2012年6月14日木曜日

野田政権の1年その⑤

●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年2月3日(ゲラ刷り)


国会は1日、衆院予算員会で11年度第4次補正予算案の基本質疑を行った。補正予算そのものについては自民、公明両党も賛成する方針であり、8日に可決される見込みだ。
野田首相は「東日本大震災からの復旧・復興をはたし、日本経済が再生するための地歩を固めたい」と述べていた。補正予算案の成立はその第一歩といったところか。
もっとも、ここにきてまたしても防衛省沖縄防衛局に不祥事が発覚、政権の先行きはよりいっそう見通しが効かなくなってしまった。
あろうことか、沖縄防衛局長が米軍普天間基地を抱える宜野湾市長選(2月5日告示、12日投開票)に関与していたというのである。
簡単にお復習いすると、沖縄防衛局長が宜野湾市内に在住する防衛省関連職員とその家族、親戚を対象に「有権者リスト」を作成し、「講話」の中で選挙に行くよう呼びかけたことが公務員の政治活動を禁じた公職選挙法や国家公務員法などに抵触するのではないかというもの。前日の衆院予算委員会で共産党の赤嶺政賢議員が「国家権力による選挙の自由への不当な介入だ」と暴露した。
 法令違反かどうかは微妙だが、野党はおかまいなしに「さらなる説明がない限り、集中審議を求めることになる」(石破茂前政調会長)、「選挙の間際に有権者である自治体職員を集めて講話するのは、非常に疑念を抱かれる」(石井啓一公明党政調会長)、「首長選に国が介入しようとした。言語道断だ」(福島瑞穂社民党党首)と批判を強め、徹底追求の構えである。
 これに対し田中直紀防衛相は1日、記者団を前に「誤解や批判を受けかねない行為だ。近日中に政務三役会議を開き、防衛省として判断する」と述べ、防衛局長の更迭に含みを持たせたが、明日は我が身。いずれ所管大臣として監督責任が問われよう。辺野古先への移転を急ぐ野田政権にとっては手痛い失点である。
 あるいは野党が3月末、来年度予算案の年度内成立ギリギリのタイミングで参院に田中防衛相の問責決議案を提出し、間髪入れずに衆院に内閣不信任決議案を突きつければ、関連法案の審議入りのメドが立たずに野田首相が4月解散に追い込まれることになるかもしれない。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年2月15日号(ゲラ刷り)

 内閣支持率がついに2割台に突入した。先週末、産経新聞社とFNN(藤ニュースネットワーク)が行った調査で26・4パーセント。前月調査より実に9・6ポイントの大幅下落である。
 これについて野田佳彦首相は13日の衆院予算員会で「世論調査によって右往左往するのはいけない。本当に国家国民のためなら、現状では厳しい世論であっても説得していくことを覚悟しなければいけない場面もある」と述べた。なおも消費税引き上げに突き進む覚悟である。
 もっとも総選挙が近いとなれば、民主党内は小沢グループの動きが慌ただしく、自民、公明両党はなおさら勢いづいて攻め立ててくるから政権運営は厳しさを増すばかりである。
自民、公明両党は10日、野田首相が求める税と社会保障の一体改革の与野党協議について、当初協議入りの前提条件にしていた年金試算を民主党が公表したにもかかわらず、「国民が見ているところで議論しないと危険だ」(自民党・石原伸晃幹事長)、「環境が整っていない」として拒否する姿勢を崩していない。
野田首相は「粘り強く与野党協議の可能性を追求したい」と言っていたが、一方では17日に消費税増税法案の大綱を閣議決定する構えを見せている。
しかも、この機に乗じて民主党内は小沢グループの動きが騒がしい。9日には小沢氏に近い広野充士広報委員長が「増税反対だ。広報委員長としてキャンペーンをやることはできない」と辞表を提出。当の小沢氏はここにきてマスコミへの露出を増やし「お金がないから増税というのは国民に対する背信行為で、有権者を冒涜することだ。財源を見出す努力を全力でやった上での話でないといけない」と消費税引き上げ反対を繰り返す。
これでは早晩、野田政権は行き詰まる。消費税引き上げどころか、国民生活に直結する来年度予算の年度内成立も危うい。
3月末から4月初めにかけて、自民、公明両党は田中直紀防衛相の問責決議案を提出、可決されればそのまま審議はストップ、4月中旬予定の小沢氏の一審判決前後に政局は大きなヤマ場を迎えることになろう。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年2月22日号(ゲラ刷り)

