2014年8月30日土曜日

安倍改造直前予想(石破無役ケース)


 安倍晋三首相はいよいよ週明け9月3日、内閣改造・党役員人事を断行する。閣僚についてはこれまでのところ菅義偉官房長官をはじめ主要閣僚の麻生太郎財務相、甘利明経済再生担当相、岸田文雄外相、これに公明党の太田昭宏国交相の5人は続投の見込みだ。となれば、閣僚数は18人までと決まっているから、残るは13人。注目の安保法制担当相は、石破茂幹事長が就任を拒否した場合、集団的自衛権の行使容認をめぐり与野党協議をまとめた高村正彦副総裁が最適任だが、本人は持病を抱えて固辞する意向を示している。次善の選択肢として名前が取り沙汰されているのは、中谷元(56)谷垣派衆院当選8回、岩屋毅(57)麻生派衆院当選6回、江渡聡徳(58)大島派衆院当選5回の3人。ただ今回、安倍首相に反旗を翻した石破氏側近の中谷氏の起用は見送られ、岩屋、江渡両氏のいずれかが安保法制担当相と防衛相を兼務するか、ポストを分け合うことになろうか。

TPPや農協改革など難題山積の農水相には西川公也(二階派衆院当選5回)と宮腰光寛(岸田派衆院当選6回)、森山裕(石原派衆院当選4回、参院1回)の3人が候補に挙がっている。

いずれも農協改革を主導する中心メンバーだが、なかでも党TPP(環太平洋経済協力協定)対策委員長としてTPPや経済連携協定(EPA)の各国との交渉、党内、農業団体との調整に奔走した西川氏が一歩リード。

 もう一つ、マスコミが注目する女性議員の起用については、それこそ衆参百花咲き乱れるごとく。小渕優子(40)額賀派衆院当選5回は当確。他に小池百合子(62)無派閥石破系衆院当選7回参院同1回、野田聖子(53)無派閥中立系衆院当選7回、高市早苗(53)町村派安倍系衆院当選6回、山谷えり子(63)町村派安倍ママ系・参院当選2回衆院同1回、有村治子(43)大島派参院当選3回、丸川珠代(43)町村派安倍系参院当選2回など。安倍首相はこれに稲田朋子行革担当相を含めた4~6人の女性議員を閣僚か党要職で起用する考えだ。

 党人事については石破幹事長の後継として早くから本欄で指摘している二階俊博(75)二階派会長・衆院当選10回や額賀福志郎(70)額賀派会長・衆院当選10回、大島理森(67)大島派会長・衆院当選10回ら派閥領袖クラスを安倍首相がどう処遇するかも見物である。

2014年8月28日木曜日

安倍首相に届くのか生活向上と中韓関係改善を求める国民の声


内閣府が23日に発表した「国民生活に関する世論調査」によれば、昨年に比べ現在の生活が「低下している」と答えた人は20・9%(前年比4・1ポイント増)、現在の生活に「不満」を感じる人が29・0%(同1・4ポイント増)で、いずれも08年の調査以来6年ぶりに増加に転じたそうだ。

 内閣府はこれを「4月の消費税率引上げや電気代の値上がりなどで家庭の負担感が増したため」と分析する。確かに調査が行われたのは6~7月だから、消費税率引き上げの影響は否定しないが、政権発足以来のアベノミクスの経済効果が限定的だったことはすでに政府も認めているところだ。

 さらに同調査では「老後の生活設計」に悩みや不安を持つ人が57・9%(同4・3ポイント増)もいて、68・6パーセント(同2・7ポイント増)が「医療・年金などの社会保障の整備」を求めている。

 今週はもう一つ、毎日新聞の世論調査が興味深い。安倍晋三首相が8月15日の終戦記念日に靖国神社参拝を見送ったことについて71%が「適切」と答え、84%が11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で日中首脳会談が実現することに期待感を示している。

 靖国参拝についていえば、安倍首相は昨年も終戦記念日の参拝を見送っているから、そのことが中韓両国への配慮とならないことを知っておくべきだろう。

 同調査ではまた、中韓両国が「日本は過去の歴史を反省していない」としていることに67%が否定的な反応を示している。

 当然の結果ではあるが、過去の歴史を反省せずに中韓両国との関係を悪化させているのは日本国民ではなく、安倍首相ら一部、狂信的ナショナリストであるから混乱なきよう願いたい。

