2014年12月29日月曜日

安倍政権の落日と今度こその民主党代表選


 第3次安倍内閣が24日、発足した。改造人事で安倍晋三首相は一人、先の臨時国会で政治資金疑惑が浮上した江渡聡徳防衛相兼安全保障法制担当相に代えて中谷元・元防衛庁長官を起用、他の閣僚と党三役は全員留任させた。

 安倍首相はまた、「大義なき解散」に異を唱えた伊吹文明衆院議長のクビを切り、出身派閥町村派の町村信孝会長を後釜に据えた。

 周知のとおり伊吹氏は財政再建派の重鎮であり、消費税率10%引き上げを先送りしてしまった安倍首相からすれば目障りな存在だったに違いない。そして同時に長らく安倍首相と派閥の主導権争いを繰り広げてきた町村氏を体よく新議長に祭り上げ、近い将来の安倍派移行を前提に気心しれた細田博之会長代行を後継会長に就けることに成功した。

つまり安倍首相は「大義なき解散」に大勝したことで第2次安倍内閣の改造人事の失敗を帳消しにしただけでなく、言わば一粒で二度おいしい「グリコのおまけ」のような議長人事で党内外に政治権力の在り処を見せつけたわけだ。言い換えれば、ただそれだけのために「大義なく解散」に打って出たのである。

 一方、惨敗の民主党は落選した海江田万里代表が辞任したことで光明が見えてきた。年明け党員サポーターが参加した代表選を行う。最右翼は自主再建を目指す岡田克也元代表。対抗馬は維新との合流に積極的で野党再編派に位置づけられている細野豪志元幹事長だが、24日には参院議員の蓮舫元行政刷新担当相が名乗りをあげて賑やかになった。

 ちなみに蓮舫氏は維新との合流について「自分たちが一人で立っていないのに、どこかと一緒になるなんていうことはあり得ない」と否定的な立場。立候補に必要な20人の推薦人集めがネックだが、女性議員の代表選出馬は党の活性化にもつながるはず。

 いずれにせよ、誰が代表に選出されても分裂さえしなければ、党勢がこれ以上に悪くなることはない。対する自民党は先の衆院選で自公3分の2の勢力を得たといえども、自民単独では4議席を失った。それも史上最低の得票率で得た議席である。安倍政権のピークはすでに過ぎたとみていい。さらに年明け通常国会後半には国論を二分する安保法制が待ち受け、夏以降にはアベノミクスの成否がはっきりする。その時のために功を焦らず組織政党としての足場をしっかり固め直すことだ。安倍政権が未来永劫続くことはない。

2014年12月20日土曜日

もってあと1年のアベノミクス幻想


 週明け24日、第3次安倍内閣が発足する。政府はすでに全閣僚の留任を前提に年末の税制大綱の改正に始まり、年明け通常国会冒頭で処理する3兆円規模の補正予算案とこれに続く本予算案の編成作業を急ぐ。

 国民有権者にとっては安倍首相が15年10月の消費税率10%引き上げを先送りしたことによる税収不足の穴埋め財源と財政再建の先行き、子育て介護などの社会福祉サービスへの影響が気になるところであろうか。

 政府はすでに来年度予算案の編成にあたり、借金返済のための新規国債発行額を今年度より1・3兆円抑え、40兆円程度にする方針を固めており、消費税率10%引き上げ先送りによる税収減1・5兆円と合わせ3兆円程度をアベノミクスによる法人税や所得税の増収分で穴埋めできると算盤をはじく。

 アベノミスクの経済成長がそれほど順調ならば、そもそも消費税率を引き上げる必要はないとの理屈も成り立つ。また一方で年金受給者、低所得者対策の先送りや介護報酬引き下げなど社会保障費を抑制する方針だ。そうであれば、増えた3兆円もの税収はいったい何に使われるのか、納得のいく説明を求めたところだ。

 さらに安倍晋三首相の言葉を借りれば、企業業績の好調が見込まれるならば当然国民の暮らしも向上するはず。そうならなければ理屈に合わない。

 しかしながら肝心要の賃金給与の引き上げについては昨年同様、16日に行われた「政労使会議」で安倍首相は経済界に対して「賃上げの流れを来年、再来年と続け、全国にアベノミクスの効果を浸透させたい」と述べたものの、これまでのように物価上昇を賃上げが後追いするようなアベノミクスであれば、国民生活はお先真っ暗なままだ。

