2015年1月15日木曜日

「農家の心知らず」の安倍流農業改革


 11日投開票の佐賀県知事選で無所属新人の山口祥義氏(49)が自公推薦の樋渡啓祐・前武雄市長(45)に4万票の大差をつけ初当選をはたした。

 春の統一地方選の前哨戦として注目された同知事選は安倍晋三首相率いる自民党本部がトップダウンで樋渡氏の推薦を決めたことに反発した地元県議団や農協団体が山口氏を独自に担ぎ出して保守分裂選挙となった。さらには昨年11月、米軍普天間基地の辺野古移設にノーを突きつけた沖縄知事選同様、中央VS地方の対立構図も浮かび上がった。

「敗因をよく分析し、今後の対応に当たりたい。選挙結果を謙虚に受け止める」とは敗れた自民党の茂木敏充選挙対策委員長のコメントだが、負けた理由ははっきりしている。最大の争点となったアベノミクスの農業改革に自民党支持基盤の農村票が離反したからに他ならない。

 周知のとおり安倍政権は農産物の関税撤廃が焦点となる環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の合意を前提にこれまでの保護政策を改め、競争原理を導入して農業経営の近代化をはかることを経済成長戦略の柱に位置付けている。

 このため農業保護政策の象徴とも言える「全国農業協同組合中央会(全中)」の解体に向けて3月にも農協法改正案をまとめる予定だ。

 政府は「(農業の)6次産業化を進め、農家の所得を上げる改革」(菅義偉官房長官)と言う。

確かに全中を頂点とする農協組織の在り様はかねてより問題点が多々指摘されてきたところだ。しかしながらこの2年、アベノミクスの経済成長戦略で空前の収益を享受した企業経営者の振る舞いを見れば、仮に農業の規制緩和による競争原理の導入が農業経済の規模拡大につながったとしても、それが個々の既存農家の所得向上につながるとは限らない。むしろ、先祖から受け継ぎ守り続けてきた田畑を奪われかねないとの既存農家の不安が、今回の選挙結果から読み取れよう。

安倍首相は金色に輝く棚田の美しさを讃えながら、その日本の景色、自然を守り続けてきた農家の日々の暮らしには心至らないようだ。

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