2015年2月26日木曜日

エセ右翼の正体見たり安倍内閣の惨澹


 2月22日は「竹島の日」である。2005年、島根県が竹島の領有権確立を目指して条例で定めた。

「竹島は歴史的事実に照らしても国際法上も、わが国固有の領土。問題を冷静かつ平和的に解決するために全力で取り組む」

政府代表としてこの日の式典に出席した松本洋平内閣府政務官はこうあいさつ。溝口善衛県知事は「国際社会に向けて情報発信を積極的に展開することを強く要請する」と政府対応に注文を付けた。

是非もない。条例制定から早10年、この間政府はいったい何をしていたのかと言いたくもなろう。

振り返れば民主党政権下、当時は落ち目の自民党で居場所を失っていた安倍晋三首相と都内ホテルのレストランで産経新聞政治部の有志面々共々食事をご一緒させて頂いた時のことだ。安倍首相は尖閣をめぐる民主党政権の対応にかなり憤っていた。その流れから話題は竹島問題へと移るのだが、安倍首相は小泉政権下、竹島問題で日韓関係が一触即発の危機的状況に直面した際、官房副長官、党幹事長として一人、軍事衝突辞さずの強気の姿勢を貫いたことを自慢げに語るのである。

これに対して当方、これまで韓国による竹島の実効支配を許してきた日本政府が今さら軍事衝突も辞さず、はなかろう。しかも外務省が古文書や古地図をホームページに貼りつけ国際社会に向けて日本固有の領土であると訴えている姿も噴飯もの。「世界中、地図と言えばグーグルマップの時代ですよ。竹島が韓国表記の“独島”になっているのを知っていますか」と。この時の安倍首相は眉を垂らして困惑するのみ。この翌日に慌てて自民党のタカ派議員数名がグーグル日本法人に押しかけ「閲覧者に竹島が韓国領であるかのような誤解を与える」と抗議、竹島表記に改めるよう申し入れている。これでは民主党政権時代のヘタレ外交を笑えまい。

さて、国会は週明け早々、安倍首相が民主党議員に飛ばした「日教組」ヤジの撤回、謝罪に追い込まれ、さらには献金疑惑が浮上した西川公也農水相の辞任が続いた。西川氏についてはこれまでの疑惑とは別に農業関連企業からの顧問収入が問題視されていた。逃げ切れないとカンネンしたのであろう。これで昨年秋の臨時国会から4人の閣僚が不祥事発覚で閣僚が辞任。安倍内閣の惨憺である。

 

2015年2月23日月曜日

西川農相の辞任で終わらない安倍首相の任命責任

「政治資金規正法上は問題ないと承知している。農協改革をはじめとする諸課題について引き続き職務にまい進してもらいたい」
西川公也農水相が砂糖業界から100万円の献金を受けていた問題で安倍晋三首相は17日、参院本会議でこう述べた。
 しかしながら、事の詳細を知れば西川農水相が100万円を受け取ったのは2013年7月。TPP交渉に日本が初参加する直前のことだ。砂糖はTPP交渉で関税撤廃の例外とするよう日本が求める重要5項目の一つで、業界からは政府与党に対して保護を求める声があがっていた。当時の西川氏は自民党TPP対策委員長で農水相就任後も一貫して交渉の関与しており、見返りを期待しての献金だった可能性は否定できない。
 「違法性は全くない献金であるが、農水相としていささかの疑念も持たれることのないようにするため返金した」
西川氏は同日午前、菅義偉官房長官にこう釈明しているが、疑惑は「いささか」どころか、まさに自民党族議員と業界団体の癒着そのもの。
民主党は「返せばいいということではない。任命責任を含めてしっかりと追及する」(羽田雄一郎参院幹事長)、「事実だとすれば環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の駆け引きでお金が動いたととられても仕方ない」(細野豪志政調会長)との見解を示し、安倍首相の任命責任も含め徹底追及する構えだ。
 砂糖業界と政界との癒着で思い出されるのは佐藤政権下の1966年に起きた共和製糖事件である。宮崎県の細川コンビナートの建設をめぐる不正融資事件に端を発し、共和製糖グループから3800万円の政治献金を受け取った重正政之農水相の秘書官が逮捕されている。
 西川農水相をめぐる今回の疑惑でも農水省の「さとうきび等安定生産体制緊急確立事業」の13億円に上る補助金にまつわる政治献金との指摘もある。掘り起こせば意外に深い、政官業の一大疑獄に発展することになるかもしれない。

