2015年7月21日火曜日

国民の命を弄ぶ安倍の安保の強行採決

 安保関連法案が15日、衆院特別委員会で強行採決された。これに先立ち行われた締めくくり質疑で安倍晋三首相は「国民の理解が進んでいないのも事実だ。批判に耳を傾けつつ、確固たる信念があればしっかり政策を前に進めていく必要がある」と述べた。
 さらに安倍首相は「私たち政治家、国会、政府は国民の命、幸せな生活を守ることに大きな責任を有している」とも述べ、国際情勢の変化に伴う安全保障体制の強化見直しの必要性を訴えた。
 その言を借りれば、強行採決は安倍首相の確固たる信念と国民に対する責任の発露ということなのであろう。
もとより、安全保障体制の強化見直しの必要性は国民の多くが認めるところだ。しかしながら集団的自衛権の行使を可能とした安保関連法案は100時間を超える国会審議の過程で数多くの問題点が指摘されている。そうであれば、むしろ国民の疑念や批判に謙虚に耳を傾け、成案を得る努力を重ねることこそが首相のとるべき責務であり、国会のあるべき姿ではなかろうか。
そもそも国民には安倍首相がこれほどの欠陥法案の成立を急ぐ理由が分からない。国民の命や幸せを守れない切迫した理由があるとは思えないのだ。
この日、自民党の二階俊博総務会長は囲みの記者に安保関連法案に対する国民理解不足を問われて「いつになったら『分かりました』となるかというと、何か月延しても同じだ」と事もなげに言い放った。また、強行採決についても「いつまでもだらだらやっていいものではない。委員会の現場や党の責任者の判断で採決すべきだ」と。
つまりは国民の理解は二の次。先に成立ありきの見切り発車の強行採決でしかなかったわけだ。

政府与党がこんないい加減な態度であれば、国民の理解が進まないのは当然である。何より国民の声に背を向ける安倍政権に国民の命、幸せな生活は守れまい。

衆院審議で国民が確信した安倍の安保のデタラメ

「審議時間が100時間を超え、維新の党から対案が出されたこともあり、論点がだいぶ整理されている」
 菅義偉官房長官は13日の記者会見で安保関連法案の衆院審議についてこう述べた。同日には衆院採決の前提となる中央公聴会が開催されており、政府与党は早ければ15日にも強行採決に打って出る構えだ。
 確かに菅氏の言うとおり、100時間を超える国会審議で論点は整理されたが、政府が答弁を重ねる度に国民有権者の不安は募るばかりである。だからこそ、これまでに整理された論点の一つ一つを丁寧に洗い直し、国民有権者が理解し、納得する安保法制に仕上げることが政府与党に求められよう。
 たとえば、中央公聴会後に行われた安保法制特別委員会の審議では、政府与党が集団的自衛権の行使ができるとした「存立危機事態」の認定について、中谷元防衛相のしどろもどろの答弁で審議は度々中断した。
 先週10日、安倍晋三首相が「邦人輸送中やミサイル警戒中の米艦が攻撃される明白な危機がある段階で認定が可能」との発言を質したもの。これまでの安倍首相の答弁では、「米国への攻撃が発生した」場合と「日本に対する攻撃が予測されるか切迫している状況」が存立危機だと説明していたが、10日の答弁では米艦船にミサイルが発射される前でも自衛隊の武力行使は可能となる。
 中谷防衛相は「首相の見解はあくまで一例に過ぎない」と答弁したが、この一例を許すならば、つまりは時の政府が存立危機事態と判断すれば、自衛隊が先制攻撃を仕掛けることもできるのだ。もちろん、そんなことが現行憲法の解釈変更で許されるわけがなく、たとえ自衛のためであったとしても専制攻撃は国際社会が認めていない。
「決めるべき時には決める」とは、安保関連法案の採決時期を問われた安倍首相の言葉だが、国民世論に謙虚に耳を傾け今国会での成立を断念することこそが下すべき首相の決断であろう。

 

