2014年7月10日木曜日

安保法案一括処理と解散総選挙の時期


 安倍晋三首相は6日、集団的自衛権の行使容認の閣議決定に伴う安全保障関連法案の整備を一括処理する考えを明らかにし、併せて9月に予定されている内閣改造で「安保法制担当相」を新設する意向を示した。安倍首相の魂胆は御見通しである。

周知のとおり、先の閣議決定では集団的自衛権の行使容認の他、武力攻撃に至らない事態(グレーゾーン)や国連平和維持活動(PKO)などの集団安全保障における自衛隊活用も盛り込まれた。これに関連して改正、整備が必要な法案は自衛隊法や武力攻撃事態法、PKO法など10数本に及び、所管官庁は防衛、外務など複数にまたがる見込みだ。このため安倍首相は法改正作業と国会答弁を一元化するため担当相を置きたいわけだが、閣僚の人数は18人と決まっているため増員はできない。しかも、すでに法案作成作業は内閣官房長官の下、国家安全保障局で始まっているため、安保法制担当相には国会安全保障会議メンバーの官房長官か、あるいは外務、防衛両相のいずれかが兼務するしかない。加えて言えば、集団的自衛権の行使容認を主導した外務省を法案の取りまとめ役とし、安倍首相は公明党との与党協議をまとめた自民党の高村正彦副総裁を外相に起用し兼務させるつもりだ。それに韓国と太いパイプを持つ高村氏の外相起用そのものが、対韓関係改善に向けたメッセージにもなると安倍首相は考えているはず。内閣改造の目玉人事の一つだ。

あるいは政局的には、安保関連法案を一括処理するとなれば法案の提出が早くても年明け通常国会、予算成立後の4月以降になることも計算には入っていよう。

安倍政権は秋の臨時国会以降、年末にかけて消費税率10%引き上げの決断を迫られ、これに伴う軽減税率の導入やあるいは経済成長戦略の目玉政策となる法人税率引き下げ、TPP交渉など懸案山積である。いずれも国民ウケが悪く、さらに11月には集団的自衛権の行使と密接にかかわる沖縄県知事選を控える。強引な解釈改憲で支持率急落する中、国民世論をこれ以上に刺激したくないのが安倍首相の本音であろうか。

また、法案の一括処理には別の狙いも伺える。先の通常国会、安保論争にかき消されて目立たなかったが、「医療・介護総合推進法」なる重要法案が成立している。元は19本あった医療、介護関連法案を一括処理したものだが、安倍政権は驚くことに審議時間を一本あたり2~3時間程度で強引に採決を打ち切り、採決に持ち込んでしまったのである。

もうお分かりだろう。多くの法案からなる安保関連法案を一括処理すれば、きっと同じ道を辿ることになるのだ。そうすれば集団的自衛権の行使だけでなく、グレーゾーンや集団自衛権にいたるまでこれまで自衛隊の活動を縛ってきた憲法9条の枠をいっきに取り除くことができるのだ。

しかも、4月以降の法案提出となれば、採決は常識的には6月以降会期末になだれ込む。そうなれば春の統一地方選への影響を避けたい公明党も同調できよう。あるいは万が一にも公明党が反発して連立離脱の構えを見せたところで安倍首相は聞く耳持たずに強行採決、そして迷わず解散総選挙に打って出る。もちろん、本人は勝つつもりでいるのだから、オメデタイ。

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