 ちなみに集団的自衛権行使容認の閣議決定に対しては60%が反対しており、閣議決定直前6月調査の58%から増加。内閣支持率は47%で前回6月調査から2ポイント増。不支持は1パーセント減の34パーセントだった。

 さて、安倍首相はこの2つの世論調査の結果から何を読み取り、何を成すべきか。週明け内閣改造、党役員人事にも少なからず影響を与えるはずだ。

 

2014年8月25日月曜日

安倍首相が内閣改造で乱発する内閣府特命大臣


安倍晋三首相は9月3日の内閣改造で新設する地方創生担当相を官房長官や総務相の兼務とせず、単独ポストとして起用する意向と言われている。これにもう一つ新設する安全保障法制担当相が単独ポストとなれば、閣僚の割り振りはどうなるのか。

周知のとおり閣僚数は内閣総理大臣を除き18人までと決まっている。閣僚のポストには各省庁トップの主務大臣と内閣府の特命担当大臣とがある。現在、安倍内閣で主務大臣専任は法務、外務、厚労、農水、防衛の5大臣しかいない。他の閣僚は主務大臣と内閣府特命相の兼務、内閣特命相を複数兼務している。

例えば、麻生太郎財務相は副総理兼金融・デフレ脱却・円高対策担当特命相を兼務。山本一太沖縄・北方担当特命相は科学技術・宇宙政策・情報通信技術政策担当、海洋政策・領土問題担当を兼務、稲田朋美行政改革担当相にいたっては国家公務員制度、クールジャパン戦略、再チャレンジ、規制改革の5つの特命相を兼務している。数え上げればキリがないほどの特命大臣ポストだらけなのだ。それではたして国民の負託に十二分に応えることができるのか。甚だしくは山本特命相だ。肩書が多過ぎていったい何をやっているのか得体の知れない、まるで幽霊のような存在なのである。形骸化したポスト、肩書は極力減らすことだ。

たとえば、安倍首相が地方創生担当相を新設し、単独ポストとするのは来春の統一地方選に向け、地方重視の姿勢をアピールする狙いがあるようだが、それならばせめて現在、総務相が兼務する国家戦略特区・地方分権・地域活性化、道州制担当特命相ポスト、あるいは沖縄・北方担当も含め整理、統合してはどうか。

あるいは安保法制担当相についても、複雑多岐に渡る法案の国会答弁を一元化することで閣内不一致になることを避け、国会審議を円滑に進めたいとの狙いからであろう。そうであればやはり、現在ある安全保障強化、海洋政策・領土問題担当など特命相を整理、統合した方がより分かりやすい。

集団的安全保障の閣議決定が国民に不評だったのは、議論のテーブルからしてごちゃごちゃいて、意思決定のプロセスが見え難くなってしまったからだ。その意味で今回の内閣改造は、特命担当相のポスト数とその肩書も要注目なのである。

 

2014年8月23日土曜日

女性の活躍は政労使一体の取り組みで


「結婚や出産で7割近く(の女性)が仕事を辞める。人口が減少する中、女性の活躍は選択肢ではない。『この道しかない』との覚悟で取り組む」

 加藤勝信官房副長官は17日のテレビ番組でこう述べ、女性の社会選出を促進することが安倍政権の経済成長戦略に不可欠との考えを強調した。

 これに関し同氏は子育てで離職した主婦らの職場復帰支援を柱とした「女性のチャレンジ応援プラン」を年末までに策定すると共に、懸案となっている専業主婦やパートタイムで働く妻のいる世帯の所得税負担を軽減する配偶者控除について「はたらくか、育児するかを選択するうえで、中立性を欠くとの指摘がある。しっかり見直したい」とも述べた。

 志は良にしても、女性の生き方、価値観は千差万別。いざ各論となれば、こちらを立てればあちらが立たずの難しい舵取りが迫られようか。

たとえば、政府は先にまとめた成長戦略で2020年までに管理職など社会の指導的地位を占める女性の割合を30パーセントに引き上げることを目標に掲げている。

これを先取りする形で財務省は、26年度本省キャリア職員の新規採用22人中、過去最多となる女性5人を採用。省全体の女性職員の割合でも約28%にまで引き上げている。さらに女性職員を対象にしたメンター制度を試験的に導入、ライフスタイルに合わせたキャリアパスの柔軟化にも取り組んでいる。