化けの皮はがれた安倍の安保と経済成長戦略

 安保関連法案審議の成り行きが注目される中、民主、維新両党は8日、日本周辺有事に対応する「領域警備法案」を衆院に共同提出した。これとは別に維新は単独で政府の安保関連法案の対案となる「平和安全整備法案」など2法案も提出。共同提出をめぐり紆余曲折があったものの野党が足並みをそろえて対案を示したことを評価したい。
これで国民有権者は政府案の賛否だけでなく、与野党の法案を吟味しての中身をその優劣を判断ができるようになった。
 ところがどうだ。菅義偉官房長官は同日の記者会見で「対案を出されるようだから、その中で(政府案との)違いなどを通じて、議論は深まっていくと思う。ただ、
いつまでもだらだらと続けることでなく、やはり決めるところは決めるということも、一つの責任だと思う」と述べている。衆院採決を当初予定通り、週明けにも強行する構えなのだ。あるいは野党の対案を審議するにしても、衆院で3分の2の再可決可能な「60日ルール」が使える21日の週までとの考えだ。
 国民世論の6割が政府案に対して違憲との見方を示し、今国会での成立に反対しているにもかかわらず、これでは国民の付託に応える政府与党の責任を放棄したのも同然である。
 しかも安倍晋三首相はこの日、全国市長会や全国町村会の代表らとの会合で「地方創生を進化させることで、さらに全国津々浦々にアベノミクスの効果を波及させ、国民一人一人が豊かさを実感できるよう取り組んでいきたい」とあいさつ。得意の安保外交で行詰まれば、バラマキ政策をチラつかせて国民有権者の歓心を引く。浅はかな宰相である。
 折しも内閣府が発表した6月の景気ウォッチャー調査によれば、3か月前と比べた街角景況感を示す現状判断指数は、前月比2・3ポイント低下し、二か月連続で悪化。頼みの株価(8日終値)もギリシャ危機に続く、中国リスクの高まりを受けて2万円を大きく割り込んでしまった。
「経済成長なくして財政再建なし」とは安倍首相が常日頃から口にするフレーズだが、その前提条件に暗雲立ち込める日本経済の先行きである。政権の命運尽きる日もそう遠くない。
 

 

安倍自民を占う秋の岩手県知事選と参院補選

「政権与党におごりや油断が生じれば、国民の信頼は一瞬にして失われる。原点に立ち返って信頼回復にまい進する」
 安倍晋三首相は6日に行われた政府与党連絡会議でこう述べた。自民党の安倍シンパの若手議員でつくる「文化芸術懇話会」の報道圧力発言を念頭に置いたものだが、おごれるものは久しからず、である。
 毎日新聞が実施した直近の世論調査では安保関連法案について58パーセントが反対で、前回調査の53パーセントからさらに増えている。しかも公明党支持層の5割、自民党支持層の3割が集団的自衛権の行使容認を憲法違反だとし、今国会での成立には61パーセントが反対。国民への説明不足を指摘する声が実に81パーセントにも上っている。
 内閣支持率も安倍内閣発足後初めて支持と不支持が逆転した。支持率は先月調査より3ポイント減の42パーセントはこちらも最低を記録、不支持率は7ポイント増の43パーセントだった。
内閣支持率については安倍応援団の保守系大衆紙の読売新聞が同時期に行った世論調査でも最低を記録。安保関連法案への賛否、説明不足を指摘する声は毎日新聞の調査と同水準だった。
この数字に謙虚に向き合うならば、安倍首相は今国会での法案成立を諦めるべきだが、政府与党は週明け13日に採決の前提となる中央公聴会を開催、「議論を尽くした」として16日の衆院通過を目指す。それこそおごり以外の何ものでもない。
また、参院では自民党の吉田博美国対委員長が6日、民主党の榛葉賀津也国対委員長との会談で安保関連法案を審議する特別委員会の設置を提案したが拒否されている。当然だ。
強引な国会運営はさらなる国民の離反を招くはず。
 何より深刻に受け止めるべきは参院自民党である。読売新聞の調査では自民党の支持率は35パーセント。前回調査から3ポイント下がり政権復帰後最低となった。来夏の参院選への影響は必至だ。
折しも6日の東京株式市場は、ギリシャ危機にさらされ大幅に下落、為替相場は円高に振れた。株高円安を頼みとする景気の先行きにも不透明感漂う安倍政権である。
まずは与野党が激突する9月の岩手県知事選と10月、平野達夫参議の同知事選出馬に伴う参院補選が試金石となろう。
 


