迎したい。何より、新党乱立に困惑していた国民有権者もこれで頭の整理ができたのではなかろうか。
大まかに言えば、次期政権の絵柄は民主、自民、日本維新、未来の四つの政党の組み合わせで決まるわけだ。
もっとも、第3極の維新と未来がどんなに議席を伸ばしたとしても比較第一党にはなれない。基本は各種世論調査で優位に立つ自民党と公明党で安定多数の議席を得るかどうかだ。これに維新が補完勢力として加わればより保守色の強い政権が誕生することになる。また、政権転落が必至の野田民主党は先の3党合意もあり、これも自公との連携に前のめりである。
そうであればタカ派の安倍自民党中心の政権を望まないリベラル層や前回、非自民政権を期待して民主党に一票を投じた無党層が未来に向かうことになるはずだ。あるいは100議席を超える勢力を確保することができれば、再び非自民政権を誕生させることができるかもしれない。世論調査が楽しみだ。