ただ、これが民間企業となれば、業種によって管理職30パーセントの引き上げ目標は早、絶望的と言っていい。

帝国データバンクが7月に行った調査では、女性管理職の比率が高い方を並べれば、貴金属販売(46・0パーセント)や繊維・服飾品小売り(37・4パーセント)、医療・福祉・保健衛生(20パーセント)となるのはいずれも女性就労者の絶対数が多い職場である。一方、男性就労者の絶対数が多い職場だと運輸・倉庫(3・1パーセント)、建設(4・1パーセント)、製造(5・0パーセント)と極端に低くなる。

「現状とのかい離は大きく、達成には相当の努力が必要だ」と帝国データバンクは指摘するが、努力だけではどうしようもない数字である。もちろん、やらないよりやった方がいい。言い出しっぺの政府が共同して責任を負うよう政労使一体の取り組みが求められよう。

2014年8月19日火曜日

安倍改造人事の隠れた注目点


 安倍晋三首相は夏休みの多くを山梨県鳴沢村の別荘で過ごす。予定では9日から11日まで別荘で過ごした後、12~14日を地元山口に帰郷、15日は政府主催の全国戦没者追悼式に出席するためいったん東京に戻り、その後は再び別荘に22日頃まで滞在する。

 もちろんこの間、9月第1週に行う内閣改造、自民党役員人事に思いを巡らすことになる。もっとも今回の人事、かなり早い段階でその全体像が浮かび上がってくるのではなかろうか。

 何より安倍首相がいち早く、幹事長のイスに意欲を見せていた菅義偉官房長官の留任を決めたこと、そして同時に石破茂幹事長をはじめとする党三役全員を交代させる意向を示したことで安倍首相の頭の中はかなり整理できたのではなかろうか。

おそらくは、これまで安倍内閣を支え、政権の推進力の役割を担ってきた麻生太郎財務相、甘利明経済再生担当相ともう一人、目立たないが安倍外交の露払い役に徹してきた岸田文雄外相の3閣僚は現職に留める考えだ。となれば、すでに再任が確定している公明党枠の太田宏昭国交相を除く残りの13人が交代となる。形の上では大幅改造だが、重要閣僚が変わらず、注目されている女性議員の入閣数や顔ぶれも連日マスコミに報じられては、もはやサプライズ人事はなかろう。

残るは安保法制担当相への就任に難色を示す石破幹事長の去就、それにひょっとしたら公明党からもう一人、地方再生担当相に起用することがあるかもしれない。

マスコミの注目度からすれば、小渕優子元少子化担当相の幹事長、稲田朋美行革担当相の政調会長への大抜擢人事だろうか。しかしながら、高市、野田両氏でさえ党を束ねるには力不足は否めないものを、ましてや今回は選挙の実務を仕切る幹事長であればこのサプライズ人事はムリ筋である。しかも安倍首相が閣僚にはしたくない二階俊博元総務会長や町村信孝元官房長官、大島理森元幹事長、額賀福志郎元財務相ら派閥領袖、うるさ型のベテラン議員らのポストをどうするのか。党の要職にさえありつけなければ、黙っているはずもなく、政権基盤を揺るがす存在になろう。安倍政権の命運を握ることになるかもしれない実は今回の人事に隠された最大の注目点なのである。

2014年8月15日金曜日

植民地支配と敗戦に至る歴史を振り返り反省する1日


 安倍晋三首相は15日の終戦記念日、靖国神社への参拝を見送るそうだ。11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席する安倍首相は、中国の習近平国家主席との会談に意欲を見せており、一部には「一定の配慮」を評価するムキもあるが、はたしてそうか。

 安倍首相は昨年の終戦記念日にも私費で玉串料を納めただけで、参拝はしていない。今回も同様、自民党総裁特別補佐官の萩生田光一衆院議員を代理に差し向け、玉串料を納めることになっている。しかも、安倍内閣から新藤義孝総務相、稲田朋美行革担当相、古屋圭司国家公安委員長の3閣僚がすでに参拝を明言しており、つまり、日本政府の対応はこれまでと何も変わっていないのだ。こんなことでは中国どころか韓国との関係改善ですら道のりはなお険しい、と言わざるを得ない。

 9日にはミャンマーで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議に出席した岸田文雄外相が、中韓両国の外相と相次いで会談。日中外相会談は日本政府が尖閣諸島を国有化した直後の12年9月にニューヨークで行われて以来2年ぶり。もちろん、安倍内閣が発足して初めてとなる。