「企業に内部留保がたまっている。賃金か配当か設備投資に回すのが本来の姿だ」

 同じ日、麻生財務相は閣議後の記者会見でこう述べてもいるが、企業からすれば大きなお世話ということにもなろう。

 そもそも生活苦に喘いでいるのは内部留保をたんまりため込んでいる大企業の社員ではなく、中小零細企業の労働者である。

 衆院選の圧勝で安倍首相は4年の任期を与えられたと勘違いしているようだが、待ってあと1年、結果がでなければ国民から三下り半を突き付けられることになろう。覚悟してかかることだ。

 

2014年12月18日木曜日

憲政史上に汚点を残した安倍流「大義なき俺の解散」


 戦い終わった翌15日、安倍晋三首相に近い読売、産経の2紙は「自公圧勝」の大見出で選挙結果を伝えている。自民、公明両党を合わせた獲得数は325議席。確かに与党は議員定数の3分の2となる317議席を上回る議席を得た。

 しかしながらこの数字は解散前議席と同じである。それならば、わざわざリスクを冒してまで解散することはなかった。しかも、自民、公明両党それぞれの議席を見れば、圧勝を印象づけたのは4議席を上乗せした公明党である。逆に自民党は4議席を減らし、その分だけ公明党は政権内の発言力を増した。消費税率引き上げに伴う軽減税率の導入を訴えたことが公明党の議席増につながったのか。あるいは集団的自衛権の際限なき行使に突き進む安倍晋三首相に対するブレーキ役を期待してのことだろう。いずれにせよ、国民有権者の不安、不信の表れとみるべき自民党の議席減である。この結果に安倍首相が胸を張り、勝ち誇っているとすれば勘違いも甚だしい。

 もっと言えば、安倍首相は投票率が戦後最低を記録したことを謙虚に受け止めるべきだ。52%の投票率は過去最低だった前回自民党が政権に返り咲いた12年の衆院選より7ポイント下落。投票率1%で100万票、ざっと700万人が今回、棄権したことになる。 

ちなみに現行選挙制度下、民主党が308議席を得て政権を奪取した09年の衆院選の得票率は過去最高の69%を記録。つまりは獲得した議席数は同じであっても一議席の重みは格段に軽くなってしまったのだ。

 そこで頭を過るのは1980年、西側諸国がソ連のアフガニスタン侵攻に抗議してボイコットしたモスクワ五輪である。興味半減、価値半減のメダル争いにも似た選挙戦ではなかったかと思うのだ。

 むろん、「勝てば官軍」と開き直ることはできる。投票を棄権した有権者や野党の対応にも責任の一端はあろうが、それだけの理由でこれほどまでに投票率が下落するはずがない。

 何より「大義なき解散」に打って出たのは安倍首相である。その上、野党の選挙準備には十分な時間が与えないままの総選挙となれば、その時点で投票率の低下は誰の目にも明らかだった。

安倍首相はまさに「勝てば官軍」の解散総選挙に打って出たのだが、憲政史上に汚点を残すことにもなろう「自公圧勝」である。いずれそのツケを国民有権者が払わされることになる。

2014年12月13日土曜日

言論統制を正当化する安倍流「俺の民主主義」


 国家機密を漏らした公務員や民間人を取り締まる特定秘密保護法案が10日、施行された。

「国と国民の安全を間持つための機微な情報を外国とやり取りし、政府内で共有し保護するための基盤が整う」

 世耕弘成官房副長官は同日の記者会見でこう述べ、法施行の意義を強調した。

 その趣旨は良としても、周知のとおり同法案は「防衛」「外交」「スパイ活動防止」「テロ防止」の4分野について行政機関のトップが「特定秘密」を指定し、情報漏えいに厳罰を処す。かねてより行政の恣意的判断で秘密指定の範囲や期間が拡大され国民の知る権利を制約するおそれが指摘されてきたところだ。

これに対して政府は10月に策定した運用基準に「憲法が規定する基本的人権を不当に侵害しない」、「国民の知る権利は、憲法21条が保障する表現の自由や憲法がよって立つ基盤の民主主義社会の在り方と結び付いたものとして、十分尊重されるべきものである」との文言を留意事項として付け足し、国民の理解を求めている。

世耕官房長副長官もこの日の記者会見で

「政府として法律の適正な運用に努めていく。運用状況を停年に説明し、施行状況を公表することなどを通じ、国民の知る権利が損なわれることは絶対にないことを示していきたい」と述べている。

