2012年6月14日木曜日

野田政権の1年その⑧

 ●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年5月16日号(ゲラ刷り)

 読売新聞が行った直近の世論調査で野田内閣の支持率は30パーセントだった。意外に堅調である。消費税の引き上げにも56パーセントが賛成している。一方で審議中の政府、民主党の消費税増税法案には48パーセントが反対している。また、自民、公明両党が早期実施を求める衆院の解散総選挙の時期については、来夏の任期満了まで「行う必要がない」との回答が42パーセントに上った。
 つまり、国民の多くは消費税増税を法案の成立を条件とする今国会中の話し合い解散には否定的なのである。
 おそらく消費税の引き上げに反対する国民の多くが目先の重税感に惑わされているかだろう。中でも日常生活により不安を覚える低所得者層は消費税増税へのアレルギ反応が強い。しかしながら、消費税増税で社会保障費の財源不足が解消されれば、その果実は何よりその低所得者層や社会的弱者に真っ先に振り分けられることになるのだ。それに財政再建を先送りすれば、国債償還の金利負担が財政を圧迫し、社会保障費の先細りを招くことになり、低所得者層や社会的弱者の切り捨てにつながる。だからこそ、消費税増税を急がなければならないのである。
 もう一つ解散総選挙の時期について、世論調査に従えば任期満了まで残り1年、衆参同日選挙となる。
「なかなか話し合い解散にはならないのではないか」
民主党の輿石東幹事長は14日の記者会見でこう述べた。先週11日には「来年7月に参院選がある。次期衆院選は一緒でいいんじゃないですか。ダブル選挙だろう」とも述べている。
世論調査の結果通りの発言だが、幹事長とはいえ、参院議員の輿石氏には政局を作り出すだけの求心力はない。ましてや今国会、野田佳彦首相が消費税増税法案の成立に政治生命を賭して臨んでいる以上、自民、公明両党の協力を得るためにいずれ近いうちに解散カードは切ることになろう。
政治を前に進めるためであれば、きっと国民も理解してくれるに違いない。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年5月23日号(ゲラ刷り)


国会は21日、衆院の社会保障・税一体改革特別委員会で2日目の基本質疑が行われ、法案成立のカギを握る自民党から石原伸晃幹事長、伊吹文明元財務相、鴨下一郎元環境相ら政策通、実力者が質問に立った。
 内容を大雑把に言えば、消費税の引き上げを実現するためには問責2大臣の交代と、民主党のマニフェスト違反を率直に認め、国民に謝罪した上で自民党案を丸飲みすること。
また、伊吹氏は「民主党政権に改革を実行する正当性はない」とも述べており、早期の解散総選挙を求め、今国会、万が一にも法案採決を先送りするようなことになれば、内閣不信任決議案や首相問責決議案の提出も辞さずの構えだ。これまで通り、一貫した主張である。
これに対し野田佳彦首相は「真摯な議論を通じ結論を出す」と述べ、民主党マニフェストにある最低保障年金制度などの撤回に含みを持たせた。
野田首相はまた、民主党の輿石東幹事長が先に「衆院小選挙区の一票の格差が解消されていないため解散は困難」との見方を示していることを「解散は大衆党議で決める話ではない。自分の腹の中で(決断し)、必要なときに行うのが基本だ」と述べた。これは早期の解散総選挙の可能性を匂わせたもの。野田首相と自民党との距離は少しずつだが、確実に狭まりつつある。
これに呼応して民主党は同日、社会保障・税一体改革推進会議の初会合を行い、議長の輿石幹事長は「党政府で言うことが違っているとの報道があるが、そんなことがないように一体で臨んで行こう」と述べた。
同会議のメンバーには藤井裕久党税制調査会長、仙石由人政調会長代行、衆院社会保障・税一体改革特別委員会の鉢呂吉雄筆頭理事らが顔を揃え、野党との修正協議で党内意見を集約する場となる。
とはいえ今国会、6月21日の会期末まで残り1カ月。民自協力のスピードアップにはやはり問責2大臣には犠牲になってもらうしかない。
一部には民自接近を大政翼賛、談合政治と批判する声があるが、税制や社会保障制度、選挙制度などの大規模な国家システムの変更が、政権交代の度に、あるいは政権与党だけの思惑だけでコロコロ変わるようでは混乱を招く。談合が反社会的なのは、国民が不利益を被る場合であり、刑法や独禁法が禁じている通りだ。
これに対して与野党協議は政治が合意形成を得るための手段であり、それが国益にかなうならば談合批判は当たらない。むしろ、大歓迎である。


