2015年3月23日月曜日

未熟な安倍首相の歴史認識と倫理観


 国会は16日、参院予算員会で来年度予算案の本格論戦が始まった。衆院同様、ここでも本来やるべき予算案の中身ではなく、安倍内閣の「政治とカネ」に多くの時間が費やされてしまった。残念である。

 質問に立った民主党の羽田雄一郎参院幹事長は閣僚の企業・団体献金の禁止を主張したのに対し、安倍晋三首相は「各閣僚は政治資金について法に則り、適正に対処していると考えている」と述べるに止めた。

 もとより、閣僚の企業・団体献金の禁止はやるに越したことはないが、今ある下村文科相の献金疑惑の解明を横に置いての議論では野党の逃げ腰が批判されよう。

 しかもここにきて、NHKの籾井勝人会長に新たな疑惑が浮上。安部政権の腐敗した体質を徹底追及することは野党の務めである。

 籾井会長に新たに浮上した疑惑は、私的なゴルフの送迎に使用したハイヤー代をNHKに負担させたもの。この日の予算委員会に参考人として呼ばれた籾井氏は「請求があって金額が分かった時点で代金を支払った」と述べ、問題なしとの見解を示した。

疑惑が浮上した後で代金を支払ったとする言い逃れは、補助金企業からの献金発覚で辞任した西川公也前農相や大臣のいすに居座り続ける下村文科相と同じである。

しかも籾井氏は私的なゴルフにも関わらず、ハイヤーの手配から代金の立て替えまでを会長秘書室にやらせていたというのだから、公私混同も甚だしい。

政府の責任ある立場であれば、法に触れるかどうか以前に公人にふさわしい振る舞いが求められよう。

 一人、籾井会長だけの話ではない。都合の悪いことには耳を塞ぎ、開き直る安倍首相の傲慢な態度が政権全体に慢心を蔓延らせているのだ。

 戦後70年の談話をめぐる政府の対応しかり。

「国家指導者は先人の犯罪行使がもたらした歴史の責任を負わなければならない」

先に中国の李克強首相がこんな言葉で安倍首相の歴史認識を批判したことに対し、菅義偉官房長官は16日の記者会見で「今になってことさら過去の歴史のみに焦点を当てるのは、日中関係にとって建設的ではない」と反論している。

 首相談話に何を盛り込むかを他国にいちいち伺い立てることはなかろう。ましてや被害者意識に凝り固まった、あるいは被害者の立場を強調して対日外交を有利に進めようとする中国の思惑は承知の上で、それでもやはり加害国であった日本の歴史と謙虚に向き合うことを抜きにしては安倍首相が唱える未来志向の建設的な日中関係はあり得ないのである。

 

安倍首相が自慢する大幅ベースアップは雇用改悪の見せガネ


春闘の最中、輸出産業を中心に大手企業の大幅なベースアップが報じられている。

「賃金上昇は過去15年間で最高となった昨年の水準をさらに上回る勢いだ。今後とも労使がしっかり真摯な議論を行っていくことが求められる」

 安倍晋三首相は18日の参院予算員会でこう述べ、春闘相場の先行きに期待感をにじませた。また、「普通の労使交渉だけではなかなか(難しい)。デフレマインドが経営者の中にこびりついている。好循環に向け賃上げの必要性を経営者にもご理解いただきたい」

とも述べ、自らが主導した政労使会議の成果であることを強調。さらには企業業績の改善が円安頼みとの批判について、12年連続でベアを実施した大手家具犯罪のニトリホールディングスを引合いに出し「(製品を)外で作って輸入しており為替動向は必ずしもプラスになっていないにもかかわらず、5000円以上の思い切ったベースアップを決定した」と反論した。

 いいとこ取りの自画自賛のような気がしないでもないが、内閣支持率が急落する安倍首相にとって、春闘相場の出来不出来は政権の命運を左右する一大事だ。何より春の統一地方選を間近に控えてアベノミクスの成果を国民有権者にアピールしたいところだ。

 しかしながら安倍政権は今国会、評判のよろしくない労働制度改革を最優先課題に掲げての統一地方選である。

成立を目指す労働者派遣法改正案はこれまで最長3年としていた企業による派遣労働者の受け入れ期間の上限を撤廃する正社員の派遣社員化を促すものだ。

 さらに安倍政権が導入を目指す「残業代ゼロ」制度は、「ホワイトカラーエグゼンプション」とも呼ばれ、サラリーマンの給料を労働時間ではなく成果に応じて支払うことで企業の人件費負担を軽減するのが狙いだ。都市部の勤労者にとっては死活問題とも言える労働制度の改悪となる。それからすれば、大企業のベースアップはいわば見せガネも同然。気が付けば身ぐるみ剥がされているかもしれない今春闘である。

