2014年6月21日土曜日

天井が見えた日本の経済成長と日銀の言い逃れ


「2020年度のプライマリーバランス(国と地方の基礎的財政収支)黒字化と財政健全化を進めるが、経済成長をしっかりと進めるうえで法人税改革を行う」

 安倍晋三首相は9日午前の参院決算委員会でこう述べ、来年度からの法人税の実効率引き下げを実施する意向を示した。

 周知のとおり、安倍政権の経済再生戦略は経済成長と財政健全化を同時に成し遂げようとするものだが、共倒れすれば日本経済は壊滅的なダメージを受ける。

 麻生太郎財務相は6日の記者会見で税率引き下げに伴う恒久的な穴埋め財源の必要性を説き、経済成長による税収増を当てにした無条件の引き下げには慎重姿勢を示している。

一方、これに異を唱えるのが甘利明経済再生担当相だ。同日の記者会見で「経済規模を大きくするという視点を忘れては財政再建できない」と述べ、税収増を穴埋め財源に活用すべきだと主張。上手くいけば、それにこしたことはない。だが、経済は生き物だ。楽観は禁物である。

日銀の黒田東彦総裁は7日に開かれたヨルダンの国際経済学会でアベノミスクの金融緩和策について「金融市場、実態経済および物価、期待のいずれもが好転しており、所期の効果を発揮している」と述べた。

しかし、本当にそうか。とりわけ実態経済はいまだ成長軌道に乗ったとは言い難く、一進一退の蛇行線を描いている。

6日に内閣府が発表した4月の景気動向指数は前月比3・4パーセント下落、2か月ぶりに悪化し転じた。東日本大震災が発生した11年3月の6・7パーセント以来の下げ幅だ。景気の基調判断も「改善している」から12年10月以来、1年6か月ぶりとなる「足ふみしている」に下方修正された。

4月の消費税率引き上げの影響もあろうが、安倍首相は今秋にはさらに10%に引き上げる意向示している。先行きはなお不透明だ。

だからか、黒田総裁も先の講演で「効果や波及メカニズムは解明されていない点もある」と述べている。つまり、日銀としてやることやり、成果も出たが、後のことは分かりません、と言っているのだ。

しかも、日銀の佐藤健裕審議委員は5日の講演で「日本経済は思いの外、早く供給の天井(限界)にぶつかりつつある。より望ましいのは生産性の向上に見合った賃金の上昇であり、それとバランス良く物価が上がっていく姿だ」と述べている。

内需拡大による持続的な経済成長を目指したはずのアベノミスクの成果が、限定的なものに止まっていることを認めたものだ。

それでどうやって法人税減税の財源穴埋めをするのか。先を確実に見通した議論をするべきだろう。

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