2014年9月29日月曜日

安倍首相が胸を張る異次元の地方創生策


 安倍晋三首相は週明け29日召集の臨時国会を「地方創生国会」と名付けた。

周知のとおり、政府与党は「アベノミクスで経済が動いてきた。それを地方に行きわたらせる『ローカルアベノミクス』の基本的な骨組みを議論して、方向性を定める」(自民党・谷垣禎一幹事長)として、アベノミクスの補強版ともいえる「まち・ひと・しごと創生法案(仮称)」の成立をこの臨時国会の最優先課題の一つに掲げている。言うまでもなく、来春の統一地方選を強く意識してのことだ。

「各省の縦割りやバラマキ型の対応を断固排除、異次元の施策に取り組んでいただきたい」

政府の「まち・ひと・しごと創生本部」が19日に開いた有識者会議の初会合では安倍首相が「地方創生」にかける意気込みをこう述べている。

有識者会議は地方創生の具体化に向け今後5年間の実施計画と長期ビジョンの総合戦略を12月中にまとめる予定だ。これに並行して政府は来年度予算案に「地方創生」の特別枠を盛り込む。その出来不出来が来春の統一地方選の結果を左右することになるわけだ。

たとえば、安倍首相は政府や地方自治体が物品やサービスを購入する際、原則競争入札となっている現行の官公需法を改正、随意契約を拡大して地方のベンチャー企業を優遇する方針だが、どうだろう。つまるところは税金を使って地元企業にゲタをはかせるわけで、結局は公共事業の垂れ流し予算と変わらないような気がしないでもないが。

 あるいは総務、文科両省は地方の人材流出に歯止めをかけるため、地方公立大学の機能強化に共同して取り組む。公立大と地元企業、金融機関との連携を深め、卒業生が地域経済をけん引する人材に育つことを期待したものだが、ずいぶんと気の長い話である。予算取りの名目にはなるが、結果責任は問われることは決してない。いかにも縦割り行政、官僚が考えそうな浅知恵である。はたして国会本番、どんな異次元の施策が飛び出すものやら。

 

2014年9月20日土曜日

ネオナチ高市総務相のオカルトチックな視線の先にあるもの


 臨時国会は今月29日に召集される。安倍晋三首相は17日、視察先の福島県で地域の活性化に向けた関連法案処理に最優先で取り組む考えを示した上で「女性が輝くための法整備、災害対策のための法整備」を重要課題に上げた。

 地震や豪雨による自然災害が多発する中、山間部や河川流域などのさらなる防災対策が急がれるところだ。ただもう一つの「女性が輝くための法整備」を「地域の活性化」に結びつけるセンスは如何なものか。確かに安倍政権は女性が輝く、女性が活躍する社会を目指しているが、どんな屁理屈をこねてくるのか見ものである。

確かに「女性」は安倍政権の今後を象徴するキーワードの一つだから、何をやるにしても枕詞にこの二文字を付けたくなる気持ちは分からなくはない。

 そう言えばつい最近、安倍首相は官邸に女性のトラック運転手や土木技師を招いたり、政府主催で「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」を開催したり、国内外に向けて安倍政権が女性の良き理解者であることを必死でアピールしている。こうした安倍政権の女性に向けた姿勢、意欲的な試みを多くの国民は期待をもって見つめているはず。

 しかし、だからといって「女性」であれば、何でも許されるという話ではなかろう。高市早苗総務相のことだ。

ネオナチの政治団体代表との親密ツーショット写真が暴露されたのは、先に本欄が指摘したところである。

 どこかオカルトチックに一点を見つめる写真の中の高市氏の眼差し。ご本人は氏も素性を知らぬ存ぜとシラを切り通すつもりなのだが、さらにここにきて高市氏がヒトラー礼賛本に推薦文を寄稿していたとの疑惑も浮上。事実であれば、もはや政権内部に庇うものは誰ひとりいないだろう。ましてや秋以降、安倍首相には矢継ぎ早に重大な政治決断を迫られる緊張した場面が続く。賢明な高市氏であれば臨時国会召集前、政権の足を引っ張らないよう自ら体調不良を理由に大臣をお辞めになるはずだが。