2015年3月16日月曜日

汚れた安倍内閣に教育を語る資格なし


 安倍内閣の支持率が急落した。先週末、NHKが実施した世論調査で前月の54%から46%に急落。昨年11月の44%に次ぐ低い数字である。下げ幅も同じ8ポイントだった。

 自民党内からは「政治とカネの問題が予算委でも取り上げられ、少しボディーブローみたいに効いてきている」(谷垣禎一幹事長)、「反省すべきは反省し、謙虚に対応することが大切だ」(高村正彦副総裁)との声が伝わっている。

 もとより相次ぐ閣僚の献金疑惑の発覚が支持率急落につながったことは言うまでもない。もっと言えば、任命責任者としての安倍晋三首相の姿勢が問われているのである。

昨年11月の急落局面では秋の臨時国会冒頭から閣僚の「政治とカネ」問題が浮上。安倍首相は小渕優子経産相、松島みどり法相のダブル辞任で政権へのダメージを最小限にくい止め、さらには国民に不人気の消費税率再引上げを見送り、間髪入れずに解散総選挙に打って出た。結果は周知のとおり。内閣支持率は50%に回復している。

ところが今回はどうだ。通常国会冒頭、補助金企業からの献金疑惑が発覚した西川公也農相のクビを切るところまでは同じだが、その後がいけない。同様の献金疑惑が民主党の岡田克也代表など野党幹部に及ぶに至り、閣僚の献金疑惑を政治資金規正法の問題にすり替え開き直ってしまった。

安倍首相は西川氏のクビを切りながら、一方で教育業界から献金疑惑が指摘されている下村博文文科相については、本人が辞意を伝えてもこれに応じないのはどういうワケか。

国民にはこれが反省も謙虚さもないご都合主義に映ったはずだ。

 自民、公明両党は11日、幹事長・国体委員長会談を開き来年度予算案を13日に衆院本会議で採決するとの方針を確認した。併せて補助金企業からの献金問題に関して現行の政治資金規正法の不備について運用改善策を検討することを決めた。

 それはそれで結構なことだが、下村文科相の疑惑を不問にするのであれば、文科省の予算を認めるわけにはいかない。野党は一致結束して不信任決議案を提出して徹底抗戦するべきところだ。疑惑まみれの安倍内閣に教育を語る資格はない。

安倍首相の祖父、岸信介と自民結党60年


 今年、日本は敗戦から70年。自民党にとっては結党60年の節目の年である。8日に行われた自民党大会では平成27年度運動方針に、その結党以来の悲願とも言える憲法改正について「改めて胸に刻まねばならないのは、憲法改正を党是として出発した保守政党としての矜持だ」として「現行憲法の主権在民、基本的人権、平和主義の3つの基本原理を継承した改正原案の検討、作成を目指す」と明記した。今後、自民党は憲法改正賛同者の拡大運動を推進するそうだ。

原案の中身も定まっていないのに賛同するもしないもない。しかも、そもそも憲法は国家の在り方を定める基本原則を示したもので、その基本原則を継承するというのならいったい何のための改正であろう。

一方で昨年7月、安倍内閣は憲法の基本原理を継承するどころか、これを勝手に捻じ曲げ集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈を閣議決定している。今国会の成立を目指す安保法制はこの閣議決定を前提にしたもの。そうであれば憲法の条文は閣議決定でいかようにでも解釈できることになる。少なくとも安倍内閣はそうしてきた。

「戦争に巻き込まれるとか、徴兵制が始まるとかいう無責任な批判がある。無責任な批判にたじろぐことなく、やるべきことは毅然とやり遂げる。国際協調主義の下、積極的平和主義の旗を高く掲げ、日本の領土、領空、領海を断固として守り抜く」

安倍首相はこの日、党大会の演説でこう述べ、安保法制の整備に向けて尋常ならざる意欲を示した。

政権発足時には「国民の声に謙虚に耳を傾ける」と語っていた安倍首相が、その同じ国民の声を「無責任な批判」とは恐るべき変貌である。

さらに先の運動方針に盛り込まれた憲法改正原案の3つの基本原理と安倍演説を重ね合わせてみれば、つまるところ現行憲法の「平和主義」を「積極平和主義」に置き換えて戦力不所持の条文を取っ払い、自衛隊を“普通”の軍隊にしたいだけの安倍自民党の憲法改正の狙い浮かび上がってこよう。

