年度替わりは、政治家や官僚にとって年明け通常国会の開会を迎えるのと同様、ある意味で新年を迎える以上に大切な区切りとなる。
「賃上げの花が舞い散る春の風」
安倍晋三首相は年度末の31日、咲き乱れる首相官邸のソメイヨシノを眺め、こんな句を詠んだそうだ。
アベノミクスの成否が問われる今春闘で大手企業の高額回答が相次ぎ、この日、機械金属産業の中小企業労働組合などでつくる産業別労組「JAM(ものづくり産業労働組合」が発表した回答状況でも賃上げ幅は最高水準を記録した。まもなく予算も成立する。
取り巻きの記者に「日本の景気は何分咲きか」と問われた安倍首相は「七分咲きくらいになってきた。風に乗って、景気(回復)を全国に届けたい」と応じた。花咲爺さんにでもなった気分だろう。
だが国民からすれば、むしろこの詩の方がより実感に近いのではなかろうか。
「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」
作家の林芙美子が生前好んで口ずさんだそうだ。
今年花開いたソメイヨシノが来年も、再来年も咲き乱れる保証はどこにもない。ちょっとばかり賃金が上がったからと言って財布の紐を緩めてしまえば後には塗炭の苦しみが待っているかもしれないと。
例えば安倍首相が先送りを決めた消費税率10%への引上げについて菅義偉官房長官は同日の記者会見で「判断は間違っていなかった」と述べている。
確かに多くの国民は喜んだ。政権与党は選挙に勝った。しかし消費税率先送りで空いた財源の穴埋めは今年度以降、目立たぬよう社会保障費等の国民負担に上乗せされるのである。
あるいは安倍政権が今国会で成立を目指す安保法制と国民負担の関係も同じだ。米第七艦隊のトーマス司令官は同日の記者会見で「自衛隊の活動が世界規模になり、米海軍にとっても非常に有益だ」と述べている。
つまり自衛隊の活動領域の拡大によって肥大化する日本の国防予算の原資はこちらもいずれ国民が負担することになるのだ。安倍官邸のとんだ徒花である。
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