2012年8月30日木曜日

焦る谷垣自民党の豹変で終盤国会は大荒れ模様

民主党が27日、衆院政治倫理・公職選挙法改正特別委員会で同党提出の衆院選挙制度改革関連法案を野党欠席のまま強行採決したことで終盤国会は大荒れ模様だ。
 民主党提出の選挙制度改革案は最高裁判決で指摘された一票の格差是正のための小選挙区定数の「0増5減」と比例定数の40削減、これに伴う少数政党に配慮した一部連用制の導入が盛り込まれている。
 民主党は先に衆院財務金融委員会でこれも強行採決に踏み切った赤字国債発行のための特例公債法案と併せ、28日の衆院本会議で採決する方針だ。
 一方、これに怒った自民、公明両党は29日にも参院に首相の問責決議案を提出する構えをみせるが、いったいどんな理由で首相を問責するつもりなのか。
「野田政権は内政上も外交上も国会を託するに足るものではない」
自民党の谷垣禎一総裁は27日の幹部会でこう述べている。確かにその通りだが、ものには手順というものがある。
問責が可決されれば国会は空転したまま会期末を迎えれば、一票の格差是正は先送りされ、自民党が求めてきた早期解散は逆に遠のくことにならないか。しかも、民主党の選挙制度改革法案は定数削減にまで踏み込んでおり、自民党が主張しているとりあえずの「0増5減案」よりは優れている。比例頼みの少数政党も一部連用制が導入されれば、実害は少ない。昨年来、与野党が積み重ねてきた議論を顧みれば、妥当な線と言えよう。
それに尖閣、竹島問題での政府の弱腰外交が指摘されている。今国会に提出されている日本領海での海上警察権を強化する海上保安庁法案改正案の成立を妨げる理由はない。次の政権を担うことになる自民党であればなおさらだ。
「私も25年間、サラリーマンを務めたが、重要な仕事が残っていながら定時前に退社するようなものだ」
 民主党の城島光力国対委員長が自民、公明両党の国会対応について26日のテレビ番組でこう批判していた。ダメ社員ばかりの民主党にこんな蔑みの言葉を投げつけられるようでは自民党もおしまいだ。まだ、間に合う。粛々と採決に応じ、秋以降の戦いに備えることである。
2012.8.27 築地にて

野田首相が反原発活動家と面会した本当の理由

野田首相が反原発活動家と面会した本当の理由 

 野田佳彦首相が22日、ついに脱原発デモを煽動する活動家らとの面会に応じてしまった。席上、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働中止や原子力委員会の人事案撤回を求められた野田首相は、脱原発依存の政府方針を説明して理解を求めた。
 どこの馬の骨とも知れぬ輩を官邸に招き入れての首相直々の答弁は異例中の異例である。民主党の菅直人前首相が仲介したとのことだから、秋の代表選で再選を目指す野田首相はむげには断れまい。ただ、それならばまずは党を窓口にして接触するべきだった。首相官邸での面会は軽はずみである。
 原発政策について政府はこれまで意見聴取会や世論調査などを通じて国民の意見を吸い上げてきた。あるいは議員一人一人が地元選挙区で直接耳した有権者の声もあろう。むろん、最終判断は国会の議論に委ねられることになる。面倒でも、それが民主主義のルールだ。
同日、政府が実施した世論調査の結果が出ている。それによれば、2030年の総発電量に占める原発比率について47%が原発比率「0%」を支持している。国民感情からすれば、当然の数字だ。
政府が調査結果の発表を野田首相と活動家との面会に重ねてぶつけてきたのは、国民世論のガス抜きを狙ってのもの。だが、そのことは同時に首相官邸が得体のしれない活動家の権威づけに利用されるリスクを孕んでいる。
それはさておき世論調査の結果について言えば、原発比率の「0%」の目標設定に異存はないが、達成期限を2030年にしているところに無理はないか。たとえば、20年後に50%、30後には30%にというように段階的な削減目標を設定した方がより現実的である。国民感情に流され、出来ない約束をしてしまうのは民主党政権の悪い癖だ。
2012.8.22 築地にて

2012年8月23日木曜日

韓国大統領の竹島上陸を許した野田首相と町村元官房長官の責任を問う!