 

 

2014年9月18日木曜日

朝日新聞が日本の名誉を傷つけ、国益を損ねたと言うのだけれど


 安倍晋三首相は14日に出演したNHK番組で従軍慰安婦問題について先に朝日新聞が一部記事のねつ造を認めたことに触れ「日本兵が人さらいのように慰安婦にしたという記事が世界中で事実と思われ、(日本を)非難する碑ができているのも事実だ。取り消すということは、世界に向かってしっかり取り消すことが求められる」と述べた。

 さらにこの日、民放番組では自民党の稲田朋美政調会長が同様の認識から「おわびではなく、日本の名誉回復のため何をするかを発信すべきだ」と注文を付けた。

 もちろん政府与党に言われなくとも、朝日新聞は今後の身の振り方を自ら考え、行動するはず。だがそれはあくまでも読者との信頼関係を取り戻すためのものである。あるいは稲田氏は、朝日新聞の報道が日本の名誉を傷つけるほどに世界に影響力があると考えているのかもしれないが、過大評価が過ぎよう。そうでなければ、日本に対する国際世論がここまで悪化した責任を一人朝日新聞に押し付け、政治責任から逃れようとする魂胆かもしれない。

 いずれにせよ、日本の名誉や国益というものは一義的には政府が守るべき責任である。言論の役割は何が名誉であり、何が国益かを問いかけ、読者に一定の見識を示すことであろう。

 これまで朝日新聞が安倍首相の訴える「戦後レジュームからの脱却」を戦前の植民地支配と敗戦の現実から再出発した日本の戦後を否定するものとして、A級戦犯合祀後の靖国神社への閣僚参拝や河野談話の見直し、あるいは従軍慰安婦問題をめぐる安倍政権の対応を批判的に報じてきたのは一つの見識なのである。

 もちろん反論があっても構わないが朝日新聞が従軍慰安婦報道の一部ねつ造を認めたからといって安倍政権がこれを糾弾し、自らの主張の正当化をはかる姿は中国や北朝鮮の言論統制にも似ておぞましくもある。

 本当のところ、日本の名誉を傷つけ国益を損なっているのは誰なのか。国民世論の冷静な判断を期待したい。

2014年9月15日月曜日

ネオナチ高市の入閣は安倍改造内閣最大のアキレス


「男性が一緒に写真を撮りたいとおっしゃったので、ツーショットで撮影しました。もちろんその時点で彼がそのような人物とは全く聞いておりませんでした」

 政治団体代表の男性との親密ツーショット写真が暴露された高市早苗総務相は10日、こんな内容のコメントを発表した。

 何が問題かといえばこの政治団体が「国家社会主義日本労働党」を名乗り、「民族浄化を推進せよ!国家社会主義闘争に立ち上がれ!」と叫ぶネオナチを標榜しているからだ。

 同様に現時点で自民党の稲田朋美政調会長と同西田昌司参院議員の2人についてもこの団体代表とのツーショット写真の存在が明らかになっているが、とりわけ高市、稲田の両氏は本欄が軍国少女隊と名付ける安倍首相の側近中の側近議員である。

 このため海外メディアは「(高市氏らが)男性と信念を共有しているという証拠はないが、安倍首相が政権をさらに右傾化させているとの批判に油を注ぐだろう」(英紙ガーディアン電子版)、「写真は安倍首相が自分の回りを右寄りの政治家で固めているとの主張をますますあおる可能性がある」(仏AFP通信)など、衝撃をもってこれを伝えている。

