2014年6月8日日曜日

安倍積極平和外交のご都合主義

アジア安全保障会議(シャングリラ会合)に出席のためシンガポールを訪問していた安倍晋三首相が31日、帰国した。
「既成事実を積み重ね、現状の変化を固定しようとする動きは、強い批判の対象とならざるを得ない」
 同会議で基調講演を行った安倍首相とこう強く訴え、アセアン首脳に同調を求めた。
 安倍首相はまた、「アセアン各国の海や空の安全を保ち、航行・飛行の自由を保全しようとする努力に対し、支援を惜しまない」とも述べ、南シナ海の領有権をめぐり中国と対立するフィリピン、ベトナム両国への支援を約束した。
 アセアン諸国と連携して中国の海洋進出を牽制することが狙いだが、安倍首相の突出した対中強硬姿勢だけが際立つ。本欄で度々、指摘してきたことだが、日本が中国の脅威を口実にしてアセアン地域の安全保障に直接介入するようなことは決してあってはならないことだ。
 安倍首相が唱える「積極平和外交」には、こうしたキナ臭さが常に漂うのである。
 そもそも、南シナ海での領有権問題は尖閣諸島を巡る日中の対立とは次元が異なる。同盟国ならともかく、何故安倍首相は頼まれもしない他国のトラブルに、首を突っ込みたがるのか。中国の脅威を叫ぶだけでは、国民の理解は得られまい。
 いったい既成事実を積み重ね、現状の変化を固定する中国の動きを誰が否定できよう。
かつての欧米や日本がそうであったように、領土は既成事実の積み重ねそのものだ。

 安倍首相は息つく暇なく、4、5両日開催のロシア抜き先進7カ国(G7)首脳会談に出席するためベルギーのブリュッセルに向かう。日本は米国と共に中国を名指し批判する文言を共同宣言に盛り込むよう働きかけているそうだ。あるいは、中国の非をそこまで声高に叫ぶなら、北方領土を不法占拠したままのロシアも同様、厳しく指弾しなければご都合主義と笑われよう。

0 件のコメント:

コメントを投稿