2014年9月18日木曜日

朝日新聞が日本の名誉を傷つけ、国益を損ねたと言うのだけれど


 安倍晋三首相は14日に出演したNHK番組で従軍慰安婦問題について先に朝日新聞が一部記事のねつ造を認めたことに触れ「日本兵が人さらいのように慰安婦にしたという記事が世界中で事実と思われ、(日本を)非難する碑ができているのも事実だ。取り消すということは、世界に向かってしっかり取り消すことが求められる」と述べた。

 さらにこの日、民放番組では自民党の稲田朋美政調会長が同様の認識から「おわびではなく、日本の名誉回復のため何をするかを発信すべきだ」と注文を付けた。

 もちろん政府与党に言われなくとも、朝日新聞は今後の身の振り方を自ら考え、行動するはず。だがそれはあくまでも読者との信頼関係を取り戻すためのものである。あるいは稲田氏は、朝日新聞の報道が日本の名誉を傷つけるほどに世界に影響力があると考えているのかもしれないが、過大評価が過ぎよう。そうでなければ、日本に対する国際世論がここまで悪化した責任を一人朝日新聞に押し付け、政治責任から逃れようとする魂胆かもしれない。

 いずれにせよ、日本の名誉や国益というものは一義的には政府が守るべき責任である。言論の役割は何が名誉であり、何が国益かを問いかけ、読者に一定の見識を示すことであろう。

 これまで朝日新聞が安倍首相の訴える「戦後レジュームからの脱却」を戦前の植民地支配と敗戦の現実から再出発した日本の戦後を否定するものとして、A級戦犯合祀後の靖国神社への閣僚参拝や河野談話の見直し、あるいは従軍慰安婦問題をめぐる安倍政権の対応を批判的に報じてきたのは一つの見識なのである。

 もちろん反論があっても構わないが朝日新聞が従軍慰安婦報道の一部ねつ造を認めたからといって安倍政権がこれを糾弾し、自らの主張の正当化をはかる姿は中国や北朝鮮の言論統制にも似ておぞましくもある。

 本当のところ、日本の名誉を傷つけ国益を損なっているのは誰なのか。国民世論の冷静な判断を期待したい。

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