2013年8月30日金曜日

安倍政権の最優先課題は消費税増税ではなく国民が実感できる経済成長ではなかったのか

安倍晋三首相が消費税率引き上げ時期の判断材料とするために各界各層の有識者・専門家60人を指名した経済財政諮問会議の「集中点検会合」が26日から始まった。税率を来年4月に予定通り3パーセント引き上げた場合の景気に与える影響、逆に上げなかった場合の国債市場への影響などが賛否を分かつ論点になりそうだ。
前日には安倍首相の有力な経済ブレーン2人がテレビ番組でその前哨戦ともいうべき論戦を交わしている。
来年4月の3パーセント引き上げに慎重な経済政策担当の本田悦朗内閣参与は引き上げ賛成派には追い風となる13年4月~6月期の国内総生産(GDP)速報値がプラス成長を示したことについて「アベノミクスで相当上げ底になっている。来年4月は病み上がり状態で、まだまだ増税には耐えられない」との見方を示した。
かたや成長戦略担当の堺屋太一内閣参与は「先送りすれば日本の公約、政策の信頼性を失う。これだけ長く議論してきたのだから、(予定通り)税率をあげるべきだ」と主張する。
堺屋氏はまた、懸念される景気や国民生活への影響は法人税や所得税、相続税の減税を併せて実施することで緩和できるとして、税率を毎年1パーセントずつ緩やかにあげるべきとの本田氏の主張を「消費者も含めて現場で大変な混乱を招く」と一蹴した。
安倍首相の経済ブレーンですら意見が真っ二つに割れる消費税引き上げ判断である。
一つ言えば、堺屋氏の主張どおりに減税を併せて実施するのであれば、消費税率を引き上げても税収増にはつながらないだろう。ましてや、そんな小手先の術では国民の将来不安を払拭することはできまい。
そもそも安倍政権の最優先課題は「国民一人一人が実感できる景気回復と経済成長」だったはず。毎日新聞の直近の世論調査でも「アベノミクス」への期待が過半数を超えているのは何よりである。これに対して消費税率の予定通りの引き上げに理解を示しているのはわずか24パーセントに過ぎない。
この際、国民の声に謙虚に耳を傾け、早々に消費増税の先送りを決断してはどうか。国民の信頼を失えば、国際公約どころではなかろう。

2013年8月28日水曜日

麻生太郎財務相が懸念する内閣改造圧力と党内抗争の火ダネ

安倍晋三首相が21日から公務に本格復帰した。休みの間にきっとあれやこれやと今後の政権運営に頭を悩ませていたことだろう。
9月以降、安倍首相には消費税率引き上げやTPP参加交渉など政権の浮沈を賭けた政治決断が待ち受ける。
「党が大きくなると何となく割れる要素が出てくる。一致団結して決めたことを素早く進めていくことが大切だ」
 消費税率引き上げの旗を振る麻生太郎副総理兼財務相はお盆前、派閥の例会でこう述べている。
まさに選挙に大勝ちしたがために安倍首相にとって悩ましいのは肥大化した党内各派閥や族議員との間合いである。消費税率引き上げを決断すれば、景気の失速を理由に異を唱え、公共事業の上積みを要求し、TPPの参加では国内産業の保護を名目にして補助金の増額を迫られよう。
加えて各派閥は9月末に任期切れとなる党役員人事と併せて大幅な内閣改造を求めてくるはず。安倍首相はこれを逆手にとって内閣改造を12月以降に先送りする意向を示している。人事をちらつかせて政権の求心力を高める狙いからだが、はたして安倍首相がどこまで派閥の圧力に抗しきれるものか。
安倍首相が臨時国会前の内閣改造に踏み切るようなら派閥政治の完全復活を意味することになる。
あるいは12月以降に人事が先送りされたとしても、最大派閥の町村派会長の町村信孝元外相や昨年の総裁選で石原伸晃環境相を担いで敗れ、政権運営から遠ざけられている額賀派会長の額賀福志郎元防衛相の処遇を見れば、安倍首相と派閥政治との間合いは察しが付く。
ちなみに本欄が独自に入手した情報では、安倍首相は水面下、町村派オーナーの森喜朗元首相を通じ額賀派オーナーの青木幹雄元参院議員会長、岸田派オーナーの古賀誠元幹事長との会談を求めているそうだ。国民の目や耳には届かない安倍政権の内実が垣間見えよう。