2015年2月19日木曜日

対決姿勢を鮮明にした岡田民主党代表の鼻息


 国会は16日、衆院本会議で安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問が行われた。トップバッターとして質問に立った民主党の岡田克也代表は周知のとおり、政界随一の理論派論客。安倍首相は過去の国会論戦で度々、煮え湯を飲まされてきた。注目の一戦だが、予想どおり岡田代表の切り口鋭い舌鋒に防戦一方の安倍首相であった。

 攻める岡田代表はまず、アベノミクスの経済成長戦略について「短期的に株価を上げる政策に重点が置かれ、本質的な成長戦略には見るべき実勢がない。成長の果実をいかに分配するかとの視点が欠落している。成長と格差是正を両立すべきだ」と批判。非正規労働者の増加や貧困率上昇など具体的な数字をあげて安倍首相に「日本で格差が拡大している事実を認めるか」と詰め寄った。

 これに対して安倍首相は世論調査を持ち出し「格差拡大の意識変化は確認されていない」と苦しい答弁。認識の違いを強調しながらも「引き続き再分配機能の向上に努める」と述べ、事実上、格差拡大を認めざるを得なかった。

 では、いったいどうすれば格差は是正されるのか。岡田代表は今国会、政府与党が成立を目指す労働者派遣法改正案など雇用制度見直しを「誤りだ」と断じた上、富裕層への所得・資産課税の範囲拡大や税率引き上げを検討するよう求めた。

 ここで特出すべきは岡田代表が企業の負担する法定福利費を取り上げたことだ。政府与党が推し進める雇用制度改革が、つまるところ正社員の非正規化による企業負担の軽減策であるとの切り口だ。税と社会保障の一体改革とも重なり合う今後の論点の一つであろう。

 岡田代表はもう一つ、今国会、最大の争点となる安保法制についても安倍首相に厳しく詰め寄った。戦後日本は人道支援、途上国への開発援助やPKOなど武力行使と一線を画した国際貢献で高い評価を得てきたにもかかわらず、安倍首相が自衛隊の活用を強調するのは、自国の安全保障と国際貢献を混同した「総理の思いの先走りだ」と岡田氏は指摘。その上で昨年7月に閣議決定した集団的自衛権の行使を容認する新3要件の具体的事例を求めた。

安倍首相は「状況を総合的に判断して、わが国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」と閣議決定の内容を繰り返すに止めたものの、中東ホルムズ海峡の機雷掃海活動を事例に上げて自衛隊の積極的な活用が国際貢献に不可欠との認識を示した。はたしてそれが、日本の進むべき道なのかどうか。今後の論戦を通じて問われる安倍首相の「積極平和外交」である。

