2014年7月19日土曜日

安保審議で広がる安倍政権への不信と不快


 国会は14、15両日、衆参両院で集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定について閉会中審議を終え、国会議員は長い夏休みに入った。

 だが、たった2日間の論戦で国民世論の理解は深まるはずもなく、むしろ、安倍政権に対する不信の念がこれまで以上に根深く広がったのではなかろうか。

 16日には、野党8党の国対委員長が国会内で会談、わずか2日間の審議では不十分として民主党の松原仁国対委員長が、さらなる閉会中審議を行うよう自民党の佐藤勉国対委員長に申し入れたが応じる気配はない。

 そればかりか、菅義偉官房長官はこの日の記者会見で「民主党は抑止力の重要性について認識が欠けていると言わざるを得ない。責任政党であるならば、安全保障政策や抑止力の重要性について真摯に向き合うことが極めて大事だ」と批判。前日夜のテレビ番組では安保関連法の整備について「政府見解に基づいて法律を作って、これから一年をかける」とし、「(政府見解の)閣議決定イコール集団的自衛権を行使できる、という誤解を解いていかないといけない」と述べた。

 つまり、国会論戦が深まらないのは抑止力に対する民主党の認識不足のせいであって、具体的な法整備の過程で国民の理解を得たいとの考えだ。

 しかし、その法案の内容が閣議決定に基づくものである以上、集団的自衛権の行使を可能にするために現行憲法をどこまで拡大解釈するかの線引きを事前にはっきりさせておくことは、法案審議の段階で無用な混乱をきたさないためにも必要なことだ。

たとえば安倍晋三首相は集中審議で集団的自衛権の行使の新3要件の一つ、「国民の権利が根底から覆される明白な危険」について「他国に対する武力攻撃が発生した場合、(日本が)武力を用いた対処をしなければ、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様の深刻、神大な被害が及ぶことになる明らかな状況だ」と説明した上、①攻撃国の意志、能力②事態の発生場所③事態の規模、態様、推移④日本に戦禍が及ぶ蓋然性⑤国民が被る犠牲の深刻性の5つの基準を示し、客観的に判断するとしている。

 ところが具体的な事例としてあげるペルシャ湾の機雷掃海活動は公明党との合意を前提にした閣議決定を大きく逸脱するものであり、5つの基準のどこをどう当てはめても、憲法違反の戦闘行為であることに疑う余地はない。

 それすら誤解というのであれば、誤解を生んだ政府の責任である。休まず、サボらず、閉会中審議を再開することだ。

 

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