2013年3月30日土曜日

労組に負けて問われる橋下徹大阪市長の統治能力とチンピラ体質

 大阪府労働委員会(府労委)は25日、大阪市が昨年2月、職員の政治活動や組合活動の実態調査を実施したことを不当労働行為と認定し、「今後このような行為を繰り返さない」とする誓約書を大阪市労働組合連合会(市労連)など4労組に提出するよう命じた。
 これを受けて市労連と弁護団は記者会見で「市長のやってきたことが間違いだとはっきりした」と勝利宣言した。
 実態調査は橋下徹市長の意向で行われたもの。約3万4千人の職員を対象に指名や職員番号、所属を明記させ、職員労組への加入状況や組合活動、政治家の支援活動への参加経験など22項目への解答を市長の業務命令で指示し、解答を拒否した職員を処分対象とすると通知した。もとより、こんな人権無視の業務命令が認められるわけがない。労働委員会の判断は当然である。橋下市長もこの日午前、「府労委の判断に意義はない。不当介入は申し訳なく、労組側に謝罪したい」と反省の弁を述べていた。
 ところが組合の記者会見を伝え聞いた夜には態度を一変させ、「ボクは第一声で謝罪したのに、大人の駆け引きがわからない組合執行部は本当に情けない。学生運動のノリで、弁護士もまったくダメ。対立でいくなら、雇用の確保をボクにお願いされても困る」と組合への敵意剥き出しの「逆ギレ」発言。組合が選挙でビラ配りしていたことなどを取り上げ、「自らの非を全部棚に上げて正義づらするのはおかしい」と述べ、分限免職、つまりはクビにするぞと脅しているのだからチンピラヤクザと変わりない。今後、橋下市長は府労委の判断を不服として中央労働委員会に再審査を申し立てるか、命令取り消しの行政訴訟を起こす構えだ。だったら謝罪しなければいいものを。組合の記者会見が気に入らないからといってケンカ腰になるのでは、大人気ないのはむしろ橋下市長の方ではないのか。
職員の信頼を失えば、行政サービスにも悪影響が出よう。市長としての統治能力が問われるところだ。
 同じ日、橋下市長が共同代表を務める日本維新の会は大阪と東京を結んだテレビ会議を行っている。冒頭、大阪側代表の橋下市長は「東京と大阪のコミュニケーション不足が謂われている。新しい通信手段を使い、コミュニケーションをとっていきたい」と述べた。
 市の職員ともぜひ、自ら進んで胸襟を開き、膝詰めのコミュニケーションをとってもらいたいものだ。

2013年3月28日木曜日

放射能の恐怖を煽る反原発活動家が小躍りしたくなる安倍首相の押し付けの愛と余計な一言

「政治の仕事は風評を払拭していくことだ。しっかりと政策にし、実行する」
安倍晋三首相は24日、被災地の福島県郡山市を訪れた際、記者団を前にこう述べた。
原発事故による風評被害に取り組む姿勢を強調するのはいいが、放射能ダダ漏れの現状のまま“風評被害”を抑え込むのは至難の業だ。消費者心理は複雑である。単に科学的論証を添えるだけでは事足りない。何より大切なのは安全にお墨付きを与える側の政府行政が信頼されることだ。
ところがこの日、安倍首相は原発再稼働問題について「被害と大変な影響を再確認した。こういう状況を頭にいれながらしっかりと安全を確保した上で判断していきたい」としながら、一方で「低廉で安定的な電力の供給がないと復興もなかなか難しい」とも述べている。まるで原発再稼働が復興支援の前提条件であるかのように聞こえる。いつもながらに人の心を傷つけ、逆撫でする一言余計な安倍首相の発言である。
翌25日には菅義偉官房長官が先に電力業界から資金提供を受けていたことが発覚した内閣府原子力委員会の秋葉悦子委員の処遇について「(NPOの)顧問として相談に応じることは原子力委員としての活動に支障があるものではない」と述べ、辞任の必要がないとの認識を示している。これでは政府行政がいくら原発再稼働の安全性を訴えたとしても国民に理解してもらえるはずがない。放射能の恐怖を煽り、風評をまき散らしてきた連中はきっと小躍りしていることだろう。
安倍首相は4月、地域振興に取り組む民間人や自治体関係者をメンバーにした「ふるさとづくり推進会議」(仮称)を立ち上げる。前回、政権を担った際には、「我が国と郷土を愛する態度を養う」として教育基本法を成立させている。今年から中学校では柔剣道やダンスの授業が必修となった。学校教育に体罰愛を導入するつもりか、と突っ込みを入れたくもなる。
愛国心だとか、郷土愛だとか耳障りのいい言葉を並べられても、押し付けの愛は人の心に響かない。少なくとも被災地住民や放射能の恐怖に怯える母子を癒やしてくれる“愛”ではなかろう。