2013年8月27日火曜日

自己保身と組織防衛しか頭にない連合と民主党の哀れな末路

 全日本柔道連盟(全柔連)の上村春樹会長(62)が21日、度重なる不祥事の責任を問われて辞任する。
「改革改善に取り組んできたが、スピード感がなかったのが一番だと思う。私の判断が甘かった」
 辞任を決めた15日の臨時理事会後の記者会見で上村氏はこう述べているが、遅きに失したのは自らの身の処し方だったのではないのか。
 国民世論の批判の声に耳を塞ぎ、内向きの論理を振りかざして自己保身と組織防衛に走るその姿は、民主党とこれを支える日本労働組合総連合(連合)の姿に重なる。
 先月30日、参院選で惨敗した民主党の海江田万里代表(64)は連合の古賀伸明会長(61)と会談した際、「民主党が熔けて流れてしまうわけにはいかない。歯を食いしばって一刻一刻を前に向かって進んでいく努力をしなければいけない」と述べ、代表続投への意欲を示した。
 古賀氏は「目を覆いたくなるような党内の混乱に費やす時間はない。事態の深刻さを共有し、党の再生、自己改革に取り組んで欲しい。これからも緊密に連携する政党は民主党だ」と応じている。
 本欄で前にも触れたが、民主党は昨年の衆院選と今回の参院選で議席を大幅に減らし、党内における連合組織内議員の比重は高まった。衆院145人のうち40人、参院33人の今や党内最大勢力である。その連合トップとの会談で海江田氏は続投支持のお墨付きをもらったわけだ。党内基盤の脆弱な海江田氏は何にも勝る援軍である。
もっとも、古賀氏の言葉を裏返せば、10月に任期切れを迎える自らの会長職続投への意欲を表したに他ならない。
そうなれば民主党議員は今後、公明党と創価学会との関係がそうであるように事実上、連合の傘下に置かれ、海江田氏を背後で操る古賀氏を仰ぎ見ることになろう。労組票にすがるしかない民主党の哀れな末路が目に浮かぶようだ。


2013年8月25日日曜日

海江田民主党代表と「連合」古賀会長が無投票再選で懸念される無党派層のさらなる離反

「ゴルフをするなとは言わないがタイミングがある。死者が出て、まだ行方不明の方もいる。危機意識が全くない。」
民主党の海江田万里代表は12日、記者団を前にこう述べ、先に東北地方を襲った集中豪雨の直後、 夏期休暇中の安倍晋三首相が静養先でゴルフに興じていたことを批判した。
確かに被災地の惨状に心痛めるならば、さすがに「ゴルフはないだろう」とは思うが、違う意味で「危機意識が全くない」とは、むしろ海江田代表に投げかけたい言葉だ。
党存亡の危機にある民主党は参院選の惨敗を総括するため地方ブロック毎に幹事長会議を開催したが、海江田代表はその最後となる九州ブロックの会合を終えた9日、「2015年春の統一地方選に向けて努力し、党勢回復の大きなきっかけを作りたい」と述べ、早期の代表選実施を否定したのである。
きっと党所属の地方議員だけでなく、少なからずいるであろう民主党の再生を願う国民有権者はがっくり肩を落としたはずだ。
それでいて海江田氏はどう党勢回復を図るのか。秋の臨時国会では社会保障制度改革や集団的自衛権の憲法解釈、TPPや消費税引き上げなどで安倍政権と対峙する場面が出てこよう。
代表選で海江田氏が再選されるにしても、候補者同士の論戦を通じて党内の意見集約を行い一定の方向性を打ち出しておかなければ、巨大与党に太刀打ちできるものでなない。
もっとも、民主党執行部が小沢グループの離党劇の再現を期待しているとすれば代表選を実施する必要はない。
そうなれば民主党は国民各層の幅広い支持を得る国民政党の地位を失うことになるが、政界再編のきっかけになるのであればそれもいい。
そういえば、民主党の最大支援組織「連合」の古賀伸明会長が10月の任期切れを前にこちらも選挙を経ずに1期2年、3期目となる続投が決まったそうだ。
古賀氏は松下電器産業(現パナソニック)労組出身。きっと中小零細企業の労働者や非正規社員の気持ちは分からないだろう。無党派層が民主党にソッポを向くわけだ。