 しかしながらこの法案は昨年秋の臨時国会、大多数の国民が不安を訴える中で安倍晋三首相が数に任せて強行採決したことを忘れてもらっては困る。

 また先の通常国会、安倍首相は集団的自衛権の行使を可能にするため、現行憲法の解釈見直しを閣議決定。さらには直近、放送法が謳う公正中立報道を逆手にとり、テレビ各局に対して安倍政権に批判的な報道を控えるよう圧力文書を送りつけてもいる。

 つまり法律の文言は時の政権の恣意的な運用でどうにでもなることを自ら証明してみせたわけだ。特定秘密保護法案も例外ではない。

 むしろマスコミ報道は、こうした国家権力による法律の恣意的運用を厳しくチェックし、国民世論に警鐘を鳴らすことを使命とする。その当然の国民の知る権利をわざわざ運用基準に書き込まなくてはならないところにこの法案の本当に怖いところだ。

いよいよ投票日は14日。その意味では国民の知る権利、表現の自由に対する安倍政権の姿勢が問われる選挙でもあろうか。

2014年12月11日木曜日

安倍圧勝に暗雲漂うGDPの大幅下方修正


 自民圧勝の流れに暗雲がたち込めてきた。先週、為替相場がついに1ドル=121円台に突入、8日にはアベノミクスの評価に直結する7~9月期の国内総生産(GDP)の改定値が先月速報値のマイナス1・6%からマイナス1・9%へ下方修正され、景気の悪化を印象付けてしまったのだ。

急激な円安はもちろん、アベノミクスの副作用である。

「中小企業にはマイナスの影響が出ている。円安倒産が今年1月から11月にかけて去年の2・7倍に増えた。(円安で)物価は上がったが、賃金が追いついていない。過度の円安は国民生活を破たんする」(海江田万里・民主党代表)

「食料品などの生活物価が上がる。国民にとっては何もいいことがない。輸出企業と内需型企業の格差が広がった」(小沢一郎・生活の党代表)

 との野党の批判も合点がいく。

 これに対して安倍首相は「海外からの観光客は民主党政権時代から500万人も増えた」

と反論する。確かに銀座、秋葉原は中国人観光客に占領されてしまった感がある。それが嫌中タカ派の安倍首相が目指すアベノミクスの成果であれば、皮肉なものである。

 さらに安倍首相が消費税率引き上げ先送りを決断した7~9月期のGDPについてはどうか。

世耕弘成官房副長官は8日の記者会見で「景気の現状は穏やかな回復基調にあることは変わりはない。アベノミクスを今後続けていくべきかどうかを(総選挙で)国民の皆さんに信を問うている」

 と、なお強気の発言を繰り返しているが、名目GDPでもマイナス3・5%になる。

安倍首相はかねてより国民有権者に向けてアベノミクスの経済政策で年率3・5%以上の名目成長実現を約束していたはずだが、結果はまったく逆のマイナス成長である。しかも、実質賃金が16カ月連続で低下(毎月勤労統計調査)しているのだから、アベノミスクの金融緩和と円安のダブルパンチが国民生活を圧迫しているのは誰の眼にも明らか。4月の消費税率8%引き上げの反動との言い訳は通用しないのである。

2014年12月8日月曜日

デフレ脱却しても生活は豊かにならない安倍首相の詭弁


選挙戦序盤を振り返り、安倍晋三首相の発言で指摘しておきたいことが2点。まずは「企業が競争力を強くし、収益を高めていく。そうすれば雇用は改善し、給料が増える。消費は増え、景気が回復してく」とここまでは誰もが望むところだろう。

>> しかしである。「これを繰り返せば、デフレから脱却し、経済が成長し、生活が豊かになる。デフレ脱却のチャンスを手放すわけにはいかない」と言うのは、はたしてそうか。

>> この発言を逆から読んで欲しい。デフレ脱却が経済の成長を意味し、生活が豊かになるとの論法だが、決してそうではない。

>> 安倍首相がこの選挙で最大の争点に掲げる「アベノミクス」は、日銀に大量の札束を刷らせて市中にバラマキいたが、企業は国内の設備投資に二の足を踏み、そのカネを海外の設備投資に回すか、あるいは株式市場に流し込み、為替市場の円安と相俟って数字の上では企業業績を押し上げ、外形上は景気回復の兆しを見せてはいる。

>> しかしながら、アベノミクスの成長戦略は人の健康に例えると、図体は大きくなっても脂肪や贅肉が増えただけの、言わば「メタボノミクス」なのだ。いずれ日本経済全体を蝕み、死期を早めてしまうことにもなりかねない。