 保守合同の立役者であり自民党結党時、党綱領の作成に深く関わった第3代自民党総裁の岸信介元首相は当時、後援会誌に次のような一文を寄せている。

「憲法改正と再軍備の観念のみを以て我が党の全貌を律するのは当たらない。現実の政策として鋭意その立案と実施に務めんとするものは、中小企業、農漁業、勤労対策であり、雇用拡大、国土開発、海外市場獲得の具体策である。且つ予算面において特に重点を置かんとするものは、社会保障政策の実施である」

 要するに観念を振り回すな、ということであろう。内閣府が9日発表した14年10~12月期国内総生産(GDP)の改定値を名目で前期比1・0%増(速報値の1・1%)。年率に換算すると3・9%となり、速報値から0・6%下方修正となった。岸元首相の言葉に従えば、政治の最優先課題は安保法制の整備ではないのだが。

2015年3月7日土曜日

知らなかったでは済まされない安倍内閣の献金疑惑


 止まるところを知らない補助金企業からの違法献金疑惑は、ここにきてついに安倍晋三首相までもが5社、合計220万円の献金を受け取っていたことが発覚。一方で疑惑追及の先頭に立ってきた民主党の岡田克也代表(61)にも同様の疑惑が浮上したことから永田町は何やら小泉政権下の年金未納問題にも似た様相である。

 これまでに献金疑惑が指摘されている議員をざっとおさらいすると、安倍内閣では辞任した西川公也前農相(72)の他、同様の違法献金疑惑が指摘されているのは望月義夫環境相(67)、上川陽子法相(62)、下村博文(60)、林芳正農水相(54)、甘利明経済再生担当相(65)、宮沢洋一経産相(64)、塩崎恭久厚労相(64)、菅義偉官房長官(66歳)、麻生太郎財務相(74)の9人。これに安倍首相を加えると全閣僚の半数に上る。まさに「疑惑の総合内閣」なのである。

 一方、野党側では民主党の岡田代表の他、維新の党の柿沢未途政調会長、片山寅之助総務会長、「生活の党と山本太郎となかまたち」の小沢一郎代表(72)の3人。年金未納問題では小泉純一郎首相は「人生いろいろ」の迷言を吐いて逃げ切り、当時、年金未納閣僚を「未納三兄弟」と呼んで厳しく追及した民主党の菅直人代表は自身の未納問題が発覚して代表辞任に追い込まれてしまったのだからしまらない話だ。

はたして今回はどんな結末を迎えるのか。民主党の高木義明国対委員長は4日、自民党の佐藤勉国対委員長との会談で「国民の不信を買わないためには再発防止が大事だ」と指摘、政治資金規正法の改正に向けた与野党協議の開催を求めている。

これに対して佐藤氏は会談後、記者団を前に「何が正しくて何が正しくないか、まだ分かっていない人もいる」と述べ、現行制度の理解を深めることが先決との考えを示した。

いつの間にか与野党立場が逆転、岡田代表に献金疑惑が飛び火したことで民主党の疑惑追及はいっきにトーンダウンである。

もちろん、現行の政治資金規正法に不備があれば改正するもよし。だがその前にすべての国会議員を対象に補助金企業からの献金実態を洗い出して疑惑の仕分けをする必要があろう。特に辞任した西川前農相や下村文科相ら閣僚については職務権限と直結する業界からの献金である。政治資金規正法の改正論議とは別問題だ。国会の場でさらなる説明責任を求めたい。

2015年3月5日木曜日

自民党はポスト安倍の準備を急げ


「民主党のメッセージは具体的対策に乏しい批判ばかりと受け取られた。百万篇の反省にとどまることなく、改革政党として政権交代戦略を再構築する」

 民主党は1日に行われた党大会で先の総選挙の敗北をこう総括した。

 また、網膜剥離の再発で党大会を欠席した岡田克也代表は「統一地方選で“生活起点”“地域起点”の旗を掲げて土台を固める。国会論戦などで政権と対峙し、参院選、衆院選に向け反転攻勢をかける。オール民主党で党再生をはかる」とのメッセージを寄せている。