 この政治団体代表との関係がどうであろうと、結果からすれば軍国少女隊の名を世界に知らしめ、安倍政権の足を引っ張ってしまったわけだ。

 とりわけ高市氏の政治家としての力量についてはこれまで幾度となく疑問符が付けられてきた。たとえば、政調会長時代には「公明党との連立解消」に言及して厳重注意処分を受け、また、「福島原発事故で死者はいない」と発言し被災地住民から大ひんしゅくを買うなど「オンナ伸晃」と揶揄されるほどの失言壁は懸念されるところだ。組閣直後には靖国参拝を表明して中韓両国との関係改善に意欲を見せる安倍政権の足をさっそく引っ張った。

公明党の山口那津男代表は9日に行われた政府・与党連絡会議で「地球儀を俯瞰する外交の総仕上げとして、中国や韓国との関係改善を期待する声は内外に満ちている。政府・与党があらゆる人脈やチャンネルを生かして関係改善に取り組むべきだ」と述べた。ぜひそうあって欲しいが、高市氏の入閣が悔やまれるところだ。

2014年9月13日土曜日

年内解散説はゲスの発想


 安倍晋三首相が南西アジア三カ国歴訪を終えて8日、帰国した。成果らしきものを一つだけあげるとすれば、2015年に実施される国連安全保障理事会の非常任理事国選挙でライバルとなるはずだったバングラデシュが出馬辞退を明言、日本支持を取り付けたことくらいか。このため安倍首相はバングラデシュに対して最大6000億円もの経済支援を行うが、だからといって日本の非常任理事国入りが決まったわけではない。言うなれば捨て銭である。

さらに安倍首相は将来の常任理事国入りを目指し、国連改革に意欲を見せているそうだが、何より日本が優先すべきは経済再生と外交で言えば、中韓両国との関係改善だ。

第2次安倍改造内閣の発足が高い支持率を得て国民に迎えられたのは、その期待の表れであろう。各社数字にバラつきがあり、最も低い毎日新聞は前回調査と同じ47%にとどまったが、一方で読売新聞は13ポイント増の64%を記録している。数字の多寡はともかく、改造効果を否定する材料は見当たらない。

一部政治評論家や永田町雀どもが訳知りにこの機に乗じた年内解散の可能性を指摘しているが、菅義偉官房長官は7日のテレビ番組で「第2次内閣がスタートしたばかりだ。やらなければならない課題がたくさんあり、まったく解散は考えていない」とこれを明確に否定している。

 確かに今、総選挙となれば自民党の大勝は間違いないところだが、安倍首相が山積する政治課題を捨て置き、党利党略優先で解散総選挙に打って出るとの見立ては、ゲスの発想であろう。

 折しも内閣府は8日に発表した4~6月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)の改定値を発表したが、実質成長率は年率換算で7・1%減となり、二四半期ぶりのマイナス成長となっている。下落幅はリーマン・ショック後の09年1~3月期(年率15・0%)以来の大きさだから、事態は深刻だ。

 それでも安倍首相は、来年10月からの消費税率10%引き上げを決断するのかどうか。選挙に政治エネルギーを注いでいる場合ではなかろう。

2014年9月9日火曜日

大山鳴動して「石破幹事長」を外しただけの内閣改造


内閣改造・党役員人事をめぐるマスコミ各社の報道合戦も残すところあと1日。連日、ご苦労なことである。実際のところはフタを開けるまではっきりしたことは誰にも分からないが、それまでは自薦他薦、身贔屓含めて国民有権者は馬券を買うごとく、マスコミの人事予想を楽しんだらいい。それも一つの政治参加である。

 最大の目玉人事となるのは小渕優子元少子化担当相の処遇であろうか。1日付産経新聞は「入閣が有力になった」と伝え、これにつられるように前日付で「幹事長起用の方向」と報じていた読売新聞がこの日は「起用できるかどうかが焦点だ」と軌道修正。さらに小渕氏の幹事長起用が見送られるとすれば「青木幹雄元幹事長の意向による」との言い訳まで準備する念の入れようだ。つまり、幹事長への起用は誤報ではないと言いたいのである。

ちなみに同日、朝日新聞はデジタル版で「3役か、閣僚で起用」として、3役であれば「政調会長か、総務会長が有力」と報じている。読売への対抗心が垣間見えよう。やっぱり「本当のところはよく分からない」のである。