 竹島、尖閣の領有権をめぐり、日韓、日中間のいざこざが耐えない。竹島も尖閣も日本固有の領土ではあるが、竹島は韓国に実効支配を許したままついには韓国大統領の上陸とあいなり永田町は大騒ぎである。
 今週、国会は衆参両院でこの問題を取り上げるそうだ。自民党の谷垣禎一総裁は18日の講演で「外交の基本路線がしっかりしていない。もはや民主党政権で立て直すのは不可能だ」と述べ、野田政権の対応を厳しく追及する構えである。是非もない。
 参考までに過去の竹島問題に対する日本政府の対応について触れておく。まずは民主党政権下、過去8度あった日韓外相会談のうち、2011年2月17日の前原誠司外相、同年3月19日と5月20日には松本剛明外相が竹島問題を取り上げ日本の立場を強く主張。さらに同年12月17日には玄葉光一郎外相が韓国大統領府の千英宇外交安保主席秘書官に対して韓国国会議員の竹島訪問や施設構築の中止を申し入れ、翌日18日に行われた日韓首脳会談で野田佳彦首相が「日韓関係には日本側が提起している問題も含めて困難な問題があるが、日韓関係全体に悪影響を及ぼすことがないよう、大局的な見地から協力していきたい」として間接的な表現で竹島問題に触れている。あるいはこの時の野田首相の言葉が、竹島問題棚上げの誤ったメッセージを韓国政府に送ってしまったのかもしれない。
 もっとも自民党政権下においても竹島問題が取り上げられたのは1996年3月2日の橋本龍太郎首相と金永三大統領の首脳会談にまで逆上る。小泉政権以降、日韓首脳会談は14回も行われているものの、竹島問題についての切言及はない。外相会談でわずかに2度、アリバイ作り程度に触れただけだ。竹島問題の解決に本気で取り組んできたとは思えない。
「日韓関係がギクシャクするようなことになりますと、拉致問題を含めた日朝間の諸懸案の解決にも悪影響を及ぼしかねない」
 福田政権下の08年7月14日、町村信孝官房長官は記者会見でこう述べている。つまりは拉致被害者の救出を理由に竹島問題を棚上げしてきたわけだ。一つの政治判断ではあるが、結果はどうか。拉致問題は未解決のまま、韓国政府は20日、竹島に石碑を建てた。韓国による竹島の実効支配が既成事実としてまた一つ、積み上げられただけのことだ。与野党が足を引っ張り合っている場合ではなかろう。
2012.8.20 築地にて

2012年8月20日月曜日

民主、自民共倒れで見えてきた橋下首相誕生の愚

 民主、自民共倒れで見えてきた橋下首相誕生の愚

 お盆明けの永田町はいよいよ解散モードに突入である。民主党の惨敗は誰もが予想するところだが、注目しておきたいのは政権復帰が確実視される自民党の獲得議席数と第3極結集の要となる橋下新党の勢いだ。
 自民党はお盆前、独自に行った選挙情勢分析で過半数越えの可能性が見えてきたそうだが、楽観が過ぎよう。
 読売新聞が行った直近の世論調査では次期衆院選の比例投票先で橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」は16%の支持を得て自民党の21%に次ぐ堂々の第2位につけている。ついでながら民主党は11%と惨憺たるもの。この数字をベースに各党の比例180議席の獲得数を単純計算してみると、自民党38議席(前回55議席)、民主党20議席(87議席)となる。対する「大阪維新の会」は29議席に加えて無党派層の多くを取り込み、自民党の獲得議席を上回る可能性すらある。
 現段階ではあくまで頭の体操だが、それでも落選の危機に怯える現職国会議員の「大阪維新の会」詣でが賑やかなのはさもしくはあるが、強きになびくは世の常、人の常だ。あるいは自民党の獲得議席数が200を大きく割り込むようなことになれば、その分だけ「大阪維新の会」の議席数が伸びて発言力を増し、自民党が橋下市長を次期首相に担がざるを得ない状況も出てこよう。空恐ろしい世論調査の結果である。
 もちろん、第3極を「オリーブの樹」と称し、新しい政治を期待する国民有権者の気持ちは理解できる。だが所詮は「おらが村」の寄り合い所帯でしかない。権力を握ったとたんにどうなるか。足の引っ張り合いで仲間割れして空中分解するのが目に浮かぶようだ。 
かつて国民を熱狂させた細川連立政権がそうだったし、民主党の仲間割れも同じ線上にある。
次の政権は断じてそうあってはならないし、そうならないよう自民党には政権のど真ん中に座ってもらわなくては困るのだが、国民世論は必ずしもそうは思っていない。
ならば何も解散総選挙を急かすことはない。秋には総裁選がある。総裁候補の政策論争を通じて国民の信頼を取り戻すことが先決ではなかろうか。
いかにも利権漁りの権化のような政治家が「国土強靱化」と称し、喜々として公共事業の200兆円バラマキ政策を語っているようではお先真っ暗である。
2012.8.13 築地にて