 
●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年5月25日号(ゲラ刷り)



格付け会社のフィッチ・レーティングスが22日、日本国債の格付けを「AA-」から「A+」にワンランク引き下げた。
日本国債は昨年1月にスタンダード&プアーズが、同年8月に米ムーディーズ・インベスターズ・サービスがいずれも下から4番目に格下げしている。それがさらに下から数えて3番目にまで落とされてしまった。
「日本の公的債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率が高水準で上昇しており、国債の信用リスクが高まっている」(フィッチ社)のが格下げの理由である。すぐ下の「A」ランクにはスペイン、最下位「A-」ランクにはイタリアがいるが、周知のとおり、いずれも先に財政破綻したギリシャの次が懸念される問題国だ。
 日本の財政再建の先行きにも同様に厳しい見通しを示したものと言えよう。消費税増税法案の成否についても当然ながら「15年度までに消費税率を5パーセントから10パーセントに引き上げ、財政健全化を図る戦略は、政治リスクにさらされている」(前同)と悲観的である。
 野田佳彦首相は23日の衆院社会保障と税の一体改革特別委員会でこの事を問われ、「民間会社の評価について逐一コメントしない」としつつ、「財政健全化に関わる法案の審議に市場も警戒感を持ち、国際社会も非常に注目していることは心の中に抑えながら議論しなければいけない」と述べた。
 ならば野田首相は自民党の声にしっかり耳を傾けることだ。
 破綻した民主党マニフェストの辻褄合わせのための消費税増税に自民党は反対している。本欄も同じ立場だ。このまま人気取りのバラマキ政策を続けていては消費税率をいくら上げてもキリがない。ましてや先の総選挙で惨敗した自民党であればなおさらである。
 自民党の伊吹文明元幹事長ではないが、そこのところで野田首相が「チマチマ」していては話が前に進まない。つまりは「やる気がない」ということになる。
 民主党内の一部からは、今国会中の消費税増税関連法案の採決先送りや大幅な会期延長論も囁かれている。愚かな輩だ。
 民自協力が成らなければ、日一日と借金返済の金利がかさむばかりか、今年度予算の執行を担保する国債すら発行できない。苦しむのが国民だということがどうして解らないのか。

●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2102年6月1日号(ゲラ刷り)

国民注視の中で30日に行われた野田佳彦首相と民主党の小沢一郎元代表との話し合いは不調に終わった。消費税増税関連法案の今国会成立に協力を求める野田首相に対して小沢元代表は「大増税の前にやることがある。賛成と言うわけにはいかない」とこれを拒否。会談後、記者団を前に「政権交代に向けた総選挙で無駄を省き、その財源で政策を実行すると言った。国民は約束が緒についていないという認識を持っている。年金制度改革などのビジョンが忘れ去られ、増税だけが前面に出ている。とても一体改革とは言えない」と述べ、消費税増税に前のめりの野田首相を批判した。
会談をセットした輿石東幹事長は「党内結束のため、さらに汗をかきたい」と述べていたが、野田首相に仕える幹事長としてやるべきは、小沢氏を説得し、党の決定に従わせることである。それができなければ、小沢氏には党から追い出すのが次の仕事だ。汗のかき方を間違わないでもらいたい。
「あくまでも、民主党の党内問題だ。野田さんには党内対策のため(だけ)に、エネルギーを注ぐひまはない。大事なのは野党にどう対応していくかだ。仮に党内が収まっても成立するわけじゃない」
 たちあげれ日本の園田博之幹事長の発言だが、まったく同感である。
 この日行われた衆院の社会保障・税一体改革特別委員会で岡田克也副総理は「最終的に(小沢氏の)了解を得られなかったのは残念だが、首相の全くぶれない姿勢が明らかになった」と述べていた。
中途半端な妥協は国益を損なう。ここまでくれば野田首相も小沢元代表も党分裂覚悟でそれぞれが信じる道を突き進むことだ。どちらが正しい道かは、いずれ国民が判断するだろう。
もっとも小沢氏の政治行動には過去、国民は幾度となく振り回され、煮え湯を飲まされてきた。ましてや刑事被告人となった小沢氏の政治力に過剰な期待は禁物である。


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