2012年10月29日月曜日

タカ派気取りの安倍自民党総裁が謀む思想教育の危険

 週刊新潮のスクープ報道で田中慶秋法相(74)が辞任に追い込まれた。民主党政権になって辞任、更迭された大臣はこれで何人目になるのか。いちいち名前を上げ、数え上げるのも面倒だからやめておく。
民主党の仙石由人副代表が「なぜ、こういう人事をしたのか本当に分からない」とテレビ番組で嘆いていたが、この人だって大臣失格だった。すべては民主党の人材不足に尽きよう。
本欄で度々指摘してきたところだが、特に3・11以降、民主党政権の為すことやること目を被うばかりである。だからこそ、自民党の協力を得るよう進言もしてきたが、もう遅い。
「田中氏が野田佳彦内閣にとって迷惑だから辞めろと言う以上に、今の内閣は国民にとって迷惑だから、早く国民の信を問うてもらいたい」
 自民党の高村正彦副総裁は24日、記者団を前にこう述べている。それしかないだろう。
 かといって自民党の政権復帰にも不安はある。安倍晋三総裁は23日に行われた「教育再生実行本部」の初会合で「民主党政権では教育基本法の精神が生かされていない。自民党が近いうちに政権を取った際の教育再生案を持ちたい」
と述べた。
 教育基本法が安倍政権下に改正されたことは周知のとおり。特出すべきは日本の伝統文化を尊重し、愛国心を育むことを教育目標に掲げたことだ。評価する声は多いが、気になるのはその中身と実際の運用である。今年から始まった公立中学校での武道の必修化もその一つ。やりたい人は道場に通えば済むことをどうしてわざわざ教育現場に押しつけるのか理解に苦しむ。
確かに柔道は日本のお家芸ではある。「礼に始まり礼に終わる」、「柔よく剛を制す」はいかにも日本的価値を象徴しているように見える。伝統文化と言えなくもないが、教育現場は指導者不足で混乱しているようだ。そうであろう。いつだったか大学教授でオリンピックのメダリストが教え子に婦女暴行容疑で訴えられていた。柔道家がすぐれた教育者になるとは限らない。しょせんは格闘技である。
あるいは歴史教科書はどうか。愛国教育に反するものは排除するのだろうか。子供に自虐史観を植え付ける教育は論外だが、愛国教育も行き過ぎれば、偏狭なナショナリズムを芽生えさせよう。
むやみやたらに日本の伝統文化や愛国心を振り回すタカ派気取りの安倍総裁が首相に返り咲けばそうなる。
だから自民党の政権復帰も期待半分、悩ましいところだ。
 

2012年10月26日金曜日

政局より政策優先で「年内解散」手形に裏書きした前原国家戦略相の思惑

  政府・民主党は22日、臨時国会を29日に召集し、会期を11月30日までの33日間とする方針を決めた。自民、公明両党が求める年内解散の確約を拒否したままの見切り発車である。それでどうやって政治を前に進めることができるのか。
野田佳彦首相は先週19日に行われた自民、公明両党との党首会談で懸案となっている衆院選挙制度改革について「0増5減」の先行実施に言及、公債特例法案については予算案との一体処理のルールづくりを呼びかけている。かねて本欄で指摘したとおりの展開だ。
政権復帰が見えてきた自公両党が乗れない話ではない。党首会談は物別れに終わったが、望みはまだある。ただし、乗り越えるべきハードルはなおも高い。
自民党の石破茂幹事長は20日の講演で「13年度予算編成はしないとか、懸案の処理後に速やかに解散するとか、言い方はいろいろある」と述べ、再度の党首会談で野田首相が「近いうち」解散の時期をより具体的に示すよう促している。
堂々めぐりのやり取りだが、翌日には前原誠司国家戦略相が「年明けに解散したら“近いうち”ではない。年内に解散しないことはないと思う。首相は誠実な人だから、自分の言ったことには責任を持たれる」と述べている。
民主党内最大グループを率いる前原氏の、しかも重要閣僚の発言であれば、いわば野田首相振り出しの「年内解散」手形を裏書きしたようなもの。自公両党にとっては頼もしい助っ人だ。さらに言えば、前原氏と石破氏が党派を越えた信頼関係で強く結ばれていることは周知の通り。共に保守勢力の再結集を目指す政界再編論者であり、政局優先の政治を嫌う点でも共通している。あるいはこの2人が水面下で呼応しての発言であれば、臨時国会前の決着も有り得よう。
いずれにせよ野田首相が本気で懸案解決に自公の協力を得たいのであれば、せめてもう半歩だけ「近いうち」解散に踏み込む必要がある。
朝日新聞が行った直近の世論調査で野田内閣の支持率は過去最低の18パーセントにまで落ち込んでしまった。これ以上の政権延命は許されないと知れ。

