2015年4月9日木曜日

君主気取りの安倍の「我が軍」発言


安倍晋三首相が先に米紙ワシントンポストのインタビューで旧日本軍の強制連行が国際的批判を浴びる従軍慰安婦問題について「人身売買の犠牲となり、筆舌に尽くしがたい痛みと苦しみを経験した人々を思う時、私の心は痛む」と述べたことが物議を醸している。

「責任を民間業者に転嫁し、政府の関与と責任を否認しようとする狙いなら、問題の本質をごまかすことだ」とは韓国政府の反応である。

 30日の衆院予算委員会で真意を問われた安倍首相は「さまざまな議論がなされている中で、人身売買についての議論も指摘されてきたのは事実だ」と釈明した。

 確かに戦時下、旧日本軍による慰安婦の強制連行があったのかどうか。韓国の主張すべてを鵜呑みにすることはできない。だが、少なくとも日本統治下の朝鮮半島においては日本政府なり日本軍が容認し保護しなければ慰安所の運営が成り立つはずがないもなく、安倍発言もの延長線にある。ただ、そうであっても戦後70年の談話が注目される中、被害国に曲解されないよう言葉は慎重に選ぶべきだった。

 安倍発言に関しては、20日の参院予算員会で自衛隊を「わが軍」と呼んだことが問題視されている。

「共同訓練の相手である他国軍と対比するイメージで自衛隊を『わが軍』と述べたわけで、それ以上でもそれ以下でもない」とは、これも同じ衆院予算委員会での安倍首相の釈明である。

 ついには「こうした答弁により大切な予算委員会の時間がこんなに使われるならば、いちいちそういう言葉は使わない。ただそれを使ったからどうこういうものではない」と開き直ってしまった。

 日本国の首相たるもの、憲法9条が掲げる建前を無視して自衛隊をイメージで語れば立法府が問題視するのは当然である。これが衆参ねじれ国会であれば、審議が空転してもおかしくない。集団的自衛権の憲法解釈を変えてしまった昨年7月の閣議決定と併せ、何を置いても最優先に質すべき安倍首相の歪んだ憲法観である。

 安保法制は5月中旬からいよいよ与野党論戦が始まる。自衛隊を「わが軍」と呼ぶ安倍首の下、国民の不安は募るばかりだ。

 

 

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