2012年8月16日木曜日

戦争を知らない世代のための「舞鶴空襲」被害者の証言

66回目となる終戦記念日。戦争犠牲者への鎮魂と平和を願う1日にしたいものだ。とはいえ著者も含め戦後生まれの日本人が8割を占める至り、言葉では平和の大切さを理解できてはいても、戦争そのものについては追体験するより他に方法はない。とりわけ、戦争体験者の証言は貴重である。
-終戦2週間後にひかえながら舞鶴は、米軍の二度の食う数に見舞われた。その爆撃の下では、近畿一円から集められた徴用工員、女子挺身隊、学業を放棄して兵器生産にいそしむ学生・生徒たちがいた。犠牲になって命を失った者、過酷な生活のもとで、戦後ながく療養を余儀なくされたもの・・・。いま、ようやく長い沈黙をやぶって後世に「平和」を説く貴重な最後の証言に耳をかたむけよう-
 今年7月に出版された「舞鶴空襲」(つむぎ出版)の帯を飾った一文である。
 京都府舞鶴市は日本海に面した人口9万人足らずの小都市だが、戦前は軍港として賑わった。終戦直後は満州、朝鮮、シベリア抑留者の引き揚げ船を受け入れ、二葉百合子が「岸壁の母」の歌った舞台でもある。 
 空襲の被害状況については「舞鶴市史」が7月29日死者97名、重軽傷者百数十名、同月30日死者83名、負傷者247名としている。空襲の規模や犠牲者の数でいえば東京大空襲には及びもしないが、空襲を受けた側一人一人の背負った痛みと恐怖は同じである。
「終戦時に資料の多くが焼却され、箝口令がしかれていたため被害の実態は過小評価されてしまったが、今回多くの方の証言で真実を掘り起こすことができました」
 同書の編纂呼びかけ人代表の蒲田忠夫さんは本欄の取材にこう語る。
 たとえば「舞鶴市史」では投下された爆弾は500キロ爆弾一個とあるが、実は1万ポンド(4536キロ)の原爆模擬弾だったことが同書によって明かされている。戦争経験者の突きつけた新たな事実が歴史を塗り替えた瞬間だ。戦争知らない世代に平和を実感させてくれる一冊である。
2012.8.13 築地にて