注目人事で言えば、ポスト石破の幹事長人事について各社はどう報じているだろうか。

29日付毎日新聞が「党内で人望がある」との理由から河村建夫選対委員長の名前を真っ先にあげ、また首相と同じ町村派出身で「首相を裏切らない」細田博之幹事長代行の起用も取り沙汰されると報じている。一方で本欄がかねてより有力視してきた二階俊博元経済産業相については各派閥や党OBとパイプが太いことを理由に否定的な見方を示している。

それでも二階氏の処遇は隠れた焦点であることに間違いなく、同紙は31日付で自信あり気に総務会長起用の方針を「安倍首相が固めた」と報じている。

そういえば31日付読売新聞は小渕氏が幹事長を受けない場合として、すでに安倍首相が続投を明言している甘利明経済再生相の起用というウルトラCを持ち出していた。あるいは小渕幹事長が実現した場合には毎日新聞が二階氏の起用を報じている総務会長に谷垣禎一法務相が就任する可能性を指摘。稲田朋美行革担当相の政調会長起用説を流布したのも確か読売新聞だったような。いったいどんな豪華な顔ぶれが並ぶやら。大山鳴動して「石破幹事長を外した」だけに終わりそうな気がしないでもないが。

内閣改造ではっきり見えた解散は自民党結党60年の夏


第2次安倍改造内閣が3日、発足した。主要閣僚の顔ぶれはほとんど変わらず、サプライズ人事もない。目新しさは女性閣僚が2人から5人に増えたことくらいか。しかしそれも、党三役から高市早苗政調会長を入閣させ、一方で野田聖子総務会長が選に漏れたのがひっかかる。共に将来の女性宰相として期待される人材だが、周知のとおり高市氏は先の総裁選で安倍首相の推薦人に名を連ねるいわば、安倍親衛隊長である。対する野田氏はリベラル派女性議員の代表格であり、安倍首相とは肌合いが異なるが、この2人が揃って3役に起用されたことで党内バランスが保たれていた面もあった。ところが安倍首相は今回の人事で一方を切り捨ててしまった。理由は野田氏が集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更について左派系論壇誌「世界」6月号で「違う政権になったときに解釈を変えることが可能になり、政策の安定性がなくなるのではないか」と安倍首相を公然と批判したからだ。党内の意見を取りまとめる総務会長の立場であれば、確かに顰蹙もの。倒閣運動と取られても致し方ないところだ。聞けば朝日新聞政治部の秋山訓子副部長にそそのかされたようだ。野田氏が最も信頼する新聞記者とのことだが、これでは贔屓の引き倒しである。

折しもこの日、野田氏は55歳の誕生日を迎え、都内ホテルで誕生パーティーが開かれた。総理官邸の雛壇に立つライバル高市氏のドヤ顔にはたして何を思ったであろう。近い将来、政局の発火点になりそうな2人である。

もっとも安倍政権にはこれまでさしたる失政があるわけではない。政策の継続性を考えれば全体として悪くない改造内閣の顔ぶれと言えようか。

また政権の安定ということで言えば、谷垣禎一法務相の幹事長起用には二重丸をあげていい。総裁経験者の幹事長起用はまさにサプライズ人事であった。本欄が幹事長候補の本命としていた二階俊博元経産相と2人、党重鎮実力者が安倍首相を支えるとなれば、政権の安定度は格段に増す。しかもリベラル派に位置する谷垣、二階両氏は公明党からの信頼厚く親中、親韓派の代表的な存在である。安倍首相の暴走に歯止めをかけ、中韓両国との関係改善にも大いに期待が持てるところだ。

かくして安倍首相は経済の先行きに一抹の不安を抱えつつ、自民党結党60年の節目となる年明け通常国会で悲願とも言える集団的自衛権の行使容認を可能とする安保法制の整備に道筋をつけ、解散総選挙に打って出ることなる。