2012年10月20日土曜日

沖縄振興予算3000億円垂れ流しとオスプレイ破壊工作の不愉快

自衛隊と在日米軍は11月5日から始まる日米共同演習の一環として、沖縄県の無人島を舞台に離党奪還訓練を実施する。
奪還訓練には島しょ防衛専門の陸上自衛隊西部方面普通科連隊や在沖縄第31海兵遠征部隊などが参加、尖閣諸島の領有権を主張する中国の動きを牽制する狙いがある。もっと言えば、韓国が占領、実効支配する竹島の奪還を想定してのことかもしれない。先月、米グアムで実施した同様の訓練と併せて初の試みとなる。こうした訓練がこれまでなかったのも不思議だが、それなりの外交的配慮があってのことだろう。中韓両国の出方が見物である。
言うまでもなく、日本の防衛には日米安保条約に基づく在日米軍の存在は欠かせない。それがどうしたことか15日には沖縄県の仲井真弘多知事が、樽床伸二沖縄担当相に対して普天間飛行場に配備された垂直離着陸輸送機「オスプレイ」の配備見直しを求める要望書を手渡した。加えて、3000億円もの巨額の沖縄振興予算が欲しいとも。こう言っちゃ失礼だが、まるで国民の安全を人質にとって売値をつり上げる武器商人のようだ。違和感を覚えるのは著者だけではあるまい。
政府は昨年も沖縄振興に同規模の予算を配分しているが、樽床担当相は「物事は2年目が非常に大事と認識している。全力で取り組む」と応えている。
だったら仲井真知事もオスプレイの受け入れ、普天間基地の辺野古移設で沖縄県民を説得する、くらいのことは言ってもらわなければ国民の理解は得られまい。
一部の活動家がオスプレイ飛行の妨害行為を繰り返しているそうだ。有事であれば、破壊工作である。まさか中国の属国になることを望んでいるわけではなかろう。
折しも民主党は16日の常任幹事会で党員停止処分が解けた鳩山由起夫元首相の最高顧問復帰を決めた。
振り返れば日米関係の悪化と中国の増長は、この人の軽はずみな一言から始まった。その上、血税3000億円を注ぎ込んでなおも日米両政府に対する沖縄県民の不信を拭えない。この悪循環を断ち切るためには人心一新、早期の解散総選挙が求められるところだ。

2012年10月18日木曜日

命運尽きた野田首相と年内解散の3条件

 民主党と自民、公明両党の3党幹事長会談が15日、国会内で行われた。席上、民主党の輿石東幹事長は臨時国会を今月末に召集する方針を示し、党首会談の週内開催を求めた。
 これに対して自民党の石破茂幹事長は「首相が近いうちに信を問うと言った。そのことを受け止めてもらわないと困る。国民との約束でもある」と述べ、続いて公明党の井上義久幹事長が「12月の早い段階の総選挙がタイムリミットではないか」と畳みかけて早期解散の確約を迫った。もちろん、輿石氏がこれをすんなり受け入れるわけがなく、結論は18日の再会談に持ち越された。双方角突き合わるだけの会談であれば芸のない話だが、再会談には少しだけ希望がある。
 周知のとおり、臨時国会の最優先課題は特例公債法案と衆院の選挙制度改革である。
 このうち選挙制度改革について民主党は最高裁で違憲が指摘された小選挙区の定数是正に加え、比例定数の40削減を主張していたが、ここにきて自民党が求める小選挙区「0増5減」の先行実施に柔軟姿勢を見せている。
 比例定数の削減は野田政権が消費税率引き上げの免罪符であり、身を切る改革の象徴である。
一方で大幅な選挙制度改革は国民への周知期間が長期となるため、野田首相が解散先送りの口実にもなる。これでは早期解散を求める自民党が飲めるはずがない。
逆に言えば、次の幹事長会談で輿石幹事長が「0増5減」の先行実施と周知期間を明確にすれば、野田首相の「近いうち」解散により踏み込んだニュアンスを持たせるこができよう。
加えて民主党は15日の役員会で次期衆院選マニフェストの作成に向けた「マニフェスト検討委員会」の設置を決めた。11月中のとりまとめを目指している。
定数是正と選挙公約が整えば、解散ムードは否が応でも高まろう。自民、公明両党もこの辺りで矛を収めて土俵に上がった方がいい。そして野田首相は国民有権者の多くが早期解散を望んでいることを重く受け止めるべきだ。このまま居座るようでは、決められない政治に逆戻りである。