2012年8月11日土曜日

消費税政局で谷垣下ろしを仕掛けた小泉純一郎元首相の狙い

 解散の確約がなければ、自民党は3党合意を破棄するという。民主党政権には失望以外に言葉はないが、だからといってこれには賛同はできない。
国民生活を人質にとるその政局手法は、「生活が第一」の小沢一郎代表と変わらない。あるいは自民党をぶっ壊してしまった小泉純一郎元首相を真似てのことか。聞けば、参院自民党の暴走に谷垣禎一総裁もお手上げらしい。困ったものだ。野田佳彦首相は消費税増税関連法案の成立後、自民党の望む通り、「近い将来、国民の信を問う」と言っている。加えて今年度予算の執行に憂いなきよう公債法案を成立させての解散であれば、権力委譲に伴う国民生活への影響を最小限に食い止めることができる。いわば、大政奉還、江戸城の無血開城である。それのどこが不満なのか。今の政治に必要なのは比叡山焼き討ちの織田信長ではなく、西郷隆盛であり、勝海舟の大局観である。「今のようなことを谷垣さんがやっているようではがっかりだ。解散確約を首相ができるのか。ちょっと頭がおかしくなっているんじゃないか」平成の元勲を目指す森喜郎元首相がテレビでこう述べていた。森元首相は9月総裁選に向け、いち早く谷垣総裁の再選支持を打ち出していただけに憤懣やるかたない思いだろう。ただ、谷垣氏の「頭がおかしくなっている」とすれば、それは参院自民党の強硬派と党内に居場所がなくなった小泉政権の残党どものせいだ。規制緩和による経済成長と行財政改革で財政再建を目指したのが小泉政権だったが、結果は惨憺たるもの。もちろん、彼らは消費税の引き上げに反対である。しかも、3党合意を主導した谷垣氏が9月の総裁選で再選され、首相のイスに座るようなことになれば、一生冷や飯食いのまま。中川秀直、塩崎恭久両元官房長官や菅義偉元総務相辺りは、世が世ならば自民党を背負って立つ人材だろうが、現実はポスト谷垣として控える石原伸晃幹事長、石破茂元政調会長らに大きく水をあけられ、焦りは募る。そこに絶妙のタイミングで人気者の小泉進次郎議員が「3党合意破棄」の狼煙を上げたものだから、谷垣氏は浮き足立ってしまった。怯えたのはもちろん、小泉元首相の陰。自民党をぶっ壊してしまった小泉元首相である。仇敵小沢や「みんなの党」の渡辺喜美代表らと手を結んだ谷垣潰しくらいは平気でやりそうだ。それに参院自民党には小泉チルドレンの鞍替え組もいる。党内基盤が脆弱で政局音痴の谷垣氏が「おかしくなった」としても不思議ではない。いつもの、くだらない政争劇である。
2012.8.8 築地にて

何を血迷ったか谷垣自民党の3党合意破棄

 消費税増税関連法案の成立が危うい。採決先送りに怒った自民党の谷垣禎一総裁は3党合意の破棄も辞さずの構えである。慌てた民主党は8日の参院特別委員会採決を打診したものの、自民党はこれを拒否、6日に開いた衆参「10役会議」では野田佳彦首相に対して法案成立への協力と引き換えにした解散総選挙を確約するよう求めることで一致した。応じなければ、7日にも衆院に内閣不信任決議案、参院に首相問責決議案を提出するという。かなり強気である。
 これに対して公明党の山口那津男代表は6日の記者会見で
「(消費税増税法案の)採決前に可決されることになれば3党合意を結んだ大義が失われる。一体改革(関連法案の成立)と解散(の確約)を条件付けるのは、国民から政局を優先するのかと受け止められかねない」と述べている。まったく同感である。
政権復帰が目前にチラつき、血気に逸る気持ちは理解できるが、ここは一呼吸置いた冷静な政局判断が欠かせない。
あるいは3党合意の破棄を迫る自民党内の声が、9月の総裁選を前にした谷垣下ろしに連動してのことであればなおさらだ。
総裁選には党内最大派閥を率いる町村信孝会長が立候補に意欲を見せ、石原伸晃幹事長や茂木敏充政調会長、石破茂元防衛相らポスト谷垣世代もスキあらばの構えだ。しかも、政権復帰後の長老実力者たちの主導権争いも絡んでくるから厄介である。
もちろん、出馬するのは勝手だけれども、次期首相を決める総裁選であることを忘れてもらっては困る。
言い尽くされた話だが、誰が首相になっても財政再建と景気浮揚は焦眉の急だ。消費税の引き上げがその前提となることは論を待たない。3党合意はそのギリギリの妥協点だった。万が一にもこれを廃棄するようなことになれば、たとえ自民党が政権復帰したとしても財源問題ですぐさま行き詰まる。その意味で谷垣総裁が今国会、与野党の立場を越えて消費税増税に道筋を付けた功績は高く評価されてしかるべきだ。
それにもかかわらず、谷垣総裁が3党合意に迷いを見せれば、政局はいっそう混乱する。下品な喩えになるが、野田首相とはいわばケツの穴まで舐めあった間柄である。信じて
動かず、野田首相の判断を待つことだ。
2012.8.6 築地にて