 是非そうあって欲しいが、来賓として出席した連合の古賀伸明会長は民主党に対して「決まったことは一致結束して行動をするフォロワーシップ」の大切さ説いた上で「国民の信頼を取り戻すには覚悟とたゆまぬ努力、もしかしたら時間も必要かもしれない」との見方を示した。焦らずじっくり党の足腰を鍛えて欲しいとの思いであろう。

 とはいえ、このままダラダラ安倍首相の暴走を許してしまえば、国民生活はズタズタにされてしまいかねない。

 民主党の枝野幸男幹事長は同日の記者会見で次期衆院選の見通しについて、「(来夏の参院選との)ダブル選はないのではないか。あったとしても完全なダブルではなく、(参院選の)直前や直後のような“実質ダブル”」と述べているが、最大野党の幹事長がこんな消極的な姿勢では困りものである。

 いかに解散総選挙が首相の専権とはいえ今国会、せめて安倍内閣を総辞職に追い込むくらいのことは言えないものか。

相次ぐ閣僚のスキャンダル発覚は、その突破口になるはずだ。

「政治資金の問題は閣内にいようと与党であろうと野党であろうと、しっかり説明責任をはたしていかなければならない」

 安倍晋三首相はこんな脅しにも似た論法で閣僚の献金疑惑を一般論にすり替えようとしているが、国会議員と閣僚とでは立場は大きく異なる。返り血を恐れず、ひるまず徹底追及することだ。

 併せて来年度予算案の審議を通じて安倍政権が推し進める経済政策の不備を炙り出し、国民有権者に分かり易く伝えなければならない。

 民主党や維新の党の議員は羅列した数字と専門用語を多用する癖があるが、国会中継を聞いている一般国民には難解過ぎる。難解な問題を難解にしか語れないのは愚かさの裏返しだ。政策を浸透させたいのであれば、中高生にも理解できるような工夫が必要である。

 その上で後半国会、国論を二分する安保外交ではそれこそ「オール民主党」の一枚岩で安倍政権に対峙できるかどうかが試されよう。国会戦術的には公明党に歩調合せて政府与党内に楔を打ち込むことができればなおいい。

内閣支持率30%前半で国会会期末を迎え、秋の自民党総裁選に突き進めば安倍首相が退陣する可能性も出てこよう。民主党に政権が転がり込んでくるわけではないが、安倍首相の暴走を食い止めることは野党第1党の務めだ。急がば回れの政権交代である。

 

2015年3月3日火曜日

内閣崩壊モード突入!自民党はポスト安倍の準備を急げ


「閣僚が能力を発揮し、国政を進める方向で実績を遺せるかどうかについて全体として私は責任を負っている。道半ばで結果として辞任に至ったことは当然、私が全責任を負っている」

安倍晋三首相は25日の衆院予算委員会でこう述べた。先に献金疑惑で辞任した西川公也前農相の任命責任を問われてのことだ。民主党の馬淵澄夫、玉木雄一郎両議員の質問に答えてのものだ。

では、任命権者としてどう責任をお取りになられるのか、と問えば「しっかり政策を前に進め、結果を出すことによって責任をはたしていく」のだと。

 しかしながら「政治とカネ」の問題で辞任に追い込まれたのは1人、西川氏に止まらない。昨年秋の第2次安倍改造内閣以来、いったい何人の閣僚が「政治とカネ」の問題で辞任に追い込まれたのか。小渕優子経産相、松島みどり法務相、江渡聡徳防衛相に加えて4人。しかも、いずれの閣僚も国民に対する説明責任をはたすことなく、いわば疑惑逃れの辞任である。

 こうなると個々の閣僚の資質もさることながら、任命権者としての安倍首相の資質が問われよう。要するに人を見る目がないのである。

「一刻も早く予算を地方に届けるのが我々の使命だ。年度内成立を期すと確認した」

自民党の佐藤勉国対委員長はこの日行われた与党幹事長、国対委員長会談後、記者団を前にこう述べた。

会談では自民、公明両党が西川疑惑について「最小限の混乱で収めることができた」との認識で一致したそうだが、楽観が過ぎよう。

すでに今週発売の週刊文春が安倍首相の盟友とも言える下村博文文科相の後援会をめぐる献金疑惑を追及。さらに首相官邸は望月義夫環境相ら3閣僚に西川氏同様、補助金企業からの献金があることを把握しており、事実ならば「政策を前に進める」どころか、ドミノ倒しの閣僚辞任で政権運営を投げ出した第一次安倍内閣の二の舞だ。そろそろ自民党もポスト安倍の準備しておいた方がいい。