2012年6月14日木曜日

野田政権の1年その⑨

●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年6月6日号(ゲラ刷り)

 野田佳彦首相は4日午後、国会会期末が迫る中でようやく内閣改造に踏み切った。国会会期中の改造人事は異例だが、その理由を野田首相は記者会見で「社会保障と税の一体改革を含め、諸懸案を前進させるための環境整備をすべく、機能強化の観点から適材適所の人事だ」と述べた。言うまでもなく、自民党が求める問責2閣僚のクビを切るための改造である。
「私は職責を果たしてきた。今後とも日本の安全保障、沖縄の負担軽減、自衛隊の活動に力を尽くしたい」(田中直紀防衛相)
「私自身の不注意があった。国会でブレーキになると国民に迷惑が掛かるから、首相の指示に従った」(前田武志国交相)
問責2大臣はそれぞれにこんなコメントを残して閣外に去った。
 後任の防衛相には拓殖大学大学院の森本敏教授が、国交相には参院から羽田雄一郎国対委員長が起用された。この他に農林水産相に参院から郡司彰農林副大臣、法務相に滝実法務副大臣、国民新党枠の郵政民営化担当相は松下忠洋副大臣が昇格した。
こう言っては失礼だが民主党の人材もついに底をついたか。機能強化どころか、「野田残飯内閣」である。
とりわけ防衛相の民間人起用には開いた口が塞がらない。テレビで馴染みの安全保障の専門家らしいが、一民間人に国家国民の命を丸投げするとは無責任極まりない。
自民党はこの人事を「田中氏で相当懲りたので専門家を外から登用したと思うが、シビリアンコントロールや安全保障は国の根幹。民主党内に適材がいないことの表れだ」(石原伸晃幹事長)、「政治家でない以上、責任を取れない。やってはならないことだ」(石破茂元防衛相)と批判している。同感だ。
 改造人事に合わせ、野田首相は同日の政府・民主党3役会議で自民党消費税関連法案の修正協議を開始するよう指示し、輿石東幹事長に対して自民党が修正協議の前提としている衆院社会保障・税一体改革特別委員会の中央公聴会日程を詰めるよう迫った。
野田首相にとっては国の安全保障より、消費税増税の実現が大事とみえる。ならば自民党には法案成立への協力をお願いしたい。こんな政権がダラダラ続いたら年金を受け取るより先に、この国が滅んでしまわないか心配である。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年6月8日号(ゲラ刷り)

自民党の谷垣禎一総裁は6日、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革法案をめぐる民主党との修正協議に応じる意向を示した。
周知のとおり、野田首相は同関連法案の衆院採決の期限を6月21日の会期末と決め、自ら退路を絶った。逆算すれば、18日にメキシコで開催のG20首脳会議出発前、15日までに修正協議をまとめておかなければ国会日程上、間に合わない。そうなれば野田首相は政治責任を問われて政局は混乱し、国民生活は大打撃を受けるところだった。谷垣総裁の決断を高く評価したい。
さて、そうであれば次は野田首相が決断する番だ。社会保障と税の一体改革関連法案は全部で7本あるが、修正協議に費やす時間は残り少ない。両党の主張に隔たりが大きい法案はこの際、継続審議なり廃案にして、仕切り直してはどうか。自民党は最低保障年金制度や後期高齢者医療制度廃止の撤回を求めている。社会保障制度の大改革は与野党の立場を越え、じっくり時間をかけて結論を出した方がいい。
それに7法案すべてを今国会で成立させるためには大幅な会期延長が必要となる。参院の審議日程を衆院と同じ100時間程度確保するには延長幅はざっと40日、最悪8月お盆をまたぐ長丁場となろう。そして9月、民主、自民両党は代表選に雪崩れ込むが、野田首相と谷垣総裁の2人共に再選される保障はない。民主党内には国会会期の大幅延長を口実にした代表選前倒しの声もある。野田首相の再選を阻み、修正協議の破綻を狙ったものだ。誰と言わずともお分かりだろう。消費税増税と話し合い解散に反対する連中である。
彼らの邪悪な企みを粉砕するためにも、野田首相は欲張らずに合意可能な修正法案を成立させ、できるだけ早く国会を閉じてしまうことだ。
その上で話し合い解散に進むもよし、あるいはこのまま民自大連立で積年の政治課題を一気に片づけてしまうのもいい。解散は先送りとなるが、自民党の政権参加で政治が前に進むのであれば、反対する理由はない。国民も理解してくれるだろう。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年6月13日号(ゲラ刷り)


 社会保障と税の一体改革関連法案の修正協議は今週がヤマ場となる。民主、自民両党は11日、税制分野の修正協議で消費税税率10パーセントを2段階で引き上げることで一致したが、焦点となる低所得者層対策については結論を持ち越した。
 政府・民主党が税率を10パーセントに引き上げた段階で所得税控除と現金支給を組み合わせた「給付付き税額控除」の導入を検討している。これに対して自民党を税率8パーセントに引き上げた段階で生活必需品などへの軽減税率の導入を検討すべきだと主張している。ただ、消費税増税の基本的方向で一致し、双方が低所得者対策の必要性を認めているのだから、細かい話は後回しにしてでも法案採決の環境作りを急ぐことだ。
 一方、前日に行われた社会保障分野の修正協議は自民、公明両党は最低保障年金制度の創設と後期高齢者医療制度廃止の撤回を求めたが、民主党が難色を示して物別れに終わった。双方の隔たりは大きい。
しかしである。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が実施した直近の世論調査によれば、内閣支持率は28・2パーセントでほぼ横ばい、不支持率は依然として6割台の高水準だ。民主党の支持率は13・1パーセントで政権交代以降最低を記録した。
すでに国民の信を失ってしまった野田政権に与野党が大きく対立する社会保障制度の大改革をまとめられるわけがない。
 幸いなことに自民党は将来的な年金・医療制度改革については「社会保障制度改革国民会議」に議論を委ねるよう求めており、これに乗っかれば少なくとも消費税増税だけは実現できる。
 増税先行との批判は免れないが、野田首相の覚悟次第だ。仮に今国会、消費税増税関連法案だけを可決成立させた場合、8パーセント引き上げは14年4月、15パーセントへの引き上げは2015年10月だ。実際の引き上げを起点に考えれば、社会保障制度の大改革については無理して結論を急ぐことはなかろう。


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