2012年10月13日土曜日

民主独自調査で80議席、それでも野田首相は「近いウチ解散」から逃れられない


民主独自調査で80議席、それでも野田首相は「近いうち解散」から逃れられない

 野田改造内閣が発足して10日も経つのに臨時国会の召集日が決まらない。周知のとおり、赤字国債の発行を可能にする特例公債法案の成立は、臨時国会の最優先課題である。万が一にも成立が遅れ、予算の執行が滞るようことになれば、政府与党の責任は重大だ。  
 ところが、民主党の輿石東幹事長は9日の記者会見で「いつ開くかは私が決める話ではない」と述べてまるで意に介さず。11日には民主、自民両党の新執行部が初めて顔を合わせるが、野田佳彦首相は自民、公明両党が求める年内解散に応じるつもりはなく、両者睨み合ったままだ。
 民主党は「国民に不便をかける」(安住淳幹事長代行)として政党交付金の申請を見送るそうだが、そんな批判逃れのパフォーマンスが通用するはずがない。
 しかも野田首相は10日、民主党の安住淳幹事長代行、細野豪志政調会長らを首相官邸に呼び入れ、次期衆院選のマニフェスト作成を指示している。
 年内解散に向けた自民、公明両党に対するメッセージにも取れなくはないが、細野政調会長は会談後、記者団を前に「(政権交代)約3年間の反省を踏まえ、議員だけで議論して決めるのではなく、国民の声を聞く事も大事だ」と述べている。
 何の事はないマニフェスト作成に時間をかけて、解散先送りの言い訳にするつもりなのだ。
 今さら選挙用にマニフェストを作成してもどうなるものではなかろう。過去3年間、民主党が掲げたマニフェストで国民の生活はズタズタにされてしまったではないか。
 解散権は首相の専権だが、先に消費税の引き上げを引き換えにしてこれを売り渡したのは野田首相である。
「12月9日投票は譲れない」(山口那津男公明党代表)とまでは言わないが、局面打開のため、野田首相には「近いうち」以上の言質を求めたい。
 民主党選対が行った直近の選挙情勢分析は、年内解散総選挙の場合、同党の獲得議席を80台前半と弾き出している。
 落選の恐怖に戦き、これ以上、国民有権者を愚弄するようでは選挙結果はさらに厳しいものになろう。

2012年10月12日金曜日

落選に怯える民主党議員のあきれた血税蓄財術

「福島の復興再生の基盤となる除染をスピードアップしなければいけない」

 野田佳彦首相は7日、福島第一事故現場を視察した際、記者団を前にこう述べた。すでに先の内閣改造で初入閣した担当大臣の長浜環境相に対し除染加速化の包括的な対策作りを命じているそうだ。

 具体的には環境省の拠点「福島環境再生事務所」への権限移譲、関係府省の連携強化除染の進捗状況の住民への情報提供などを検討課題にあげている。

 野田首相の現地視察は昨年9月以来2度目となるが、この1年、消費税税率の引き上げのことで頭が一杯で被災地のことは2の次、3の次だったということだろう。こんな初歩的な対策も講じられていなかったのかと、今さらながらに怒りが込み上げてくるのは筆者だけではあるまい。しかも、ここにきて次々に明るみなる震災復興予算の流用問題である。

 復興予算は5年間で19兆円、このうち今年度当初予算までにすでに18兆円を計上している。財源は早期の被災地復興を願う国民の理解を得て、別枠の復興増税、赤字国債で賄われることになっている。ところがその国民の血税が、たとえば財務省では「震災時の業務継続のため」として全国の税務署改修工事に、法務省では「被災地域における再販防止背作の充実・強化」を名目にした事業予算が、北海道や埼玉県の刑務所で実施された職業訓練に使われていたというのだから、開いた口が塞がらない。

平野達男復興相は7日のテレビ番組で「きちんと精査し、来年度はできるだけ被災地に特化した予算を作りたい」と述べ、復興予算の編成に瑕疵があったことを認めた。ならば、責任を取り即刻辞任するべきだが、事の重大さは一閣僚の出処進退のレベルでは収まらない。野田首相は来年度予算案の編成に意欲を見せているようだが、迷惑な話である。

むろんこの3年間に積もり積もった民主党政権の失政は、野田内閣が総辞職したところでチャラにはならない。それが故に野田首相は、国民へのせめてもの置き土産にと消費税増税法案の成立と引き換えにした「近いうち解散」を自民、公明両党と約束したはず。聞くところでは、次期衆院選の民主党立候補者の多くが、地元選挙区の政治活動を自粛し、政党交付金や議員歳費を節約して落選後の生活資金をため込んでいるそうだ。これも血税の垂れ流しに他ならない。早期解散が求められるところだ。