2013年3月23日土曜日

「戦後レジューム」からの脱却を目指す安倍首相はお爺ちゃんの岸信介元首相を裁けるのか

「今、国会中で毎日いじめられて大変なんですよ。しかし、前よりだいぶ免疫ができて免疫力を発揮しています。幸い5年前に画期的な新薬が認可されたが、日本は認可が30年くらい遅かった。遅かったがために2回首相ができたのではないか」
 安倍晋三首相は19日、医薬品メーカーなどが開いた会合に出席してこう述べ、会場の笑いを誘ったそうだ。
 その首相再登板も滑り出し順調だから、軽口を叩く余裕が出てきたのだろう。だが、政権を投げ出すほどに悪化した持病の潰瘍性大腸炎は完治したわけではなく、薬頼みの身の上であることに変わりはない。国会審議中に度々トイレに駆け込む安倍首相の後ろ姿に政権の先行きを不安視する声は依然として永田町に根強い。一方で本人が健康をアピールすればするほど、日本の将来を危惧する声を増幅させることにもなろう。
何より不安なのは安倍首相が目指す「戦後レジューム」から日本が脱却した後の姿が見えないことだ。
安倍首相はサンフランシスコ講和条約が発効した昭和27年4月28日を「主権回復の日」として政府主催で式典開催を準備している。今さら言うまでもないことだが、同条約の発効はそれこそ日本が西側の一員として「戦後レジューム」に組み込まれたことを意味する。逆上れば、日本は昭和20年8月にポツダム宣言を受諾。GHQの占領下、極東国際軍事裁判と現行憲法の制定プロセスを経ること、つまり「戦後レジューム」を無条件に受け入れることで主権の回復を成し得たのではなかったか。日米同盟はその「戦後レジューム」の帰結であり、反面ではいまだに日本が米国の強い影響下にあることの象徴でもある。
それにもかかわらず安倍首相はその米国が主導した極東国際軍事裁判どころか現行憲法すら否定しつつ、一方で日米同盟の強化、とりわけ日本の軍事的プレゼンスを高めることだけに前のめりになる矛盾をどう理解したらいいのか。
お爺ちゃん(岸信介元首相)を戦犯容疑で裁こうとした極東国際軍事裁判が気にいらないのか。あるいは戦前日本軍が痛めつけた中国人が報復してきそうで怖いからか。いずれにせよポツダム宣言もサンフランシスコ講和条約も日米二国間で取り交わしたものではない。はたして国際社会がそんな日本だけに都合のいい、いいとこ取りの「戦後レジューム」からの脱却を受け入れてくれるだろうか。
それでも「戦後レジューム」から脱却したいというのなら、まずは終戦のどさくさ紛れに生き延びた戦争犯罪人を日本人自らの手で裁き、断罪するところから始めることだ。もちろん、岸信介元首相も容疑者の一人である。

 