 会談後、岸田外相は記者団を前に「関係改善をいかに進めるかについて、ゆっくりと長時間、率直に意見を述べ合った」と語ったが、詳細は明らかにしなかった。つまり、11月の首脳会談実現に向けて語るほどの成果はないということ。

 また、約11カ月ぶりとなる韓国外相との会談では、岸田外相が冒頭「両国の間には困難問題が存在しているが、良好な日韓関係は相互の利益であり、アジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠だ」と述べ、関係改善に意欲を表明。一方、韓国外相は「歴史問題で日本側が真摯な態度で実践すれば、韓国国民の心が開かれ、両国の複雑に絡んだ糸も少しずつほぐすことができる」と述べ、安倍首相の靖国参拝や歴史認識の見直し発言の非を認め、誠意ある対応を求めた。会談後、岸田外相は関係改善が進んだとの認識を示したが、楽観が過ぎよう。

 終戦記念日となる8月15日をすべての戦争犠牲者に哀悼の意を表し、そして日本の植民地支配と敗戦に至る歴史を振り返り、反省する1日にしたいものだ。

2014年8月13日水曜日

解散総選挙の時期と安倍首相の長期政権戦略


「来年4月の統一地方選に勝って、初めて日本を取り戻す戦いが完成する。さらに続く衆院選、参院選に結びつく大切な選挙だ。まなじりを決して戦い抜く」

 安倍晋三首相は5日、自民党本部に都道府県連幹部を集めた政策説明会でこう述べ、熱く激を飛ばした。

 4月の統一地方選はその後に予定される衆参国政選挙を占ういわば中間選挙的意味合いを持つ。戦績が振るわなければ、当然ながら政権の求心力低下を招き、秋の自民党総裁選挙で再選を目指す安倍首相の長期政権戦略に狂いが生じる。だから「まなじり決する」ほどに熱くもなるわけだ。

 それにしても安倍首相はなぜ、統一地方選後の国政選挙について参院選より先に衆院選を並べて言及したのであろうか。時系列に並べるならば16年12月任期満了を迎える衆院より7月に任期満了となる参院選が先にきてもよさそうなもの。あるいは安倍首相が無意識のうちに衆院の解散時期を示唆しているとすれば、少なくとも参院選後の解散総選挙の可能性を否定したことになろうか。

 もっとも過去、衆院選が任期満了で実施された例は少ない。解散権を握る首相は政権維持のために最も有利な解散時期を選び国民に信を問う。それからすれば、秋の臨時国会召集以降、安倍首相が解散総選挙に打っ出る可能性は、今後日毎高まることになる。

 とはいえ、一部報道が指摘するような年内の解散や衆参同日選はまずない。同じ会合で安倍首相は「まだ景気の温かい風が全国津々浦々に届いていない。景気回復の風を皆さんに届けるのが私たちの使命だ」と述べ、秋以降、地方重視の政策に取り組む考えを強調した。

つまりは今すぐには国民に信を問うべきアベノミクスの成果が充分ではないとの考えだ。

 また、7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定について安倍首相は「戦争に巻き込まるという批判は全く的外れだ。徴兵制導入は憲法違反だと国会で否定している」とも述べている。国民世論の大半が「説明不足」を指摘する中では、金看板の「積極平和主義」も名折れて、今後の安保法制の整備に支障をきたすことにもなろう。

しかも政府が最優先にするべき来年度予算の年度内成立を投げ出すわけにもいかず、加えて4月の統一地方選に重なる総選挙は公明党が許さない。

さらにはこれより先に目を転じれば10月には批判を浴びるだろう消費税率が10パーセントに引き上げるし、9月の自民党総裁選で再選される確証はない。

かくして安倍首相は来年通常国会会期末、アベノミクスの成果と安保法制を仕上げてからの解散総選挙になるはず。9月の内閣改造、党役員人事を見れば、安倍首相の意図がよりはっきり見えてくるだろう。

 