2012年8月7日火曜日

自民党の谷垣総裁には次期首相にふさわしい振る舞いを求めたい

 参院の自民党会派に1日、無所属の長谷川大紋議員(茨城選挙区)が加入した。これで自民党会派は87議席。わずか1議席が増えただけだが、第1会派の民主党の88議席に迫る1議席でもある。さらに自民党の派閥領袖クラスは本欄の取材に対して「消費税法案の採決後、首相に問責決議案を突きつける前後に5~6人が会派入りする」と明言。これに公明党の19議席を加えてもなお121議席の過半数には届かないが、解散総選挙後の政権復帰が確実視される中、ねじれ国会解消の布石となろう。
それはさておき、国会は最大の焦点となる消費税増税関連法案が6、7日の中央公聴会を経て早ければ10日にも参院本会議で可決成立する見込みだ。これに先立ち、政府・民主党は今年度の予算執行に不可欠な特例公債法案の衆院採決を目指すが、自公両党が反対しているために成立の見通しは立っていない。
もっとも特例公債法案には、将来の消費税増税で基礎年金国庫負担分の財源不足を穴埋めする「つなぎ国債」の発行が含まれている。いわば、消費税増税の先食いであり、自公両党が反対するのも当然である。
 それ故、自民党は予算審議の過程で、この先食い部分を減額補正し、農家の戸別補償など民主党マニフェストの撤回で財源を穴埋めするよう求めてきた。しかも、政府・民主党があてにする消費税増税関連法案は成立前、参院で審議中であればなおさらだ。
「ゴリ押しして衆院で採決しようとしているのは参院審議の軽視だ」
 31日の自民党役員会で谷垣禎一総裁はこうした政府・民主党の無節操な国会運営を厳しく批判している。
無理もないが、消費税増税の先食いを許さないのであれば、なぜ3党合意の時にしっかり詰めておかなかったのか。谷垣氏にも責任のいったんはあろう。
何よりすでに走り出している今年度予算の執行をストップすれば、国民生活への影響が大きすぎる。自民、公明両党は特例公債法案への協力を条件にして野田首相に解散総選挙を迫るつもりのようだが、ここまでくれば、解散時期が多少先にずれても大勢に影響はない。谷垣総裁にはもっと懐を大きく、次期首相にふさわしい振る舞いで野田政権の最後を見取って欲しいものだ。
2012.8.1 築地にて

自民党が政権復帰後にバラ撒く公共事業200兆円への疑念

 参院の税と社会保障の一体改革特別委員会は30日、消費税増税関連法案を採決する前提となる中央公聴会を6、7の両日に開催することを決めた。これでお盆前の法案成立はほぼ確実となる。
 さてと、そうなると国会はお盆明けからいったい何をやるのか。9月8日の会期末までまだ間がある。
「8月後半から9月の会期末までに大きなヤマ場がやってくる。今年秋には必ず衆院解散になる。解散戦略はいくらでも描ける。(自民党が)イソップ童話の北風なら、内閣不信任決議案、首相問責決議案(提出)でいく、太陽なら消費増税関連法案、特例公債法案成立(への協力)の代わりに、すぐに信を問う(確約を得る)」
 自民党の茂木敏充政調会長は28日の講演でこう述べている。
 確かに消費税増税関連法案が成立したとしても、自民党が特例公債法案に反対すれば、野田政権は苦境に立たされる。だが、同法案が3党合意した消費税増税を財源とする「つなぎ国債」を前提にしていることを茂木氏は忘れていないか。加えて、特例公債法案の成立前に解散となれば、自民党が首尾よく政権復帰したとしても即刻、これに代わる財源確保なり、減額補正が迫られよう。法案に反対するのなら、解散総選挙後の対応策まで示してもらわなければ、無責任の誹りは免れない。
 それに本欄で何度も繰り返し指摘してきたところだが、法案が否決されたからといって野田佳彦首相が解散を決断するとは限らないのである。
茂木氏は秋の総裁選出馬に意欲を見せていると聞く。政局の主導権は“我にあり”といったところ、目立ちたい気持ちは分かるが、空回りが過ぎよう。
政調会長であれば政局ではなく残る会期、国会審議を通じて来るべき自民党政権の姿を国民有権者に知らしめることに全力を傾注してもらいたい。 
 折しも政府の国家戦略会議は30日、来年度予算編成の基本方針となる2020年までの成長目標を示した日本再生戦略をまとめた。対する自民党は200兆円もの公共事業を折り込んだ「国土強靱化」戦略を打ち出している。
いずれも消費税増税を前提としたものだが、公共事業のバラマキ政策は、かつての自民党の利権体質そのままにしか見えない。違うというのなら、自民党はどう変わったのか。解散総選挙を迫る前に残る会期、国民の疑念を払拭することが先決だ。
2012.7.30 築地にて