2015年2月17日火曜日

国際貢献とは真逆な安倍首相の積極平和外交

「今日の我が国の発展は先人たちが幾多の国難を乗り越えた礎の上にある。様々な環境の変化に適応しなければ、伝統を守りぬくこともできない。100年先を見据えた改革に果敢に取り組む」
 11日の憲法記念日を迎えるにあたり安倍晋三首相はこんな談話を発表した。
もちろん、念頭にあるのは憲法改正だが、これまでの安倍首相の言動を踏まえれば、とてもこの国の将来を見据えたものとは思えない。
政府が今国会成立を目指す安保法制がその最たるものだ。日本の自衛隊を中東湾岸諸国の紛争地域に送り出すことが何故「改革」と呼べるのか。日本が国際社会で果たすべき役割の中心に何故「自衛隊」を据えなければならないのか。そのことがどんな日本の「伝統」を守り、日本の発展を保障することになるのか。突き詰めれば、問われているのは安倍首相が掲げる「積極平和外交」の是非なのである。
戦後日本の外交は日米同盟を基軸にした東アジアの安全保障の枠組みと、国際貢献においては国連中心主義の平和外交を推進してきた。ところが安倍首相はこれに満足せず、「様々な環境の変化」を理由に紛争地域での自衛隊の積極運用を打ち出し、日米同盟の役割を地球規模にまで拡大しようと目論む。さらに平和外交においても、10日に閣議決定した「開発協力大綱」では日本の政府開発援助の支援対象を外国軍の活動にまで拡大することを明記している。先に安倍首相が中東歴訪で約束した「イスラム国」対策の約2億ドル支援は、まさにこうした野心を先取りしたもの。
安倍首相は「人道支援」であることを強調しているが、名目はともかく支援の内訳をみれば、その約9割が「イスラム国」周辺諸国への直接支援である。
日本政府はこの地域に過去3回にわたり計1300万ドルを支援してきたが、そのほとんどは国連機関や赤十字を通じたものだった。それが今回、突出した支援額もさることながら、当事国への直接支援に切り替えたのは国連中心主義を掲げてきた戦後日本の「伝統」的平和外交とは大きく異なるアプローチだった。しかも、それが結果として日本の「イスラム国」リスクを高めてしまったとすれば、いったい何のための2億ドルの支援であったのか。安倍首相は12日、衆参両院で施政方針演説を行う。積極平和外交の徹底検証が求められるところだ。

2015年2月12日木曜日

安倍首相には他人事だった「イスラム国」人質事件

外務省はシリアへの渡航を計画していた新潟在住のフリーカメラマン・杉本祐一(58)の旅券を返納させた。渡航を自粛するよう再三求めたが聞き入れられず、やむを得ず渡航を阻止するため緊急避難的に邦人の生命、身体、財産の保護を目的とする旅券法19条の規定を適用したもの。

「ISIL(イスラム国)が日本人の殺害継続を表明しており、危険は明らかだ。2人殺傷の後ということで判断した。報道の自由は最大限尊重されるべきだが、邦人の安全確保も政府の役割であり、慎重に検討した」

 菅義偉官房長官は9日の記者会見でこう述べ、今後も同様の措置を取り得ることに含みを残した。

もとより移動の自由は憲法が保障するところだが、それ以前に杉本氏の渡航は一人エベレストの登頂を目指すようなもので、無謀としか言いようがない。報道カメラマンとして本気でシリア入りを考えていたかどうかも疑わしく、報道の自由を制限したい安倍官邸に介入の口実を与えてしまっただけのお粗末な話だ。

それにしても不可解なのは政府の対応である。安倍官邸は救出に失敗した後藤健二(47)さんに対しても渡航自粛を求めていたそうだが、湯川遥菜さん(42)が「イスラム国」に拉致監禁されていた事実を知っていたのであれば、今回と同様の措置を取る選択肢もあったはずだが、そうはしていない。

しかも渡航自粛を求めていた事実を安倍官邸が公にしたのは「イスラム国」が殺害動画を公開した後になってのことだ。邦人の安全確保が政府の役割であれば、もっと早くにこの事実を明らかにして広く国民に警鐘を鳴らすこともできたであろう。

読売新聞社が先週末に行った世論調査では政府が渡航しないように注意を呼び掛けている海外の危険な地域に行ってテロや事件に巻き込まれた場合、「最終的な責任は本人にある」とする意見に83%が賛同している。自己責任論を否定するものではないが、後藤さんが危険を承知で渡航したことの是非と救出に失敗した政府の責任とは別けて考えるべきだ。

 だからだろう、同じ世論調査で人質事件への政府対応を「適切だ」とする人は55%に止まっている。

 事件について政府は週内にも杉田和博官房副長官をトップとする「検証委員会」を設置して報告書をまとめるが、検証対象となるのは湯川さんと後藤さんの殺害予告動画が公開された1月20日以降に絞りたいとしている。なぜ、それ以前に遡って検証しないのか。  

昨年12月3日、「イスラム国」から20億円の身代金要求メールが後藤夫人に送り付けている。報告を受けた安倍晋三首相がその事の重大性について「認識していなかった」とは官邸スタッフの証言である。