福田元首相の外相起用が究極のサプライズ人事


安倍晋三首相が4日、中南米5カ国歴訪を終え帰国した。各国首脳との会談では来年10月改選の国連非常任理事国入りに支持を求める一方、財界人ら約70人の経済ミッションを引き連れトップセールスを展開したそうだが、結果が出るのはずっと先の話だから、評価は据え置くとする。今回の外遊を加え安倍首相の訪問国数が47カ国となり、小泉純一郎首相をまもなく追い抜くそうだが、評価すべきは具体的な外交成果であろう。何より、政権発足以来の冷え切った中韓両国との関係を見れば、とても褒められたものではない。

 当面の関心事は11月に北京で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に中国の習近平国家主席との首脳会談が実現できるかどうか。

「課題があるからこそ対話をすべきだ。静かな努力を続けていくことも大切だ」

 2日、最後の訪問国ブラジルのサンパウロで内外記者会見に挑んだ安倍首相はこう述べ、非は中国にあるとの従来の考えを変えていない。

 その中国はといえば、これも困ったもので旧日本軍がやらかしたとする南京事件や慰安婦の強制収容などの資料を世界記憶遺産に登録申請する構えを見せている。韓国も負けじと、女性家族省が旧日本軍の従軍慰安婦問題の実態を国内外に周知宣伝するため「慰安婦白書」を作成するそうだ。

ここで両国共に指導者が弱腰になることを国内世論が許さない。「静かな努力」なんて呑気なことを言っている場合ではないのである。

身から出た錆だとはいえ、安倍首相とて苦しい立場は同じだ。内心失敗したとは思っていても今さら靖国不参拝を明言するわけにもいかず、あるいは不参拝となれば極右タカ派からの突き上げも恐そうだし、心中穏やかでないはずだ。

そうこうしているうちに時間だけが過ぎ、結局のところ、中韓両国との関係改善はポスト安倍政権を待つ他ないかと諦めムード漂う中、親中派の福田康夫元首相と習国会主席との極秘会談が明らかになった。今のところ、唯一の希望である。9月の内閣改造で「福田外相」のサプライズ人事を期待したい。

 

2014年8月4日月曜日

芸がない安倍首相の法人税減税


 先の通常国会、地域医療・介護総合確保推進法(医療介護法)の成立を受けて毎日新聞社は今週29日、東京・竹橋の毎日ホールで「いきいき生きる~地域包括ケアシステム構築にむけて」と題するシンポジウムを開催した。

 厚労省労健局担当課長による基調講演後に行われたパネルディスカッションで著者はコーディネーター役を務めた。パネラーは「健康寿命延伸都市の創造」を掲げ、超高齢化社会のあるべき街づくりにいち早く着手し、その先進性が注目を浴びる長野県松本市の菅野昭市長と東京大学高齢社会総合研究機構長の大方潤一郎教授、民間企業からは健康カラオケを提唱し、高齢者の介護予防、機能訓練をサポートする「DKエルダーシステム」を開発、全国の自治体や福祉施設で高い評価を得ている第一興商の戸塚圭介エルダー事業開発部長、ITC(情報通信技術)を応用した高齢者の見守り、地域参加を促す実証実験に取り組むNTT西日本ビジネス営業本部の山根浩顕地域CT推進部長の4人。いずれも各分野を代表する立場だ。

 医療介護の社会保障費の肥大化に歯止めをかけつつ、高齢者の生活ニーズに合わせた地域社会を築くための方策を話し合う。産学官が垣根を取っ払い知恵と経験を結集させたかつてない意欲的なシンポジウムである。

 定員150名のところ220名が会場に詰めかけ、パネラーの一言一句に真剣な眼差しで聞き入っていたのが印象的だった。多くは全国都道府県、市町村で実際に福祉政策の担当者である。

 医療介護法が成立したことでこれまで全国一律サービスだった「要支援1~2」を対象とした訪問・通所介護は27年4月から段階的に市町村に移管されることになる。

医療介護サービスの地域格差拡大が懸念されているところだが、そうならないためには従来の福祉政策の枠を越えた連携が不可欠だ。政府行政には大胆な規制緩和を求めたい。

加えて言えば、今年4月の消費税率を8パーセントに引き上げ、続く来年10月には10パーセントへの再引き上げが予定されている。

国民に我慢と負担を強いる一方、企業法人税を一律に引き下げるのは度がすぎよう。税率引き下げを頭から否定するつもりはないが、安倍政権は秋の臨時国会で「ふるさと創生」を最優先課題に掲げている。そうであれば、せめて地域社会への貢献度に応じて税率をスライドさせてはどうだろう。ぜひ、検討していただきたい。