2013年8月14日水曜日

放射能汚染中間処理施設建設の遅れを被災地福島住民に責任転嫁した石原伸晃環境相の余計な一言

「福島県をはじめとする皆様方が『福島県のために自らが行動する』という認識をしっかりと持っていただくことが重要だ」
 石原伸晃環境相は11日、福島復興再生協議会でこう述べ、難航する放射能汚染土などの中間貯蔵施設建設について地元の協力を求めた。
 政府は現在、福島第一原発周辺の大熊、双葉、楢葉の3町内9カ所を建設候補地に絞りこみ、事故から2年過ぎてようやくボーリング調査を始めたばかりだ。石原発言はその建設の遅れを地元自治体と被災地住民に責任転嫁したものと受け止められかねない。民主党政権下、被災地に乗り込み「知恵を出さないやつは助けない」などの刺激的発言で辞任に追い込まれてしまった復興相の姿に重なる。
もっとも、協議会に出席した福島県の佐藤雄平知事は記者団を前に「直接的には国が対応する話なので責任を持って丁寧に進めていただきたい」と不快感を示しつつも口ぶりはいたって冷静だった。
言うまでもなく、中間貯蔵施設がなければ放射能汚染土は仮置き場に山と積まれたまま、復興は遅々として進まない。
 このため政府は9月にも環境省に新たに局長級の総括官ポストを新設してスタッフを増員して施設建設を加速させたいとしている。
 国が主導するのは当然だが、石原発言を持ち出すまでもなく地元自治体にもそろそろ被害者の立場から一歩を踏み出す覚悟が求められよう。
「早く建設したいというのは分かるが、位置づけとしては迷惑施設だ」
候補地となった大熊町の渡辺利綱町長は石原発言についてこう述べている。幸いにもこちらはすでに施設受け入れの条件闘争が視野に入っているようだ。
 もちろん最大限、被災地住民の声に耳を傾けることが大前提だが、それでも近い将来、政治が決断を迫られる時は来る。そうしなければ、福島県は永遠に復興途上のままだ。

2013年8月10日土曜日

民主党が代表選を回避すれば野党は今秋、再編モードに突入する

臨時国会は7日、参院本会議で常任委員長を選出、衆院は閉会中審査の手続きを行い閉幕した。民主、みんな、共産など野党6党は麻生太郎副総理兼財務相のナチス発言を「釈明の余地のない暴言。国際社会でわが国の信頼を大きく傷つけた」として衆院予算委員会での集中審議か閉会中審議を求めていたが、衆参両院で絶対安定多数を握る自民、公明両党に拒否されては打つ手はない。ねじれ解消の現実を思い知らされたことだろう。
 とはいえ政府与党内もけっして一枚岩ではない。秋以降、安倍晋三首相は消費税率の引き上げやTPP交渉、集団的自衛権の憲法解釈など与党内を二分する政治課題で難しい舵取りを迫られる。野党にとってはここが一つの攻め処だ。
むろん、野党の足並みが乱れていては話にならないが、まずもって民主党には野党第一党としての自覚と責任を強く求めたい。
折しもこの日、民主党香川県連の山本悟史香川県議ら党所属の地方議員有志が党本部に大畠章宏幹事長を訪ね「民主党は国民の負託に値する信頼を得られていない。前に進むには代表選が必要だ」とする地方議員124人が署名した要請文を提出している。おそらく、民主党支持者の多くが同じ思いだろう。
 これに対して大畠幹事長は「党内には代表選をやるべきではないという意見もある。最善の方法を考えている」と述べたそうだ。
いったい何を考えているのか。あるいは代表選を実施することで党内にしこりが残ると考えているとすれば、あまりに内向き過ぎよう。
何より、選挙は民主政治の根幹を為す。民主党は代表選を通じて党内外の意見に耳を傾け党再生の第一歩としなければならない。
「国会議員は危機感が足りない。地域の声を訴えないといけない。代表選が実施されるまで、賛同者を募って行きたい」
 議員有志の一人、山本県議は記者団を前にこう言う。 
それでも代表選を見送るようなら早々、民主党に見切りをつけることだ。タイムリミットは10月の臨時国会開会まで。これを過ぎれば、野党再編の動きが加速されることになろう。