2013年3月22日金曜日

TPP交渉参加でますます露骨になってきた安倍自民党の利益誘導

「負けるわけにはいかない。勝ち抜いて誇りある日本を取り戻す。先頭に立って戦い抜く」
安倍晋三首相は17日に行われた党大会・参院選必勝決起集会でこう述べ、自公両党で過半数獲得、ねじれ国会解消に強い意欲を示した。そして、国民の多くもそうなることを望んでいるのだろう。
直近のマスコミ各社の世論調査果で安倍内閣の支持率は軒並み70%を超える驚異的な数字を示している。
今夏の参院選の比例投票先(朝日新聞調査)でも自民47%に対し、維新は12%、野党第一党の民主党はたったの9%しかなく、このままでは自民の独り勝ちである。政治の安定を第一に考えれば致し方ないところだが、だからといって盲判を押すわけにもいくまい。
この日、自民党は経済、震災復興、外交・安全保障、教育を4つの危機と位置づけた上、「領土、領空、領海を守るために防衛力を強化」、「自主憲法制定に向けた取り組みの加速」、「TPP交渉は国益を護れるよう強い姿勢で交渉」、「古い自民党と決別し、党改革を断行」などの運動方針を採択している。
このうち、TPPについて安倍首相は18日に行われた衆院予算員会の集中審議で「日本は農耕民族だ。日本人が日本人であるために農業は国の礎でないといけない。経済的損得勘定だけで切り捨てるのは間違いだ」と述べ、交渉参加の焦点となっていた農業分野を保護する姿勢を強調した。
また、医療分野では懸念されている国民皆保険制度への影響について甘利明TPP担当相が「日本の医療制度の根幹であり、揺るがすことは絶対にないよう取り組みたい」との考えを示している。
TPPに反対する農協や医師会には勇ましくもあり、頼もしくもある発言だ。しかしながら、保護の理由が「農耕民族」だからとか、「医療制度の根幹」だからとか、まるで子供の戯れ言である。それならアメリカは「自動車民族」とならないか。皆保険の制度疲労も今に始まった話ではない。見過ごしてきた厚生行政と医療業界のもたれ合いの結果である。TPPの黒船襲来に被害者面できる立場ではなかろう。
自民党大会にはその農協や医師会、「国土強靱化」の公共事業で潤う建設業界など各種業界団体が勢揃いした。それでどうやって「古い自民党」と決別するのか。野党が頼りない分、安倍政権のやることなすこと、一つ一つにこれまで以上に眼を光らせておく必要がありそうだ。

2013年3月16日土曜日

戦争を知らない安倍首相の危ない軍備拡張路線と歪んだ歴史観

安倍晋三首相は15日の記者会見で環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加を正式に表明した。
 日本が参加すれば交渉12カ国は今年10月、インドネシアで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際、大筋合意を目指す。農協や医師会など既得権益を脅かされる業界団体は不安、不満もあろうが、日本だけが無傷ではいられない。これも時代の趨勢である。観念することだ。
 一方で13日には日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の軍、防衛当局次官級会合が行われている。先に安倍首相は各国の参加者との懇談で「発展著しいアセアンとわが国の関係強化は、地域の平和と安定に資する。防衛分野の関係強化につながるよう、活発で有意義な議論を期待する」と述べた。
 これに対して議長国ブルネイのアズマンシャム国防次官は「多国間、2国間の協力を強化し、共通の利益がもたらされることを期待する」と応じている。言うまでもなく、念頭にあるのは中国の軍拡、覇権主義への警戒心だ。
 折しも中国は日本政府が主催した「東日本大震災2周年追悼式」に参列した台湾代表を「国扱い」したことに腹を立て、3月下旬に予定された中日友好協会会長の訪日延期を決めた。台湾は中国の一部であり、一国2体制を認めた72年の日中共同声明に反するというのだ。加えて中国を後ろ盾にしてきた北朝鮮も休戦協定の白紙化を宣言。こちらは時代の趨勢とは言い難い。なんだか東アジア情勢は日中国交正常化前に逆戻りしたようにも見える。 もっと言えば日清戦争前夜、今日のように軍備拡張路線をとる清国の軍艦が度々、日本近海に出没、自国船を日本漁船に見立てて撃沈するなどの威嚇行為を繰り返していた。尖閣列島をめぐる今日の動きと恐ろしく重なるのだが、当時の日本の軍事力は清国の4分の1にも満たない弱小国家だった。とろこが時の政府は次第に軍備増強、開戦辞さずの方向に傾いていく。
さて、そこで安倍政権である。防衛費は来年度予算案で大幅に積み増した。自衛隊を軍隊に格上げ、集団的自衛権の行使にも前のめりである。それが外交交渉を有利に運ぶためのハッタリだけで済めばいいのだが・・・。火遊びが過ぎる気がする。