17日に行われた小沢一郎民主党元代表の公判で元秘書らの検察調書の大半が証拠不採用となった。
 被告本人は口を噤むが、側近の川内博史衆院議員は翌日の自身の政治資金パーティーで「違法な捜査によって集められた証拠だということで、大部分が却下されるという明るい兆しも見えてきた」と述べ、無罪判決への期待を滲ませた。
 むろん検察捜査の在り方は断罪されてしかるべきだが、小沢氏が政治家であり続ける限り、だからといって無罪放免にはならないだろう。
 野党に言わせれば、「判決が(有罪、無罪)のどちだになろうと、もはや政治家としては失格であるということは自明だ」(自民党の脇雅史国対委員長)、「政治的、道義的責任はある。秘書が3人有罪になっているわけだから国会に対する説明責任はある」(公明等の井上義久幹事長)なのである。
 一審判決は4月中旬の予定だが、仮に無罪となった場合でも野党は国会喚問を求めてくるだろう。さてと、民主党執行部はどう対応するのか。
 小沢氏を擁護すれば、国民世論のさらなる離反を招きかねない。かといって、突き放せば党分裂は必至の状勢である。毎度繰り返される小沢問題だが、もううんざりだ。そろそろ、白黒つけてはどうか。
 都合の良いことに、小沢氏は野田政権が進める税と社会保障の一体改革に公然と異を唱えている。
 これについて自民党の谷垣禎一総裁は19日、「野田首相はまず小沢元代表と一対一で話し合い、賛成するなら一緒にやりましょう、反対するなら出て行ってください、と(言うべきだ)」と述べた。
本来は他党が口出しすることではなかろうが、消費税の税と社会保障の一体改革で野党に協力を求めていながら、党内を一つにまとめきれないようでは筋が通らない。政策を前に進めるためには小沢抜き民主、自民の大連立もありだ。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年2月29日号(ゲラ刷り


民主党の岡田克也副総理は25日の講演で、税と社会保障改革や衆院選挙制度改革などで与野党協議が遅々として進まない現状について「(与野党が)何か足の引っ張り合いをお互いにしているという印象を与えると、国民はだんだん政治から離れる。与党も野党もひどいということになると、橋下徹(大阪市長)さんがいいんじゃないかという話になってしまう」と述べた。
それこそ本欄で度々指摘してきたところである。与野党を問わず、良識ある政治家であればきっと同じ危機意識を共有しているはずだ。
周知のとおり、自民党では森善朗元首相が早くから「(消費税を)一緒にやってから、堂々と解散したらいい」と述べるなど、ベテラン議員を中心に話し合い解散を求める声が上がっていた。
同日のテレビ番組では安倍晋三元首相が解散前提の消費税関連法案への協力について「自民党でそういう議論になるだろう。民主党が乗れば、5月に衆院選が行われることもあり得る」と述べている。
こうした話し合い解散を求める党内の声に対し、大島理森副総裁は27日、記者団を前に「マニフェスト(政権公約)と違うこと、国民生活の根本に関わる税の問題であるならば、もう一度、国民に自分たちの意見をしっかり言い、信任を得るべきだ」と否定的な見解を示している。だが、これには「今の時点で話し合い解散を論評する時期ではない」との但し書きが付く。
では、論評する時期は来るのかどうか。直近で注目して置きたいのが、来年度予算案の扱いである。
来年度予算案は、衆院採決の前提となる中央公聴会が3月2日に行われる。政府与党は3月第2週の衆院通過を目指す。一方の自民党は政府予算案が基礎年金の国庫負担財源2・6兆円を計上せず、将来の消費増税で賄う交付国債で穴埋めしていることを「粉飾予算」と批判。衆院採決に合わせて、公共事業費の増額などを盛り込んだ組み替え動議を提出する意向を固めている。政府与党にこれを丸飲みするくらいの度量があれば、与野党協議の扉を開くことができるのだが。











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