2015年7月2日木曜日

安倍自民党の劣化を象徴する「文化芸術懇話会」

「沖縄の2紙を潰せ」とか、「マスコミを懲らしめるには広告収入をなくせ」だとか、まったく開いた口が塞がらない自民党の議員たちである。
 詳細についてはすでに多くのメディアが報じているとおりだ。安倍晋三首相に近い若手議員でつくる勉強会「文化芸術懇話会」でのこと。直後に国会で追及された安倍首相は「私的な勉強会で自由闊達な議論がある。言論の自由は民主主義の根幹をなすものだ」と述べて我関せず。
ところが国民世論の批判を受けて一転、29日の谷垣禎一幹事長との会談では「沖縄の方の気持ちに反する発言があったことは、極めて遺憾だ」と述べ、勉強会を主宰した自民党の木原稔青年局長を更迭し、問題発言をした大西英男、長尾敬、井上貴博の3衆院議員を厳重注意処分にした。谷垣幹事長の求めに渋々応じたものだが、これにて一件落着とはいくまい。
何より深刻なのは、この発言を聞いた勉強会の参加メンバー約40人が誰一人として異議を申し立てなかったことだ。将来を背負って立つ若手議員が民主主義の根幹ともいえる言論の自由に対してこの程度の認識しか持ち合わせていないのである。
同日の安保関連法案の審議では民主党の長妻昭衆議が安倍首相の名代として勉強会に出席した加藤勝信官房副長官に対して「発言をいさめなかった責任は感じていないのか」と追及。加藤官房長官は「私が出席したのは(勉強会)前半の講演の部分で、マスコミや沖縄に関する話があったとは認識していない」と言い逃れたが、安倍自民党の質の劣化は誰の目にも明らかだ。
期せずして先週末、安倍首相の応援団とも言えるFNNが行った世論調査で安倍内閣の支持率は46・1パーセント(先月より7・6ポイント)に下落。5割を切ったのは14年12月以来である。
安保関連法案については49パーセントが「必要だ」としながらも、今国会での成立については58・9パーセントが「反対」。その上、集団的自衛権の行使容認についても57・7パーセントは「違憲」との判断だ。これをマスコミ報道の責任にしたところで国民の理解が進むわけではなかろう。政権与党には延長国会、よりいっそうの謙虚さが求められるところだ。


