アベノミクスの是非が問われる労働者派遣法改正案が早ければ今週 中にも衆院を通過する見込みだ。 安保法制論議の陰に隠れて注目度は今一つながら、 勤労者の一生を左右することになる重要な法案である。
改正のポイントは原則最長3年としてきた派遣労働期間を撤廃した こと。 現行法では企業は3年を超えて同じ仕事に派遣労働者を使えないが 、改正案が成立すれば、 派遣労働者を入れ替えれば使い続けられるようになる。つまり、 派遣労働者は慣れ親しんだ職場で正社員になる道を閉ざされ、 逆に正社員は派遣労働者に職場を奪われかねない。簡単に言えば、 派遣労働の固定化と正社員の非正規化を加速させる法案である。
高給を食む正社員の仕事を低賃金の派遣労働者に肩代わりさせるこ とができれば、 年金や医療保険料など福利厚生費の負担軽減にもつながる。 人件費の削減を期待する企業経営者にとっては歓迎すべき雇用制度 改革である。
しかしながら、そもそも派遣労働は臨時的、 一時的な働き方であって、 やむを得ず派遣労働者を雇い入れる場合でも正社員と同じ仕事であ れば、同一賃金、待遇であることは先進主要国の常識。 あくまでも労働者の雇用の安定と待遇改善を目指したもので、 厚労省の調査では派遣労働者の6割以上が正社員になること希望し ている。
その意味で低賃金の派遣労働者の拡大と固定化につながる今回の法 改正は企業経営者を後押しするものであり、働く側からすれば「 アベノイジメ」の悪巧みでしかない。
雇用制度の規制緩和は安倍政権が掲げる経済成長戦略の目玉だが、 その中身を見れば派遣法改正をはじめ、俗に言う「残業代ゼロ・ 過労死促進制度」の導入、簡単に正社員をクビにできる「 解雇の金銭解決制度」 など労働者イジメのメニューがずらりと並ぶ。
おりしも厚労省が2日、4月の勤労統計調査(速報) で物価の変動を加味した実質賃金が前年比で0・ 1パーセント増だったことを伝えている。 今春闘の賃上げが実際の給料に反映されるのは6月以降、 ボーナス支給とあいまって所得環境は好転するとの見立てだ。
だが、明日は我が身の派遣労働である。この先、 年金や医療費の負担増も暮らしを圧迫する。 マクロ経済ではかることができない国民の不安は募るばかりだ。
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