>> さらに言えば、アベノミクスの経済成長戦略はバブル経済と小泉構造改革をごちゃ混ぜにしたもので、その結果、経済規模は膨らんだものの格差拡大を招いたことは周知の事実

>> 。たとえて言えば、博打の胴元が儲かる仕組みなのだ。誰かが儲かれば、それ以上に多くの人が損をする政策、損をする人が一定数いなげれば成り立たない政策。儲かったカネが国民の全体に還元すれば、まだしも胴元が無駄遣いすれば、消費税がその穴埋めに使われることは過去の為政者の振る舞いを見れば明らか。是非そのことを覚悟した上で、国民有権者には一票の重みを感じて頂きたいものだ。

>>  そしてもう一点は日本記者クラブでの発言。自民党の荻生田光一筆頭副幹事長名がテレビ各局に対して圧力文書を送付した件について、安倍首相は放送法にある公正中立を持ち出し、政府与党のメディアへ介入を正当化するのである。

>>  戦後、日本のテレビ局開設の経緯を振り返れば、米軍占領下からの限られた電波の割り当て、与野党伯仲を背景にした放送法成立にいたる議論があり、高度経済成長期を経て今日に至るメディアの多様化、放送と通信の融合などに目を向ければ、報道の客観性を担保するものは法律の字面、文言ではなく社会の有り様により変貌する社会通念、視聴者国民の良識によってある程度の枠に収まるものなのです。

>>  もとより放送法に謳われている報道の中立性、客観性をどう担保するかは悩ましいところで、読者視聴者の信頼が揺らぎつつある現状を謙虚に受け止める必要はあろう。ただ、何よりジャーナリズムは国家権力の行使をチェックする機能こそが優先されるべきものであること。安倍首相にとやかく言われる筋合いではない。

2014年12月4日木曜日

国民に白紙委任を求める安倍首相の厚顔


 衆院選が2日、公示された。

「今回の選挙は与党として2年間政権運営に当たってきた安倍晋三政権の信を問う選挙だ」

菅義偉官房長官は前日の記者会見でこう述べた。大義なき解散に打って出てしまった以上、こう言うしかないのであろう。

菅官房長官は「経済再生、復興の加速、危機管理の徹底など全力で取り組んできたことを評価し、理解をいだだきたい」と続けた。

しかしながら経済再生を謳ったアベノミクスは経済失速が明らかになったが故に消費税率引き上げを思い止まったのではなかったのか。また、復興加速の前提となる放射能汚染水など原発事故処理は遅々として進んでいない。さらに危機管理の要諦を成す安保法制の整備にいたっては、憲法解釈の見直しを閣議決定したとはいえ、肝心要の法案の中身がベールに包まれたまま。つまり、菅官房長官は今後4年間の白紙委任を国民に求めているのだ。

冗談じゃない。今年4月の消費税率8%への引上げは安倍首相が決断したことだ。それがどうだ。半年後にはアベノミクスの先行きに不安感漂い出しただけで消費税率再引き上げを先延ばししての解散総選挙である。

ほんの半年先の経済状況すら見誤る安倍首相にどうして国民有権者が今後4年間の長期にわたる政権運営を白紙委任できよう。

 しかも安倍首相は同日行われた日本記者クラブの党首討論で自民、公明の連立与党で過半数となる238議席を勝敗ラインとする考えを示している。与党現有325議席から最悪、80議席以上を失ったとしても国民から白紙委任を受けたと言い張るつもりなのだ。

そうであれば、勘違いも甚だしい。仮に自公連立与党が過半数を得たとしても、それは国民有権者が自公連立政権の現状を追認したに過ぎず、どう曲解したとしても安倍首相に政権を白紙委任したとまでは言えまい。むしろ、自民党が失う議席の数だけ安倍首相は国民有権者から絶縁状を突き付けられたと理解するべきだろう。

幸い自民党には石破茂地方創生担当相をはじめ谷垣禎一幹事長、野田聖子前自民党総務会長、小池百合子元防衛相らポスト安倍の人材は余りある。

安倍首相が保守王道を歩む政治家ならば、分を弁え潔い身の振る舞いを心得ていようが、そうであればハナから「大義なき解散」の道は選ぶまい。エセ保守たる所以である。

ついでながら党首討論で安倍首相は消費税率引上げ先送りにともなう財源不足を理由に低年金生活者への月額5千円の給付金支給の延期に言及。多くの国民が期待する賃金上げについては「経団連会長が上げると約束した」と言い張るだけ。まるで他人事の国民生活なのである。