2013年3月14日木曜日

3・11震災追悼で安倍石破タカ派コンビが吐いた無神経発言

「今般の教訓を踏まえ、我が国全土にわたって災害に強い強靱な国づくりを進めていくことを、ここに固くお誓いする」
 安倍晋三首相は11日、政府主催の東日本大震災2周年追悼式でこう述べ、犠牲者の冥福を祈った。
 これに先立ち行われた衆院予算委員会では福島の復興について「放射能というこれまでにない被害との闘いだということを念頭に置きながら復興を進めていかなければならない」とも述べている。
 確かに復興についてはそうかもしれないが、この二つの発言を結びつければ、原発事故はあくまで地震や津波の2次災害との位置づけだから、災害対策に万全を期すことで原発再稼働は容認できるとの論法にも聞こえる。
 原発即時停止は論外にしても、せめて原発事故の原因究明と廃炉の道筋を示してからでなければ、被災地住民はもとより、全国に立地する原発近隣住民も不安だろう。
 安倍首相は1952年、サンフランシスコ講和条約が発効した4月28日を「主権回復の日」とする考えだが、併せて3・11を震災犠牲者の追悼式に終わらせず、「原発事故の日」と定めて歴史の教訓にするくらいのことは言って欲しかった。このままでは原発再稼働の是非をめぐり住民同士が啀み合い、国を分断することにもなりかねない。
 加えて残念だったのはこの前日、自民党の石破茂幹事長が被災地の講演で言及したことだ。
「存亡の危機に直面した時、国民の生命・財産を守るため一時的に国民の権利を制限するのは、どの国でも当たり前のことだ。だが、日本国憲法はその条項を欠いている」と石破氏は述べ、軍隊と国家非常事態の規定を憲法に盛り込むべきだと訴えるのである。まるで被災地住民が復旧復興の妨げになっているような物言いではないか。そうでないにしても、国民の不幸不安につけ込むようなマネはよさないか。与党の幹事長となれば、時と場所を弁えることだ。

2013年3月9日土曜日

選挙制度の抜本改革で一票の格差是正と違憲判決の悪循環を絶て

自民、公明、民主の3党は5日、安倍政権発足後初めて衆院選挙制度改革の実務者協議を行った。席上、自民党の細田博之選挙制度改革問題統括本部長は「人数の多い政党と多くない政党の双方が満足する案をできるだけ早く作って各党に諮りたい」と述べ、叩き台となる自民党案を示した。
衆院選挙制度改革については昨年11月の党首討論で野田佳彦首相が解散確約の条件にあげ、小選挙区「0増5減」の区割り法案が成立。残る定数削減法案の今国会提出で3党は合意済みだ。
当時、民主党は比例定数(180)の「40削減」と一部連用制の導入を主張していた。これに対して自民党案は比例定数を30削減した上、150議席のうち30議席以上を第2党以下に優先配分、併せて地域ブロックを11から8に再編することで死票が減らせるとしている。より大胆な改革案だが、同席した民主党の岡田克也政治改革推進本部長は優先配分が有権者の意志を正確に反映しないとの理由から「憲法違反の疑いがある。国民にわかりやすい制度にするべきだ」と異を唱えた。
しかしながら、比例に一部連用制を導入する民主党案も小政党に配慮したもので、分かりにくい。憲法違反を言えた筋合いではなかろう。
折しも翌6日、東京高裁は一票の格差をめぐる訴訟(衆院東京一区)で難波孝一裁判長は「違憲状態とした最高裁判決で強い警鐘が鳴らされたのに、区割りが是正されず選挙に至ったのは看破できない」と述べ、昨年末の衆院選では初となる違憲判決を下した。今後も全国各地で違憲判決が繰り返されるだろう。
現行の区割り制度が国勢調査を後追いし、有権者数に応じて議席数を割り振っているため、あるいは次期衆院選から施行となる「0増5減」の区割りですら憲法違反を問われかねない。選挙の度に違憲判決と定数是正を繰り返す悪循環だ。
岡田氏が憲法違反を持ち出すのであれば、3党がせっかく同じテーブルについているのだから、将来に憂いなきよう区割り制度も含めた選挙制度の抜本改革に道筋をつけることだ。