2012年10月8日月曜日

民主党政権の「経済再生戦略」は砂に水撒く投資詐欺

 野田政権の経済財政運営で新しく舵を握ることになった前原誠司国家戦略相は2日の記者会見で来年度予算案の編成について「財務省主導ではなく、内閣府、内閣官房中心に与党と連携しながらやっていく」と述べた。 予算編成権を首相直属の「国家戦略局」が主導することは民主党がマニフェストに真っ先に掲げた政権交代の原点だが、何を今更の感がある。 しかも、野田政権が先に示した来年度予算の概算要求額は政府・民主党の「日本再生戦略」に掲げた11の成長戦略と38の重点政策への予算要求を積み増したために、100兆円を越える史上空前の規模となっている。 「日本再生戦略」では環境関連で50兆円以上の新規市場と140万人以上の新規雇用、医療介護分野でも50兆円、284万人の雇用を創出するとしている。 だが、いずれも民主党がマニフェストに掲げた経済政策を焼き直したたけのこと。過去3年間の民主党政権の経済運営を省みれば、砂に水を撒くようなものだ。 こんなまるで投資詐欺のような話を政治主導でやるというのならば、消費税をどれだけ引き上げても借金は膨らむばかりで、やがて日本経済は破綻、ギリシャの二の舞である。 そもそも民主党は政治主導をはき違えているのではないか。 自民党の安倍晋三総裁は3日、福島圏相馬市の被災地住民や自治体首長との懇談で「市町村任せではなく、国が前面に出て取り組むべきだ。復興庁は縦割り予算を廃し、スピードアップしなければならない。われわれが一日も早く政権に復帰しなければならない」と述べた。 まさに遅々として進まない震災復興と原発事故の対応にこそ、行政組織の枠を超えた政治主導が求められるところだ。 民主党政権はもういいだろう。野田佳彦首相は秋の臨時国会、赤字国債発行のために公債特例法案を成立させなければならない。3日の支援組織「連合」の集まりで「危機感を野党にも共有してもらい、次期国会で速やかに可決すべく、野党の協力が得られるよう呼びかけていく」と述べている。 だったら自民、公明両党との約束どおり「近いうち解散」を実行するしかない。それが消費税増税法案を成立させた野田首相のとるべき花道だ。

2012年10月4日木曜日

解散先送りで野田首相が謀む自民党との憲法改正大連立

 第3次野田改造内閣が1日、発足した。18人の閣僚のうち、10人を入れ替える大幅改造である(別掲参照)。ただ、岡田克也副総理、藤村修官房長官、玄葉光一郎外相、枝野幸男経済産業相ら主流派主要閣僚が留任したため、目玉人事と呼べるのは田中真紀子元外相の文部科学相起用くらいか。マスコミ報道は田中文科相が独り占めである。 
だが、サプライズ人事に目を奪われているようでは今回の改造人事に込められた野田佳彦首相の真の狙い、思惑を見誤ってしまう。
「山積する内外の諸課題に対処し、政府・与党の連携を深め、内閣機能を強化するためだ」野田佳彦首相は同日の記者会見でこう述べた。
 その言葉どおり、外に向かっては領土問題でギクシャクする日中、日韓関係の修復や日米同盟の強化、再構築は野田首相が取り組むべき課題である。内政においても、やり残した社会保障制度改革に道筋を付けなければなるまい。震災復興、原発の事故処理、再稼働問題も重くのし掛かってくる。景気対策も急ぎ求められるところだ。
 しかしながら、すでに国民の信を失っている民主党政権にいったい何が期待できよう。ましてや衆参ねじれ国会、参院で問責決議を受けた野田首相の下であればなおさらである。
 まずは秋の臨時国会、野田首相は赤字国債の発行を可能にする公債特例法案を成立させなかればならない。3党合意に基づく「社会保障制度改革国民会議」の早期開催、衆院選挙制度改革もある。自民、公明両党の協力が不可欠なところだ。
にもかかわらず、野田首相は両党が国会審議への協力と引き換えに求めている「近いうち解散」に応じる気配はない。それでどうやって臨時国会を乗り切るつもりなのか。
一つのヒントは改造前日、民主党との対決姿勢を鮮明にする安倍総裁は講演で憲法改正を次期衆院選の争点にする考えを示し、「まずは96条から始めたい」と述べていることだ。
96条は憲法改正の発議に衆参両院議員の3分の2以上の賛成を定めおり、安倍発言はこの改憲のハードルを下げることを主張したものだ。
そうであれば今すぐにでも民主、自民両党合わせて96条改正に必要な3分2の頭数を揃えることは可能だろう。これを野田首相が国会審議への協力と引き換えに逆提案すれば安倍総裁に拒否する理由はない。
自民党の安倍総裁、石破茂幹事長の2人と同じタカ派改憲論者の前原前政調会長の入閣にそんな野田首相の下心が透けて見えるのだが。