2013年8月4日日曜日

派閥談合政治の復活で安倍首相に突きつけられた麻生切りの踏み絵

30日に行われた自民党参院議員の会長選挙は安倍政権の今後を占う上で極めて大きな意味を持つ。結果は投票総数114票(無効1票含む)のうち、町村、額賀、岸田の参院主流3派が推す溝手顕正幹事長(70)が82票を集め、派閥主導の談合人事に反発して急遽出馬した鴻池祥肇(72)は31票に止まった。溝手氏の大差の勝利が派閥政治の復活を意味することは言うまでもない。今後、安倍政権は良くも悪くも参院自民党を牛耳る主流3派への依存度を高めることになろう。
 もっとも2期6年の長期政権を視野に入れる安倍首相が政権基盤を固めるにはむしろその方が好都合なのかもしれない。
 振り返れば昨年秋の自民党総裁選で安倍首相はライバルの石破茂幹事長に国民人気で大きく水を開けられ、国会議員票では額賀、岸田(旧古賀)、山崎の3派連合が推す石原伸晃環境相に及ばなかった。つまり自民党は二番手候補を総裁に選んでしまったのである。
 幸い自民党は民主党の自滅で政権復帰をはたし、安倍内閣は高い支持率に支えられて政権の求心力を保ってきた。
 ところが、参院選で圧勝したにもかかわらず頼みとしていた内閣支持率にも陰りが見え始め、さらに今秋には消費増税やTPPへの参加、沖縄米軍基地の辺野古移転、社会保障費の削減など国民に不人気な政治決断が迫られている。安倍首相は頼みとする内閣支持率が急落することも想定しているはず。そうなれば、否応なく政権運営の軸足を総裁選で対立した町村、額賀、岸田の3大派閥に移さざるを得なくなるわけだ。
 そうなると安倍政権誕生の最大の功労者で盟友とも言える麻生太郎副総理兼財務相との関係が微妙になってくる。周知のとおり、額賀、岸田の両派にとって麻生氏は天敵だ。おそらく主流3派は秋の臨時国会を前に予定されている内閣改造党役員人事で麻生はずしを迫ってくるだろう。
今回の参院議員会長選で溝手氏大勝の最大の功労者は鴻池陣営に走る新人議員を締め付け菅義偉官房長官だと言われている。あるいは安倍首相の麻生はずしはすでに始まっているのかもしれない。

2013年8月1日木曜日

もはや祈るしかないアベノミクスの成功と消費増税への素朴な疑問

んぜ菅義偉官房長官は28日のテレビ番組で来年4月に予定されている消費税の8パーセント引き上げについて「デフレ脱却は一大事業だ。安易に決めるのではなく、ありとあらゆる指標、可能性を国民に示した方がいい。そういう中で財政健全化や市場の動向などを考え、首相自身が判断する」と述べた。
9月9日に発表される4~6月期の国内総生産(GDP)の改定値の発表を待ち、10月上旬にも召集される臨時国会前に判断するとの従来通りの考えを示したものだ。
しかしながら、消費増税の前提となる日本経済の現況について日銀の黒田東彦総裁は29日の講演で「金融環境」「人々の期待」「実体経済・物価」の三つポイントをあげて「重要な要因として貢献している。狙いはこれまでのところうまく進んでいる」と評価した上、消費税増税によって「日本経済の成長が大きく損なわれることにはならない」との認識を示している。
また、財務省は来年度概算要求基準と合わせ8月に策定する財政再建の道筋を示す「中期財政計画」は消費税増税を前提にしており、安倍晋三首相はこれを持って9月5日開催のG20首脳会議に臨む予定だ。
自民党の石破茂幹事長も26日、記者団を前に「財政の持続可能性や国債の暴落・急騰を防ぐ観点からも現状では(増税を)引き延ばすのは考えづらい」と述べている。
つまり安倍首相の最終判断を待つまでもなく、もはや消費増税は動かし難い現実なのだが、はたして国民にその覚悟があるのだろうか。
毎日新聞が行った直近の世論調査では「引き上げるべきだが、時期を先送りすべきだ」が36%、「現在の5%を維持すべきだ」が35%に上っている。
また、引き上げる際には68%が食料品など生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率の導入を求めている。
アベノミクスで税収が伸びるのになぜ消費増税が必要なのか。大雑把に言えば、そんな世論調査の結果であろう。今となっては国民の暮らしが良くなることを祈って待つよりないが。