2013年3月7日木曜日

安倍首相が父、故晋太郎元外相の「創造的外交」に学ぶべきこと

 国会は7日から衆院予算員会でいよいよ来年度予算案が本格審議に入る。
大型の補正予算が成立したとはいえ、景気の先行きはなお不透明だ。景気の中折れが懸念されるところ、政府与党は4月末、大型連休前にも来年度予算を成立させたいとしている。経済再生を最優先課題に掲げる安倍政権にとってはこれからが本当の正念場となる。
万が一にも予算成立が5月連休明け、大幅にずれ込むようであれば、外交日程にも少なからず影響が出てくるからなおさらだ。
外交について安倍首相は年明け早々東南アジアを歴訪し、訪米後の28日に行った施政方針演説で「戦略的な外交」「普遍的価値を重視する外交」「主張する外交」の3原則を打ち出し、韓国、ロシアとの関係改善に積極姿勢を見せている。
このため安倍首相は4月末の大型連休中にロシア、中東諸国を歴訪する意向だ。また、韓国の大統領就任式に出席した麻生太郎副総理兼外相は5月初めのインド訪問を検討している。狙いは中国の拡張主義を封じ込めるための包囲網づくりだ。
下敷きになっているのは麻生副総理が外相時代に打ち出した「自由と繁栄の弧」構想である。麻生氏は中国の拡張主義に対抗するため、インドや中央アジア、東欧などユーラシア大陸外周の新興民主主義国家との連携強化を目指し、これを「価値の外交」と名付けている。
加えてもう一人、安倍外交を語る上で欠かせないのが秘書官として安倍首相が仕えた父、故・晋太郎外相の存在だ。
中曽根政権で足かけ4年もの長期にわたり外相を務めた晋太郎氏は「もはや受け身の外交では通らない。日本と世界の平和と繁栄の環境作りを積極的に創造していく」として「創造的外交」を前面に打ち出した。これを安倍首相は「主張する外交」と言い換えたのである。
晋太郎氏は外相就任早々、「日米関係を再び揺るぎない基盤に乗せるために武器技術供与の見直し」と「グローバルな貿易摩擦対策」、「韓国との関係改善」の三つを取り組むべき緊急課題にあげ、また、日ソ国交正常化交渉にも熱心に取り組んでいる。
もうお分かりだろう。安倍政権は先に航空自衛隊の次期主力戦闘機F35の共同生産に日本企業が参加を表明し、武器輸出3原則の例外扱いとした。米国が強く求めるTPPへの参加にも迷いはない。公約に掲げた「竹島の日」式典の政府主催もあっさり見送ってしまった。つまり、良くも悪くも志半ばで倒れた晋太郎氏の外交路線をなぞっているのである。ついでながらに中曽根政権下、晋太郎氏が外相として靖国神社参拝問題でこじれた日中関係に心痛め、関係修復に奔走したことも一言付け加えておきたい。


2013年3月5日火曜日

黒田日銀総裁人事にケチをつけた橋下徹維新の会共同代表の市長ボケが心配だ


「犠牲者の御霊に報いるためにも、一日も早い被災地復興、被災者の生活再建に力を注ぐ」
12年度補正予算案が参院本会議で可決成立した26日、安倍晋三首相はこんな談話を発表した。
 東日本大震災からもうすぐ丸2年、総額13兆1千億円に上る補正予算には、その復興・防災対策に3兆7889億円が計上されている。被災地住民も早期の予算執行を待ち望んでいることだろう。まずは一安心だ。
 さらに与野党ねじれでもたつくことが懸念された採決で、維新、国民新党、新党改革など一部野党が賛成に回り、衆参揃って予算案が可決されたことは、震災直後の復興予算を除けば、鳩山政権以来3年ぶりとのこと。何よりである。もちろん、予算の中身を100%支持してのことではなかろう。国会審議を通じて問題点は多々浮かび上がっている。
 民主、みんな、生活、社民の4党は「政府案は公共事業の大盤振る舞いだ」として政府予算案に反対する一方、建設国債2兆1千億円を削減するなどの修正動議を提出した。否決されてしまったが、国民有権者に政策の選択肢を示したことは、責任野党のあるべき姿だ。もっといえば、今後は予算の執行を厳しくチェックすることを忘れないでいただきたい。
 26日にはもう一つ、懸案だった国会同意人事で公正取引委員会委員長に杉本和行元財務次官を充てるなど14機関41人の人事案が衆参両院で民主党など野党も賛成して可決した。日銀の正副総裁人事についても民主党は柔軟姿勢に転じている。
 マスコミの一部には今回の予算案採決で野党の足並みに乱れたが生じたことを政局に絡めて民主党を揶揄する報道も見受けられる。だが、むしろ国民有権者が期待しているのは、参院を「良識の府」とする野党民主党の振る舞いではないのか。
 余談だが、日本維新の会共同代表の橋本徹大阪市長は黒田東彦アジア開発銀行総裁の日銀総裁起用に賛意を示している維新の国会議員団を「当選ボケだ。野党の役割がいまいちボケ始めている。野党としての哲学が見えない」と26日、記者団を前に批判したそうだ。橋本氏はまた、「維新の哲学からすれば、永田町や霞ヶ関だけの世界で人材が固定化しない日本社会を目指さないといけない」とも述べ、副総裁に起用される見込みの岩田規久男学習院大学教授と総裁に起用し、黒田氏と入れ替えるべきだとの考えを示した。それこそかつての野党ボケした民主党政権の官僚排除と同じ論理である。それとも市長ボケの前兆か。