安倍首相が無関心の遺体引き渡しを求める国会決議を


「日本政府の3度の警告にも関わらず支配地域に入った。どんなに優しくて使命感が高かったとしても、真の勇気でなく蛮勇というべきものだった」

 自民党の高村正彦副総裁は「イスラム国」に殺された後藤健二さん(47)についてこう述べた。死者に鞭打つようで心苦しいが、多くの国民もきっと同じ思いを抱いたのではなかろうか。そのことは後藤さんも自覚していたはず。だからこそ「自己責任」との言葉を遺して旅立ったのであろう。

目的、動機はどうであれ、安倍首相の積極平和外交と同様、手段を間違えれば悲劇は一人後藤さんの「自己責任」で済む話ではない。

とはいえ、2人の救出に失敗した政府が近藤さんを非難するもの筋が違う。

 安倍晋三首相は4日に行われた衆院予算員会で

「日本人の命(を守る責務は)、すべからく国の最高責任者である私にある。その責任を引き受けるのは当然だ」と述べていたが、一方で前日の閣議では事件に関する一連の政府対応について「あらゆる手段を講じてきている。対応は適切であったと考える」との答弁書を決定した。

民主党の鈴木たか子衆議の質問主意書に答えたものだ。しかし、どうだろう。「人命優先」と言いながら「イスラム国」との直接交渉の道を自ら閉ざした安倍首相の判断については賛否議論が分かれるところだ。

政府はまた、この日行われた「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部」の会合で国際テロ組織の動向に関する情報収集・分析やテロリストの入国を阻止する水際対策を徹底強化するなどを申し合わせた。

それはそれで邦人保護には万全を期してもらいたいが、何より政府として殺害された邦人2人の遺体引き渡し交渉に最善を尽くしてもらいたい。

併せて国会は5日、邦人人質事件を受けて衆院本会議で「イスラム国」に対する非難決議を採択する。与野党の立場を越え、「イスラム国」に対して遺体の引き渡しを求めることが、選良としての振る舞いであろう。

 

2015年2月5日木曜日

「イスラム国」邦人2人の遺体引き渡し交渉を放棄した安倍首相の無責任


「国民の命、安全を守ることは政府の責任であり、最高責任者は私だ。結果として2人の日本人の命が奪われたことは誠に無念で痛恨の極みだ」

「イスラム国」の人質事件が最悪の結末を迎えたことについて安倍晋三首相は2日、参院予算委員会でこう述べた。

 もちろん、邦人救出に失敗した政府の責任は重い。

湯川遙菜さん(42)については昨年8月、後藤健二さん(47)についてはその2か月後の10月、政府は2人が行方不明になった直後から救出に向け対策本部を設置していたそうだが、遺体を「イスラム国」から取り戻すまでは政府の責任である。

ところがこの日の参院予算員会で安倍首相は「政府としてはテロ対策、海外の邦人保護に万全を期していく」とは述べたが、遺体の引き取りについての言及はなかった。

さらにこれに先立ち菅義偉官房長官は記者会見で「あのようなテロ集団相手の極めて危険な箇所でありますので、政府としてはご遺体についても最前の情報収集、最大限詰めてまいりたい」と述べるに止め、遺体の引き取りに消極的な姿勢を滲ませている。これでは政府の責任を放棄したに等しく遺族の悲しみは癒されない。

安倍首相はまた、前日に発表した声明文の中にある「罪を償わせるため国際社会と連携していく」との文言の意図について「犯人を追いつめて法の裁きにかけるとの強い決意を表明したものだ」と説明した。

 このため政府はすでに2人の居住地がある警視庁と千葉県警に合同捜査本部を設置、

菅義偉官房長官は記者会見で「(犯行グループに)罪を償わせるため国際社会と連携して、様々な手段について徹底して追及していきたい」

 と述べていた。しかしながら遺体の確認もできず、犯人の特定もできずにいったい誰が「イスラム国」の実行犯を裁けよう。百歩譲って裁くにしても一義的にはシリアやイラクの法が優先する。日本政府に出る幕はない。

 つまり「罪を償わせる」とは米英両国を中心とする有志連合の「イスラム国」に対する軍事的制裁を指してのこと。安倍首相は有志連合への参加について「日本が参加することはあり得ないし、後方支援するということも考えていない」ときっぱり否定したが、魂胆は透けて見える。まやかしの言葉で国民を愚ろうするのは罪の上塗りである。