60日ルール封印でいよいよ現実味を帯びる安倍退陣

自民党の谷垣禎一、公明党の井上義久幹事長ら与党幹部は24日、安保関連法案の成立に向けた協議で、会期の大幅延長によって可能となる衆院の再可決を行わないことを確認した。
 周知のとおり、国会会期を95日間延長したことで同法案は国会日程上、7月29日までに衆院を通過すれば、参院の採決がなくても60日後に自然成立する。しかし、それでは参院軽視の批判は招きかねない。野党だけではなく参院全体を敵に回すことを怖れて早々、憲法が定める「60日ルール」の再可決を封印した、というのが大手マスコミのもっともらしい解説である。
 もちろんそれも理由の一つだが、だったら何のために国会会期を9月末まで引っ張る必要があるのか。前回、本欄で触れたが自民党総裁選に絡めて考えれば、「60日ルール」を封印したことに別の意図が透けて見えよう。
 安倍晋三首相の党総裁任期は9月30日まで。党則では任期満了10日以内の国会議員による投票で新総裁が選出される。つまり、党員投票による本選挙を行わないことが前提の総裁選なのである。
「出馬の意向がある人がいれば今年初めあたりから活動している。現在、誰からもそうした話は聞かない。総裁選にカッと血を上らせず、今は静かに重要案件に専念することが大事だ」
自民党の二階俊博総務会長は23日の記者会見でこう述べた。額面通りに受け取れば、安倍首相の無投票再選を支持したものだが、ここまでなら素人考え。
現時点で名乗りを上げる対抗馬がいないことは事実だが、だからといって安倍首相が無投票で再選されるとは限らない。
言うまでもなく安倍首相が無投票で再選されるためには安保関連法案の成立が絶対条件となるが、「60日ルール」の再可決ができなければ、維新の党との修正合意を目指すか、最悪でも参院で野党の保守系議員を一部取り込み、成立を期すことになる。いずれにせよ、綱渡り的な政権運営が強いられよう。
あるいは打つ手をなくした安倍首相が退陣と引き換えにした「60日ルール」の適用を与党執行部に求めてくることは十分あり得る。退陣とまではいかなくとも、政権運営の主導権を陰の幹事長とも呼ばれる二階総務会長ら党執行部のベテラン議員に握られることだけは確かだ。
折しも今週発売の週刊ポストが「ポスト安倍」の特集記事を組んでいる。今国会会期末の安倍退陣を前提にしたものだが、この中で筆者は有力後継候補に谷垣幹事長の名を挙げた。
 理由は同誌を読まれたい。自民、公明両党の執行部には安倍首相の暴走を懸念、安保外交政策の軌道修正を図りたいとの空気が漂う。「60日ルール」の封印はその一手とみた。


安保法案採決と引き換えにした安倍退陣シナリオ

24日に会期末を迎える国会会期が過去最長の95日間、9月27日までに大幅延長される。これに関して安倍晋三首相は22日、公明党の山口那津男代表との会談で「戦後以来の大改革を行う国会だ。平和安全法制は丁寧に議論せよとの声に耳を傾け、9月27日までとしたい。戦後最長となるが、審議時間を多く取って議論する意志を示したい」と述べている。
安保関連法案の今国会成立を目指す政府与党は当初、会期末までに衆院通過を通過させる予定だった。このため延長幅は最悪、参院で採決できないことを想定し、衆院の再可決による成立が可能になる60日間、8月中旬を軸に検討してきた。ところがフタを開ければ、“超”がつくほどの大幅延長である。
これに先立ち与党との修正協議に含みを残す維新の党の松野頼久代表は21日、記者団ンを前に「十分な審議がないまま採決することがあれば、採決には応じられない」としつつ、
会期の大幅延長については「一回区切って秋の臨時国会でやればいい」との考えを示した。
 また、民主党の岡田克也代表は「仮に延長になれば、安全保障関連法案の問題を徹底的に議論し、国民世論を巻き込んで廃案に持っていく」と述べている。
 いずれにせよ、国民からすれば賛否の判断材料は多いに越したことはない。国会での徹底論戦は望むところだ。
 もっとも、いくら国会審議を多く取ったとしても国民世論が安倍首相の期待通りに頷いてくれるとは限らない。
折しも22日の衆院平和安全法制特別委員会に参考人として呼ばれた宮崎礼いち?元内閣法制局長官は、安保関連法案を「従来の憲法解釈とは相いれず、憲法違反だ」と断じ、政府与党が主張する自国防衛のための集団的自衛権の行使は「虚構であり、歴史を甚だしく歪曲している」と厳しく批判。さらにもう一人、阪田雅裕元内閣法制局長官も政府が想定するホルムズ海峡での機雷掃海について「従来の憲法解釈の枠内にない」との見解を示している。
それでも政府与党が持論に固執して強弁、詭弁を重ねるのであれば、国民のさらなる離反を招くことになる。
一方、9月の自民党総裁選を視野に入れれば、国民世論の反対を押し切っての衆院の再可決は、安倍首相の再選戦略にも影響を与えよう。
窮屈な日程を考えれば、自民党総裁選は両院議員総会での決着が常識だ。それまでに維新との修正合意が成れば、安倍首相の無投票再選は確実だ。最悪、再可決となれば潔く身を退き、安倍政権をいわば居ぬきで谷垣禎一幹事長に明け渡す。そんな密約説も囁かれる会期延長である。