2013年10月31日木曜日

米国家安全保障局(NSA)の盗聴事件で大義を失った機密保護法案の迷走

日本版NSC(国家安全保障会議)を創設するための関連法案が28日、衆院国家安全保障特別委員会で実質審議入りした。29日には「産業競争力強化法案」の趣旨説明と質疑が行われる。共に今国会、政府が最重要法案と位置づけているが、この間、安倍晋三首相はトルコを訪問、30日に帰国した。
原発の売り込みやら経済連携協定(EPA)交渉やら、それなりに国益を担った訪問ではあるが、一方で主役不在の国会審議は緊張感に欠けたものとなった。
 もっとも、日本版NSCについては政府組織を改再編して外交、防衛、治安に関わる危機管理情報を首相官邸で一元管理し、政府の迅速な意志決定に役立てるものだ。
 菅義偉官房長官は趣旨説明で「北朝鮮の核・弾道弾ミサイル開発の脅威、中国の透明性を欠いた軍事力増強といった懸念事項をはじめ、安全保障環境は厳しくなっている。官邸の外交・安全保障の司令塔機能を強化するため、NSCの設置は不可欠だ」と述べていたが、法案の成立を阻む理由はない。
ただし問題があるとすれば、やはり秘密保護法案の扱いだろう。国家の危機管理において機密情報の管理統制は必要不可欠な要素だ。しかしそれも機密指定の範囲と運用次第では国民の知る権利を犯しかねない。日本版NSCの有り様が問われるところだ。
折しも米国の盗聴事件が次々と発覚、米国家安全保障局(NSA)が盗聴対象にしていたのはドイツのメンケル首相ら外国指導者約35人に上っている。安倍首相の携帯電話も盗聴されていた可能性は否定できない。情報は得てして本人のあずかり知らぬところで漏れるものだ。国益を担う政治家や官僚は脇が甘かったでは済まされない。ましてや機密情報の共有化を目指す同盟国から盗聴されていたのでは、法案の趣旨が否定されたことにもなる。機密保護の罰則を強化する前にやることはいくらでもあろう。

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